ごぼう

edible burdock bardane Klette 
牛蒡 
Arctium lappa L.

ごぼうは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類の食物繊維を豊富に含んでいる野菜です。食物繊維は「第六の栄養素」といわれており、生活習慣病などの予防が期待できます。
堀川ごぼうは、京都の伝統野菜として有名です。

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ごぼうとは

●基本情報
ごぼうはキク科ゴボウ属に属し、畑で栽培される多年草[※1]です。
日本では根菜として栽培され、長く肥大した根の部分を食用とします。
ごぼうを食用としている国は韓国と日本のみであるといわれており、中国や原産地のユーラシア大陸では薬用として使われています。

●ごぼうの歴史
ごぼうは縄文時代に中国から日本に伝わったといわれています。日本現存最古の薬物辞典である平安時代の「本草和名(ほんぞうわみょう)」に、キタキス、ウマフブキの名で記録されています。
中国では、解毒、解熱、鎮咳などの治療にごぼうが使われていたため、日本でもしばらくは中国と同じく薬用としてのみ用いられていました。しかし宮廷料理の献立にごぼうが用いられたとの記載があることから、平安時代後期には食用とされていたようです。
ごぼうは日本人にとって非常に身近な根菜ですが、日本に自生種はなく、中国から渡来したごぼうが広まったと考えられています。

●ごぼうの品種
ごぼうは、根の長さによって長根種と短根種に分類されます。長根種は根の長さが70~100cm程で、土がやわらかい関東地方で多く栽培されています。一般的に多く出回っているのは長根種の代表的な品種である滝野川ごぼうです。東京都北区滝野川地域で多く栽培されていたことから「滝野川ごぼう」と名づけられたといわれています。
一方、短根種は根の長さが30~50cm程で、土が硬い西日本で栽培されていることが多い種類です。短根種には、堀川ごぼう、大浦ごぼう、新ごぼうなどがあります。

・堀川ごぼう
堀川ごぼうは京都の伝統野菜のひとつであり、長さ50cm前後、直径6~8cmの短くて太いごぼうです。栽培途中に横向きに植え替えるという独特の方法によって、太いごぼうに育ちます。堀川ごぼうは、先端がタコの足のように枝分かれしており、中心部に空洞があることが特徴です。

・大浦ごぼう
大浦ごぼうは千葉県匝瑳市大浦地区の特産品であり、長さ60cm程度、直径10cm前後のごぼうです。日本では、江戸時代以前から栽培されています。

・新ごぼう
新ごぼうは、主に九州地方で栽培されている長さ30cm程の色が白く、細いごぼうです。4月~6月頃に旬を迎えます。

葉が食用とされる葉ごぼうや西洋ごぼうとも呼ばれているヨーロッパ原産のサルシフィなどの品種もあります。

●ごぼうの生産地
ごぼうの主な生産地は、青森県、埼玉県、茨城県、北海道で、11月~1月に旬を迎えます。新ごぼうは、6月~7月が美味しい時期だといわれています。

●ごぼうの見分け方
ごぼうは握った時に弾力があり、ずっしりとしているものが良品です。表面にひび割れや黒ずみがあるものや先端がしおれているものは避け、太さがある程度均一で、先端に向かって細くなっているごぼうを選びます。堀川ごぼうや大浦ごぼうを除き、軽すぎるごぼうや太すぎるごぼうは鮮度が落ちて中にス(空洞)が入っている場合があります。また、土つきでひげ根が少ないものの方が風味や香りが良く、新鮮なため日持ちがします。

●ごぼうの調理方法
ごぼうは煮物や揚げ物、炒め物などに幅広く使用されています。
皮の部分にはごぼうの風味や香りが多く含まれているため、ごぼうを調理する場合は皮はむかず、タワシや包丁の背を使って表面の泥を軽くこそぐ程度にします。
強くこそいで、ごぼう独特のうまみをとりすぎないようにすることが大切です。

