エキナセア

echinacea

エキナセアは、北米を原産とするハーブの一種で、古くから傷や病気の治療薬として用いられてきました。
エキナセアの根の部分に含まれている有効成分には、免疫機能を高める働きや抗炎症作用があり、風邪やインフルエンザをはじめとする感染症の予防に利用されています。

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エキナセアとは?

●基本情報
エキナセアは、北米原産のキク科の植物で、夏から秋にかけて紫色の花を咲かせます。
花の中央がトゲのように見えることから、ギリシャ語でハリネズミを意味する「echinos(エキノース)」を語源として、エキナセアと名付けられました。
薬用とされるエキナセアの種類には、卵形の葉を持つエキナセア・プルプレア、草の丈が最も小さいエキナセア・アングスティフォリア、4~9cmの大きな花を咲かせるエキナセア・パリダの3つがあります。
この3種のエキナセアの中で、特に栽培が盛んであり研究が進められている種類は、エキナセア・プルプレアです。
エキナセアは免疫機能を高め、感染症の予防などに効果があるハーブとして、欧米を中心に広く利用されています。

●エキナセアの歴史
エキナセアは、約400年もの間、アメリカ先住民の間でヘビに噛まれた際の傷の洗浄や、病気の治療のための薬として利用されていました。
特に歯やのどの痛み、風邪や伝染病の治療にも用いられ、有効成分が含まれる根の部分を噛んだり、ハーブティーとして飲んでいたといわれています。
1870年代に、アメリカの町医者H.C.F.マイヤーは、先住民たちからエキナセアの効能について学び、治療薬として利用し始めたことをきっかけに、アメリカでエキナセアに対する注目が高まりました。
その後エキナセアがヨーロッパに持ち込まれ、ドイツを中心に研究が進められることとなりました。その中で、エキナセアが免疫機能を高め、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防・治療に役立つことが明らかになりました。
現在、エキナセアがドイツで医薬品として取り扱われているほか、アメリカではエキナセアがサプリメントとして流通しています。

●エキナセアの有効成分
エキナセアに含まれる多糖類[※1]や糖たんぱく質、フラボノイドには、免疫機能を高める働きがあります。
免疫機能とは、体内に入ってきた病原菌やウイルスから体を守るための仕組みであり、生物の体に本来備わっているものです。
菌の侵入を最初に防ぐのは、のどや鼻の粘膜と皮膚です。ここで防げなかった菌は、血液中の食細胞[※2]によって取り込まれます。それでもなお防ぎきれなかった場合には、白血球[※3]によって攻撃されます。
しかし、免疫機能は生活習慣によって左右されるといわれており、疲れが溜まる・不規則な生活習慣が続くと、この免疫機能が正常に働かなくなり、病原菌やウイルスに抵抗する力が低下し、病気にかかりやすくなってしまいます。
エキナセアに含まれる有効成分が免疫機能を高め、病気にかかりにくい健康な体を維持することができるのです。

●摂取上の注意
風邪の予防のためにエキナセアを摂取する場合は、2週間続けた後に、1週間休むというサイクルを繰り返すと効果的だと考えられています。
また、ドイツのコミッションE[※4]では、エキナセアを8週間以上連続で摂り続けないように警告しています。
これは、エキナセアを長期間摂取し続けると、エキナセアの効果が薄れてくる可能性があるためです。

また、結核や白血病、膠原(こうげん)病[※5]、AIDS[※6]、自己免疫疾患[※7]などの患者の場合、免疫機能が低下する恐れがあるため、エキナセアの摂取は避ける必要があります。
エキナセアはキク科に属する植物のため、キクにアレルギーを持つ人は注意が必要です。妊娠中・授乳中の人が接種する際には医師への相談がすすめられています。
エキナセアの摂取量によっては、発熱・吐き気・下痢などが起こることがあります。

[※1:多糖類とは、糖質の最小単位である単糖が、多数結合したものです。]
[※2:食細胞とは、細菌やウイルスなどを捕らえて消化・分解する細胞のことです。]
[※3:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※4:コミッションEとは、ドイツ連邦保健庁の薬用植物の評価委員会のことです。 医薬品としてハーブを利用する際、安全性・効果の評価の実施、医薬品として承認するための組織です。]
[※5:膠原病とは、血管壁や関節、靭帯や腱、各臓器の膜などが炎症を起こす病気のことです。]
[※6:AIDSとは、Acquired(後天性) Immune(免疫) Deficiency(不全) Syndrome(症候群) の頭文字をとった病名です。HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)と呼ばれる病原体に感染することで発症し、免疫機能を低下させ、様々な合併症を引き起こします。]
[※7:自己免疫疾患とは、自身の体をつくるたんぱく質、細胞、組織に対して免疫機能が働くことによって発症する病気のことです。]

