ハスカップ

blue-berried honeysuckle
黒実鶯神楽(クロミノウグイスカグラ)

ハスカップは北海道の特産品で、古くからアイヌ民族が「不老長寿の実」として珍重していた果実です。ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、鉄、食物繊維などが多く含まれます。また、ハスカップは強い抗酸化力を持つことで知られるアントシアニンを多く含むことから、視機能の改善に有効として注目されています。

ハスカップとは

●基本情報
ハスカップはスイカズラ科スイカズラ属の落葉低木植物[※1]で、寒さに強く、成長すると1~2mになります。ハスカップの原産はシベリアのバイカル湖周辺で、中国北部にも古くから自生しています。日本では多くが北海道に群生していますが、本州中部の高山地帯にも多少自生しています。ハスカップにはスイベルやピポットゼナなどの種類があり、楕円形の2~3cmの小さな青紫色の実をつけますが、品種によっては赤色や黄色の実をつけるものもあります。甘酸っぱく、苦みのある独特の風味が特徴で、酸味が強いためジュースやジャムなどに多く利用されます。

●ハスカップの歴史
ハスカップはシベリアのバイカル湖周辺が原産で、日本では古くからアイヌ民族が「不老長寿の妙薬」、「幻の実」としてこの果実を珍重し、冬の間の保存食として利用していました。また、ハスカップは「体を軽くし、不老不死に役立つ果実」として、特に心臓の弱い人や、貧血、冷え性の人に良いとされていました。
ハスカップという名前はアイヌ語で「枝の上にたくさんなるもの」を意味するハシカップに由来しています。和名の「黒実鶯神楽(クロミノウグイスカグラ)」は、ウグイスが鳴く頃に神楽の舞[※2]に似た花が咲き、黒い実をつけることから名付けられています。
昭和61年にはハスカップが北海道苫小牧市の市の花として制定されており、地元の特産品として親しまれています。

●ハスカップの生産地
ハスカップの日本の主な生産地は、北海道の美唄市と名寄市です。薄く折り重なるような特徴のある樹皮を持ち、5月下旬~6月にかけて枝先に白や淡い黄色の小さなラッパ状の花をつけます。ハスカップの収穫時期は6月下旬~7月中旬までの3週間程度と短く、収穫量も少ないため、大変貴重な果実として重宝されています。

●ハスカップに含まれる成分と性質
ハスカップには鉄やカルシウムが豊富に含まれ、その含有量は果物の中でもトップクラスです。ビタミンでは抗酸化力[※3]のあるビタミンCやビタミンEが豊富で、中でもハスカップにはビタミンE作用の強いα-トコフェロールが多く含まれまれます。また、ハスカップの果実に含まれるアントシアニン色素も抗酸化力を持ち、視機能を改善する効果があります。果汁にはクエン酸やリンゴ酸が豊富で、強い酸性を示します。

[※1:落葉低木植物とは、定期的に葉を完全に落とし、成長しても樹高が約3m以下の植物のことです。]
[※2:神楽の舞とは、皇居および皇室との関連が深い神社で神をまつるために奏する歌舞のことです。]
[※3:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]

ハスカップの効果

●視機能を改善する効果
ハスカップには、ポリフェノールの一種であるアントシアニン色素が含まれ、その中でも抗酸化力の高いシアニジン系のアントシアニンが豊富です。シアニジン系のアントシアニンは視機能の改善に効果を発揮します。目の網膜にはロドプシンといわれるたんぱく質があり、光を受けると分解されます。分解の際に生じる電気信号が脳に伝わることで、「ものが見える」と認識します。分解したロドプシンは再び光の情報得るために再合成を繰り返しますが、長時間目を酷使することで再合成が追い付かず、目が疲れたと感じます。ハスカップに含まれるアントシアニンには、このロドプシンの再合成を促進する働きがあります。【1】【4】【5】

●貧血を予防する効果
ハスカップには赤血球のヘモグロビンの構成成分となる鉄が豊富に含まれます。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を担っており、酸素が不足すると免疫力が低下し、貧血を起こします。このため、鉄は貧血予防に不可欠な栄養素です。また、ハスカップには鉄の吸収を助けるビタミンCやクエン酸が含まれるため、効率的に鉄を吸収することができます。

