ユーグレナ

euglena
ミドリムシ

ユーグレナは五億年前から生息している微細藻類です。光合成によって成長するという植物的な性質と、細胞を変形させて自ら動くことができる動物的な性質の両方を持っています。植物に含まれる栄養素、動物に含まれる栄養素を兼ね備えていることから、地球上で唯一の植物と動物の中間的生物とされています。

ユーグレナとは

●基本情報
ユーグレナは、5億年以上前の原始の地球で誕生し、古くから生息してきた生物のひとつです。発見者のレーウェンフックによって「美しい(eu)目(glena)」の意を込めてユーグレナと名付けられました。和名ではミドリムシといい、日本での一般的な呼び方です。
ユーグレナは藻の一種である微細藻類に分類され、体長は0.05~0.1mm、幅0.01mmです。緑色は葉緑素(クロロフィル)の色で、植物のように光合成を行って栄養分を体内に蓄えるだけでなく、鞭毛[※1]を使い動き回ることができ、動物のように細胞を変形させて移動します。生物学上でこのように植物・動物両方の特性を持った生物は大変珍しく、研究がすすめられています。ユーグレナには、種々のビタミンやミネラルに加え、不飽和脂肪酸やアミノ酸など様々な栄養素を持っています。

●ユーグレナの歴史
ユーグレナは、1660年代にオランダのレーウェンフックに発見されてからその優れた光合成能力と、豊富な栄養価を高く評価され多くの大学・研究機関で注目を集めてきました。1950年代にアメリカのメルヴィン・カルヴィンがユーグレナを用いた光合成研究を行っており、後にカルヴィンはこの研究の功績をたたえられ、ノーベル化学賞を受賞しました。
1970年代に入るとアメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙開発の視点で研究を進めました。これは、ユーグレナは太陽光と二酸化炭素で育つことのできる生物であり、乗務員の呼吸や燃料の燃焼によって出た二酸化炭素がユーグレナの成長を促し、結果として酸素が得られるという二重のメリットがあるからです。1990年代からユーグレナを使用した医薬品の開発や二酸化炭素固定などの研究が実施され、近年では栄養源や食品としての研究も進んでいます。

●ユーグレナに含まれる成分と性質
ユーグレナは、植物と動物の性質を併せ持ち、不足しがちなカルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富で、体内で生産できないため必ず食物から摂取しなければならない必須アミノ酸を含むアミノ酸をバランスよく含有しています。アミノ酸のバランスが良いほど、よいたんぱく質になります。その指標となるアミノ酸スコアは、理想値を100とするのに対し、ユーグレナは83で、また、独自の成分である、多糖類のパラミロンを含んでおり、コレステロールの吸収を抑えることが知られています。

<豆知識>吸収しやすいユーグレナ
人間は、野菜の細胞壁を分解するセルラーゼという成分を持っていないため、細胞壁があると食べ物の栄養素の吸収率が悪くなってしまいます。しかし、ユーグレナには、通常植物にあるはずの細胞壁がなく、細胞が直接細胞膜で構成されている珍しい生物です。そのため、非常に効率的に栄養を吸収することができます。

[※1:鞭毛(べんもう)とは、毛状の細胞小器官で、遊泳に必要な推進力を生み出す事が主な役目があります。]

ユーグレナの効果

●コレステロール値を下げる効果
ユーグレナに含まれる独自成分のパラミロンは不溶性の食物繊維のような働きを持ち、消化されずに腸内を通過し、余分なコレステロールを排出します。パラミロンはユーグレナ自身が光合成によってつくりだした糖を効率よく貯蔵するためのもので、グルコースがβ1,3結合をした多糖体成分です。
マウスでの実験で、餌を与える際に同時にユーグレナを与えると、体内へのコレステロールの吸収が抑えられたという報告があり、この効果はユーグレナのパラミロンの働きによると考えられています。
ユーグレナをヒトに2ヵ月にわたって摂取させ、摂取前と後での変化を調べた試験では、ユーグレナの摂取前に比べて血中総コレステロール値、悪玉(LDL)コレステロール値、中性脂肪量が低下したという結果が得られました。【1】【2】

