大根

Daikon Japanese radish Mooli

大根には消化を助ける働きを持つアミラーゼ(ジアスターゼ)やオキシターゼなどの酵素が豊富に含まれており、胃の健康を保つ効果があります。また、ビタミンCも豊富に含まれています。春の七草のひとつ「すずしろ」として日本で古くから親しまれている野菜です。

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大根とは?

●基本情報
大根は、アブラナ科ダイコン属に属している1・2年生草本で、春の七草のひとつ「すずしろ」として日本で古くから親しまれている野菜です。大根の根は淡色野菜、葉は緑黄色野菜に分類されます。原産地は様々な諸説がありますが、地中海沿岸や華南高地、中央アジアなどとされています。
大根という名で呼ばれるようになったのは室町時代以降といわれており、当初は大きな根と書いて「大根(おおね)」と呼ばれていましたが、後に音読みにされ、大根と呼ばれるようになったといわれています。英名のラディッシュ(radish)はラテン語のradix(根)の意に由来します。

●大根の品種
大根は大きくヨーロッパ大根、中国大根、日本大根の3つの品種に分けられます。
中でも日本大根は品種が多く、一年中栽培されています。
大根は主に肥大した根が食用とされますが、大根の葉が食用とされる葉大根と呼ばれる品種もあります。また、かいわれ大根は大根の芽を15cm弱まで伸ばしたもので、品種ではありません。以下はよく知られている品種です。

・青首(あおくび)大根
青首大根は愛知県春日井群宮重の青首宮重(あおくびみやしげ)を中心に育成されました。首の部分が緑色なので「青首」と呼ばれています。別名で宮重大根とも呼ばれています。
青首大根は季節を問わずに収穫できるよう改良された品種で、全国で最も多く栽培されています。青首大根は1970年代頃から主流になり、店頭に出回っている大根のほとんどを占めています。
青首大根は円筒形で根の太さが均一で長細く、重さが1~2kg程あります。辛みが少なく甘みが強いことが特徴で、水分が多いためおでんやふろふき大根、サラダ、漬けもの、切干大根などに幅広く活用されています。一年中出回っていますが、最も美味しい時期は冬だといわれています。

・亀戸(かめいど)大根
亀戸大根は種をまいてから40日程で育ち、春に出荷されている品種です。長さが30cm程度の小さい短根大根です。
亀戸大根は伝統野菜の一つで江戸時代~大正時代まで東京の江東区亀戸で栽培されていましたが、近年は生産が激減しています。現在は葛飾区でごく少量生産されています。
きめ細やかな乳白色をしており、少し辛みがある味が特徴です。亀戸大根は浅漬けや糠味噌にすると美味といわれています。

・みの早生(わせ)大根
みの早生大根は白大根とも呼ばれていますが、現在はほとんど出回っていません。根の長さが40cm前後で先が細くなっていることが特徴です。暑さに強いため栽培しやすく、多汁で辛みのある夏の大根の代表品種です。

・三浦(みうら)大根
三浦大根は明治時代~昭和初期に人気のあった練馬大根を改良した大根です。神奈川県三浦半島で栽培されたことから三浦大根と呼ばれるようになりました。三浦大根は長さ50~60cm程度の中央部がやや太めの大型で、首の部分まで白色をしています。大きいものは4kgにもなるといわれています。
三浦大根はたっぷりの水分を含み、甘みとやや強い辛みを持ちます。煮物やたくあんなどの漬けもの、大根おろしなどに適しているといわれています。

・守口(もりぐち)大根
守口大根の原産地は大阪府守口市ですが、現在は名古屋や岐阜の名産とされています。世界最長の大根といわれており、標準とされる大きさでも太さ2.5cm、長さ120cmにもなります。さらに長いものでは長さが150cmを超えるものもあり、日本一細長い大根として知られています。

・桜島(さくらじま)大根
桜島大根は鹿児島県桜島の火山灰土で育つ世界最大の大根で、約200年もの歴史があるといわれています。かぶのような丸い形をしており、太さ40cm、重さ15~20kg以上にもなる冬の大根のひとつです。甘みが強く肉質が緻密なため味がしみ込みやすく、煮崩れしにくい特徴を持つことから、煮物に適しているといわれています。
大根おろしや漬けもの、切り干し大根などにも向いています。1~2月に旬を迎えます。

・親田(おやだ)辛み大根
親田辛み大根は長野県下伊那郡下條村の特産品です。太さ6cm前後で辛みの中にある甘みが特徴で、おろしそば用の大根として200年前から使用されています。主におろしてそばや焼き魚の薬味として使用されます。