エキナセアの効果

●風邪やインフルエンザを予防する効果
古くから「風邪は万病のもと」といわれているように、風邪の症状を放置すると、気管支炎や肺炎など、様々な病気を引き起こすことがあります。
エキナセアには、免疫機能を高める働きがあり、風邪やインフルエンザなどの感染症を予防する効果があります。
エキナセアに含まれる多糖類が、マクロファージ[※8]を活性化させ、免疫系全体の機能を高めてくれます。
マクロファージは体内に入ってきた細菌やウイルスを発見すると、すぐに免疫系全体に警報を発揮する役目と、細菌やウイルスをマクロファージの中に取り込み、酵素で殺菌処理する2つの役目を担っています。
1992年、ドイツで風邪やインフルエンザに感染しやすい108人を対象にエキナセアを投与したところ、風邪をひく回数が36%減少したほか、治るまでの期間が短縮される・症状が緩和されるといった結果が得られました。
また、エキナセアは風邪やインフルエンザの予防だけではなく、頭痛・のどの痛み・鼻炎・気管支炎・咳や発熱の緩和などに効果があるとされています。
一般に、エキナセアは風邪やインフルエンザの初期段階に摂取すると効果的といわれています。【2】【3】【6】

●アレルギーを改善する効果
アレルギーは、本来排除する必要のないものにまで免疫機能が過剰に働くことによって引き起こされます。
環境や体質のほかに、生活習慣の乱れやストレスなども原因とされています。
エキナセアは、免疫機能を高め、正常に働かせることによって、アレルギーの症状を改善する効果があります。
体内にアレルギーを引き起こす物質が侵入すると、マクロファージはナチュラルキラー(NK)細胞[※9]に指令を出します。NK細胞の活性化が、抗体をつくるB細胞[※10]や抗体をつくるように命じるT細胞[※11]に作用することから、エキナセアは花粉症などのアレルギーの改善にも役立ちます。【4】

●むくみを改善する効果
体内の水分は細胞や血液の中などにバランスよく分布し、栄養や酸素を体中に運ぶほか、老廃物を排出するといった重要な働きを担っています。
しかし、何らかの原因でそのバランスが崩れることによって、むくみが生じます。
また、女性は男性よりもむくみを感じやすいといわれています。筋肉の量が少なく、血管も細いため、下半身から心臓へと血液を送り返す力が弱いことが大きな要因です。
月経前にむくみやすいのは、排卵から月経までの期間は体内に水分を抱え込みやすくなるためです。また、更年期の症状としてむくみが挙げられます。さらに、極端なダイエットや塩分を摂りすぎるといった食生活が原因でむくみが生じることもあります。
すぐに解消するものであれば問題はありませんが、長期間むくみが続く場合は、腎臓などの病気が疑われるので注意が必要です。
エキナセアは、老廃物の排出を促進する働きがあり、むくみの改善に効果を発揮します。

●尿に関するトラブルを改善する効果
年齢とともに感じやすい尿に関するトラブルは、水分を摂りすぎたなどの一時的なものであれば問題はありませんが、毎日続くようであれば、何らかの炎症を起こしている可能性があります。
男性の場合、50歳頃から夜中に何度もトイレに行きたくなる・尿が一度にすっきり出ないといった排尿障害が増加します。これらの症状は、年齢とともに前立腺が肥大し、尿道が圧迫されることが原因とされています。
また、女性の場合、男性に比べて尿道に雑菌が入りやすく、尿が出るときに痛みを感じる・尿に濁りがある・残尿感があるといった症状が引き起こされやすいといわれています。
エキナセアには抗炎症作用があり、これらの尿に関するトラブルを改善する効果があります。

[※8:マクロファージとは、白血球の一種です。免疫機能を担う細胞のひとつで、生体内に侵入したウイルスや細菌、または死んだ細胞を捕食し、消化する働きを持ちます。]
[※9:ナチュラルキラー(NK)細胞とは、リンパ球に含まれる免疫細胞のひとつで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えています。ガン細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見して退治してくれます。]
[※10:B細胞とは、免疫機能に関わる細胞であり、その異物特有の抗体をつくり、その情報を記憶することで、次に同じ異物が侵入してきた時に速やかに対処することができます。]
[※11:T細胞とは、免疫機能に関わる細胞であり、B細胞が抗体をつくる力を促進し、侵入してきた異物を攻撃します。]

