ドクダミ

十薬  魚醒草(ぎょせいそう)  ドクダン  ハッチョウグサ  シブト草

ドクダミとは、東アジア地域に分布する多年草草木で、デカノイルアセトアルデヒドという精油成分やクエルシトリン、イソクエルシトリン、ミネラルなどの成分を含んでいます。ドクダミは、利尿作用や便秘改善効果、炎症を抑える効果があるほか、血管を丈夫にする働きや美肌に対する効果があります。

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ドクダミとは

●基本情報
ドクダミは東アジア地域に分布する多年生草木で、日本でも全国各地で見ることができ、6月の梅雨の時季に黄色い穂状の花をつけます。一般的に白い花びらのように見えるのは、植物学的には花ではなく「蔀(ほう)」と呼ばれるがくの部分です。
ドクダミは、生のドクダミが持つ特有の臭気がまるで毒を溜めているようで「毒溜み、毒矯み(ドクダミ)」に由来し名付けられたといわれています。ドクダミの漢方生薬名は「十薬」といい、馬に食べさせると10もの効果があるということから名付けられました。
ドクダミには特有の香りがあり、繁殖力が強い地下茎は長く伸びて分岐するため、一度根づくと、なかなか除草することができません。そのため、ドクダミは除草しにくく、しぶとい草であることから「シブト草」とも呼ばれます。
ドクダミには強い独特な香りを持つデカノイルアセトアルデヒドという精油成分やクエルシトリン、イソクエルシトリン、ミネラルなどの成分を含んでおり、デトックス効果、美肌効果など様々な効果を持ちます。

●ドクダミの歴史
ドクダミは江戸時代の書物である『大和本草』や『和漢三才図絵』に記載があるほど、古くから健康効果が知られていました。
江戸時代の儒学者・本草学者である貝原益軒が著書『大和本草』の中で、ドクダミは「和流ノ馬医用之馬ニ飼フ、十種ノ薬ノ能アリトテ十薬ト号スト云(わが国の馬医がこれを馬に用いると、十種の効能があるので、十薬と呼ぶことにした)」と記されています。
また古くからドクダミの強い殺菌・抗菌効果は知られており、よく洗った新鮮なドクダミの生葉をもみ、葉汁をおできや痔などの患部に直接塗るなどの民間療法としても利用されていました。
日本では民間薬として、化膿性皮膚炎や水虫などの皮膚に関する病気に用いられており、研究が進むにつれ、ドクダミの様々な効果が解明されるようになりました。
ドクダミは、厚生労働省の発行する「日本薬局方」に「十薬」という生薬名で記載されています。「日本薬局方」は、薬事法によって医薬品の適正を図るために、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見から定めた医薬品の規格基準書です。

●ドクダミの収穫時期
ドクダミの収穫の最盛期は、開花時期である5月下旬~6月頃です。この時期が最盛期とされているのは、花をつけたドクダミが利尿作用や毛細血管の強化、炎症を抑える効果を持つクエルシトリンを最も多く含んでいるためです。
ドクダミの開花時期は2ヶ月程で、秋以降は葉や茎もなくなるため、開花時期には1年分のドクダミが収穫されます。

●ドクダミに含まれる成分と効果
ドクダミには、多くの種類のフラボノイドが含まれていますが、その中でも、クエルセチンには血管を拡張させたり、尿の排出を促進したり、炎症を抑える効果があり、ドクダミの効果を得るためには欠かせない成分です。
ドクダミの葉は乾燥させると、揮発性成分のデカノイルアセトアルデヒドが分解されるため、殺菌効果が失われますが、乾燥ドクダミ(全草)にはフラボノイド成分であるクエルセチン、ルチンやクエルシトリンが含まれています。

ドクダミに含まれるルチンには、血管の透過性を適度に保ち、血管を丈夫にする働きがあります。
血管は、体内の細胞との間で栄養や酸素などのやりとりを行っていますが、その機能は血管が持つ透過性によって維持されています。
透過性とは、物質を通り抜けさせることができる性質のことです。血管の透過性は、高すぎても低すぎても体に良い影響を与えません。
酸素や栄養素など、細胞に与える物質の大きさに応じて適度な透過性を保つことが大切です。ルチンは、この血管が持つ透過性を調節する作用があります。
また、ルチンは丈夫な血管に不可欠なコラーゲンの合成を助けるビタミンCの吸収を促進し、血管の老化を抑制します。
このように、ドクダミに含まれる水溶性のビタミン様物質[※1]であるルチンには、毛細血管の透過性を改善し、さらにビタミンCの吸収を促進することで、血管を丈夫にする働きがあります。

生のドクダミに含まれているデカノイルアセトアルデヒドという成分は、非常に強力な殺菌・抗菌作用を持っています。ドクダミには、食中毒や傷口の膿みの原因となる黄色ブドウ球菌や、水虫などの原因となる糸状菌の細菌を抑制する働きがあります。デカノイルアセトアルデヒドは蒸発しやすい性質を持つため、この効果は新鮮な生の葉のみに限られます。【3】

また、植物の色素成分であるフラボノイドも多く含み、抗酸化作用や便秘の改善、血管の強化、老廃物の排泄促進などの効果が期待されているため、血管を丈夫にする効果や炎症を抑える効果が期待できます。
ドクダミには、高血圧の要因となるナトリウムを排出するカリウムが高濃度に含まれているため、血圧を下げる効果が期待できます。