●骨や歯を丈夫にする効果
ハスカップには他の果物に比べて、豊富にカルシウムが含まれます。カルシウムは人の体内に最も多く存在するミネラルで、そのほとんどが骨や歯に存在しています。骨や歯の主要な構成成分であるカルシウムは、丈夫な体づくりに欠かせない成分ですが、どの年代でも不足しがちな成分でもあります。骨の中のカルシウムが不足すると、骨がスポンジのようにスカスカになることで起こる骨粗しょう症や、骨軟化症を引き起こします。また、成長期にカルシウムが不足すると、骨や歯の形成障害を起こします。【2】

●美肌効果
ビタミンEは抗酸化力を持ち、血管や肌・細胞などの酸化を防ぐ働きから「若返りのビタミン」と呼ばれています。ビタミンEにはいくつかの種類がありますが、ハスカップには、特に強い抗酸化力を持つα-トコフェロールが含まれています。ビタミンEの血流改善効果により全身に血液が供給され、細胞の新陳代謝[※4]が活発になることで、肌のカサカサ感を改善され、ハリが出るといった効果が期待できます。また、ハスカップに含まれるビタミンCやビタミンEの持つ抗酸化力には、紫外線によるダメージから肌を守る働きがあります。さらに、ビタミンCにはメラニン色素の沈着を防ぐ働きがあるため、シミやそばかすを予防することから、ハスカップは美肌に効果を発揮します。【3】

[※4:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることを指します。]

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○目の健康を維持したい方
○貧血でお悩みの方
○骨や歯を強くしたい方
○肌のハリや弾力を保ちたい方
○シミ、そばかすが気になる方

ハスカップの研究情報

【1】 ハスカップを分析すると、アントシアニンや他のポリフェノール類など様々な成体に有用な成分が含ま
れていることが分かりました。ハスカップの主なアントシニンは、シアニジン-3-グルコシドでした。また、抗酸化活性を計測したところ、非常に優れており、北欧のビルベリーエキスとほぼ近いことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22264130

【2】歯肉線維組織を用いて、ハスカップ抽出物を投与したところ、LPSによる酸化ストレスや炎症関連物質の増加が緩和されたことから、ハスカップは歯周病予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20332009

【3】ヒト皮膚細胞(HaCaTケラチノサイト)を対象に、ハスカップ抽出物ならびにビルベリー抽出物を投与すると、UVBによる光毒性およびDNA傷害が緩和されたことから、ハスカップは皮膚保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19747801

【4】ハスカップは有機酸およびアントシアニン、プロアントシアニジン、フラボノイドなどのポリフェノールが含まれています。ハスカップは高い機能性を持つと考えられており、糖尿病や循環器疾患、抗がん作用、抗菌作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18345248

【5】ハスカップベリーは、シアニジン3グルコシド、シアニジン3ルチノシドを含んでいることが分かりました。そのため、ガン、糖尿病、腫瘍、心血管、神経変性病によいかもしれません。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22269864

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参考文献

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・中村丁次 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版

・食材図典 小学館

・Kusznierewicz B, Piekarska A, Mrugalska B, Konieczka P, Namieśnik J, Bartoszek A. (2012) “Phenolic composition and antioxidant properties of Polish blue-berried honeysuckle genotypes by HPLC-DAD-MS, HPLC postcolumn derivatization with ABTS or FC, and TLC with DPPH visualization.” J Agric Food Chem. 2012 Feb 22;60(7):1755-63. doi: 10.1021/jf2039839. Epub 2012 Feb 8.

・Zdarilová A, Rajnochová Svobodová A, Chytilová K, Simánek V, Ulrichová J. (2010) “Polyphenolic fraction of Lonicera caerulea L. fruits reduces oxidative stress and inflammatory markers induced by lipopolysaccharide in gingival fibroblasts.” Food Chem Toxicol. 2010 Jun;48(6):1555-61.

・Svobodová A, Zdarilová A, Vostálová J. (2010) “Lonicera caerulea and Vaccinium myrtillus fruit polyphenols protect HaCaT keratinocytes against UVB-induced phototoxic stress and DNA damage.” J Dermatol Sci. 2009 Dec;56(3):196-204.

・Svarcova I, Heinrich J, Valentova K. (2007) “Berry fruits as a source of biologically active compounds: the case of Lonicera caerulea.” Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub. 2007 Dec;151(2):163-74.

・Jurikova T, Rop O, Mlcek J, Sochor J, Balla S, Szekeres L, Hegedusova A, Hubalek J, Adam V, Kizek R. (2011) “Phenolic profile of edible honeysuckle berries (genus lonicera) and their biological effects.” Molecules. 2011 Dec 22;17(1):61-79.

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