グルカン

glucan

グルカンとは、ブドウ糖(グルコース)がいくつも連なって構成される多糖類の総称で、特にキノコに多く含まれるβ-グルカンが代表的です。グルカンは不溶性の食物繊維で、食べても胃腸で分解・消化されず、食事で摂ったコレステロールを排出したり、腸にたくさんある免疫細胞に働きかけたりします。

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グルカンとは

●基本情報
グルカンとは、ブドウ糖(グルコース)を含む多糖類[※1]を総称したもので、キノコ類に多く含まれるβ-グルカンが代表的です。食物繊維のひとつとして分類され、グルコースのつながり方の違いからα-グルカンとβ-グルカンに分類されます。α-グルカンは、うるち米に含まれるアミロースや、動物の貯蔵糖であるグリコーゲンなどが代表的です。植物が光合成によってつくる、デンプンやデキストリン[※2]などを含みます。食物の甘味に関係しているとされています。一方β-グルカンは、真菌[※3]や植物に多く含まれており、人間の体内では分解、吸収されないことが特徴ですが、優れた健康効果があるとして注目を集めています。

●グルカンの歴史
一般的にグルカンと呼ばれるものは、グルコースがβ1-3型結合して連なった多糖である「β-グルカン」を意味することが多いです。β-グルカンは、1940年代にパンの酵母から発見されました。その後、1960年代にニコラス・ディルジオ博士がパン酵母の細胞壁から抽出し、「β-1.3Dグルカン」と名付けました。
現在ではシイタケヤマブシダケのβ-グルカンが抗ガン剤として実用化されています。また、酵母に含まれるイーストグルカンも同様の効果があるとされており、キノコに比べてグルカンの含有量が多いと注目されています。

●グルカンの働き
α-グルカンとして分類されるでんぷんやアミロース、アミロペクチンは、唾液に含まれるアミラーゼという酵素によって分解され、ブドウ糖として体に吸収されエネルギー源として働きます。また、骨格筋や肝臓で合成されるグリコーゲンは、体内で余っているグルコースを一時的に貯蔵します。
β-グルカンは免疫力を高める効果があるといわれており、体外から入ってきたウイルスなどを撃退し、病気から体を守る働きがあります。また、抗ガン作用も注目されており、数あるキノコの中でも特に、サルノコシカケ科、シメジ科、ハラタケ科のキノコに多く含まれるβ-D-グルカンという成分が、ガン細胞の抑制に働くといわれています。

●グルカンを摂るポイント
α-グルカンは、炭水化物が豊富な米やもち、じゃがいもとうもろこしなどに含まれています。
β-グルカンはシイタケやマイタケをはじめとするキノコ類やパン酵母などの酵母、それからオーツ麦や大麦に多く含まれています。空腹時の摂取が効果的とされ、これはβ-グルカンが腸の内壁にある免疫細胞に働きかけるため、腸が空に近い空腹時が適しているとされているためです。

[※1:多糖類とは、糖質の最小単位である単糖が、多数結合したものです。]
[※2:デキストリンとは、ジャガイモやトウモロコシのデンプンを酵素処理し、消化されにくいデンプン分解物を精製した水溶性食物繊維のことです。]
[※3:真菌とは、カビの仲間の総称です。カンジタなどの皮膚の表面での感染が一般的で、水虫も皮膚の真菌感染症のひとつです。]

グルカンの効果

●集中力を高める効果
α-グルカンとして分類されるでんぷんやアミロース、アミロペクチンは、アミラーゼという酵素によって分解され、ブドウ糖として体に吸収されエネルギー源として働きます。脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖は、脳を活性化させ、集中力や記憶力を高める効果があります。

●免疫力を高める効果
β-グルカンは免疫力を高め、ウイルスや細菌に対する抵抗力を高めます。β-グルカンは人間の体内でマクロファージやナチュラルキラー細胞、白血球など免疫機能をつかさどる細胞の働きを活性化したり、免疫関連物質であるインターフェロン[※4]の生成促進作用があります。β-グルカンは免疫に働きかけるので、β-グルカンの摂取による風邪などの予防や、アレルギー症状を予防・改善する効果も期待されています。【1】【2】

