エラグ酸

ellagic acid

エラグ酸とはザクロ、イチゴ、ラズベリー等に含まれる天然のポリフェノールの一種です。エラグ酸には強い抗酸化作用を持ち、ガンを抑制する効果や糖尿病を予防する効果、炎症を抑える効果、アンチエイジングなど、様々な効果を持っています。

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エラグ酸とは?

●基本情報
エラグ酸は天然のポリフェノールの一種で幅広い高等植物[※1]に含まれています。ザクロやイチゴ、ベリー類、ナッツ類に多く含まれていますが、中でも生鮮食品の中ではブラックベリーに最も多く含まれています。
エラグ酸は抗酸化作用を持ち、美白効果や糖尿病を予防する効果、抗菌・抗ウイルス効果、などが報告されています。そのため食品添加物、化粧品、サプリメントなど幅広い分野で利用されています。また、美白成分として厚生労働省に認可を受けている成分です。

●エラグ酸の歴史
エラグ酸は1831年にフランスの化学者であるアンリ・ブラコノーによって発見されました。このエラグ酸(ellagic acid)は、虫こぶ[※2]からエラグ酸が単離された点と虫こぶのことをフランス語でgalleと呼ぶ点に由来しています。このgalleを逆さから読んでellagic acidと呼ばれるようになりました。
エラグ酸は1996年に厚生労働省に医薬部外品として認可されています。その後2003年の3月には厚生労働省により食品添加物として利用されるようになり、エラグ酸の安全性についても確認されました。

●エラグ酸の利用法
エラグ酸は「肌の漂白剤」といわれるハイドロキノンと並ぶほどの美白効果があるといわれています。エラグ酸の生成方法には様々あり、没食子酸から合成することも可能ですが、コストの問題から化粧品として利用されるエラグ酸はタラというマメ科の植物から抽出したタラタンニンという水溶性化合物を酸化して生成する場合が多くあります。

[※1:高等植物とは、体制の発達した植物のことです。一般に、根・茎・葉に分化し、維管束をもつ種子植物とシダ植物をさします。]
[※2:虫こぶとは、植物が寄生虫に寄生され、植物が異常な発達をし、コブ状の葉や茎が形成されることです。]

エラグ酸の効果

エラグ酸には抗酸化作用、抗ウイルス効果、美白効果など様々な効果があり、現在サプリメントや化粧品、食品添加物等幅広い分野で利用されています。

●美白効果
エラグ酸には美白効果があります。日焼けは肌の基底層にあるメラノサイト[※3]という部分が太陽などの紫外線により活性化し、メラノサイトに存在するチロシンがチロシナーゼ[※4]という酵素によってメラニン色素[※5]に変換されます。このメラニン色素が肌を黒くする原因です。エラグ酸にはこの日焼けのメカニズムの中で関係しているチロシナーゼという酵素の働きを抑える力があります。そのためメラニン色素がつくられにくくなることから美白効果があるといえます。【5】【6】

●老化を防ぐ効果
エラグ酸には老化を防ぐ効果があるといわれています。細胞が酸化[※6]され、血液中の過酸化脂質[※7]が増えることが老化の一因といわれています。このエラグ酸の持つ抗酸化作用は過酸化脂質の生成を抑える働きがあるといわれています。そのため血液中の過酸化脂質の生成がエラグ酸によって抑えられ、老化を防ぐといわれています。この他にも、高血圧、動脈硬化[※8]、心筋梗塞、高脂血症、糖尿病などに罹患した際にも過酸化脂質が多くなるといわれており生活習慣病の予防にもつながります。

●抗菌・抗ウイルス効果
エラグ酸にはウイルスから体を守る効果があります。まずウイルスは、他の生物に寄生することで自身を増殖させることができます。エラグ酸には他の生物に寄生する際に、その生物の中にウイルスが侵入するのを防ぐ効果があります。

●糖尿病を予防する効果
糖尿病とは何らかの影響で血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなり、吸収された糖が減少せずに血糖値が上昇してしまうことです。糖が血中に増えることにより毛細血管が詰まりやすくなり、時には足などが壊死してしまうこともあります。そして糖尿病の原因の一つとして、インスリンの分泌を阻害するレジスチン[※9]というホルモンがあります。エラグ酸はこのレジスチンの分泌を抑えるため、糖尿病にも効果的といわれるのです。【7】【8】

●ガンを予防および抑制する効果
エラグ酸には抗がん作用があるといわれています。これはガン細胞にも多くの過酸化脂質が多く見られることから、抗酸化作用のあるエラグ酸には老化を抑制し、ガン細胞の増殖を抑える効果があるとされています。【3】【4】

[※3:メラノサイトとは、皮膚を構成する主要な細胞のひとつです。メラニンを生成する機能を持っています。]
[※4:チロシナーゼとは、アミノ酸であるチロシンを酸化して、メラニンをつくる酵素のことです。この酵素を阻害することにより、メラニンの生成を防ぎ、美白効果が働きます。]
[※5:メラニン色素とは、シミの原因になるものです。メラニン色素の蓄積によってシミは形成されます。]
[※6:酸化とは、物質が酸素と化合し、電子を失うことをいいます。サビつきともいわれています。]
[※7:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※8:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※9:レジスチンとは、脂肪細胞から分泌され、肥満によって分泌が上昇するホルモンのことです。糖尿病の発症要因を引き起こす原因の一つと考えられています。]