・紅しぐれ大根
紅しぐれ大根は赤大根とも呼ばれています。表面はポリフェノールの一種であるアントシアニンによって赤紫色を帯びています。

・ムラサキ大根
ムラサキ大根は青首大根より小ぶりで辛みがある大根です。煮くずれしにくく、酢をかけるとほんのりとピンク色を呈します。

・聖護院(しょうごいん)大根
聖護院大根はかぶのように丸い形をしており、伝統的な京野菜のひとつとして知られています。重さは1~2kg程度で甘みがあり、肉質はやや緻密で柔らかく煮崩れしにくいため煮物に向いています。千枚漬けにも使用されている品種です。

・黒大根
黒大根の原産地はヨーロッパで、皮の部分は黒く中身が白い珍しいだいこんです。苦みと甘みがあり、生でも加熱しても美味しく食べることができます。

・辛み大根
辛み大根は京都府や群馬県、長野県などで栽培されている、全長10~20cmの小さめの大根です。辛みが強く、すりおろしてそばやうどんなどの薬味に使われています。

・ラディッシュ(ヨーロッパ大根)
ラディッシュは20日程度で収穫が可能なことから二十日大根とも呼ばれています。ヨーロッパ大根の中で、唯一国内でも栽培されている品種です。
皮が赤く中身が白いことが特徴で、重さ10~15g、直径2cm程度の小型で丸い大根です。表面は鮮やかな赤色をしているため、サラダなどの彩りに使われたり、甘酢づけなどに使用されています。

●大根の歴史
大根の歴史は古く、紀元前2700~2200年頃のエジプトではピラミッドを建築する際の食物として二十日大根が支給されていたといわれています。中国でも紀元前500年頃には栽培がおこなわれていました。一方、ヨーロッパ各地への普及は遅くイギリスでは15世紀、フランスでは16世紀頃から栽培されるようになったといわれています。
日本へは中国、朝鮮半島を経て伝播しました。日本最古の書物である「古事記」に記載されており、仁徳天皇の条に「淤富泥(おほね)」として大根が登場する歌があることから、奈良時代には伝わっていたと考えられています。
江戸時代前期には栽培が本格化し、各土地の風土に適した品種となり、現在でも多くの地域的な品種がみられます。

●大根の生産地
大根は全国的に栽培されています。主な生産地は北海道、千葉県、青森県、宮崎県、神奈川県などです。
冬は暖地、夏は寒冷地の出荷量が多く、季節によって生産地が入れ替わります。大根は季節ごとに栽培に適した品種があり、一年中安定して出荷されますが一般的には冬が旬だといわれています。
また、北海道産は5~12月、千葉県産は2~6月・10~12月、青森県産は7~11月・10~12月に旬を迎えます。

●大根の調理方法
大根は部位によって食感や味が異なります。
大根の根は葉に近い上部に甘みがあり、先端の下部に辛みがあります。これは地上に近い上部は寒さで凍らないように糖度を上げるため甘く、先端の下部は土中の虫よけのために辛みがあるといわれています。
これらの性質を利用して料理によって使い分けるとより美味しく食べることができます。大根の根を葉のつけ根から下に向かって三等分します。葉に近い上部には甘みがあるためサラダや大根おろしなど生食に向きます。中央部は少し固めなので、おでんやふろふき大根などじっくり煮込む料理に、先端の下部には辛みがあるため炒め物や味の濃い料理などに使用すると良いといわれています。

<豆知識①>二日酔いを解消する大根おろし
大根おろしは二日酔いの解消に役立つといわれています。特に皮つきの大根をよく洗い、そのままおろすと効果的です。大根の皮部分に多く含まれているビタミンCが、肝臓の働きを助けアルコールの分解を促進します。大根をおろしてから20分後にはビタミンCの8割が減ってしまうため、食べる前におろした方が良いとされています。

<豆知識②>大根の漢方的な働き
大根の葉には様々な薬効があるといわれています。大根の葉を干したものをお風呂に入れて入浴すると、体が温まり神経痛や冷え性などに効果的だといわれています。また、生の葉の絞り汁は切り傷や虫刺されなどによるかゆみを抑えることで知られています。

●大根に含まれている成分と性質
大根の根にはアミラーゼ、オキシターゼ、ビタミンCが多く含まれています。
アミラーゼはでんぷん消化酵素のひとつで、別名ジアスターゼとも呼ばれています。アミラーゼは熱に弱く酸化しやすい性質を持ちます。オキシターゼはたんぱく質や脂質の消化を助ける働きをします。ビタミンCは根の皮部分に多く含まれているといわれています。これらの成分は熱に弱いため、大根を生で食べた方が効果的に摂取することができます。大根おろしにして食べると味も良く手軽です。
大根のピリっとした辛さは辛み成分であるイソチオシアネートによるものです。
大根の葉にはビタミンAビタミンB2、ビタミンC、カルシウム食物繊維などが含まれています。また、大根の葉は殺菌力を持ち、食中毒予防に効果的だといわれています。

