キハダ / 黄柏(おうばく)

phellodendron amurense
黄檗 黄膚 黄柏

アジアに広く自生するキハダの樹皮は、生薬として古くから利用されてきました。
苦みを持つアルカロイドを豊富に含むため消化を促進し、炎症を抑える働きを持ちます。

キハダ / 黄柏(おうばく)とは

●基本情報
ミカン科キハダ属の落葉高木。アジア東北部、日本中の山地の落葉広葉樹林帯に自生しています。
キハダの樹高は10m~15m程度で、20m以上になるものもあります。キハダは、雌雄異株で5月末~7月初旬にかけて、黄緑色の小花を多数枝先につけますが、あまり目立ちません。
果実は球形で熟すると緑色から黒色に変化します。精油を多く含み特異臭がありますが、アイヌ民族は熟した果実を香辛料として用いているといわれています。
樹皮はコルク質で、寒い地方ほど厚くなっています。コルクの内側には皮部があり、厚く鮮黄色をしています。この樹皮からコルク質を取り除いて乾燥させたものは、生薬の黄檗(黄柏)として知られ、薬用のほか染料の材料としても用いられます。
古くから胃腸薬や腹痛の妙薬として用いられている陀羅尼助(だらにすけ)、信州木曾のお百草(ひゃくそう)、山陰地方の練熊(ねりぐま)もこれらは、すべて黄柏エキスからつくられたものです。
キハダの種類には、日本産のオオバノキハダ、ヒロハキハダ、ミヤマキハダがありますが、中国にはシナキハダ、タイワンキハダがあります。

●キハダの利用方法
樹皮は黄檗という名で生薬として利用されています。
樹皮からコルク質・外樹皮を取り除いて乾燥させると生薬の黄柏となります。黄柏にはベルベリンを始めとするアルカロイドが含まれており、強い抗菌作用を持つといわれています。
チフス、コレラ、赤痢などの病原菌に対して効能があるとされており、他には健胃整腸剤として用いられています。強い苦味を持つため、眠気覚ましとしても用いられたといわれています。

数十年前に、キノホルム[※1]の薬害によるスモン病[※2]が問題になりましたが、その後、腸内の殺菌作用があり、下痢止めの効果のあるベルベリンがスモン病の患者に用いられるようになりました。そのため、近畿地方ではかなりの数のキハダが切り尽くされたといわれています。
キハダのベルベリンの含有量は、寒い地方のキハダより、暖かい地方のキハダの方が多く、最もベルベリンの含有量の多いキハダは、タイワンキハダです。

●染料としてのキハダ
キハダは、黄蘗色(きはだいろ)とよばれる鮮やかな黄色の染料で、黄色に染め上げる以外に赤や緑色の下染めにも利用されています。中でも、紅花を用いた染物の下染めに用いられるのが代表的で、紅花特有の鮮紅色を一層引き立てるのに役立っています。

[※1:キノホルモムとは、キノリンの誘導体で、淡黄褐色の粉末です。腸内殺菌・防腐薬として広く用いられていましたが、スモン病の原因になるとして日本では1970年に使用が禁止されました。]
[2:スモン病とは、1955年頃から1970年にかけて日本で多発した、キノホルム剤服用による中毒症のことです。腹痛や下半身のしびれ、知覚・運動神経や視力の障害が起こります。]

キハダ / 黄柏(おうばく)の効果

キハダには、ベルベリンをはじめとするアルカロイドを豊富に含むため、以下のような効果が期待できます。

●消化を促進する効果
キハダの生薬である黄柏(おうばく)は、すぐれた苦味健胃整腸剤として利用されてきました。黄柏は唾液、胃液、すい臓、胆汁の分泌を促進して、食欲を高め、消化を助けるといわれています。
健胃、下痢止めには煎液は苦味が強いので、一般に粉末にして用います。黄柏(おうばく)の粉末を1回1グラム、1日3回食後に服用します。【1】

●下痢を改善する効果
腸内殺菌作用をもつため、腸内における発酵異常による腹痛や下痢に対しても、改善が期待され、急性腸炎などにも有効といわれています。

●炎症を抑制する効果
キハダの生薬である黄柏は、外用消炎薬としても用いられています。
打撲傷には、黄柏の粉末に食酢を加えよく練り、患部に直接塗ってガーゼを当てると良いとされています。
また、関節リウマチや腰痛といった症状に対しては湿布薬や入浴剤として利用されています。
キハダに含まれるベルベリンやパルマチンなどの成分が有効であるといわれています。
熱を鎮める働きがあるため、火傷にも効果的であるといわれています。【2】【3】

キハダは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○胃もたれを感じやすい方
○腹痛をお持ちの方
○下痢を改善したい方
○リウマチ・腰痛でお悩みの方
○火傷を治したい方

キハダの研究情報

【1】キハダには、健胃作用を有するベルベリンが含有されていることから、キハダは健胃効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008731898

【2】スコポラミン誘発炎症性ラットにキハダを経口投与(100または200mg/kg)、ベルベリン20mg/kgを腹腔内投与した結果、炎症性物質TNF-α、ILの発現を低下させました。また神経保護作用も見られたことから、キハダは抗炎症作用ならびに神経保護作用を有すると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22563252

【3】キハダは、プロテオグリカンの遊離やⅡ型コラーゲンの分解を抑制したことから、関節炎や関節痛予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21182922

参考文献

・山口 茂治、川村 智子、野呂 征男、田中 俊弘 (1998) “キハダの葉のベルベリンについて” 生薬學雜誌 52(5), 452-454, 1998-10-20

・Lee B, Sur B, Shim I, Lee H, Hahm DH. (2012) “Phellodendron amurense and Its Major Alkaloid Compound, Berberine Ameliorates Scopolamine-Induced Neuronal Impairment and Memory Dysfunction in Rats.” Korean J Physiol Pharmacol. 2012 Apr;16(2):79-89.

・Kim JH, Huh JE, Baek YH, Lee JD, Choi DY, Park DS.(2011) “Effect of Phellodendron amurense in protecting human osteoarthritic cartilage and chondrocytes.” J Ethnopharmacol. 2011 Mar 24;134(2):234-42.

ページの先頭へ