●丈夫な体をつくる効果
アミノ酸は、筋肉や内臓をつくるたんぱく質合成に使われます。たんぱく質が不足すると、人体を構成するたんぱく質が分解され、不足分を補おうとします。その結果、体力や免疫力が低下し、血管がもろくなってしまいます。アミノ酸は、たんぱく質を合成し丈夫な体をつくるために必要な成分であることがわかります。
必須アミノ酸は9種類のうちひとつでも不足すると、他のアミノ酸をいくら多く摂取したとしても、たんぱく質を合成することができません。数種類のアミノ酸の量が豊富でも、他に量が少ないアミノ酸があると、一番少ないアミノ酸の量しかたんぱく質は合成されません。
アミノ酸スコアが高く、様々なアミノ酸がバランスよく含まれているユーグレナは、丈夫な体をつくるために重要な効果を持ちます。【1】

●生活習慣病の予防・改善効果
ユーグレナには不飽和脂肪酸のDHAやEPAが豊富に含まれています。DHAやEPAには高い血小板凝集抑制効果があり、血栓をつくらせない働きがあります。心筋梗塞や虚血性心疾患など、生活習慣病予防の効果があります。善玉(HDL)コレステロールを増やし、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らす働きもあり、血液をサラサラにします。高血圧の予防や改善に効果的です。【1】【2】【3】

●その他の効果
ユーグレナは、様々なビタミンやミネラルが含まれています。
ビタミンは三大栄養素である炭水化物 (糖質)、たんぱく質、脂質からエネルギーをつくり出す働きを助け、体の調子を整える役割を担っています。ミネラルは骨・血液などからだの構成成分となったり、酵素の働きをサポートしたりといった体の機能維持や調節に必要不可欠な栄養素です。ユーグレナは、ビタミンやミネラルなど体に必須の栄養素の補給に役立ちます。【1】

ユーグレナは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○コレステロール値が気になる方
○体力を増強したい方
○丈夫な体をつくりたい方
○生活習慣病を予防したい方

ユーグレナの研究情報

【1】ユーグレナは多くのビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養成分のほか、コレステロール排出効果、抗凝血作用を持つ特徴的な成分パラミロンを含んでいます。ヒト臨床試験においても、総コレステロール、LDLコレステロールは低下し、HDLコレステロールを上昇させ、基礎代謝がわずかながら上昇したことが分かりました。
ユーグレナは栄養成分に優れ、様々な機能性を有すると期待されています。

【2】ラットを対象に、ユーグレナを含有する餌を摂取させたところ、コレステロールの排出が促進され、コレステロール消化管内保持時間も大きく短縮されました。また各組織へのコレステロール蓄積も軽減していたことから、ユーグレナは高脂血症予防効果を持つと期待されています。

【3】ユーグレナには51種類もの脂肪酸が含まれており、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、また多くに機能性を持つDHAも含まれていることが確認されており、ユーグレナに優れた機能性が期待されています。
http://www.jlr.org/content/5/3/352

参考文献

・中野良平、嵐田亮、ミトラジャルバニー、吉田絵梨子、鈴木健吾 (2009) “微細藻類ユーグレナの多機能性を生かした食糧としての可能性” New Food Ind 年:2009 巻:51 号:5 ページ:12-18

・河野裕一、中野長久、 北岡正三郎、加藤浩、 重岡成、 大西俊夫 (1987) “ラットにおける [14C] コレステロールの吸収, 体内移行に及ぼすユーグレナ (Euglena glacilis Z) の影響” 日本栄養・食糧学会誌 年:1987 巻:40 号:3 ページ:193-198

・Edward D. Korn (1964) “The fatty acids of Euglena gracilis” The Journal of Lipid Research, 1964, 5, 352-362.

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