エルダーフラワーとは
●基本情報
エルダーとは、スイカズラ科[※1]の植物で、セイヨウニワトコという植物の花の部分です。エルダーフラワーは、ヨーロッパ原産で、森や荒地に生育しています。ヨーロッパやアメリカ先住民の伝統医学など、歴史的に治療にも用いられていたハーブであったことから、庶民の薬箱とも呼ばれています。
初夏には小さなクリーム色の花をすずなりにつけ、多くの神話や言い伝えにも登場する歴史を持ちます。イギリスをはじめとするヨーロッパ各地に生育する針葉樹で高さは2~10mの落葉小高木です。
エルダーフラワーはエルダーという植物の花の部分で、ハーブティーや、カプセルタイプのサプリメントなどとして販売されています。
エルダーフラワーは、利尿作用や発汗作用に優れ、体内に蓄積された毒素の排出を促します。さらに、風邪やインフルエンザなどのウイルスに対する抗ウイルス作用や、花粉症などのアレルギー症状の緩和に役立つといわれています。
また、マスカットのような香りを放つエルダーフラワーのハーブティーは、神経の緊張をほぐし、不安やうつの気持ちをやわらげる効果があります。
●エルダーフラワーの歴史
エルダーフラワーは、ヨーロッパで石器時代より食料として利用され、紀元前5世紀にはヒポクラテス[※2]がエルダーフラワーについて記述しています。ギリシャ・ローマ時代には、薬用として用いられるほど歴史の深い植物です。17世紀には「粘液浄化薬」として咳や痰を鎮めるものとして、さらに体内の毒素を排出する利尿薬としても活用されました。現在でもヨーロッパでは初期の風邪や発熱性の疾患に対する医薬品として処方されています。
また、エルダーフラワーは、魔よけの効果など多くの伝承が言い伝えられています。
●エルダーフラワーの摂取方法
エルダーフラワーは、料理にも用いられ、乾燥させた花の部分をジャムやお菓子に利用します。また、花と砂糖をじっくりと煮詰めてつくるコーディアルと呼ばれる砂糖水はイギリス人にとって子どものころから親しみのある飲み物で、水や炭酸水で割って飲まれています。
現在では、のどの痛みをやわらげるために、ハーブティーとして濃く煮出したものを冷ましてうがいするとよいといわれています。また、エルダーフラワーティーは化粧水として外用にも利用できます。
●エルダーフラワーの栽培方法
エルダーは、日当たりから反日陰のところで栽培するとよいといわれています。とても乾燥に弱いため、土の表面が乾いていれば水を与えるようにします。ただ、多湿状態にも弱く根腐れしやすいため、土が常に湿っている状態は避けるほうがよいでしょう。落葉期の冬に化成肥料[※3]を、適量株元に撒いておくとよいといわれています。
植え付きの時期は3月~4月、または9月が最適といわれています。土壌は水はけのよい、肥沃な土が良いです。大きく生育するため、鉢植えに植えた場合、1~2年に1回、大きめの鉢に植え替える必要があります。庭木に植える場合は場所を考えて植えなければなりません。
また、エルダーは、さし木で増やすことができ、伸長した若い枝を先端から15cmほどに切り取って、湿らせた用土に挿すとよいといわれています。
[※1:スイカズラ科とは、双子葉植物で、葉が多くまれに草もあります。]
[※2:ヒポクラテスとは、古代ギリシャの医者で、これまで医学とされていた迷信や呪術を切り離し、医学を経験科学へと発展させた人物です。]
[※3:化成肥料とは、自然界に存在するリン鉱石、カリ鉱石からつくられる肥料のことです。]
エルダーフラワーの効果
●発汗・利尿効果
エルダーフラワーは、発汗・利尿効果に優れています。エルダーフラワーにはケルセチンといったフラボノイドやクロロゲン酸といったフェノール酸[※4]が含まれているためと考えられています。
エルダーフラワーは腎臓の働きを強化し、毒素の排出を促します。このとき、体から熱をとる効果があるため、痛風や関節炎、リウマチにも用いられます。
●風邪やアレルギー症状を緩和する効果
エルダーフラワーには抗炎症作用をもつため、風邪やインフルエンザ、花粉症などのアレルギーの症状の緩和に効果があるといわれています。そのため、エルダーフラワーティーはのどの感染症予防のために、うがい薬としても活用されています。
風邪のひき始めなどに効果を発揮するといわれ、のどの痛みや悪寒など病気の初期の兆候が出た時に飲まれてきました。気管支につまりを感じるような症状に対してはため込まれた粘液をエルダーフラワーのティーで押し流し、呼吸器の気道をきれいにすることを助けるとされています。
花粉症やアレルギーによる鼻水や涙にも有効です。【1】
●リラックス効果
エルダーフラワーには、心を落ち着かせる効果があります。エルダーフラワーには、神経をなだめて不安を取り除き、ゆううつな感情を和らげる効果があります。そのため、寝る前に飲むと、快い眠りをもたらすといわれています。【2】
その他、外用薬として浸出液や軟膏として用いられ、切り傷やけが、凍傷、日焼けの肌などに用いられます。
[※4:フェノール酸とは、ポリフェノールの一種で、色素以外で構成される成分です。]
食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○風邪をひきやすい方
○心を落ち着かせたい方
エルダーフラワーの研究情報
【1】単核細胞や好中球ならびにマクロファージを対象に、エルダーフラワーを添加したところ、NF-κBならびにホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ等の前炎症物質活性が阻害され、歯周病菌による炎症反応が緩和されことから、エルダーフラワーは抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16460254
【2】エルダーフラワーには多くの香気性成分が含まれており、59種類の成分が含まれています。匂いの成分としてネロール酸化物や香りの成分としてはリナロールが確認されています。これらの香気成分にはリラックス効果や鎮静効果を持つものもあることから、エルダーフラワーの機能性が注目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10888553
参考文献
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・佐々木薫 ハーブティー事典 池田書店
・ヴィクトリア・ザック ハーブティーバイブル 東京堂出版
・林真一郎 メディカルハーブの事典 東京堂出版
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・女性のためのハーブ自然療法 女性の一生涯をハーバルライフで綴ったバイブル 産調出版
・大槻真一郎 尾崎由紀子 著 ハーブ学名語源事典 東京堂出版
・アースプランツリサーチオーガニゼーション HERB BIBLE 双葉社
・「ハーブ」プロジェクトチーム 編 薬用ハーブの機能研究 健康産業新聞社
・Harokopakis E, Albzreh MH, Haase EM, Scannapieco FA, Hajishengallis G. 2006 “Inhibition of proinflammatory activities of major periodontal pathogens by aqueous extracts from elder flower (Sambucus nigra).” J Periodontol. 2006 Feb;77(2):271-9.
・Jørgensen U, Hansen M, Christensen LP, Jensen K, Kaack K. 2000 “Olfactory and quantitative analysis of aroma compounds in elder flower (Sambucus nigra L.) drink processed from five cultivars.” J Agric Food Chem. 2000 Jun;48(6):2376-83.