イミダゾールペプチド

imidazolepeptide

イミダゾールペプチドとは、イミダゾール基を持つアミノ酸を含んだ、いくつかのアミノ酸が結合したペプチドで、カルノシンやアンセリンなどの種類が含まれています。人間の筋肉の中でつくり出され、活性酸素を抑える働きがあります。動物の骨格筋に広く分布し、渡り鳥の胸肉などに多く含まれています。

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イミダゾールペプチドとは?

●基本情報
イミダゾールペプチドとは2つ以上のアミノ酸が結合したペプチドで、鳥類や魚類を含めた動物の筋肉に含まれており、動物の脳や心臓、肝臓や腎臓、神経系や骨格筋など広く分布しています。身近な食品では、特に鳥の胸肉・まぐろ・かつおなどの魚肉に多く含まれています。
アラスカ西部の北極圏で繁殖するオオソリハシシギは寒い時期になると、オーストラリアやニュージーランドなどに渡り越冬します。アラスカからニュージーランドまで約11,000kmもの距離を、休憩することなく飛んでいきます。数千kmも不眠不休で飛ぶ渡り鳥が「疲れ知らず」でいられるのは、イミダゾールペプチドの働きによるものです。
イミダゾールペプチドにはアンセリンカルノシン、バレニンなどが含まれます。

●イミダゾールペプチドの歴史
イミダゾールペプチドの発見は意外と古く、1900年までさかのぼります。最初は、哺乳類の骨格筋中で発見されましたが、その後様々な種類の脊椎動物でも発見されました。さらに研究が続けられ、渡り鳥を祖先に持つガチョウの骨格筋中に豊富に含まれていることが発見されました。中でもイミダゾールペプチドの濃度が高かったのは、羽を動かす胸肉の部分です。
その後、研究によって疲労の程度を数値化することに成功したことがきっかけで、イミダゾールペプチドと抗疲労の研究は飛躍的に発展します。
イミダゾールペプチドの抗酸化作用[※1]は、1988年に変異原性試験の開発者であるAmes博士らのグループによって報告されました。カルノシンもアンセリンも人間が摂取すると、血液中で速やかに単独のアミノ酸に分解され、骨格筋中に移行しカルノシンに再合成されると考えられています。その時、抗酸化作用が発揮されます。この抗酸化作用について、人間の疲労試験でその変化がはっきりと確認できたのは、イミダゾールペプチドだけだったと報告されています。

●イミダゾールペプチドの働き
イミダゾールペプチドの最大の特徴は、疲労を溜まりにくくすることです。筋肉中の疲労物質である乳酸[※2]の分解を促進し、疲労感を軽減します。また、体内の老廃物である尿酸の量を調節して、過剰な尿酸を排泄してくれる働きがあるため、尿酸値の抑制に効果があります。
1999年に厚生省(現厚生労働省)疲労調査研究班が、実施した疫学調査によると、日本人の3人に1人は、6カ月以上続く慢性疲労に悩んでいることが報告されています。
疲労は運動や労働などで体に負荷がかかった時や、デスクワークなどで精神的なリスクやプレッシャーがかかった時に見られます。疲労が高まると、作業効率も低下します。その原因の第一に考えられているのが活性酸素です。特定の筋肉や神経細胞に負荷がかかると活性酸素が大量に発生します。
活性酸素は細胞の中の遺伝子であるDNAを傷つけ、細胞の異常や細胞死を起こします。それらのいらなくなった細胞や古くなった細胞は排除され、代わりに新しい細胞がつくり出されていきます。しかし、年齢を重ねるごとにその働きが衰えていきます。これが老化現象と呼ばれるものです。その結果、体の中に老廃物が増加・蓄積され、身体機能は低下し、様々な病気の要因をつくり出してしまいます。
イミダゾールペプチドには抗酸化作用があり、疲労の原因である活性酸素を抑える働きが期待されています。

<豆知識>日常で感じる疲れ〜心と体は離れない~
疲れには精神的疲労と肉体的疲労があります。精神的疲労は、「イライラする」「やる気が出ない」「不安を感じる」などです。肉体的疲労は、「肩こり」「腰痛」「頭痛」「日中の眠気」などが挙げられます。しかし、人間の精神面と肉体面は切り離しては考えられません。昔から「病は気から」といいますが、精神的なストレスが原因で頭痛や肩こりが発症することがあります。肉体疲労も精神疲労も実はどちらも同じ活性酸素に傷つけられた細胞が脳にシグナルを送っているのです。体が自覚しなくても、精神面から脳から体へとサインは送られ、体の機能は低下し、病の発症の要因をつくってしまいます。過労死も大きな社会問題となっています。睡眠をたっぷりと取り、できるだけストレスを溜めないことが大切です。

[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※2:乳酸とは、乳製品に多く含まれる、糖の一種のことです。]

イミダゾールペプチドの効果

イミダゾールペプチドは疲れを抑えるために必要不可欠な成分といえます。その強力な抗酸化効果に注目が集まっています。肉体疲労の場合は筋肉、精神疲労の場合は脳神経細胞で酸化ストレス状態が高い状態になっていると考えられています。活性酸素が過剰になり、生体を構成している核酸やたんぱく質、脂質などが酸化し、細胞が傷つけられ異変が起きます。
イミダゾールペプチドは、疲労の原因のひとつである活性酸素を除去し、酸化ストレス状態を抑える働きを持ちます。

