レモングラス

lemongrass
レモンガヤ コウスイガヤ
Cymbopogon citratus

レモングラスはレモンによく似た芳香が特徴のハーブで、精神の調和をとり、消化促進に役立つアジアの薬草です。インドの伝統的な医学にも使用されていた歴史があり、現在はタイ料理のトムヤンクンなどに使われるエスニック料理に欠かせない香り豊かなハーブで、多くの国で食用ハーブやハーブティーとして親しまれています。

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レモングラスとは

●基本情報
レモングラスとは、インド原産のイネ科の多年草で、中南米、アジアの熱帯から亜熱帯にかけて自生しています。その姿かたちは稲やススキに似ていますが、香りはレモンによく似ており、フレッシュで力強い香りと爽やかで清々しい味が特徴です。レモングラスの精油[※1]は細かく刻んだレモングラスの葉から、香気成分が飛ぶ前に素早く水蒸気蒸溜法という方法で、精油が抽出されます。香り成分の70~80%を占めているのはシトラールです。残りの成分にはゲラニオール[※2]と、ファルネソール、ネロール[※3]、シトロネロール、ミルセン、いくつかのアルデヒド類と、その他の香気成分が含まれています。その香りは人工のレモンフレーバーの材料に使用されるほど、レモンよりもレモンらしいといわれています。
アロマテラピーや、ハーブティー、料理、化粧品などに多く使用されています。ストレス解消や食欲増進、消化不良、胃腸炎に有益に働くほか、強力な抗菌作用を持ち、感染症予防に効果的とされています。その他、発熱、局所の炎症の緩和にも効果が期待されるなど、心身ともに元気を与える精油です。インドでは薬草として感染症の治療や解熱剤として利用されてきました。防虫作用や消臭作用があり、部屋の空気を浄化してくれるので、ルームフレグランスにも適しています。また、タイのカレー料理、トムヤムクンなど、エスニック料理に欠かせないスパイスとしてもの利用方法でも知られています。

●レモングラスの歴史
レモングラスは、数千年に渡って非常に長く、インドの伝統的な医学で使用されてきた歴史があり、「チューマナ・プールー」という名前で知られています。これはレモングラスの茎の根元が赤くなることから、赤い茎という意味です。レモングラスの精油はインドでは、熱を下げ、感染症をなおし、腫瘍の進行を食い止めるのに使用されていました。1786年には、リチャード・バンクス卿によってイギリスに伝来し、1914年には、日本でも温室栽培されていたといわれています。第二次世界大戦が起こるまで、インドがレモングラスの主な製油の主要な供給国でしたが、その後は、西インド諸島がインドにとって代わりました。現在では多くの国で食用ハーブやハーブティーとして親しまれています。

●レモングラスの栽培
熱帯性の植物なので高温多湿の日本の夏でも育てやすく、痩せた土でもよく育つため、家庭でも簡単に育てることができます、強光線下で育てると大株に育ち、芳香の強い葉が収穫できます。葉がよく茂って蒸れやすいので風通しのよい場所を選ぶことが適しています。水やりは、表面の土が乾いたらたっぷりと与えるようにし、特に植え付け直後は根が付くまでたっぷりと与えます。寒さには大変弱い植物なので、冬場は室内で育て、冬でも土を乾かさないように水を与えます。収穫は、葉が茂ってきた時に株元から10㎝くらいで刈り取り、乾燥保存します。
株分けは3月~6月、植え付けは4~8月、収穫は5月~10月頃に行われます。

●食品としての使用方法
世界3大スープの1つに数えられているタイ料理、トムヤムクンにはレモングラスの茎を輪切りにしたものが使用されており、その他のエスニック料理にも欠かせない食材です。にんにくや唐辛子との相性がよく、魚介類や肉の風味づけや、におい消し、カレー料理に使用されるほか、フレッシュなものは油で揚げて食べることもあります。レモングラスの葉の部分を使用して、ハーブティーにすることもあり、レモンイエローの水色とレモンの香りで、目にも鼻にも爽やかなハーブティーとして楽しめます。

●レモングラスを摂取する際の注意点
作用が強力なことから、子宮出血を誘発する場合がありますので妊婦、授乳中の方は多量の飲用は控える必要があります。また、光毒性[※4]はありませんが、レモングラスの精油成分は皮膚刺激を感じることがあるので、高濃度で使用することは控え、使用量に注意してください。

[※1:精油とは、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した有効成分を高濃度に含有した100%天然の揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーに利用されています。]
[※2:ゲラニオールとは、 バラに含まれる香気成分で、抗菌、抗不安、皮膚弾力回復などの作用があります。]
[※3:ネロールとは、 バラのような甘い香りがする無色の液体のことです。香料として用いられています。]
[※4:光毒性とは、皮膚や眼が日光やその他の光に対して非常に敏感になった状態のことです。]

レモングラスの効果

●リフレッシュ効果
副交感神経の働きを助け、精神の調和を促します。また、アドレナリン[※5]の分泌を促す働きがあるといわれており、生気を回復させて、疲れた心にやる気を与えます。やるべきことがあるのに手につかないようなとき、集中力を取り戻すのにも有効です。適度に落ち着きをもたらす働きもあるため、車の運転などに向くところから、「ドライバーの精油」と呼ばれています。【1】

●胃の健康を保つ効果
消化促進作用があり、胃腸の不調を改善することに役立ちます。【2】

●血流を改善する効果
鎮痛作用や抗炎症作用もあり、筋肉痛などの痛みをやわらげるのにも有効です。血流を促進する効果もあるので、冷え性やむくみ、肩こりにも効果を発揮します。そのため、トリートメントオイルなどにも使用されます。【3】

●筋肉痛を予防する効果
レモングラスは体の中で蓄積して疲れの原因となる乳酸を除去して、循環を刺激し、筋肉痛の痛みをやわらげて筋肉をしなやかにします。

●美肌効果
収斂作用や殺菌、消毒作用により、開いた毛穴を引き締めたり、皮膚分泌のバランスを整え、にきびを改善したりする効果があります。デオドラント効果や消臭作用もあるので、夏の暑い日やスポーツ後にも役立つ精油です。

[※5:アドレナリンとは、副腎髄質から分泌され、血糖を上昇させるホルモンです。]

レモングラスは食事やサプリメントから摂取できます

こんな方におすすめ

○リフレッシュしたい方
○胃の健康を保ちたい方
○筋肉や血行の調子を整えたい方
○筋肉痛を緩和したい方
○美肌を目指したい方
○天然成分で防虫したい方

レモングラスの研究情報

【1】女性16名に対し、精油なし、ラベンダー+ゼラニウム、ペパーミント+レモングラスの3群でフットマッサージをした結果、ペパーミント+レモングラスでは、唾液中のコルチゾール濃度が有意に低下し、肯定的な感情が大きく上昇しました。レモングラスは抗ストレス効果ならびに抗うつ効果を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009425484

【2】アルコール誘発胃潰瘍マウスを対象に、レモングラスを摂取させたところ、胃潰瘍が緩和されたことから、レモングラスに胃潰瘍予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22523457

【3】レモングラスの葉および根からの抽出物は、細胞内のカルシウム濃度に作用し、血管平滑筋を弛緩させる作用があることが分かりました。レモングラスは血流改善効果を持ち、他に抗酸化作用、抗菌作用、抗けいれん作用等を有すると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/226753837

参考文献

・ワンダ・セラー 著 アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社

・本多京子 食の医学館 小学館

・吉田企世子 棚橋伸子 著 旬の野菜の栄養事典 エクスナレッジ

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