ガラナ

guaraná

ブラジルが原産の植物であるガラナは、種子を加工して頭痛の治療薬や鎮痛剤として使用されていました。
ガラナには、コーヒーの約3倍のカフェインが含まれており、近年では滋養強壮効果を期待し飲料やガムなどに加工されて販売されています。

ガラナとは

●基本情報
ガラナは、ムクロジ科ガラナ属のつる植物で、南米のブラジル・アマゾン川流域が原産地の植物です。種子の部分を薬用として使用します。
花は7月~8月に咲き、赤い果実が熟します。直径が8mmほどの大きさの種子は球形で表面に黒い光沢があります。この種子にはコーヒーの約3倍のカフェインやタンニンが含まれています。これらをアルコール抽出したエキスには強壮効果、疲労回復効果、鎮痛、解熱などがあるとされ、サプリメントなどにも多く利用されています。
現在でも、ブラジルで栽培されているものが多くあります。

●ガラナの利用法
ガラナという名前は、南米に住むガラニス族が由来となっています。ガラニス族は、乾燥させたガラナの種子を食品や飲料、薬の原材料として使用してきました。
ガラニス族は、ガラナの果実を採って積み上げて発酵させ,種子を取り出し,粉にしてカカオまたはキャッサバデンプンとともに水で練り、燻煙乾燥して塊にします。これを必要に応じてすりおろして湯に溶かし、砂糖で甘みをつけ飲料として利用しています。
ガラナは興奮剤、鎮痛剤や下痢、頭痛、片頭痛の治療に伝統的に使われています。
日本では、ガラナを配合したチョコレートが強壮剤の一種として販売されていますが、一般的には炭酸飲料であるガラナ飲料が知られています。また近年では、ガムやタブレットに配合されたものが販売されています。

●ガラナの歴史
ガラナの化学分析を最初に行ったのは、セオドア・フォン・マルティウスというドイツの植物学者です。ガラナの種子から白い水晶のような苦い物質を取り出すことに成功し、これをガラニンと命名しました。ガラニンと呼ばれていた成分は、後にカフェインと呼ばれるようになりました。

●ガラナに含まれる成分と性質
ガラナには、サポニン、タンニン、油脂、及びテオブロミンやテオフィリン、カフェインといったアルカロイド類が含まれています。
また、ガラナにはカフェインと同族のキサンチン・テトラメチルキサンチン・テオブロミン・テオフィリンなどが含まれており、特性もカフェインと類似していますが、その作用の仕方はカフェインよりも穏やかで持続的です。

ガラナの効果

●むくみを予防・改善する効果
ガラナには、カフェインが豊富に含まれています。
ガラニンの中でもキサンチン誘導体には、利尿作用があるとされています。
キサンチン誘導体には、腎臓の尿細管において水の再吸収を抑える働きと腎臓の血流量を増加されせることによって余分な水分を排出させるといわれています。

●運動能力を高める効果
ガラナに含まれるカフェインには、脳を刺激して覚醒させ集中力を高める働きがあるといわれています。
脳にはアデノシンという神経伝達物質があります。脳細胞はこのアデノシンを受け取ることにより興奮を抑制します。
アデノシンを受け取る受容体はカフェインも受け取ることができます。
この受容体がカフェインを受け取ると、アデノシンを受け取れないため興奮を抑制する効果は発揮できず、脳はずっと興奮したままの状態が続きます。脳の興奮が続くことにより交感神経が興奮し、副腎髄質よりアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンは心臓の収縮を活発にすることにより、筋肉や脳などに多量の血液を循環させる働きがあります。アドレナリンの働きにより、集中力が増すことも知られています。
また、呼吸を速くする働きもあり、酸素を多く取り入れ、体を瞬時に激しい運動ができる状態にするといわれています。
これらの働きにより、ガラナを摂取することは一時的に運動能力を高める効果があるといえます。

●疲労回復効果
長時間同じ姿勢でいることや、筋肉の衰えなどが原因で、血液の流れは悪くなります。血液の循環が悪いと、酸素やエネルギーが体中にうまく行き渡らず、だるさ・疲れを感じやすくなるといわれています。
ガラナに含まれるガラニン・カフェインは、血液を送り出す心臓のポンプの威力を上昇させて血流量を増やします。そのため、体のすみずみまで酸素やエネルギーが行き渡り疲労回復効果が期待できます。【1】

●アルツハイマー病を予防する効果
物忘れがひどくなるアルツハイマー病は、脳にアミロイドベータというたんぱく質が異常に蓄積して、神経細胞が死んでしまうことが原因といわれています。
その効果を実証するために、ある実験が行われました。生まれつきアミロイドベータが蓄積しやすいマウスに、カフェインを水に溶かして4~5週間与えました。
その結果、カフェインを与えないマウスに比べ、カフェインを与えたマウスでは記憶力の低下が改善しました。記憶にかかわる脳の海馬や大脳皮質では、アミロイドベータが4~5割減少しました。また、この実験によりカフェインがアミロイドベータをつくる酵素の働きを抑えることが証明されました。
この働きにより、カフェインにはアルツハイマー病を予防する効果があるといわれています。
ガラナには、カフェインがコーヒーの約3倍含まれています。
また、ガラナにはカテキンが含まれています。
カテキンはアミロイドベータによる神経細胞の死滅を防ぐ働きがあることが証明されています。
このため、ガラナを日常的に摂取することによりアルツハイマー病を予防する働きがあるといわれています。【3】

ガラナは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○手足のむくみでお悩みの方
○運動能力を向上したい方
○疲労を回復したい方
○物忘れが多い方

ガラナの研究情報

【1】 放射線治療による倦怠感のある乳がん患者75名を対象に、2重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ比較試験において、ガラナ50 mg×2回/日を21日間摂取させたところ、倦怠感や疲労感の自己評価 (FACIT-F、FACT-ES、BFI) が向上したことから、ガラナは倦怠感改善に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21612429

【2】ガラナと他のハーブ (マテとダミアナ、またはガラナとエフェドラ、17種類のビタミン、ミネラル) を含む製品を飲用したところ、体重が減少したことから、ガラナは抗肥満効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11319627

【3】ラットを対象に、0.1%ガラナ水抽出物、2%ガラナ水抽出物含有餌を摂取させたところ、海馬のコリンアセチルトランスフェラーゼが活性化され、学習能力が改善したことから、ガラナは認知機能および学習機能改善効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000037094

参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・原山建朗 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・独立行政法人国立栄養研究所 “「健康食品」の安全性・有効性情報 「健康食品」の素材情報データベース”

・de Oliveira Campos MP, Riechelmann R, Martins LC, Hassan BJ, Casa FB, Del Giglio A (2011) “Guarana (Paullinia cupana) improves fatigue in breast cancer patients undergoing systemic chemotherapy.” J Altern Complement Med. 2011 Jun;17(6):505-12. doi: 10.1089/acm.2010.0571. Epub 2011 May 25.

・Boozer CN, Nasser JA, Heymsfield SB, Wang V, Chen G, Solomon JL. (2001) “An herbal supplement containing Ma Huang-Guarana for weight loss: a randomized, double-blind trial.” Int J Obes Relat Metab Disord. 2001 Mar;25(3):316-24.

・高木 康之 (2002) “ガラナ水抽出物の水迷路学習能” 鈴鹿医療科学大学紀要 9, 260-261, 2002-08-30

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