●疲労回復効果
イミダゾールペプチドは、筋肉の中でつくり出される物質で、活性酸素を抑える働きがあります。最近の研究で、体内の活性酸素の発生を抑えれば、疲れにくくなるという報告がありました。慢性疲労症候群を予防・改善する効果、疲労回復効果に優れています。また、体内の疲労の原因となる乳酸の分解にも働きかけるとされています。【2】【7】

●運動能力を向上させる効果
イミダゾールペプチドは長時間運動する際には欠かせない成分で、持久力や運動能力の向上効果があります。日頃から摂取しておくことが大切です。【8】【9】

●老化を防ぐ効果
イミダゾールペプチドには、活性酸素を抑える働きがあるため、疲れにくくするとともに、体や肌を若々しく保つ効果もあります。また、イミダゾールペプチドのひとつであるカルノシンには、体内にAGEs(糖化最終産物)がつくられた時に、その蓄積を抑える効果があるとされ、こちらも老化の防止に有効であると考えられています。【1】【3】【4】【10】

●生活習慣病を予防・改善する効果
イミダゾールペプチドに含まれるアンセリンが体内の老廃物である尿酸の量を調節して、過剰な尿酸を排泄してくれる働きがあります。尿酸の生成を抑え、つくられすぎてしまった尿酸を体外へ排泄するのを促進し、尿酸値を下げるため、痛風を予防改善する効果があります。
尿酸値が高いほど痛風になりやすいと同時に、その他にも、腎不全や尿路結石を引き起こしたり、動脈硬化、心筋梗塞、高血圧など様々な生活習慣病との合併症にも注意が必要です。メタボリックシンドロームの発症リスクも高めると報告されています。尿酸値がコントロールできるため、多くの生活習慣病の予防効果もあるのです。活性酸素を抑える働きがあるため、老化の原因となる体のサビから守ってくれます。細胞を正常に再生させ、肝機能をはじめ、体の機能を高めたり、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果があります。【5】【6】

食事やサプリメントで摂取できます

イミダゾールペプチドを含む食品

○鶏胸肉
○魚の赤身

こんな方におすすめ

○疲労を回復したい方
○運動能力を向上したい方
○いつまでも若々しくいたい方
○生活習慣病を予防したい方

イミダゾールペプチドの研究情報

【1】イミダゾールペプチド(カルノシン)は筋肉や脳に多く存在しています。高い抗酸化力を持ち、筋肉や脳で活性酸素を除去するはたらきや、核酸やDNAに対する障害を抑制するはたらきを持つことから、イミダゾールペプチドは抗酸化作用と老化防止効果の役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3362866

【2】老化促進マウスにおいて、クレアチンを摂取させ、10, 25, 60週齢の骨格筋中のイミダゾールペプチド(カルノシンとアンセリン)の量を比較したところ、25週齢において、筋肉中のイミダゾールペプチド(カルノシンとアンセリン)の濃度が増加しました。また筋肉疲労や筋肉回復力においても改善が見られました。しかし60週齢においては認められませんでした。運動機能に対するクレアチン補給は有益であり、イミダゾールペプチドの増加とそれに伴う筋肉疲労の軽減と回復力の向上が関連していると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18593282

【3】カルノシンは、長寿細胞に多く見られ、特にヒト繊維芽細胞において老化を防止するはたらきが確認されています。カルノシンは生体内で老化の原因となるタンパク質と結合することで、老化タンパク質の活性化を抑制するはたらきをもち、細胞やタンパク質の老化を防ぐことから、カルノシンの抗老化効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10892341

【4】ラットに、カルノシンを1日あたり250mg/kg を1ヶ月間摂取させたところ、老化による酸化物質MDAの増加が抑制され、赤血球中の抗酸化酵素GSHの低下が抑制されたことから、カルノシンには老化予防と抗酸化力維持効果が確認できました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20885014

【5】Ⅱ型糖尿病マウスにおいて、カルノシンを1日あたり100mg/kg を投与すると、創傷の回復が促進されました。またヒトの皮膚細胞(ヒト真皮繊維芽細胞)にカルノシンを投与すると、高血糖状態での細胞の生存率が向上したことから、カルノシンには抗糖尿病効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22451275

【6】糖尿病ラットに、カルノシンを1日あたり1g/kg を6ヶ月間摂取させたところ、網膜における血管障害が抑制されました。網膜における管障害因子Ang-2の正常化とグリア細胞における熱反応タンパク質Hsp27にはたらきかけることにより、視細胞の障害が抑制されたことから、カルノシンに糖尿病網膜症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21865855

【7】β-アラニンを摂取すると、筋肉中のカルノシンが増加することが確認されており、その抗酸化力によって持久力増加や疲労軽減に役立つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20479615

【8】カルノシンの原料であるβ-アラニンを摂取すると、筋肉中の乳酸を分解する酵素LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の活性が維持されたことから、β-アラニンを摂取することで、筋肉中のカルノシンが増加し、疲労物質乳酸が分解されることで、疲労感軽減に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15968825

【9】カルノシンは抗酸化作用を持ち、活性酸素から体を守るはたらきを持つが、近年の研究により、糖化を防ぐ作用が確認されました。糖化は酸化とともに老化を促進させる一因であることから、カルノシンには抗酸化作用、抗糖化作用による老化防止効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12002523

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参考文献

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

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