ブラックベリーとは
●基本情報
ブラックベリーは、ラズベリーやイチゴと同様にバラ科キイチゴ属に属する、耐寒性の落葉低木植物[※1]です。庭や野原、森林で、道沿いの塀やほかの障害物に蒔きついて上の方に伸びて生長し、その高さは約4 mほどまでです。温帯地方地域が原産で、北アメリカ、ヨーロッパ、イギリス諸島やオーストラリアに生育しています。
ブラックベリーの葉は、三つ葉か掌状で、茎にはとげがあります。初夏に白色やピンク色の花が房状に咲き、6月末から9月中頃まで成熟した実を収穫できます。ブラックベリーはセイヨウヤブイチゴと400近くもある栽培品種の総称で、北米やヨーロッパ原産のキイチゴ属の多くの種もブラックベリーと呼ばれています。
ブラックベリーは、小核とよばれる多汁の小果の複合体です。小果には、小さな種が含まれており、実は黒色か明るい赤色、もしくは黄白色をしています。完熟時は、最も甘味が強く、酸味は少なく、実も柔らかいのが特徴です。ブラックベリーは、ラズベリーと違って、木から摘果したとき、中心の花托[※2]が果実に付いたままになっています。またラズベリーとブラックベリーの交配により、ローガンベリーやボイセンベリーが生み出されて栽培されています。
ブラックベリーは、生食でも食されますが、一般的にはジャムやシロップ、ジュース、ワイン、ブランデーとして加工され、販売されています。
●ブラックベリーの選び方と保存方法
ブラックベリーは運送や船積み、高温に耐えられない繊細な果実です。傷みやすく、まわりの果実まで駄目にしてしまいます。そのためブラックベリーを購入する際は、硬く大きい実を選びます。軟らかいものや、色のよくないもの、またきっちりと容器に詰められたものは、新鮮さにかけ、過熟でカビが生えている場合があります。ブラックベリーは、実を洗うと水分を吸収し、軟らかくなるため、必要量だけを洗って使用します。
ブラックベリーは、とても傷みやすい果実のため、短時間でも太陽にさらしたり、室温に放置したりすることは避け、冷蔵保存します。また傷んだ実を取り除いて、洗わずにゆったりした容器に入れておくことで、さらに長く保存ができます。
また少量の砂糖を入れて保存するとさらに長持ちし、色が悪くなるのを防ぐことができます。ブラックベリーを冷凍するときには、クッキングシートに並べ、一度凍結して固くした後、密閉した容器に入れて保存します。ブラックベリーは、使用する前に完全に解凍するとおいしく食べることができます。
●ブラックベリーに含まれる成分と性質
ブラックベリーは、ビタミンCとカリウムが豊富に含まれています。またマグネシウムや銅も含んでいます。
ブラックベリーの根皮には、没食子酸[※3]、デンプン、シュウ酸カルシウムなどが存在しています。根皮や葉の有効成分はタンニンであるといわれています。タンニンは、収れん作用[※4]があります。そのため葉は、乾燥させてハーブティーにし、うがい薬としても使用されています。
[※1:落葉低木植物とは、定期的に葉を完全に落とし、成長しても樹高が約3m以下の植物のことです。]
[※2:花托とは、花びら・雄しべ・雌しべ・萼(がく)などを支えるための、花の台座となる部分のことです。]
[※3:没食子酸とは、芳香族カルボン酸のひとつで、植物の葉、茎、根などに広く遊離の状態でも存在するが,普通は没食子酸系タンニンとして存在します。]
[※4:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]
ブラックベリーの効果
●女性特有の悩みを改善する効果
ブラックベリーには、女性特有の悩みを改善する効果があります。ブラックベリーの葉のアルコール抽出物が、著しい子宮活動刺激作用を示し、エストロゲン[※5]の活性を高めたという報告があります。エストロゲンは、妊娠に備えて子宮内膜を増殖させるほか、コラーゲンを生成して肌に弾力を与えたり、悪玉(LDL)コレステロール[※6]を減らして動脈硬化[※7]を防いだりするなど様々な働きがあります。またその他にも更年期障害[※8]や骨粗しょう症[※9]とも関わるため、ブラックベリーには女性特有の悩みを改善する効果があります。【1】【2】
●下痢を予防する効果
ブラックベリーは、下痢を予防する効果があります。
下痢は、水分が過剰なこれは軟便、あるいは水溶便が一日に何度も排出される状態で、毒素や未消化物を体から追い出すために起こる症状です。ブラックベリーには、この下痢の症状を解消する効果があります。この効果は、ブラックベリーに含まれるタンニンの作用によるものです。【4】【5】
[※5:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]
[※6:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能を持った物質です。悪玉(LDL)コレステロール値が高くなると、動脈硬化の原因になるといわれています。]
[※7:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※8:更年期障害とは、40歳代から60歳代の女性に起こりやすい症状です。女性ホルモンのバランスが乱れることによって、動悸、ほてり、イライラなどの症状が現れます。]