●ガンを予防および抑制する効果
β-グルカンの免疫力を高める働きによって、ガンを抑制する効果が期待されます。β-グルカンは、ガン細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞やマクロファージなどの免疫細胞を活性化させる働きがあり、腫瘍抑制効果が認められています。β-グルカンは、一般の抗ガン剤と違い、自身の免疫応答を高めることによって間接的にガンを攻撃します。【3】

[※4:インターフェロンとは、体内にウイルスや病原菌などの異物が侵入すると、分泌されるたんぱく質のことです。免疫力を高めたり、異物の増殖を抑える効果を持っています。]

グルカンは食品やサプリメントから摂取できます

グルカンを含む食品


○もち
○じゃがいも
○マイタケ
○シイタケ
エリンギ
なめこ
○ヒラタケ
○パンの酵母
○オーツ麦
○大麦

こんな方におすすめ

○脳を活性化したい方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○免疫力を向上させたい方
○アレルギー症状を予防したい方
○ガンを予防したい方

グルカンの研究情報

【1】被験者42名を対象に、しいたけ由来水溶性β-グルカン2.5mg を6週間摂取させたところ、白血球B細胞が有意に増加しました。よって、グルカンは免疫力賦活作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22164761

【2】β‐グルカンは、ヒト白血球B細胞に細胞毒性を示さずに、補助刺激分子CD86を活性化することにより、免疫力の賦活化に関係しています。よって、グルカンは免疫力賦活作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22199280

【3】βグルカンは、抗腫瘍作用とNK細胞の活性化が関与しており、これらの作用には、TLR-4が関与していることが分かりました。よって、グルカンは免疫力賦活作用を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007167446

【4】マイタケにはαーグルカンが含まれており、免疫賦活作用など高い機能性を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110002793721

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参考文献

・田中平三ほか 監訳 健康食品のすべて-ナチュラルメディシン・データベース 同文書院

・則岡孝子 監修 栄養成分の事典 新星出版社

・八巻孝夫 フーズ・メディカ食の医学館 小学館

・井上正子 監修 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・吉川敏一 編 医療従事者のための[完全版]機能性食品ガイド 講談社

・嶋尾通 編 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・蒲原聖可 著 サプリメント事典 平凡社

・中嶋洋子 監修 栄養の教科書 新星出版社

・吉田企世子 監修 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店

・帯津良一ほか 監修 2004版サプリメント健康バイブル 小学館

・日経ヘルス 編 日経ヘルスサプリメント事典2008年版 日経BP社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・Gaullier JM, Sleboda J, Øfjord ES, Ulvestad E, Nurminiemi M, Moe C, Tor A, Gudmundsen O. (2011) “Supplementation with a soluble β-glucan exported from Shiitake medicinal mushroom, Lentinus edodes (Berk.) singer mycelium: a crossover, placebo-controlled study in healthy elderly.” Int J Med Mushrooms. 2011;13(4):319-26.

・Harnack U, Kellermann U, Pecher G. (2011) “Yeast-derived beta-(1-3),(1-6)-D-glucan induces up-regulation of CD86 on dectin-1-positive human B-lymphoma cell lines.” Anticancer Res. 2011 Dec;31(12):4195-9.

・溝渕 俊二、谷脇 千穂、渡部 嘉哉、笹栗 志朗 (2009) “ソフィβグルカン経口投与によるTLR-4を介した細胞性免疫誘導の解析と抗腫瘍効果との関係” 日本外科学会雑誌 110(臨時増刊号_2), 366, 2009-02-25

・川口 三徳、熊田 一男、加藤 宏治、山内 亮、上野 良光 (1988) “マイタケ(Grifola frondosa)子実体に含まれるα-グルカンについて” 日本農藝化學會誌 62(3), 603, 1988-03-15

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