γ(ガンマ)オリザノールとは
●基本情報
γ-オリザノールとは、コメ胚芽や米ぬかに多いポリフェノールの一種で、コメ胚芽や米ぬかを搾ってつくる米油に含まれています。無味、無臭の淡黄色の粉末で、熱安定性が高いため、優れた抗酸化力を発揮するといわれています。植物ステロールの仲間として、人の体に対しては血行を良くしてコレステロールを低減させる効果、脳の機能の劣化防止などの効果があります。善玉(HDL)コレステロールを増やして悪玉(LDL)コレステロールを減らすので脂質異常症[※1]の予防にも効果があります。日本では、高脂血症や自律神経失調症[※2]の医薬品として使用されています。
●γ-オリザノールの歴史
γ-オリザノールは、1954年に米ぬか油から発見されたポリフェノールの一種です。古くから、更年期障害の症状の緩和、不安、緊張、抑うつや高脂血症への効果、効能により医薬品として使用されてきました。また、酸化防止剤として食品添加物にも認可されています。最近では、抗炎症作用、抗アレルギー作用、皮膚の乾燥や肌荒れを防ぐ作用、筋肉疲労防止作用などが報告されており、化粧品やサプリメントなど幅広く利用されています。
●γ-オリザノールを含む食品
γ-オリザノールは、コメ胚芽油や米油などに含まれています。米油にはγ-オリザノールが0.2~0.5%含まれています。
また、γ-オリザノールは日本では医薬品としても扱われています。使用する際は、医師や薬剤師の指示に従ってください。
<豆知識>米油とは
米油とは、コメ胚芽や米ぬかを搾ることで得られる油のことです。米ぬかに含まれる油分は20%未満と低く生産量は少ないですが、米油には健康のための多くの微量成分が含まれています。自律神経失調症の緩和に効果があるγ-オリザノールのほかに、ビタミンEは体内の脂質を酸化から守り、健康な細胞を維持してくれるため、ビタミン剤の原材料の一部としても利用されています。また、豊富に含まれる植物ステロールは、コレステロールを引き下げる働きが強いことが知られています。
私たちの身近な米油は、植物性油として食品の加工に用いられています。例えば揚げせんべいで、米油で揚げることで香り高くなり、加熱されても酸化しにくいという特徴があるため、せんべいの品質を長く保持できる利点があります。同じ理由で、ポテトチップスやかりんとうなどの揚菓子や即席麺など広く使用されています。
[※1:脂質異常症とは、血液中のコレステロール値や中性脂肪が高い状態を表します。高脂血症ともいわれています。]
[※2:自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経のバランスが崩れた場合に起こる頭痛や冷え症、疲労感などの症状の総称です。]
γ(ガンマ)オリザノールの効果
●生活習慣病の予防・改善効果
γ-オリザノールは生活習慣病の予防や改善に役立ちます。血管を広げて血行を良くする効果があるほか、善玉(HDL)コレステロールを増やして悪玉(LDL)コレステロールを減らす効果があります。
コレステロールは動脈硬化の原因になるなど悪い面もありますが、細胞膜を形成すること、神経伝達に関与すること、など人の体を維持する上で大切な役割もあります。コレステロールは大きく2種類に分けることができます。悪玉(LDL)コレステロールが動脈硬化を招く余剰コレステロールの原因をつくり、善玉(HDL)コレステロールは体内で余ったコレステロールを回収し、肝臓でホルモンなどとして再利用できるようにしてくれます。大切なことはこの2種類のコレステロールのバランスが取れていることです。γ-オリザノールは増えすぎた悪玉(LDL)コレステロールを減らす効果でバランスを整えてくれ、生活習慣病のひとつである脂質異常症にも効果があります。
また、体内のコレステロールを良好な状態に保つためには、適度な運動も効果があります。歩くことを例に挙げると、1日の歩数が多いほど善玉(HDL)コレステロールの値が高くなることが報告されています。生活習慣病の予防として、γ-オリザノールの摂取と合わせて、毎日の散歩など適度な運動を行うことが効果的です。【1】【2】【3】
●脳の機能を改善する効果
γ-オリザノールは、脳の視床下部に直接働きかけることで自律神経失調症に効果があります。自律神経失調症は、ストレスや過労、不眠などで生活リズムが不規則なこと、女性に多く見られる更年期障害が原因で起こります。症状としてはめまい、動悸、倦怠感、頭痛、不眠などがあります。γ-オリザノールは自律神経の働きをサポートするため、症状の緩和に効果があります。また、抗ストレス作用から老人性認知症の治療にも医薬品として用いられています。【4】
γ(ガンマ)-オリザノールは食事やサプリメントで摂取できます
γ-オリザールを含む食品
○コメ胚芽油
○米油
こんな方におすすめ
○生活習慣病を予防したい方
○脳の健康を維持したい方
γ(ガンマ)-オリザノールの研究情報
【1】ハムスターを対象に、γ-オリザノールを摂取させたところ、血中コレステロールが低下したことから、γーオリザノールは高脂血症ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16713234
【2】ウサギを対象に、γ‐オリザノールを摂取させたところ、LDL-コレステロールの動脈内皮への蓄積による粥状病変も抑制されたことから、γ-オリザノールは動脈硬化予防効果が期待されています。
【3】γ-オリザノールを含むコメ胚芽油(0.8g/日)の4週間の摂取により,総コレステロールの減少、LDL/HDL比が減少したことから、γ-オリザノールは高脂血症や高コレステロール血症改善に役立つと考えられています。
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00394-004-0508-9?LI=true#
【4】γ-オリザノールは,一般的な向精神病薬とは異なる中枢抑制作用を示しますが,その作用機序としては,視床下部におけるカテコールアミン代謝に関与するためと考えられています。γ-オリザノールは,老人性痴呆症,動脈硬化,脳軟化症の治療薬として用いられるに至っています。
参考文献
・日本医師会、日本薬剤師会、日本歯科医師会監修 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて 日本健康食品・サプリメント情報センター
・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 この症状・病気に効くこの食品、この成分 主婦の友社
・日経ヘルス編 日経ヘルスサプリメント事典 2008年版 日経BP社
・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社
・一般社団法人 日本植物油協会 ―第62号 植物油INFORMATION―
http://www.oil.or.jp/index.html
・Wilson TA, Nicolosi RJ, Woolfrey B, Kritchevsky D. (2007) “Rice bran oil and oryzanol reduce plasma lipid and lipoprotein cholesterol concentrations and aortic cholesterol ester accumulation to a greater extent than ferulic acid in hypercholesterolemic hamsters.” J. Nutr. Biochem. 18, 105-12 (2007).
・K Hiramatsu, T Tani, Y Kimura, S Izumi, P K Nakane (1990) “Effect of γ-oryzanol on atheroma formation in hypercholesterolemic rabbits.” Tokai J Exp Clin Med. 1990 Jul ;15 (4):299-305 2130537
・A. Berger, D. Rein, A. Schäfer, I. Monnard, G. Gremaud, P. Lambelet, Dr. C. Bertoli (2005) “Similar cholesterol–lowering properties of rice bran oil, with varied γ–oryzanol, in mildly hypercholesterolemic men” A. Berger, D. Rein, A. Schäfer, I. Monnard, G. Gremaud, P. Lambelet, Dr. C. Bertoli
・足高 善雄、他 (1968) “γ-Oryzanolの雌性性機能並びに視床下部に及ぼす作用に関する基礎的研究” 産科と婦人科 / 診断と治療社 [編] 35、11、1572~1578