[※9:骨粗しょう症とは、骨からカルシウムが極度に減少することで、骨の内部がスカスカになった症状であり、非常に骨折しやすくなることで知られています。高齢者に多い症状で、日本では約1000万人の患者がいるといわれており、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。]
ブラックベリーはこんな方におすすめ
○体調を整えたい方
○女性特有の病気(更年期、生理不順など)が気になる方
○下痢になりやすい方
ブラックベリーの研究情報
【1】ブラックベリーのフェノール含有物は、加齢性神経変性病と骨粗鬆症の抑制、LDL酸化の抑制作用があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22082199
【2】ブラックベリージュースを高コレステロールハムスターに飲用させた結果、総コレステロールおよびLDLコレステロールの低下が認められ、またHDLコレステロールには影響がありませんでした。また、血中、脳、小腸における脂質過酸化が減少したことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22072342
【3】野生種ブラックベリーのポリフェノールは神経細胞変性モデルを用いた実験で、神経細胞保護作用があることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22314351
【4】ヒトの腸の細胞に生薬の五倍子の有効成分タンニンを投与すると、下痢症状が抑制されました。マウスを用いた試験においても、コレラ毒素による下痢症状が抑制されたことから、タンニンには下痢抑制効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20225391
【5】クローン病患者を含む、慢性下痢患者30名を対象に、タンニンアルブミン塩500mg および乳酸エタクリジン50mg を5日間摂取させたところ、下痢の回数に減少が見られ、特にクローン病患者において顕著に改善が見られました。このことから、タンニンには下痢予防効果があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8462917
参考文献
・小林彰夫 斉藤洋 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店
・バーバラ・サンティッチ ジェフ・ブライアント編 世界の食用植物文化図鑑 柊風舎
・ハーブスパイス館 小学館
・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社
・大羽和子 翻訳 世界食材事典 柴田書店
・Kaume L, Howard LR, Devareddy L. (2011) “The Blackberry Fruit: A Review on Its Composition and Chemistry, Metabolism and Bioavailability, and Health Benefits.” J Agric Food Chem. 2011 Dec 8. [Epub ahead of print]
・Ferreira de Araujo PR, da Silva Santos V, Rodrigues Machado A, Gevehr Fernandes C, Silva JA, da Silva Rodrigues R. (2011) “Benefits of blackberry nectar (Rubus spp.) relative to hypercholesterolemia and lipid peroxidation.” Nutr Hosp. 2011 Sep-Oct;26(5):984-90. doi: 10.1590/S0212-16112011000500010.
・Tavares L, Figueira I, McDougall GJ, Vieira HL, Stewart D, Alves PM, Ferreira RB, Santos CN. (2013) “Neuroprotective effects of digested polyphenols from wild blackberry species.” Eur J Nutr. 2013 Feb;52(1):225-36.
・Wongsamitkul N, Sirianant L, Muanprasat C, Chatsudthipong V. (2010) “A plant-derived hydrolysable tannin inhibits CFTR chloride channel: a potential treatment of diarrhea.” Pharm Res. 2010 Mar;27(3):490-7.
・Plein K, Burkard G, Hotz J. (1993) “[Treatment of chronic diarrhea in Crohn disease. A pilot study of the clinical effect of tannin albuminate and ethacridine lactate].” Fortschr Med. 1993 Mar 10;111(7):114-8.