エラグ酸は食事やサプリメントで摂取できます

エラグ酸を多く含む食品

○ザクロ
○ブラックベリー
○ボイセンベリー
○イチゴ
○サンタベリー
○ナッツ類
○タラ(マメ科)
○クランベリー

こんな方におすすめ

○シミ、そばかすが気になる方
○老化を防ぎたい方
○食べ過ぎてしまう方

エラグ酸の研究情報

【1】卵巣がん細胞のES2へエラグ酸を加えると増殖を濃度依存的および時間依存的に抑制しました。この作用としては、細胞のアポトーシス因子でBaxおよびカスパーゼ3の活性を上昇させたことによることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23843871

【2】フルーツから抽出されたエラグ酸は、マトリックスプロテアーゼ2(MMP2)を抑制することにより、前立腺がん細胞の浸潤および遊走を抑制することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23803044

【3】ヒト口腔ガン細胞、大腸ガン細胞、前立腺ガン細胞へエラグ酸を添加したところ、アポトーシス及び抗増殖作用、抗酸化作用が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15936648

【4】子宮頸部ガン細胞に対しエラグ酸を加えたところ、アポトーシスが誘発されるのが分かりました。そのメカニズムは、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp21が活性化することによることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10355751

【5】エラグ酸の肌保護作用及び改善作用を検証するため、20代~40代の健常女性13名に200mg/日、100mg/日のエラグ酸、またはプラセボを4週間飲用させた結果、エラグ酸を摂取した被験者ではUV照射させた肌の紅斑やメラニンが飲用前に比べ下がっていること、プラセボと比べても有意に低下していることがわかりました。このことから、エラグ酸は、肌保護作用があることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17190110

【6】エラグ酸を飲用させた30名の黒皮症患者について調べたところ、メラニン量の有意な減少が認められました。このことから、エラグ酸は黒皮症に対し、有効であることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18837701

【7】Ⅱ型糖尿病モデルマウス(肥満誘発モデル)にエラグ酸豊富なザクロエキスを投与したところ、アディポサイトからのレジスチン分泌が抑制されたことが分かりました。このことから、エラグ酸は、肥満誘発による脂質異常症を予防する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23583377

【8】Ⅱ型糖尿病では、アディポサイトカインからレジスチンが分泌されます。レジスチンは、インスリン抵抗性を上昇させてしまいます。エラグ酸はマウス3T3-L1アディポサイト分泌のレジスチンが抑制されることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22206671

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参考文献

・Chung YC, Lu LC, Tsai MH, Chen YJ, Chen YY, Yao SP, Hsu CP. (2013) “The inhibitory effect of ellagic Acid on cell growth of ovarian carcinoma cells.” Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:306705. doi: 10.1155/2013/306705. Epub 2013 Jun 16.

・Pitchakarn P, Chewonarin T, Ogawa K, Suzuki S, Asamoto M, Takahashi S, Shirai T, Limtrakul P. (2013) “Ellagic Acid inhibits migration and invasion by prostate cancer cell lines.” Asian Pac J Cancer Prev. 2013;14(5):2859-63.

・Seeram NP, Adams LS, Henning SM, Niu Y, Zhang Y, Nair MG, Heber D. (2005) “In vitro antiproliferative, apoptotic and antioxidant activities of punicalagin, ellagic acid and a total pomegranate tannin extract are enhanced in combination with other polyphenols as found in pomegranate juice.” J Nutr Biochem. 2005 Jun;16(6):360-7.

・Narayanan BA, Geoffroy O, Willingham MC, Re GG, Nixon DW. (1999) “p53/p21(WAF1/CIP1) expression and its possible role in G1 arrest and apoptosis in ellagic acid treated cancer cells.” Cancer Lett. 1999 Mar 1;136(2):215-21.

・Kasai K, Yoshimura M, Koga T, Arii M, Kawasaki S. (2006) “Effects of oral administration of ellagic acid-rich pomegranate extract on ultraviolet-induced pigmentation in the human skin.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2006 Oct;52(5):383-8.

・Ertam I, Mutlu B, Unal I, Alper S, Kivçak B, Ozer O. (2008) “Efficiency of ellagic acid and arbutin in melasma: a randomized, prospective, open-label study.” J Dermatol. 2008 Sep;35(9):570-4. doi: 10.1111/j.1346-8138.2008.00522.x.

・Yoshimura Y, Nishii S, Zaima N, Moriyama T, Kawamura Y. (2013) “Ellagic acid improves hepatic steatosis and serum lipid composition through reduction of serum resistin levels and transcriptional activation of hepatic ppara in obese, diabetic KK-A(y) mice.” hem Biophys Res Commun. 2013 May 10;434(3):486-91. doi: 10.1016/j.bbrc.2013.03.100. Epub 2013 Apr 10.

・Makino-Wakagi Y, Yoshimura Y, Uzawa Y, Zaima N, Moriyama T, Kawamura Y. (2012) “Ellagic acid in pomegranate suppresses resistin secretion by a novel regulatory mechanism involving the degradation of intracellular resistin protein in adipocytes.” Biochem Biophys Res Commun. 2012 Jan 13;417(2):880-5. doi: 10.1016/j.bbrc.2011.12.067. Epub 2011 Dec 20.

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