エゴマ

ジュウネン アブラ イゴマ エコ シロジソ オオエノミ 荏胡麻

エゴマ(荏胡麻)は東アジア原産のシソ科の植物で、香味野菜のシソの同種です。エゴマの葉はシソの葉によく似た形をしており、種を絞ったエゴマ油や葉を食用として用いています。エゴマの種子から採れるエゴマ油には、αリノレン酸が多く含まれ、生活習慣病の予防やアレルギーの予防に良いとされています。

エゴマとは

●基本情報
エゴマ(荏胡麻)は東アジア原産のシソ科の植物で、ゴマという名前を冠していますが、香味野菜のシソの同種です。エゴマの葉はシソの葉によく似た形をしており、種は絞られエゴマ油として、また葉は食用として用いられます。茎の高さは約1mにもなり、横断面は四角形で、シソに似ていますが、シソよりも少し大きい葉をしています。茎葉には白い毛があり、秋に茎頂と葉腋[※1]から多数の花を穂状に咲かせます。
エゴマの種子から得られる油は「エゴマ油」、「ペリーラオイル」、「エノ油」などの名称で呼ばれています。
エゴマの種子から採れるエゴマ油には、αリノレン酸が多く含まれており、生活習慣病の予防やアレルギーの予防に良いといわれています。αリノレン酸は、スムーズな血液の循環に働きかけるエイコサペンタエン酸(EPA)や健やかな脳神経の働きをサポートするドコサヘキサエン酸(DHA)に体内で変化します。
エゴマの葉には、カルシウムや鉄といったミネラルが多く含まれ、さらにβ-カロテンやビタミンCも含まれています。

●エゴマの歴史
エゴマの歴史は古く、日本では縄文時代から食べられてきたといわれており、日本最古の作物のひとつとして日本の農耕文化に歴史を刻んでいます。長野県諏訪市にある荒神山遺跡からは、エゴマの種子の塊が出土されています。
エゴマの搾油[※2]が始まったのは、平安時代初期だといわれています。エゴマの種子は35~40%もの油性成分を含むため、食用のほかにも油紙や提灯などに塗布油として用いられてきました。また、灯火以外にも、和紙に防水のためにエゴマ油を塗付し、雨傘や雨合羽などの雨具に活用されていました。
菜種油が全国的に広がる江戸時代後期までの約800年間はエゴマ油が広く用いられました。非常に安価なエゴマが海外から輸入されるようになると、栽培者が急激に減少し、自家用での栽培が各地に残るのみになりました。
1990年代には、現代人に不足しがちなαリノレン酸やカルシウム、ビタミンなどを豊富に含むエゴマ油は食用油として家庭に普及していきました。
エゴマは「ジュウネン、ジュウ、ジュウネ」「アブラ、アブラツブ、ツブアブラ、アブラギ、アブラエ」「イ、イゴマ、イクサ、エグサ」、「エコ、エゴ」、「シロジソ」、「オオエノミ」など地方によって呼び名が異なります。
エゴマは、古来より食されており、貴重な脂肪の供給源として用いられてきました。
エゴマの「ゴマ」は、種子がゴマの実に似ていることから、また、「エ」は油をとるということから「え(得)」に由来して名づけられたと考えられています。
漢字の「荏(ジン・ニン)」は、種を柔らかく包み込んだ植物という意味で用いられています。

●食用としてのエゴマ
エゴマ油は熱に弱く、酸化しやすいという性質をもっています。これはエゴマ油に含まれるαリノレン酸の性質によるもので、炒めものなどより、ドレッシングや料理の風味づけに使用すると効率よく栄養を摂取できるといわれています。
食用としてのエゴマは、和え物やおもちとしても食されており、木曽地域ではエゴマを五平餅のたれに利用しています。また、エゴマの若い葉を漬物にする食べ方もあります。

[※1:葉腋とは、茎と葉の境目のところで、芽が生まれる部分です。]
[※2:搾油とは、植物の種子などを絞り、油を得ることです。]

エゴマの効果

●血管を丈夫にする効果
エゴマ油に含まれるαリノレン酸には、血小板の凝集を防いだり、血管をしなやかにする働きがあります。αリノレン酸は体内に入ると、DHAやEPAに変換されます。DHAやEPAはスムーズな血液の循環を促し、動脈硬化や心筋梗塞などの血管のトラブルを予防します。また、DHAは脳内の細胞膜[※3]に必要な物質で、脳細胞を活性化する効果があります。
以上のことから、エゴマ油には血管を丈夫にする効果が期待できます。【4】【5】

