キササゲとは
●基本情報
キササゲはノウゼンカズラ科の落葉高木で、高さは5~10mの植物です。
キササゲとその同属植物トウキササゲの果実は日本薬局方[※1]に生薬「キササゲ」として収録されています。
キササゲの葉は長い柄があり、やや三角形状の広卵円形で長さは10cm~25cm、桐の葉に似た形をしており、厚みがある皮革質で全面に軟毛があります。
キササゲの花期は6月~7月で、淡い黄色の内側に紫色の斑点がある花を咲かせます。
果実は20~30cm位の細長いさや状で、枝の先に10本ほど実ります。
この果実がササゲ[※2]と似ていることからキササゲと呼ばれるようになったといわれています。
果実の中は両端に白毛をもった種子がびっしりと詰まっており、さや状の果実が縦に割れて飛び出し風に乗って広く散布されます。
キササゲは生薬名を梓実(しじつ)といい、利尿作用があることから、日本薬局方にも記載されていますが、伝統的な漢方薬ではほとんど使われておらず民間薬としての位置づけが一般的です。
キササゲは中国が原産ですが、日本には古くから渡来しています。温暖な河原や谷などのやや湿った場所を好むことから、日本全土に生育するようになりました。
キササゲは庭園樹や街路樹として利用されていますが,種子は扁平で先端に糸状の長い絹毛があるため風に乗って運ばれやすく、また発芽しやすいことから、現在では河原や山中などのやや湿ったところに野生化している帰化植物のひとつです。
キササゲの根皮は生薬名を、梓白皮(しはくひ)といい、7月~8月に根を掘り採り、水洗いして皮をはぎ、天日で乾燥させます。
キササゲは、高木になり水気を好むために避雷針がわりに利用され雷除けの木といわれているため、神社、仏閣、屋敷内などによく植えられています。
●民間薬としてのキササゲ
キササゲの実は民間薬として利尿目的で腎炎などに効果が期待されています。また、樹皮は解熱、解毒薬として皮膚のかゆみやできものに利用されてきました。
キササゲの果実や樹皮を煎じる場合は、キササゲの果実や樹皮を約5gから10g程度を60mLから800mLの水の中に入れ、弱火で15分から20分程煎じて1日数回服用することが一般的な使用方法とされています。
ただし、大量に服用した際は嘔吐や胸やけのような症状がみられることがあるため、少量から服用することがすすめられています。
●キササゲに含まれる成分と性質
果実のサヤの部分にカリウム塩、果実にカタルポシド、カタルパラクトン、パラヒドロキシ安息香酸、グルコシド、ソフォロシドなどの配糖体[※3]が含まれています。
他にもクエン酸、パラオキシ安息香酸、カタルピン、オキシレン酸、プロトカテキン酸なども含まれています。
このため、キササゲを煎じて服用すると利尿を促す作用が非常に優れているといわれており、腎臓機能低下による浮腫[※4]、水腫、腎炎、蛋白尿などに効果があります。
[※1:日本薬局方とは、日本国内の医療における重要な医薬品の品質・強度・純度などについて定めた基準のことです。]
[※2:ササゲとは、大角豆と書くマメ科の一種です。]
[※3:配糖体とは、糖の反応性の高い部分に糖以外の物質が結合しているものの総称です。]
[※4:浮腫とは、顔や手足などの末端が体内の水分により痛みを伴わない形で腫れる症状のことです。むくみともいいます。]
キササゲには、カリウム塩やカタルポシドなどの成分が豊富に含まれているため、以下のような効果が期待できます。
キササゲの効果
●排尿障害を改善する効果
尿は、血液中の老廃物が腎臓でろ過されてできます。
毎日心臓から送り出される血液の約5分の1は、腎臓内に流れろ過されることにより老廃物が取り除かれ、尿となります。
この後、体に必要な栄養素や水分などの99%が再吸収され、尿管へと流れ排出されます。
このように、尿は体内の老廃物を排出するためにとても重要な役割をしており、腎臓の機能が低下することにより腎炎や腎盂腎炎、ネフローゼ症候群[※5]などの病気になる危険性が伴います。
また、腎臓の働きが低下することにより、浮腫やたんぱく尿、血尿などの症状が現れることがあります。
キササゲの果実に含まれるカタルポシドには強い利尿作用があり、クエン酸、無機質カリウム塩などの配糖体にも利尿を促す働きがあります。
キササゲは、日本では浮腫を治療する民間薬として有名です。
キササゲの果実とドクダミやヨモギ、麦茶などの薬草を一緒に煎じて服用すると良いとされており、特に南蛮毛[※6]とキササゲを組み合わせることにより利尿を促進する効果が増すと言われています。【1】
●水虫を改善する効果
水虫にはキササゲを煎じた液が民間療法として利用されてきました。
キササゲの生葉を適量刻んで煎じた液で患部を10分ぐらい温浴させることにより、水虫が改善するといわれています。
未熟な果実には青酸配糖体[※7]があるので使用しないようにします。
●解熱・解毒効果
幹と根の皮の部分は、梓白皮(しはくひ)といい、この部分を煎じた液は、解熱・解毒薬として用いられてきました。
肌のかゆみやできものなどのトラブルの治療や、駆虫のために利用されてきたそうです。
[※5:ネフローゼ症候群とは、腎臓が正常に機能しないことで、大量のたんぱく質が尿とともに排泄されてしまう腎臓病です。血液中のたんぱく質が減ってしまい、免疫機能の低下などを引き起こします。]
[※6:南蛮毛とは、とうもろこしのめしべの花柱(ひげ)の生薬名です。]
[※7:青酸配糖体とは、糖に青酸が結合したもののことです。]
キササゲは食品やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○腎疾患をお持ちの方
○むくみが気になる方
○水虫でお悩みの方
○お肌のできものが気になる方
キササゲの研究情報
【1】キササゲの機能性成分について詳しく調べたところ、利尿作用を持つ成分catalposide、catalpolのイリドイド配糖体成分が含まれていることから、キササゲは排尿障害に役立つと考えられています。
参考文献
・農文協 編 民間療法-誰にもできる- 農山漁村文化協会
・鈴木 良雄 (1964) “キササゲCatalpa ovata G.DON果実の利尿作用-1・2-“ 日本薬理学雑誌 1964-11 6