ガルシニアとは?
●基本情報
ガルシニアは、主にインドの南西部・スリランカ・タイなど、雨の多い地域に自生しているオトギリソウ科フクギ属の植物で、マンゴスチンの一種です。
ガルシニアという名前は、スイスの植物学者であるローラン・ガルシンに由来しています。正式名称はガルシニア・カンボジアであり、別名をゴラカやタマリンドマラバーともいいます。
ガルシニアは、5月~9月頃にかけて黄色から少し赤みがかった実を付けます。果実はオレンジほどの大きさがあり、柑橘類に似た甘酸っぱさが特徴的です。果実や皮を乾燥させたものがカレーの酸味付けや、魚の保存などに利用されています。
●ガルシニアの歴史
インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ[※1]では、食べ物の消化を助け、食欲を抑える民間薬としてガルシニアが重宝されていました。
この効能が、ガルシニアの果皮に含まれているヒドロキシクエン酸の働きによるものだということが明らかになり、ガルシニアはスイスの製薬会社で肥満の予防薬として研究・開発され、現在ではアメリカを中心にダイエット食品の原料として利用されています。
●ガルシニアの働き
ガルシニアに含まれるヒドロキシクエン酸には、脂肪の合成を抑える働きがあります。
食事によって摂取した糖分はブドウ糖に分解され、細胞の中にあるミトコンドリア[※2]のクエン酸回路(TCAサイクル)[※3]によってエネルギーに変換され、必要に応じて消費されます。
しかし、脂肪分の多い食事や、運動不足が原因でエネルギーの摂取量が消費量を上回ると、余分なブドウ糖がグリコーゲン[※4]に変換され、肝臓に貯えられます。それでも消費しきれずに余ったブドウ糖は脂肪へと変換され、体脂肪として蓄積されます。これが、肥満の原因となります。
ガルシニアの有効成分であるヒドロキシクエン酸は、ブドウ糖が脂肪に変換される際に必要となるATPクエン酸リアーゼ[※5]の働きを妨げ、エネルギーとして利用しやすいグリコーゲンへの変換を促進する働きがあります。
また、ガルシニアに含まれるガルシノールという成分には、活性酸素[※6]を抑える抗酸化作用[※7]や抗炎症作用があるといわれています。
本来、活性酸素は体の中に入ってきた細菌やウイルスを退治してくれる働きを持つため、人間の体にとって必要なものですが、増えすぎるとその強力な作用により細胞を傷付けてしまうため、生活習慣病や老化の原因となります。
活性酸素は、ストレス・紫外線・喫煙・過剰な運動などが原因で増加するといわれており、現代人の生活環境は、活性酸素によるダメージを受けやすいのです。
●摂取上の注意
国立医薬品食品衛生研究所の発表では、ガルシニアパウダーを高用量で長時間投与した動物実験において、精巣への悪影響が示唆されています。
ただし、投与量を人間の体重で換算すると非常に高用量であり、一般にサプリメントとしてガルシニアを摂取する場合には問題が生じるとは考えにくいとされています。
2002年、厚生労働省は、ガルシニアの抽出物を継続的に摂取する健康食品に関する情報提供について、ヒドロキシクエン酸に換算して1日あたり1500mgを超えている場合は、摂取目安量を減少させるよう通知を行いました。
[※1:アーユルヴェーダとは、インドで古くから語り継がれている東洋医学の1つです。「予防医学」の考え方を重視し、世界保健機構(WHO)が正式に奨励している医学です。]
[※2:ミトコンドリアとは、細胞内の構造のひとつで、生命活動に必要なエネルギーを作り出す役目を担っています。]
[※3:クエン酸回路とは、体内に入った食物を燃焼させエネルギーをつくり出す、一連の流れのことです。]
[※4:グリコーゲンとは、糖がたくさんつながり、多糖類となった状態で肝臓や筋肉に貯蔵されている物質のことです。グリコーゲンはエネルギーが足りなくなった際にブドウ糖に変化するため、エネルギー源として大切な役割を持っています。]
[※5:ATPクエン酸リアーゼとは、脂肪の合成に関わる酵素です。一旦分解され、使われなかった脂肪酸が再び体脂肪として合成される際に必要となります。]
[※6:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※7:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
ガルシニアの効果
●肥満を予防する効果
肥満には、皮下脂肪が厚くなる「皮下脂肪型肥満」と、内臓の周りに脂肪が溜まる「内臓脂肪型肥満」があります。
内臓脂肪型肥満は、一見肥満には見えない体型でも、内臓に脂肪が溜まっている「隠れ肥満」のケースにも当てはまり、生活習慣病にかかりやすくなるといわれています。
カロリーの高い食事による摂取エネルギーの増加のほかに、朝食を抜く、夜食を食べるといった不規則な食生活や、運動不足が原因で、余分な脂肪が増えてしまいます。その結果、コレステロールなどの脂質が血液中に流れ出し、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、高血圧につながります。
また、動脈硬化で細くなった血管には、血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気が発生する危険性が高まります。
