水素とは
●基本情報
水素とは、原子番号1番の元素であり、無色・無味・無臭の気体です。近年の研究により、水素は抗酸化作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用を持つことが明らかになっています。そのほか、免疫力を高めたり、心筋梗塞や脳梗塞などの後遺症を軽くしたりする効果があることもわかってきました。また、水素が入った化粧品も販売されているほど、肌への美容効果が期待できる成分です。
このように、水素は多くの健康効果を持つことが分かっています。中でも抗酸化作用は特に注目度が高く、活発に研究されています。抗酸化作用とは、活性酸素を取り除いたり、活性酸素の働きを弱めたりする作用のことです。体内の活性酸素を除去することで、アンチエイジングや脳機能の向上、生活習慣病の予防が期待できます。
また、認知症やガン、糖尿病など、活性酸素が原因のひとつだと考えられている疾患の改善にも水素の有効性が期待されています。
近年では臨床試験や実際の医療現場でも活用され始めており、医学的にも安全で有効であると認められてきている成分です。
●水素水の歴史
水素の健康効果が注目され始めたきっかけは、2007年にNature Medicineで発表された日本医科大・太田成男教授らの研究によるものです。この研究では、水素は毒性の強い悪玉活性酸素のみを除去し、体の調子を整える善玉活性酸素には影響を与えないことを報告しています。
それ以降、国内外問わず水素の健康効果に関する研究が数多く進められています。すでに、医療現場でもがんの進行抑制や心停止後の後遺症軽減の目的で試験が実施されたり、家庭で使える水素発生材がでまわるようになりました。
また、水素はダイエットや美容の分野でも注目を浴びています。例えば、メラニン・シミ・セルライトの抑制効果や紫外線からの保護効果、皮膚や骨などを構成するコラーゲンを再構築する効果などが明らかになっており、美容業界でも活用が進められています。
●水素の取り入れ方
〇水素ガスの吸引
〇水素水の飲用
〇水素溶液の点眼
〇水素溶液の点滴
〇水素水への入浴
水素は、さまざまな方法で取り入れることができます。例えば、病院では先進医療として、水素ガスの吸引を行っています。また、水素発生装置や水素水、水素発生材などを活用すれば、家庭でも簡単に水素を取り入れることができます。
水素発生装置は家庭用でも10万円を超える高価な商品ですが、トップアスリートが疲労回復の目的で使用するほど有効性が高いと考えられています。
一方、水素水や水素発生材などを使用すると医療機関に行かずとも自宅で比較的安価に水素を取り入れることができます。水素水は飲むだけ、水素発生材は発生した水素を吸入するなどして取り入れられるため、手軽に効果を実感したい方に最適です。
水素の効果
●活性酸素を除去する効果
水素には、老化や疾患を引き起こす悪玉活性酸素を取り除く働きがあります。悪玉活性酸素を除去すると、抗炎症作用や抗アレルギー作用がはたらくほか、エネルギー代謝が高まると考えられています。
また、心筋梗塞や動脈硬化、パーキンソン病、リウマチ、脳梗塞などの疾患や、学習・記憶力の低下の予防にも有効です。【1】【6】【7】
●美肌効果
水素には優れた抗酸化作用があります。紫外線やストレスなどで増えた活性酸素は細胞を傷つけ、しわやシミの原因になります。
皮膚モデルを使用した研究では、水素水を肌に塗ることで紫外線によるメラニン生成を抑制してくれる効果が報告されました。ほかにも、コラーゲンの生成を促進する効果や肌の老化を防止する効果も期待できます。【4】【8】
●記憶力や学習能力を高める効果
水素の抗酸化作用により脳の活性酸素が除去されることで、記憶力や学習能力の向上が期待できます。
マウスを使った実験では、水素水を摂取したマウスの脳内で水素が抗酸化剤として働くことで、酸化ストレスの軽減につながったと報告されています。また、人に対する実験では、水素ガス吸引による酸化ストレスの減少が、認知機能の改善につながると報告されています。【2】【9】
●血流を改善する効果
水素には、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを減らす働きがあります。LDLコレステロールが血管壁にたまると、動脈硬化を引き起こしやすくなります。結果的に、心筋梗塞や脳梗塞などの疾患リスクを高めるため、過剰に増えた場合には注意が必要です。
水素を摂ることでLDLコレステロールを減らすことができれば、動脈硬化を予防できます。また、水素には高血糖を改善する効果があることも分かっているため、血管内のつまりを抑える効果も期待できます。【1】【3】【7】
●代謝を高める効果
水素には、酸化ストレスを軽減してミトコンドリアの活動を活性化させ、代謝を高める働きがあります。代謝が高まればエネルギーの消費量が増加するため、脂肪燃焼や体重管理に役立ちます。綺麗な身体づくりに役立つため、ダイエットにも活用可能です。
水素が代謝を高める効果は、人に対する実験でも明らかになっています。水素水を飲むことで全身のエネルギー消費量を増やし、悪玉コレステロールを減らす可能性があることがわかっています。【10】【11】
●運動能力を高める効果
水素の摂取は、筋肉のパフォーマンス向上や乳酸反応の軽減につながり、運動能力を高められます。運動時の水分補給を水素水に変えることで、筋肉機能が改善してパフォーマンスが向上することがわかっています。
また、水素は運動後の疲労回復にも有効です。水素は酸化によるダメージを軽減し、筋肉痛を緩和する効果があることがわかっています。【5】【12】
●ストレスを抑える効果
水素には、不安症状やストレスを軽減する作用があるといわれています。日本で行われた研究では、水素水を摂ることによる気分や不安レベルの改善が報告されています。
水素がストレスを抑えられるのは、抗酸化作用により酸化ストレスを低減できるためです。うつ病や不安障害などの精神疾患は、酸化ストレスの増加と関連していることがわかってきています。水素には抗酸化作用により酸化ストレスを低減する働きがあるため、不安症状やストレスを軽減できると考えられています。