ごぼうはアクが強く、空気に触れると黒っぽく変色するため切ったらすぐに5分程水につけて変色を防ぎます。
ごぼうを長時間水にさらすと、ごぼうに含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が流出し水が黒っぽくなると同時に、ごぼうの風味や香りが流れ出てしまうため注意が必要です。
堀川ごぼうや大浦ごぼうなどの太いごぼうはアクが強いため10分程度水にさらすことをおすすめします。アクが少ない新ごぼうは、さっと水で流す程度で十分です。
たたきごぼうやサラダのように見た目をより白く仕上げたい場合は、酢水にさらします。ただし、酢水に15分以上つけるとごぼうが硬くなり、風味が損なわれてしまうため注意が必要です。
油を使う料理の場合は油によってアクが抑えられるため、アク抜きは必要ありません。

●ごぼうの保存方法
ごぼうは乾燥に弱いため、土つきのごぼうは日の当たらない風通しが良い場所で保存します。切らずに保存する場合は新聞紙に包み、切っている場合は紙袋に入れて保存します。
傷みやすい夏場はごぼうを適当な長さに切って水にさらし、ラップに包んで冷蔵庫の野菜室に入れると安心です。
土つきのごぼうは1週間程度、洗ったごぼうは2~3日程度で使いきるようにします。ごぼうの量が多く使い切れない場合は、ささがきにしたものを軽く茹で、しっかりと水気を切り保存用袋などに入れて冷凍すると長持ちします。

●ごぼうに含まれる成分と性質
ごぼうには、非常に多くの食物繊維が含まれています。
食物繊維とは、消化酵素で消化されない成分で、五大栄養素[※2]に次いで第六の栄養素と呼ばれています。
ごぼうには、不溶性食物繊であるセルロースとリグニン、水溶性食物繊維であるイヌリンが含まれています。不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は異なる性質と働きを持ちます。
不溶性食物繊維は、水に溶けない性質を持ち、大腸で水分を吸収し数倍から十数倍に膨らみ便のかさを増やすとともに、腸のぜん動運動[※3]を高めます。
水溶性食物繊維は、水に溶ける性質を持ち、腸内で水分に溶け込みヌルヌルとしたゲル状となり、有害成分を吸着して排出させます。

ごぼうにはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やタンニンが含まれています。

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:五大栄養素とは、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つの成分のことです。]
[※3:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]

ごぼうの効果

ごぼうには、食物繊維が豊富に含まれており、以下のような健康効果が期待できます。

●腸内環境を整える効果
ごぼうに含まれている不溶性食物繊維のセルロースとリグニンには腸内の善玉菌を増やす働きがあるため、腸内環境を整えることが期待できます。
口から入った食物はまず胃で消化され、次に腸で吸収された後、その栄養素は血液にのって全身へと行き渡ります。腸内環境が乱れていると、本来排出されるべきものまで吸収されてしまい、様々な体の不調や病気につながります。
腸内には、悪玉菌、善玉菌と呼ばれる細菌が存在しており、これらの菌のバランスが腸内環境を左右しています。
腸内に悪玉菌が増殖すると、消化されていない物の腐敗が進み、腐敗物が吸収されてしまうため、血液やリンパ液が汚れ免疫力が低下します。一方、善玉菌が増殖すると、便通が良くなり栄養の吸収率が高まります。その結果、免疫力が向上し病気にかかりにくくなります。また、血液の質も高くなるため肌もきれいになります。【5】【7】

●便秘を解消する効果
便秘とは、便が1週間近く排出されない状態のことをいいます。便秘は慢性的なものですが、腹痛や頭痛、食欲不振などの症状が現れることもあります。
ごぼうに含まれる不溶性食物繊維のセルロースとリグニンは、腸内で水分を吸収して膨らみ、腸管を刺激して腸のぜん動運動を高め、便の排出を促します。

