リジン

lysine

リジンとは、必須アミノ酸のひとつで、人体を構成するたんぱく質の組み立てに必要な栄養素です。肉などの動物性たんぱく質に多く含まれています。ブドウ糖の代謝を良くして集中力を高めたり、カルシウムなどの吸収を促進するほか、肝臓機能の強化などの効果が確認されています。

リジンとは?

●基本情報
リジンとは必須アミノ酸[※1]のひとつで、体のたんぱく質の組み立てに必要不可欠なアミノ酸の一種です。リジンは牛乳から発見されたアミノ酸で、生体のたんぱく質中に約2~10%含まれています。抗体やホルモン、酵素などをつくる機能を担っており、体の組織の修復や成長に関与しています。また、脂肪燃焼に必要なカルニチンの合成原料でもあります。
リジンは必須アミノ酸のため、食品から摂取しなければなりませんが、他の栄養素と同じようにリジンのみを特定して摂取することはできません。そのため、食品に含まれるたんぱく質のアミノ酸の量や必須アミノ酸の割合は異なります。リジンは、食品のたんぱく質中で最も制限アミノ酸[※2]になりやすく、植物性たんぱく質中には含量が少ないため、米や小麦、とうもろこしなどの穀類たんぱく質では特に不足しています。
よって穀物を主体とした一般的な家畜用飼料は、動物の成長に必要な必須アミノ酸が不足していることになるため、リジン等が添加されています。
リジンは穀類には余り多く含まれていないため、肉類や魚介類、牛乳やチーズなどの乳製品、納豆や豆腐などの大豆製品、豆類からの摂取が基本となります。このような動物性たんぱく質を含む食品や豆類を一緒に食べることで、たんぱく質の利用率が上がるため、通常の食生活の中でリジンが大幅に不足するということはありません。穀類ばかりをたくさん食べるような食生活の人は、肉や魚、卵、豆腐などを加えた栄養バランスの良い食事をすることが大切です。

●リジンの欠乏症と過剰症
リジンが欠乏すると、疲れやすくなって集中力が低下したり、目の充血、めまいや吐き気、貧血などの症状が現れることがあります。また、肝臓の機能が低下して、血中の飽和脂肪やコレステロールが増加しやすくなります。一般に、高齢の男性は若い人と比較して、より多くのリジンが必要とされます。
通常の食生活であれば、リジン単体での過剰摂取が起こらないため心配ありません。サプリメントでアミノ酸の摂取を行なっている場合は、リジン単体での過剰摂取が起こりやすく、腎機能障害を引き起こす恐れがあります。

●リジンを摂取する際の注意点
安全性については、1日あたり10gのリジンを5日間摂取すると、胃痛や下痢などの副作用を引き起こす可能性があるというデータがでています。妊娠中・授乳中の方はサプリメントでの摂取を控える必要があります。

[※1:必須アミノ酸とは、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成することができない9種類のアミノ酸のことです。食品から摂取しなければならないアミノ酸で、欠乏すると血液や筋肉、骨などの合成ができなくなります。]
[※2:制限アミノ酸とは、必要量に対して充足率の低いアミノ酸のこと。必須アミノ酸は相互の量が一定の範囲内にあることが大切であり、ひとつでも不足しているアミノ酸があると、たんぱく質の利用効率は不足しているアミノ酸に引っ張られて低下してしまいます。最も不足しているものを第一制限アミノ酸といいます。]

リジンの効果

リジンは、体内でのたんぱく質の組み立てに必要不可欠な必須アミノ酸のひとつです。たんぱく質は体内で細胞や細菌・ウイルスの侵入を防ぐ抗体の材料として用いられるため、リジンの摂取は成長と免疫力の向上に大きな役割を果たします。

●疲労回復効果、集中力を高める効果
リジンには、体の組織を修復し成長に関わる働きがあります。たんぱく質の吸収を促進させ、ブドウ糖の代謝を良くして疲れをとり集中力を高める効果や、骨を丈夫にするカルシウムの吸収を促進する働きを持っており、健康的な生活を送るためには欠かすことのできない栄養素です。

●肝機能を高める効果
リジンには、アルコール摂取などで弱った肝臓の機能を高める働きがあります。弱った肝臓に活力を与えることでリパーゼ[※3]の働きを活発にして、脂肪酸が適切に利用されるようになります。よって、リジンが不足すると血中に飽和脂肪酸やコレステロールなどが増えやすくなるといわれています。また、肝臓の機能が高められたことでホルモンを産出し、受精率を高める作用があります。【1】

●単純疱疹(ヘルペス)を予防・改善する効果
リジンには、唇などに疱疹を起こす単純疱疹の原因となるウイルス感染を予防・改善する効果があり、感染症に対して抵抗力を高める効果を持っているとされています。【2】

●脳卒中の発症を抑制する効果
リジンには、血圧を降下させ、脳卒中発症率を低下させる作用があるとされています。

●髪の健康を保つ効果
リジンは、男性脱毛症の改善に有効であるとされ、近年では育毛剤の成分としても注目されています。
イギリスにあるバイオサイエンティフィック社が、性別を問わず様々な原因による薄毛、抜け毛の治療にリジンの摂取がとても有効であることを証明し、米国特許を取得しています。この研究の対象には、ジヒドロテストステロン(強力な脱毛作用のある男性ホルモン)などによる男性型脱毛症も含まれており、広範囲な抜け毛対策に有効な成分であることがわかっています。リジンの摂取により、様々な原因からの薄毛、抜け毛に対する著しい発毛効果が挙げられています。

[※3:リパーゼとは、脂肪を消化する酵素のひとつで、中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解します。食物中の中性脂肪が分解されることで、腸管から吸収できるようになります。また、リパーゼは膵臓でつくられ十二指腸乳頭部に運ばれます。この経路に異常が発生すると、血液中に漏れ出し、血液中の濃度が上昇します。]

リジンは食事やサプリメントで摂取できます

リジンを含む食品

○牛乳
○チーズ
○鶏肉

こんな方におすすめ

○疲れやすい方
○体調を整えたい方
○免疫力を強化したい方
○コレステロールを抑えたい方
○骨を丈夫にしたい方
○貧血気味の方

リジンの研究情報

【1】肝障害ラットに、リジンやアルギニンを投与したところ、肝臓中の炎症関連物質IL-1αやIL-β、TNFαが低下したことから、リジンに肝臓保護効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14527883

【2】 ヘルペスウイルス感染モルモットに、L-リジンを摂取させたところ、皮膚の帯状疱疹が緩和されたことから、リジンは抗ヘルペスウイルス作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2542441

参考文献

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・日経ヘルス サプリメント大事典 日経BP社

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・Anaya-Prado R, Toledo-Pereyra LH, Guo RF, Reuben J, Ward PA, Walsh J. (2003) “The attenuation of hemorrhage-induced liver injury by exogenous nitric oxide, L-arginine, and inhibition of inducible nitric oxide synthase.” J Invest Surg. 2003 Sep-Oct;16(5):247-61.

・Ayala E, Krikorian D.(1989) “Effect of L-lysine monohydrochloride on cutaneous herpes simplex virus in the guinea pig.” J Med Virol. 1989 May;28(1):16-20.

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