エリンギとは
●基本情報
エリンギは、ヒラタケ科のキノコで、ヨーロッパなどで一年を通して収穫することができるキノコです。エリンギの原産はヨーロッパや北アメリカといわれており、セリ科植物のエリンジウム属のセリ科の草の根っこにすみついて成長することから名づけられました。エリンギは、白く太い柄に褐色のたいらなカサがあり、噛むと弾力のある食感を楽しむことができます。
エリンギは、他のキノコに比べ糖の一種トレハロースが多く、甘みがあることが特徴です。また、食感と味がアワビに似ているということから日本では「あわびたけ」とも呼ばれます。
エリンギは食物繊維を含む他、免疫力を向上させるβ-グルカンや、ナトリウム(塩分)を排出するカリウムを豊富に含んでいます。また、エリンギには豊富に含まれるトレハロースに骨粗しょう症を改善する効果があるといわれています。
さらに、肺炎を起こしたマウスに熱湯で煮たエリンギの乾燥粉末を与えると、肺炎による炎症が抑制されたという研究結果もあります。
●エリンギの歴史
エリンギは、ヨーロッパ南部や中央アジアで自生するきのこで、日本には1993年に台湾から伝来し、愛知県の林業センター栽培が始まりました。日本では、エリンギの育つエリンジウム属の植物が自生しておらず、すべて人工栽培で販売されています。
●エリンギの選び方・調理法
鮮度の良いエリンギは、カサが内側にやや巻いていて、軸が太く弾力がありきれいな白色をしています。鮮度が落ちているものはカサの裏のヒダが変色していたり、カサに張りがありません。
エリンギは、熱を加えても成分は失われにくいため、煮込みや揚げ物に活用することができます。長時間煮込んだとしても型崩れしにくく、うまみを引き出します。ソテーやてんぷら、鍋ものやパスタの具材などに利用できます。
●エリンギの保存方法
エリンギは、水分が残っていると傷みやすいため、濡れていないか確認した上、ラップで包んで冷蔵室の野菜室で保存します。3~4日以内に使い切る必要があります。料理に使いやすいようにカットし、保存用の袋に入れ、冷凍しておくと便利に活用することができます。
エリンギの効果
●便秘を解消する効果
エリンギに含まれる食物繊維はキノコの中でも多く、さつまいもの2倍も含まれます。エリンギは食物繊維を豊富に含むことから、便通を改善する効果があることがわかっています。
食物繊維は腸のぜん動運動[※1]を促し、腸の不要物を外に排出させる働きを持ちます。
●免疫力を高める効果
エリンギにはβ-グルカンが含まれ、免疫力を向上させる効果があります。β-グルカンは免疫機能をつかさどるナチュラルキラー細胞やマクロファージ、白血球のT細胞、B細胞などの免疫細胞を活性化させ、免疫力を向上させます。免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザになりやすくなったり、生活習慣病を引き起こし、病気を長引かせます。【1】【3】【5】
●肝障害を予防する効果
エリンギには、肝障害を予防する効果があります。
ラットにコレステロールとエリンギを与えると、肝臓の脂肪沈着が抑制されたということがわかっています。
脂肪肝は、脂肪の多い食事やアルコールの飲みすぎなどによって、肝細胞の30%以上に中性脂肪が蓄積されている状態のことをいいます。脂肪肝の状態が長く続くと、動脈硬化などの生活習慣病を引き起こす危険性があります。
エリンギには、脂肪のとりすぎによる肝障害を予防する効果が期待できます。
●脂肪の吸収を抑制する効果
エリンギには中性脂肪の吸収を抑制する効果があります。
中性脂肪は小腸でリパーゼと呼ばれる脂肪分解酵素によって分解され、体内に吸収されますが、リパーゼの働きが弱まると、中性脂肪の吸収が抑制されます。エリンギの抽出物によって、リパーゼの働きが弱まることが実験結果によって判明しています。【2】【4】
[※1:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
エリンギは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○便秘でお悩みの方
○風邪をひきやすい方
○免疫力を向上させたい方
○肥満を防ぎたい方
エリンギの研究情報
【1】エリンギ抽出物をマウスに与えた結果、IFNγの上昇と、IL-4の減少を誘発しました。また、エリンギは、ヘルパーT細胞1(TH1)の免疫刺激剤として働くことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23134464
【2】高脂血症モデルラットを対象に、食用エリンギ5% 含有物または90℃熱水抽出物を与えたところ、どちらも血中のコレステロールおよびトリグリセリドが改善したことから、エリンギは高脂血症ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007124450
【3】エリンギの機能性成分β-グルカンは、ヒト白血球B細胞に細胞毒性を示さずに、補助刺激分子CD86を活性化することにより、免疫力向上に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22199280
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22164761
【5】高コレステロール血症患者を対象に、米ぬかをとった場合とエリンギの機能性成分β-グルカンを摂取させたところ、米ぬかよりもβ-グルカンのほうが、LDLコレステロール低下効果が高かったことから、エリンギは高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21505506
【6】エリンギ抽出物は、骨のタンパク質のひとつであるオステオカルシンの発現を促進することから、エリンギ抽出物は骨の健康に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16359759
【7】高脂肪食摂取成人26名を対象に、エリンギ抽出物を摂取させたところ、食後の血中トリアシルグリセロールの上昇が緩和されたことから、エリンギは高脂血症ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/36090/817
参考文献
・本多京子 食の医学館 株式会社小学館
・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社
・Ike K, Kameyama N, Ito A, Imai S. (2012) “Induction of a T-Helper 1 (Th1) Immune Response in Mice by an Extract from the Pleurotus eryngii (Eringi) Mushroom.” J Med Food. 2012 Dec;15(12):1124-8.
・江口 文陽、伊藤 隆、須藤 賢一 (2002) “高脂血症に対するエリンギの薬理効果” 高崎健康福祉大学紀要 1, 53-57, 2002-03
・水谷智洋、 稲冨聡、倉島江里子、土田隆 (2008) “エリンギ抽出物による脂肪摂取後の血清中性脂肪上昇抑制効果” 薬理と治療 2008年 36巻9号 p. 817 –823
・Harnack U, Kellermann U, Pecher G. (2011) “Yeast-derived beta-(1-3),(1-6)-D-glucan induces up-regulation of CD86 on dectin-1-positive human B-lymphoma cell lines.” Anticancer Res. 2011 Dec;31(12):4195-9.
・Gaullier JM, Sleboda J, Øfjord ES, Ulvestad E, Nurminiemi M, Moe C, Tor A, Gudmundsen O. (2011) “Supplementation with a soluble β-glucan exported from Shiitake medicinal mushroom, Lentinus edodes (Berk.) singer mycelium: a crossover, placebo-controlled study in healthy elderly.” Int J Med Mushrooms. 2011;13(4):319-26.
・Rondanelli M, Opizzi A, Monteferrario F, Klersy C, Cazzola R, Cestaro B. (2011) “Beta-glucan- or rice bran-enriched foods: a comparative crossover clinical trial on lipidic pattern in mildly hypercholesterolemic men.” Eur J Clin Nutr. 2011 Jul;65(7):864-71.
・Kim SW, Kim HG, Lee BE, Hwang HH, Baek DH, Ko SY. (2006) “Effects of mushroom, Pleurotus eryngii, extracts on bone metabolism.” Clin Nutr. 2006 Feb;25(1):166-70.