エキナセアは食事やサプリメントから摂取できます

こんな方におすすめ

○風邪をひきやすい方
○アレルギー症状を緩和したい方
○花粉症の方
○むくみでお悩みの方
○排尿でお悩みの方

エキナセアの研究情報

【1】健康な成人170名 (平均43±14歳、試験群85名、オーストラリア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、エコノミークラスでの長時間 (15~25時間) の飛行を伴う旅行 (1~5週間) で帰国までの14日間、エキナセア根抽出物 (アルキルアミド4.4 mg) を1~2粒x2回/日摂取させたところ、帰国時の呼吸器症状の抑制が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22229040?dopt=Abstract

【2】近年の研究から、エキナセアの抽出物は、抗菌および抗ウイルス作用を有することが分かっています。さらに、エキナセア抽出物は、マクロファージの食作用を促進させる働きがあることが分かりました。このことから、エキナセア抽出物には、抗菌作用および免疫力を高める働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22131823

【3】65-68歳の108名の上気道感染による閉塞患者(COPD)に対し、プラセボまたはエキナセア(セレン、亜鉛、アスコルビン酸を加えた)抽出物を14日間与えたところ、エキナセア投与群はプラセボ投与群よりもCOPDの症状の悪化を防ぐことが分かりました。このことから、エキナセアおよびセレン、亜鉛、アスコルビン酸は、COPDの症状を緩和させる働きがあることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21062330

【4】エキナセア抽出物は、T細胞から分泌されるIL-2の分泌を抑制し、また、肝臓で代謝されるアルキルアミドが体内の酸化を防止することが分かりました。このことから、エキナセア抽出物が肝臓で代謝され、免疫調整にかかわるアルキルアミドになり、酸化防止剤になることが考えられました。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17054047

【5】エキナセアから抽出した1つのアルカミド、4種類のポリサッカライド、3種類のカフェイン酸は、LDL酸化活性を抑制することが分かりました。抗酸化活性は、チコリック酸>エキナコサイド>カフェイン酸>ロスマリン酸の順に強いことが分かりました。このことから、エキナセアの抽出物には、多くの抗酸化物質が含まれていることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16302756

【6】共通の症状を示した風邪80名の患者に対してプラセボまたは、エキナセア抽出物を与えました。エキナセア投与群は、プラセボ群と比較して6日目に風邪の症状が改善しました(プラセボ群は9日目に改善)。このことから、エキナセア抽出物は、風邪のような症状を緩和する働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11505787

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参考文献

・機能性ハーブの生理活性-60のメディカルハーブの成分と機能性最新レポート 常盤植物科学研究所

・蒲原聖可 サプリメント事典第3版 平凡社

・原山達郎 最新・最強のサプリメント大辞典 昭文社

・Tiralongo E, Lea RA, Wee SS, Hanna MM, Griffiths LR. (2012) “Randomised, double blind, placebo-controlled trial of echinacea supplementation in air travellers.” Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:417267. Epub 2011 Dec 20.

・Hudson JB. (2012) “Applications of the phytomedicine Echinacea purpurea (Purple Coneflower) in infectious diseases.” J Biomed Biotechnol. 2012;2012:769896. Epub 2011 Oct 26.

・Isbaniah F, Wiyono WH, Yunus F, Setiawati A, Totzke U, Verbruggen MA. (2011) “Echinacea purpurea along with zinc, selenium and vitamin C to alleviate exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: results from a randomized controlled trial.” J Clin Pharm Ther. 2011 Oct;36(5):568-76. doi: 10.1111/j.1365-2710.2010.01212.x. Epub 2010 Nov 10.

・Cech NB, Tutor K, Doty BA, Spelman K, Sasagawa M, Raner GM, Wenner CA. (2006) “Liver enzyme-mediated oxidation of Echinacea purpurea alkylamides: production of novel metabolites and changes in immunomodulatory activity.” Planta Med. 2006 Dec;72(15):1372-7. Epub 2006 Oct 20.

・Dalby-Brown L, Barsett H, Landbo AK, Meyer AS, Mølgaard P. (2005) “Synergistic antioxidative effects of alkamides, caffeic acid derivatives, and polysaccharide fractions from Echinacea purpurea on in vitro oxidation of human low-density lipoproteins.” J Agric Food Chem. 2005 Nov 30;53(24):9413-23.

・Schulten B, Bulitta M, Ballering-Brühl B, Köster U, Schäfer M. (2001) “Efficacy of Echinacea purpurea in patients with a common cold. A placebo-controlled, randomised, double-blind clinical trial.” Arzneimittelforschung. 2001;51(7):563-8.

・日本サプリメント協会(NPO) サプリメント健康バイブル 小学館

・井上正子 栄養学と食のきほん事典 西東社

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