沈香葉(じんこうよう)

Agarwood leaf

沈香葉は東南アジアの熱帯雨林で植生している沈香木の葉エキスのことです。沈香葉には特有成分としてゲンクワニン配糖体とマンギフェリンが含まれており、便秘を改善したり、デトックス作用、糖尿病予防などさまざまな機能性を持つと期待されています。

沈香葉とは?

●基本情報
沈香葉とは東南アジアから中東にかけて植生している沈香木の葉部をさします。沈香木はジンチョウゲ科ジンコウ属植物のことで、加熱すると樹脂の成分が蒸発し香りを放つことから香木として取り扱われています。
沈香木はシャム沈香、マラッカ沈香、シナ沈香、ベトナム沈香など原産国や地域によって呼び名がさまざまあります。
沈香木の葉の部分にあたる沈香葉は東南アジアで古くから健康増進のため利用されており、現在もお茶として利用されています。沈香葉には、特有成分としてゲンクワニン配糖体とマンギフェリンが含まれており、便秘改善作用があることが報告されています。

●沈香葉の歴史
沈香葉の原料となる沈香木は、推古3年(595年)、淡路島に漂着したときにその場にいた島人が香木とは知らずに薪にくべてみたところ、非常に良い香りがしたため、朝廷に献上したのがはじまりです。この時にその木を沈香木と説いたのが聖徳太子でした。この話は沈香木の日本最古の記録として日本書記に記されています。
「沈香」という名は、上質で樹脂分の多い香木は水に沈むほど重いという特徴から「沈水香木(じんすいこうぼく)」と名付けられたことに由来しています。それにより「沈水木」または「沈水」ともよばれています。

●沈香葉の成分と性質
沈香葉には特有成分としてゲンクワニン配糖体とマンギフェリンが含まれています。
そしてこの2つの成分は沈香葉の便秘解消効果の活性成分であることが研究により明らかにされています。
このほかにも沈香葉には糖尿病を予防したり、抗炎症作用や抗酸化作用などさまざまな機能性を持つと期待されています。

<豆知識> 沈香を使ったことわざ
沈香はその香りの良さからことわざにも利用されています。
「沈香も焚(た)かず屁(へ)もひらず」
このことわざは「沈香のよう良い香りもしないが、おならのような悪臭もしない」という意味から「特に良いこともなければ、悪いこともなくきわめて平凡なこと」のたとえとして用いられています。

沈香葉の効果

●便秘を解消する効果
沈香葉には便秘を解消する効果があります。
日本は全人口の3人に1人が便秘症だといわれています。特に女性の47%は便秘に悩んでいるといわれおり、60歳以上の女性になるとその割合は93%以上になるという報告もあります。
便秘になるとおなかが張るだけではなく、にきびや吹き出物などの肌荒れや肩こりなど、全身に影響を及ぼすので、便秘は女性の大敵です。

沈香葉のエキスには腸のぜん動運動を緩やかに促進し、便秘を改善する働きがあります。
従来の便秘改善薬は即効性が求められる一方で副作用として痛みを伴うものが多くありました。
しかし、沈香葉のエキスの作用はアセチルコリン受容体[※1]を介して小腸のぜん動運動を促進するので、自然な排泄を促すように作用し、痛みを感じることなく便秘を解消することができます。

便秘傾向の男女を対象に実施した試験が行われ、排便回数、排便量において有効な改善効果が見られ、従来の便秘薬によくみられる下痢や腹痛が認められなかったという研究報告がなされています
このことから沈香葉は、体への負担が少ない便秘改善効果のある植物として期待されています。

●腸内環境を整える効果
沈香葉には腸内環境を整える効果があります。
腸内には善玉菌[※2]と悪玉菌[※3]の二種類の腸内細菌が生息しています。
この二つの菌がバランスよく存在することで、私たちの腸は健康に保つことができます。
ところが善玉菌の量が減り、悪玉菌の勢力が強くなると体に悪影響を及ぼします。
沈香葉は悪玉菌の代表とされる黄色ブドウ球菌やクロストリジウム属の細菌に対して増殖抑制効果があるという研究報告がなされています。また善玉菌に対しては影響を及ぼさないことから、沈香葉は腸内環境を整える効果があるといわれています。

●デトックス効果
デトックスとは英語の「detoxification(解毒、浄化)」に由来する和製英語で、簡単に言うと「体内に溜まったゴミをだすこと」です。デトックス機能はもともと体に備わっている機能ですが、うまく機能しないと、疲れやすくなったり体にさまざまな不調をきたします。
沈香葉のエキスは腸内に発生する毒素であるアンモニアや腸内環境を悪化させるインドールを減らすことからデトックス効果があるといわれています。

●糖尿病を予防する効果
沈香葉に含まれるマンギフェリンには糖尿病を予防する効果があります。
マンギフェリンはポリフェノールの一種で、砂糖(スクロース)を分解する酵素であるスクラーゼの活性を抑制する効果があります。スクラーゼの活性を抑制することにより砂糖(スクロース)の分解をゆるやかにしたり、急激な血糖値[※4]の上昇を抑制する働きがあるため、糖尿病を予防するといわれています。

[※1アセチルコリン受容体とは神経伝達物質であるアセチルコリンの受容体のことです。アセチルコリンとは血液中の有害な物質が自由に脳まで到達しないように働いている機構のことです。]
[※2善玉菌とは人間の腸内に住む細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸に住んでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]
[※3悪玉菌とはヒトの腸内に住む細菌の一種です。増えすぎると体に悪い影響を及ぼすと考えられており、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、緑膿菌などが悪玉菌といわれます。]
[※4血糖値とは血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]

こんな方におすすめ

○便秘でお悩みの方
○腸内環境を整えたい方
○肥満を防ぎたい方
○糖尿病を予防したい方

沈香葉の研究情報

【1】沈香葉のエタノール抽出物を使い、食物繊維をあまり取っていないラットでの下剤効果を調査しました。その結果、下痢を起こすことなく、下剤効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21078136

【2】沈香葉の下剤活性を調べるためにマウスの排便回数および排便量について調査を行いました。その結果、沈香葉のアセトン抽出物においては便回数および排便量共に増加したが、メタノール抽出物では確認できませんでした。この活性はアセトン抽出より得られたゲンクワニン配糖体が下剤効果に起因していると考えられます。このことから沈香葉のゲンクワニン配糖体に下剤効果があることが示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18256503

参考文献

・荒木陽子 腸内環境を整える沈香葉のエキス ヘルス凪文庫

・Kakino M, Tazawa S, Maruyama H, Tsuruma K, Araki Y, Shimazawa M, Hara H. (2010) “Laxative effects of agarwood on low-fiber diet-induced constipation in rats.” BMC Complement Altern Med. 2010 Nov 15;10:68.

・Hara H, Ise Y, Morimoto N, Shimazawa M, Ichihashi K, Ohyama M, Iinuma M. (2008) “Laxative effect of agarwood leaves and its mechanism.” Biosci Biotechnol Biochem. 2008 Feb;72(2):335-45.

・Okugawa H, Ueda R, Matsumoto K, Kawanishi K, Kato A. (2012) “Effect of jinkoh-eremol and agarospirol from agarwood on the central nervous system in mice.” Planta Med. 1996 Feb;62(1):2-6.

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