●アレルギーを抑制する効果
エゴマに含まれるαリノレン酸は、リノール酸に対して競合的に働き、体内でリノール酸が過剰になることによる疾患を抑制します。
リノール酸は、n-6系の必須脂肪酸で、コレステロールや中性脂肪を一時的に低下させる働きがあります。しかし、リノール酸は過剰に摂取すると、アレルギーを悪化させたり、大腸ガンの危険性を高めるなど、体に悪影響を及ぼします。
エゴマに含まれるαリノレン酸は、リノール酸に対して競合的に働き、体内でリノール酸が過剰になることによるアレルギー疾患を防ぎます。【1】【2】【3】

[※3:細胞膜とは、細胞の内外を隔てる膜のことです。細胞膜があることにより、細胞内部の環境を一定に保つことができます。また特定の物質以外侵入させないためのバリア機能もあります。]

エゴマは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○血管を丈夫にしたい方
○アレルギー症状を予防したい方

エゴマの研究情報

【1】喘息発作の女性を対象に、エゴマ油を投与したところ、炎症性物質である白血球ロイコトリエンB4、C4が低下し、血中好酸球の低下および呼吸機能改善が認められたことから、エゴマ油に喘息予防効果ならびに抗アレルギー効果が期待されています
http://ci.nii.ac.jp/naid/120002308179

【2】健常人12名を対象に、エゴマ油を1日あたり6g の量で摂取したところ、24時間後の血中α-リノレン酸濃度が上昇したことから、エゴマ油の機能性が注目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12591004

【3】喘息患者を対象に、エゴマ油を2週間または4週間エゴマを摂取させたところ、白血球から産生されるロイコトリエンC4を抑制し、肺活量、最大呼気流量の増加が認められたことから、エゴマには喘息予防効果ならびに抗アレルギー効果が期待されています。また血中LDLコレステロール、総コレステロールの低下も認められたことから、生活習慣病予防効果も期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10878492

【4】高脂肪食摂取ラットに、エゴマ油の主要成分であるα-リノレン酸を1日当たり 500μg/kg の量で4週間摂取させたところ、糖尿病による炎症関連物質のTNF-αやIL-6の増加を抑制するほか、活性酸素の上昇を抑制しました。このため、α-リノレン酸を含むエゴマ油には抗炎症作用と心血管保護作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21722811

【5】冠動脈疾患リスクの高い人2,004名 (32~93歳) を対象とした疫学調査において、エゴマ油の主要成分であるα-リノレン酸の摂取が多いと冠動脈のアテローム性動脈硬化症が緩和されたことから、α-リノレン酸を含むエゴマには生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15927976

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・高田 真吾、芦田 耕三、保崎 泰弘、濱田 全紀、岩垣 尚史、菊池 宏、光延 文裕 (2008) “A case with persistent asthma symptoms despite fluticasone treatment in which concomitant treatment with montelukast and perilla seed oil-rich supplementation significantly improved asthma control” 岡大三朝医療センター研究報告 76, 53-59, 2008-03-01

・Kurowska EM, Dresser GK, Deutsch L, Vachon D, Khalil W. (2003) “Bioavailability of omega-3 essential fatty acids from perilla seed oil.” Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2003 Mar;68(3):207-12

・Okamoto M, Mitsunobu F, Ashida K, Mifune T, Hosaki Y, Tsugeno H, Harada S, Tanizaki Y, Kataoka M, Niiya K, Harada M. (2000) “Effects of perilla seed oil supplementation on leukotriene generation by leucocytes in patients with asthma associated with lipometabolism.” Int Arch Allergy Immunol. 2000 Jun;122(2):137-42.

・Xie N, Zhang W, Li J, Liang H, Zhou H, Duan W, Xu X, Yu S, Zhang H, Yi D. (2011) “α-Linolenic acid intake attenuates myocardial ischemia/reperfusion injury through anti-inflammatory and anti-oxidative stress effects in diabetic but not normal rats.” Arch Med Res. 2011 Apr;42(3):171-81. doi: 10.1016/j.arcmed.2011.04.008

・Djoussé L, Arnett DK, Carr JJ, Eckfeldt JH, Hopkins PN, Province MA, Ellison RC; Investigators of the NHLBI FHS. (2005) “Dietary linolenic acid is inversely associated with calcified atherosclerotic plaque in the coronary arteries: the National Heart, Lung, and Blood Institute Family Heart Study.” Circulation. 2005 Jun 7;111(22):2921-6. Epub 2005 May 31.

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