ガルシニアには、脂肪の合成を抑える働きがあり、肥満を予防する効果があります。 また運動前にガルシニアを摂取すると、脂肪を燃焼しやすくする効果があるといわれています。
男性運動選手6人を2つのグループに分け、一方にガルシニアエキス(ヒドロキシクエン酸に換算して250mg)を食後に摂取し、2時間後からややきつい歩行運動を行う試験を5日間続けました。
すると、ガルシニアを摂取したグループでは、脂肪利用量が大幅に増加し、運動による脂肪燃焼が促進されたという結果が得られました。
ガルシニアに含まれるヒドロキシクエン酸が、糖質を脂肪に変えるATPクエン酸リアーゼの働きを抑えることによって、エネルギーをつくる際に必要な脂肪酸を体脂肪から補おうとするため、体脂肪の分解が促進されたと考えられます。
脂肪の合成を抑え、さらに燃焼しやすくするという効果を併せ持つことから、ガルシニアはダイエット食品の原材料としても利用されています。
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●食欲を抑える効果
ガルシニアに含まれるヒドロキシクエン酸は、肝臓のグリコーゲンの合成を促進する働きがあります。
グリコーゲンは食欲を左右する物質だといわれており、ガルシニアを摂取することによってグリコーゲンの貯蓄量が増加し、血液中のブドウ糖の濃度が安定するため、ガルシニアには食欲を抑える効果があります。
食欲は、脳の視床下部[※8]にある、満腹中枢によってコントロールされています。ガルシニアは、満腹中枢を刺激し、空腹を感じにくくする働きがあります。【3】
●コレステロール値を下げる効果
脂質の一種であるコレステロールは、細胞をつくる重要な成分です。しかし、ラード(豚の脂)やバターなどの動物性脂肪を多く含む食品を摂りすぎることによって、血液中のコレステロールが増加してしまいます。
コレステロールが増加すると、脂質異常症・動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などの病気を引き起こす可能性があります。
また、消費エネルギーの60~70%を占める基礎代謝[※9]は、20代をピークに徐々に低下するため、コレステロールが増加しやすくなるといわれています。ガルシニアは、血液中に増えすぎたコレステロールを減少させる効果があり、生活習慣病や動脈硬化の予防に役立ちます。【1】
[※8:視床下部とは、大脳と中脳の間に位置し、自律神経の中枢となる部分です。脳の他の部分と連携しながら、消化や吸収、体温調節、免疫の働きなど、生命機能に大きく関わっています。]
[※9:基礎代謝とは、人間が生きていくために最低限必要な機能を維持するためのエネルギーです。]
ガルシニアは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○スリムな体型を目指したい方
○ついつい食べ過ぎてしまう方
○運動不足の方
○コレステロール値が気になる方
ガルシニアの研究情報
【1】肥満 (BMI:30~39.9) の成人男女58名 (25~60歳、試験群32名) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ガルシニア800 mgとコンニャク抽出物500 mgを、食事前に1日3回、12週間摂取させたところ、ガルシニア摂取群では、総コレステロール値(32.0 mg/dLの低下)およびLDL-コレステロール値が低下しました(28.7 mg/dL低下)。このことから、ガルシニアの摂取は抗コレステロール作用があると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18729243?dopt=Abstract
【2】健常成人35名 (平均48.3歳、試験群18名) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ガルシニア500 mg/日とL-カルニチン600 mg/日を主成分としたサプリメントを8週間摂取させたところ、めまいの訴えが減少したことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18385825?dopt=Abstract
【3】ヒドロキシクエン酸(HCA)を20~30%含むガルシニアを1日3回、毎食事前に1gずつ摂取(推定HCA摂取量600~900mg/日)したところ、食欲が抑えられ、1日450gの体重減少があったことがわかりました。このことから、ガルシニアは満腹中枢に働きかけ、食欲減少の作用があることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3205204
【4】平均年齢:37歳、平均BMI:27.5の被験者にプラセボまたは300mgのHCAの含まれたトマトジュース(昼食、夕食の1時間前と夕食の2時間後の3回摂取:ヒドロキシクエン酸:HCA摂取量300mg×3= 900mg/日)を2週間摂取した時のエネルギー摂取量と食欲への影響を検討しました。24時間のエネルギー摂取量(特に間食のエネルギー摂取量)がHCA摂取群で減少しましたが、食欲には変化がありませんでした。このことから、HCAの効果を効果的にするためには、HCAを摂取するタイミングが重要であることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12037659