●動脈硬化を予防する効果
ごぼうに含まれる不溶性食物繊維のリグニンには、動脈硬化や高血圧を予防する効果があります。
動脈硬化とは、血管の動脈が弾力性や柔軟性を失った状態をいい、進行すると血管の中にコレステロールが溜まり、血液がスムーズに流れなくなります。
不溶性食物繊維は、肝臓でつくられるコレステロールの材料である胆汁酸を吸着して排出する重要な働きを持っています。胆汁酸の排出はコレステロールの減少につながるため、動脈硬化の予防が期待できます。イヌリンにはナトリウムを排出する働きもあるため、高血圧の予防にも効果的です。

●抗炎症作用
ごぼうに含まれる有効成分アクチゲニンは免疫細胞にはたらきかけ、アレルギー・炎症関連物質 IL-4 、IL-5、IL-6の分泌を抑制し、抗炎症作用および抗アレルギー作用を示します。【4】【6】

●糖尿病を予防する効果
ごぼうには、糖尿病を予防する効果が期待できます。
糖尿病とは、すい臓から分泌されるホルモンの一種であるインスリンが正常に働かなくなることで血糖値[※4]が上昇する病気です。インスリンには、血糖値の上昇を抑える働きがあります。血糖値が上がると、神経や内臓に悪影響が出ます。ごぼうに含まれている水溶性食物繊維のイヌリンは、摂取した食物と混ざり合いヌルヌルとしたゲル状となって小腸までゆっくり進みます。そのため、栄養素の吸収に時間がかかることで血糖値の上昇が緩やかになり、糖尿病の予防に期待ができるといわれています。
また近年、ごぼうの有効成分アクチゲニンが筋肉へのグルコースの取り込みを促進することで糖尿病予防に役立つとの研究も報告されています。【9】

●老化を防ぐ効果
ごぼうの皮には、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やタンニンが含まれています。
ポリフェノールとは、食物の色素や苦み成分に含まれ、強い抗酸化作用を持っていることで知られている成分です。
クロロゲン酸やタンニンには、活性酸素[※5]によって生成される病気や老化の原因である過酸化脂質[※6]の発生を抑える働きがあるため、老化を防止する効果が期待できます。
またごぼうの有効成分アクチゲニンに、老化に伴う記憶障害を抑制するはたらきも報告されています。【3】

[※4:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
[※5:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※6:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]

ごぼうはこんな方におすすめ

○腸内環境を整えたい方
○肌荒れでお悩みの方
○便秘でお悩みの方
○動脈硬化を予防したい方
○糖尿病を予防したい方
○老化を防ぎたい方

ごぼうの研究情報

【1】ごぼうには機能性成分としてアクチゲニンが含まれており、アクチゲニンは正常な細胞には毒性を示すことなく、肺がん(A549)、肝がん(HepG2)および胃がん(KATO III) の細胞の増殖が抑制されたことから、ごぼうが抗腫瘍作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22350142

【2】ごぼうには多くの機能性成分が含まれており、melitensin、dehydrovomifoliolおよびloliolideと共にのonopordopicrin、dehydromelitensin-8-(4′-hydroxymethacrylate)  dehydromelitensin の6つの成分が知られており、これらのうち5つの成分がそれぞれ抗腫瘍作用をもつことから、ごぼうの健康機能が注目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22334063

【3】記憶障害マウスにおいて、ごぼうの有効成分アクチゲニンを30、60mg/kg を経口投与すると、記憶障害に関連のある酵素アセチルコリンエステラーゼのはたらきが抑制され、記憶障害が改善されました。ごぼうが認知症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21308615

【4】ラットの免疫細胞(好塩基球性白血病 :RBL-2H3) およびリンパ球細胞に、ごぼう抽出物を投与すると、炎症関連酵素(β-hexosaminidase、NF-κB、MAPK)や炎症関連物質 IL-4 、IL-5の分泌が抑制されたことから、ごぼうが抗炎症作用および抗アレルギー作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21303540