大根の効果

大根には消化を助けるアミラーゼやオキシターゼなどが含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●胃腸の機能を高める効果
大根に含まれているアミラーゼには、でんぷんを分解し、胃腸の機能を高める効果があります。アミラーゼが消化を助け、胃酸をコントロールすることで胃もたれや胸やけが予防されます。アミラーゼは市販の消化整腸剤にも使われています。
また、辛み成分であるイソチオシアネートも胃液の分泌を促し、胃の健康を保ちます。さらに豊富に含まれている食物繊維が腸内の老廃物を体外に出す役割を果たしてくれています。【4】

●免疫力を高める効果
大根に含まれているビタミンCには免疫力を高める効果があります。免疫力とは細菌やウイルスなどから身を守る能力のことです。ビタミンCは体内に入ってきた細菌やウイルスなどを攻撃する白血球[※1]の働きを助けるとともに、自らも細菌やウイルスと闘い体内への侵入を防ぎます。
また、大根の葉にはビタミンAが含まれており、皮膚や粘膜を丈夫にする働きをします。ウイルスから体を守ってくれる大切な役割を果たしている皮膚や粘膜が丈夫になると、体の免疫力が高まります。
大根に含まれるビタミンCとビタミンAの相乗効果によって免疫力が高まり、風邪を引きにくく回復力の高い丈夫な体をつくることができます。【3】

●生活習慣病の予防・改善効果
大根の芽を摂取することにより、血糖値やコレステロールを低下させるはたらきが報告されており、糖尿病予防効果や高コレステロール血症予防効果、生活習慣病予防効果が期待されています。【1】【2】

●美肌効果
大根には美肌ビタミンと呼ばれているビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせない成分です。コラーゲンは動物の細胞や組織をつなぎ合わせる接着剤の役割を果たしているたんぱく質の一種で、体内のたんぱく質の30~40%を占めており、体の形成や機能の正常化に不可欠の成分です。コラーゲンが不足すると、肌の水分量が減り老化が進みます。
ビタミンCにはシミの原因となるメラニン色素の生成を防ぐ働きもあるため、若々しい肌を保つ効果があります。

[※1:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]

大根は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○消化を促進したい方
○胃腸の健康を保ちたい方
○免疫力を向上させたい方
○糖尿病を予防したい方
○美肌を目指したい方

大根の研究情報

【1】糖尿病誘発ラットにおいて、大根芽抽出物を2.5%, 5.0% を含む餌を21日間摂取させたところ、血中及び肝臓中の総コレステロールやトリグリセリドやリン脂質や血糖値の上昇が抑制されたことから、大根が糖尿病予防効果や高コレステロール血症予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16557609

【2】糖尿病ラットに、大根芽水抽出物を2.2% を含む餌を3週間摂取させたところ、血糖値が低下し、糖尿病の指標となる糖化ヘモグロビンやフルクトサミン濃度が減少したことから、大根に糖尿病予防効果が期待されています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17874832

【3】ラットに、セレン強化大根を2.4, 5.0, 8.8, 12.5% を含む餌を3週間摂取させたところ、肝臓、腎臓および肺において抗酸化酵素関連物質GST-Yb1 や抗酸化酵素GPx、GST が活性化したことから、大根に免疫力向上効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18403865

【4】大根の葉には、リゾホスファチジン酸が570nmol/g 含まれています。リゾホスファチジン酸は胃腸などの消化管の障害を予防するはたらきをもつため、大根に胃腸保護作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22475031

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参考文献

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・野間佐和子 旬の食材 秋‐冬の野菜 講談社

・本多京子 食の医学館 小学館

・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社

・池上保子 おいしく食べて健康に効く目で見る食材便利ノート 永岡書店

・Taniguchi H, Kobayashi-Hattori K, Tenmyo C, Kamei T, Uda Y, Sugita-Konishi Y, Oishi Y, Takita T. 2006 “Effect of Japanese radish (Raphanus sativus) sprout (Kaiware-daikon) on carbohydrate and lipid metabolisms in normal and streptozotocin-induced diabetic rats.” Phytother Res. 2006 Apr;20(4):274-8.

・Taniguchi H, Muroi R, Kobayashi-Hattori K, Uda Y, Oishi Y, Takita T. 2007 “Differing effects of water-soluble and fat-soluble extracts from Japanese radish (Raphanus sativus) sprouts on carbohydrate and lipid metabolism in normal and streptozotocin-induced diabetic rats.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2007 Jun;53(3):261-6..

・Hama H, Yamanoshita O, Chiba M, Takeda I, Nakajima T. 2008 “Selenium-enriched Japanese radish sprouts influence glutathione peroxidase and glutathione S-transferase in an organ-specific manner in rats.” J Occup Health. 2008;50(2):147-54.

・Tanaka T, Kassai A, Ohmoto M, Morito K, Kashiwada Y, Takaishi Y, Urikura M, Morishige J, Satouchi K, Tokumura A. 2012 “Quantification of phosphatidic acid in foodstuffs using a thin-layer-chromatography-imaging technique.” J Agric Food Chem. 2012 Apr 25;60(16):4156-61.

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