水素はこんな方におすすめ
○ストレスを軽減したい方
○体全体の疲れを取りたい方
○老化を防ぎたい方
○肌の調子を整えたい方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○免疫力を向上させたい方
○腸内環境を整えたい方
水素の研究情報
【1】生活習慣病予備群20名が1日1.5Lの水素水を8週間摂取したところ、酸化ストレスと総コレステロールが低下し、抗酸化酵素SODとHDLコレステロールが増加しました。これより、水素水は高い抗酸化力を持ち、動脈硬化予防効果をもつと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20216947
【2】抗酸化作用を持つビタミンCを合成できないマウスに水素水を33日間摂取させたところ、脳内の酸化ストレスが軽減されました。このことから、水素は抗酸化作用をもつことが明らかになりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18706888
【3】ラットに水素水を6週間摂取させたところ、ラット平滑筋における細胞遊走および血管内膜肥厚の緩和が見られました。この結果から、水素水の飲用には抗炎症作用ならびに動脈硬化の予防効果があると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22287575
【4】日本人6名が水素水に3か月間入浴したところ、首のうしろのしわが改善されました。線維芽細胞を用いた試験では、水素水による活性化が見られたことから、水素水は美肌作用をもつと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22070900
【5】男性サッカー選手10名が水素水を摂取したのちに運動を行ったところ、血中乳酸値の上昇ならびに筋肉運動機能の低下が抑制されました。この結果から、水素水の飲用には、運動疲労の軽減効果があると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22520831
【6】マウスに水素水を8週間摂取させたところ、脂肪肝にともなう炎症ならびに肝細胞がんの状態が緩和されました。これより、水素水は肝臓保護作用をもつと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22505328
【7】Ⅱ型糖尿病患者が1日900mLの水素水を8週間飲用したところ、LDLコレステロール・遊離脂肪酸・食後血糖値・細胞中SODの値が改善しました。これより、水素水は糖尿病予防や生活習慣病予防効果をもつと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19083400
【8】日本人の男女4人が6ヵ月間水素水に入浴したところ、肌のシミが小さくなり、内臓脂肪を減少しました。これより、水素水への入浴は、脂肪燃焼や肌の健康維持に効果があると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31249254/
【9】男女54人を対象に、4週間の水素吸引が認知機能に与える影響を測定したところ、水素を吸引することで認知機能が改善されました。これより、水素吸引はアルツハイマー病や認知機能などの改善効果が期待できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37371971/
【10】2022年10月4日までの研究結果を基にしたメタ分析により、水素水の飲用は水素を豊富に含む水を飲むと、血液中の脂質の状態を改善することが明らかになりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37259294/
【11】マウスの飲用水を水素水に変更したところ、肝臓の酸化ストレスが減少して脂肪肝が緩和され、体重が減少しました。これより、水素水の飲用は肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームのリスクを低減すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21293445/
【12】男性12名を対象に、水素水を飲んだ後の運動効果を調べたところ、運動のパフォーマンスが向上したほか、乳酸反応や筋肉痛が軽減しました。これより、水素水の飲用は運動能力の向上や疲労回復などの効果があると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33555824/
【13】26人の男女が水素水を4週間飲んだところ、交感神経活動やメンタルヘルスが改善しました。これより、水素水の飲用が気分・自律神経の改善や不安の軽減に役立つことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29497485/
【14】ラットに水素ガスを吸引させたところ、悪玉活性酸素のみを除去して脳損傷を著しく抑制しました。この実験により、水素は善玉活性酸素には影響を与えず、毒性の高い悪玉活性酸素のみを除去することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17486089/
【15】ラットに水素ガスを吸引させたところ、脳脊髄液中の乳酸レベルが低下しました。これにより水素の吸引は、くも膜下出血後の乳酸アシドーシスの抑制に有効だと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37141668/
参考文献
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