マカダミアナッツとは
●基本情報
マカダミアナッツはオーストラリアが原産地のヤマモガシ科マカダミア属の常緑樹です。「オーストラリア産の実」という意味のクイーンズランドナッツと呼ばれることもあります。果実は梅の実ほどの大きさをしており、熟すと裂開します。硬い殻の中にある仁[※1]は食用とされ、歯ざわりや香ばしい味などの特徴を活かし、クッキーやチョコレートなどにアクセントとして用いられます。
●マカダミアナッツの歴史
マカダミアナッツは、19世紀半ばにオーストラリアの東海岸でイギリスの植物学者フェルディナンド・フォン・ミューラーとブリスベーンの植物園長ウォルター・ヒルによって発見されました。マカダミアナッツのマカダミアとは発見された当時、有名であったオーストラリアの科学者であるジョン・マカダムの名前にちなんで名づけられました。発見されたころは殻があまりにも硬すぎるためなかなか食用としては定着しませんでしたが、20世紀半ばになると、この硬い殻を割る機械が生まれ、世界中の人に知られるようになりました。経済的栽培は、19世紀末頃から始まり、野生の樹木から殻の薄い系統のものが選抜され、繁殖法が確立されました。1982年には、約6万本の苗木がハワイに植えられ、今ではハワイはマカダミアナッツの主産地となっています。他にもアメリカ南部や南アフリカ、ブラジルでも栽培されています。
●マカダミアナッツを選ぶ際のポイント
殻付きのものを選ぶことをおすすめします。これはマカダミアナッツは、湿気を含むと味や香りも悪くなるため、殻付きのものを選び、食べる直前に殻を開けて食べられるとおいしくお召し上がりいただけます。また、むき実を選ぶ場合も缶詰や瓶詰めなど湿気が入らないような密閉されたものを選ぶとよりおいしいマカダミアナッツがいただけます。
保存する際も、開封後は瓶や缶などの密閉容器に入れて冷蔵庫で保存することをおすすめします。冷凍保存をすると3ヵ月はもつことができ、開封前の場合では約1年保存することができます。
●マカダミアナッツに含まれる成分と性質
マカダミアナッツは、有効成分であるオレイン酸、パルミトオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸を含んでいます。マカダミアナッツに含まれる脂質の大部分はオレイン酸です。このオレイン酸は血中の悪玉(LDL)コレステロール[※2]を減らし、善玉(HDL)コレステロール[※3]を増やしてくれる働きがあります。またパルミトオレイン酸は、植物の中では唯一マカダミアナッツにだけ含まれている成分です。パルミトオレイン酸は、脳血管にまで入り込むことができる成分です。脳血管にまで届く成分は多くはなく、選ばれた成分しか通ることができません。パルミトオレイン酸は、脳血管の奥に入り込むことで、強く若々しい血管や皮膚を保つ働きをしてくれます。
[※1:仁とは、果実の核や種子のことを指します。]
[※2:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能を持った物質です。悪玉(LDL)コレステロール値が高くなると、動脈硬化の原因になるといわれています。]
[※3:善玉(HDL)コレステロールとは、血管壁に溜まった余分なコレステロールを抜き取って、肝臓に運ぶ機能がある物質です。動脈硬化などを防ぐ役割があります。]
マカダミアナッツの効果
●コレステロール値を下げる効果
マカダミアナッツにはコレステロール値を下げる効果があります。これはコレステロール値を下げるといわれている一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を含んでいるためです。オレイン酸は、動脈硬化[※4]の原因となる悪玉(LDL)コレステロールを減らし、動脈硬化の防止に役立つ善玉(HDL)コレステロールはそのまま維持させる性質があります。【1】【2】
●美肌効果
マカダミアナッツに含まれるパルミトオレイン酸は、人の皮脂[※5]を構成する脂肪酸で、人間の体には20%ほど含まれています。しかし、30歳頃をピークにその量は徐々に減少し始めます。そうすると、肌のバリア機能が低下し、カサカサと乾燥した状態になってしまいます。マカダミアナッツに含まれるパルミトオレイン酸を摂取することで、皮脂の分泌を促し、肌のバリア機能を高め、乾燥や肌の老化を防ぐ効果が期待できます。また、マカダミアナッツの種子を搾った油は皮膚になじみやすく、吸収も良い油であるため、「バニシングオイル(消えて見えなくなる油)」とも呼ばれています。マカダミアナッツの油は非常に酸化しにくいという性質があることから、化粧品の原料やマッサージオイルとしても用いられるなど、美容素材としての注目も集まっています。
●血管を丈夫にする効果
マカダミアナッツに含まれるパルミトオレイン酸には血管を丈夫にする効果があります。パルミトオレイン酸は脳内の血管にまで入り込み、栄養を届けるため血管を強く丈夫にします。また、血管が丈夫になることで脳卒中などの血管の老化によってひき起こる病気の予防や老人性の認知症[※6]の予防効果も期待できます。
●むくみを予防・改善する効果
マカダミアナッツにはむくみを改善する効果があります。マカダミアナッツに含まれるカリウムは体内のナトリウムを調節して、余分なものを排出する働きがあります。
●便秘を解消する効果
マカダミアナッツに含まれるオレイン酸には、胃腸の働きを活発にし、腸内環境をきれいにする働きがあります。そのため胃潰瘍の予防や便秘の改善に効果を発揮します。
[※4:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質が溜まって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※5:皮脂とは、皮脂腺から毛や表皮の表面に分泌される分泌物です。]
[※6:認知症とは、アルツハイマー病とも呼ばれ、物忘れが激しくなる・理解力や判断力が低下する・以前熱中していたことに興味を示さなくなるといった症状が挙げられます。]
マカダミアナッツはこんな方におすすめ
○コレステロール値が気になる方
○乾燥肌・肌荒れでお悩みの方
○美肌を目指したい方
○血管を丈夫にしたい方
○脳を活性化したい方
○手足のむくみでお悩みの方
○便秘でお悩みの方
マカダミアナッツの研究情報
【1】マカダミアンナッツは不飽和脂肪酸を豊富に含みます。マカダミアンナッツを42.5g、5週間飲用した結果、総コレステロールおよびLDLコレステロールが低下したことから、マカダミアナッツは高脂血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18356332
【2】高コレステロール血症患者17名を対象に、マカダミアンナッツ(40-90g/日)を4週間飲用した結果、総コレステロールを3%、LDLコレステロールを5.3%まで減少させ、HDLコレステロールを7.9%増加したことから、マカダミアナッツは高脂血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12672919
参考文献
・蔵敏則 食材図典 小学館
・大槻真一郎 ハーブ学名語源事典 中京堂出版
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・山田豊文 植物油の事典 毎日コミュニケーションズ
・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏
健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院
・Griel AE, Cao Y, Bagshaw DD, Cifelli AM, Holub B, Kris-Etherton PM. (2008) “A macadamia nut-rich diet reduces total and LDL-cholesterol in mildly hypercholesterolemic men and women.” J Nutr. 2008 Apr;138(4):761-7.
・Garg ML, Blake RJ, Wills RB. (2003) “Macadamia nut consumption lowers plasma total and LDL cholesterol levels in hypercholesterolemic men.” J Nutr. 2003 Apr;133(4):1060-3.