【5】潰瘍性大腸炎のマウスに、ごぼう粉末を1日 100 mg/kg を7日間摂取させたところ、炎症性関連物質IL-6やTNF-αのはたらきが抑制され、体重減少や疾病進行度合いに改善が見られたことから、ごぼうが抗炎症作用と腸保護作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20806438

【6】免疫細胞であるマクロファージやヘルパーT細胞に、ごぼうの有効成分アクチゲニンを投与すると、炎症関連物質TNF-αおよびIL-6 及び炎症促進酵素iNOS が阻害され、炎症が抑制されました。この結果より、ごぼうが抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19429312

【7】マウスにおいて、ごぼうの有効成分イヌリンを14日間摂取させると、腸内の乳酸菌を含め、善玉菌が増加していました。このことから、ごぼうイヌリンはプレバイオティックスとして腸内環境改善効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18042411

【8】ごぼうに含まれる有効成分フルクタンは、ネコでの咳止め効果が知られており、ごぼうには咳止め効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14599596

【9】肥満マウスに、ごぼうの有効成分アクチゲニンを摂取させると、グルコースの筋肉への取り込みが活性化され、肝での糖新生および脂肪生成が阻害されました。ごぼうは、脂質代謝や糖質代謝を改善することで、糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22358500

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参考文献

・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社

・CMPジャパン「ハーブ」プロジェクトチーム 編 薬用ハーブの機能性研究 健康産業新聞社

・野間佐和子 旬の食材 秋‐冬の野菜 講談社

・本多京子 食の医学館 小学館

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・池上保子 おいしく食べて健康に効く目で見る食材便利ノート 永岡書店

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版

・Susanti S, Iwasaki H, Itokazu Y, Nago M, Taira N, Saitoh S, Oku H. 2012 “Tumor specific cytotoxicity of arctigenin isolated from herbal plant Arctium lappa L.” J Nat Med. 2012 Oct;66(4):614-21.

・Machado FB, Yamamoto RE, Zanoli K, Nocchi SR, Novello CR, Schuquel IT, Sakuragui CM, Luftmann H, Ueda-Nakamura T, Nakamura CV, de Mello JC. 2012 “Evaluation of the antiproliferative activity of the leaves from Arctium lappa by a bioassay-guided fractionation.” Molecules. 2012 Feb 14;17(2):1852-9.

・Lee IA, Joh EH, Kim DH. 2011 “Arctigenin isolated from the seeds of Arctium lappa ameliorates memory deficits in mice.” Planta Med. 2011 Sep;77(13):1525-7.

・Sohn EH, Jang SA, Joo H, Park S, Kang SC, Lee CH, Kim SY. 2011 “Anti-allergic and anti-inflammatory effects of butanol extract from Arctium Lappa L” Clin Mol Allergy. 2011 Feb 8;9(1):4

・Huang TC, Tsai SS, Liu LF, Liu YL, Liu HJ, Chuang KP. 2010 “Antigenotoxic effect of acute, subacute and chronic treatments with Amazonian camu-camu (Myrciaria dubia) juice on mice blood cells.” World J Gastroenterol. 2010 Sep 7;16(33):4193-9.

・Zhao F, Wang L, Liu K. 2009 “In vitro anti-inflammatory effects of arctigenin, a lignan from Arctium lappa L., through inhibition on iNOS pathway.” J Ethnopharmacol. 2009 Apr 21;122(3):457-62.

・Li D, Kim JM, Jin Z, Zhou J. 2008 “Prebiotic effectiveness of inulin extracted from edible burdock.” Anaerobe. 2008 Feb;14(1):29-34.

・Kardosová A, Ebringerová A, Alföldi J, Nosál’ová G, Franová S, Hríbalová V. 2003 “A biologically active fructan from the roots of Arctium lappa L., var. Herkules.” Int J Biol Macromol. 2003 Nov;33(1-3):135-40.

・Miele C, Beguinot F. 2012 “New expectations from the well-known medicinal properties of Arctium lappa.” Diabetologia. 2012 May;55(5):1244-6..

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