【5】平均BMIが26.5の健常女性(33~67歳)にHCAを250mg含むゼリー飲料を食事の30分~1時間前に1日3本、12週間摂取させたところ、プラセボ群と比較して、体重、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積、総脂肪面積が有意に減少したことがわかりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40005198910
【6】平均BMIが27.9の健常男女(平均36.8歳)に1,000mgのガルシニアエキスに含まれる(ヒドロキシクエン酸:HCA)を1日3回に分けて、食事前に8週間摂取させたところ、内臓脂肪面積値の高い被験者(≧90cm²)で、プラセボ群と比較して内臓脂肪面積及び内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比が有意に減少しました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10006943575
【7】軽度肥満(平均BMIが28.6)の健常女性(18~65歳)に食事の30分~1時間前にガルシニアエキスに含まれるヒドロキシクエン酸:HCA 400mgを1日3回、1,200kcal/日の低エネルギー食とともに12週間摂取させたところ、食欲に関連する指標には両群間に差は観察されませんでしたが、プラセボ群と比較して体重が有意に減少したことが認められました。このことから、ガルシニアエキスは肥満抑制作用がある可能性がありました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11134690
参考文献
・日本サプリメント協会(NPO) サプリメント健康バイブル 小学館
・吉川敏一・辻智子 完全版 医療従事者のための機能性食品ガイド 講談社
・吉川敏一・炭田康史 最新版 医療従事者のための機能性食品事典 講談社
・Vasques CA, Rossetto S, Halmenschlager G, Linden R, Heckler E, Fernandez MS, Alonso JL. (2008) “Evaluation of the pharmacotherapeutic efficacy of Garcinia cambogia plus Amorphophallus konjac for the treatment of obesity.” Phytother Res. 2008 Sep;22(9):1135-40.
・Yonei Y, Takahashi Y, Hibino S, Watanabe M, Yoshioka T. (2008) “Effects on the Human Body of a Dietary Supplement Containing L-Carnitine and Garcinia cambogia Extract: A Study using Double-blind Tests.” J Clin Biochem Nutr. 2008 Mar;42(2):89-103.
・Sergio W. (1988) “A natural food, the Malabar Tamarind, may be effective in the treatment of obesity.” Med Hypotheses. 1988 Sep;27(1):39-40.
・Westerterp-Plantenga MS, Kovacs EM. (2002) “The effect of (-)-hydroxycitrate on energy intake and satiety in overweight humans.” Int J Obes Relat Metab Disord. 2002 Jun;26(6):870-2.
・小野村健太郎, 富 裕孝, 大塚隆一, 河端恵子 (2000) “ガルシニアエキス含有ゼリー飲料の長期摂取がヒトの体脂肪量に及ぼす影響” 健康・ 栄養食品研究 2000; 3: 23-30.
・Hayamizu Kohsuke、Ishii Yuri、Kaneko、Shen Manzhen、Sakaguchi Hiroyuki、Okuhara、Shigematsu Norihiro、Miyazaki Shigeru、Shimasaki Hiroyuki (2001) “Effects of Long-term Administration of Garcinia cambogia extract on Visceral Fat Accumulation in Humans: A Placebo-controlled Double Blind Trial” Journal of oleo science 50(10), 805-812, 2001-10-01
・Mattes RD, Bormann L. (2000) “Effects of (-)-hydroxycitric acid on appetitive variables.” Physiol Behav. 2000 Oct 1-15;71(1-2):87-94.
・原山達郎 最新・最強のサプリメント大辞典 昭文社