●ドクダミの摂取方法
ドクダミの一般的な摂取方法としてドクダミ茶が知られています、近年ではドクダミジュースやクッキーなど様々な商品が販売されています。
また、ドクダミは外用で使用し美容にも働きかけるため、化粧水などにも利用されています。
その他、外用薬として皮膚化膿症に用いられることもあります。

●ドクダミを摂取する際の注意点
ドクダミにはカリウムが高濃度に含まれているため、腎機能の低下している方は、摂取の際に注意が必要です。
また、ドクダミには排便を促す作用があることから、過剰に飲み続けることで下痢の症状が出る可能性があります。

[※1:ビタミン様物質とは、ビタミン類には含まれず、ビタミンと似た働きを持つ栄養素の総称です。]

ドクダミの効果

●デトックス効果
ドクダミには、多くのカリウムが含まれており、尿の排出を促進する作用があります。また、ドクダミは便の排出を促す作用もあるため、古くから利用されてきました。このようにドクダミには、体内に蓄積された毒素を排出するデトックス効果があります。

●高血圧を予防する効果
ドクダミには、高血圧の要因となるナトリウムを排出するカリウムが含まれており、余分な塩分を排出して、血圧を下げる働きがあります。これにより、高血圧を予防する効果が期待できます。

●美肌効果
肌荒れは、細菌が皮膚の毛穴などに詰まった油分や汚れを栄養にし、繁殖した炎症のもととなる物質を分泌することで引き起こされます。また、便秘などにより肌荒れが引き起こされることも知られています。
生のドクダミに含まれているデカノイルアセトアルデヒドは、殺菌・抗菌効果があるため、肌荒れの原因となる細菌の働きを抑制します。
ドクダミに含まれるクエルシトリンやイソクエルシトリンには、利尿効果や毛細血管の強化作用があり、新陳代謝を促すため、体のすみずみまで栄養を届け、肌の生まれ変わりを促進します。
さらにドクダミは、体内に生じた老廃物や毒素を排泄する効果があり、血液を浄化し、ニキビや吹き出物などの肌トラブルも生じにくい体質へと改善するといわれています。
このように、ドクダミには体の外的・内的の両面で美肌に効果があります。

●炎症を抑制する効果
ドクダミに含まれるクエルシトリンは、ストレスやバランスの悪い食習慣などで弱った胃腸に働きかけ、胃壁のただれや傷を治すといった炎症を抑制する効果があります。
また、細菌感染などにより副鼻腔の粘膜が炎症を起こす副鼻腔炎や、アトピー性皮膚炎にも効果が期待されています。【1】【4】【5】

ドクダミはこんな方におすすめ

○便秘でお悩みの方
○体内の毒素を排出したい方
○美肌を目指したい方

ドクダミの研究情報

【1】ドクダミ(HSE)の抗炎症作用についてラットカラゲナン空気嚢モデルで検討しました。ドクダミは腫瘍壊死(TNF-α)、プロスタグランジンE(2)および一酸化窒素(NO)を抑制しました。このことから、ドクダミがTNF-α-NOとシクロオキシゲナーゼ-2-PGE(2)経路の両方を阻害することにより抗炎症作用が示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22787488

【2】糖尿病ラットの腎組織でドクダミがTGF-beta1(成長因子)およびBMP-7(骨形成にかかわるタンパク質)の発現に及ぼす作用について調べました。ドクダミ投与群では、TGF-β1およびコラーゲンの発現低下が見られましたが、BMP-7は増加しました。ドクダミ投与によってTGF-β1、コラーゲン1の発現低下、BMP1の発現増加が誘発され、ドクダミには糖尿病マウスの腎保護作用があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17955662

【3】マウスサルモネラ症に対するドクダミ抽出物の抗菌作用について調べました。ドクダミ抽出物は用量依存的にチフス菌の抗菌作用を示しました。さらに、マクロファージ細胞に感染したチフス菌に対し、ドクダミ抽出物を加えた際のマクロファージが発生するNO量はドクダミ抽出物がないときの2倍でした。In vivoにおいてもドクダミ抽出物はチフス菌による毒素抑制作用を示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18981565

【4】ドクダミの抗酸化特性と、ラットのブレオマイシン誘導肺線維症に関する保護作用を調べました。動物実験でドクダミは、有意にスーパーオキシドジスムターゼ、マロンジアルデヒド、ヒドロキシプロリン、インターフェロン-γおよび腫瘍壊死因子-αのレベルを低下させました。また、ドクダミは、ブレオマイシン治療ラットの肺の形態学的外観を改善しました。ドクダミがブレオマイシン誘導肺線維症に対する保護作用を有することが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17597505

【5】ドクダミ水抽出物がマスト細胞性アナフィラキシー反応に及ぼす作用を検討しました。ドクダミ抽出物の経口投与は、マウスにおいて化合物に誘発された全身アナフィラキシーを阻害しました。また、ドクダミ抽出物は、ラットにおける抗ジニトロフェニルIgE抗体により活性化される局所アレルギー反応を阻害抑制しました。ドクダミ抽出物がマスト細胞媒介のアナフィラキシー反応に対する治療に有益である可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16204936

【6】ドクダミの酢酸エチル抽出物の肝保護作用について検討しました。ドクダミ抽出物は鉄酸化還元に対する強い抗酸化力を示し、DPPHにてラジカル補足能を示しました。さらにドクダミ抽出物(1000mg/kg)は、四塩化炭素誘発肝障害に対して保護作用を有しました。このことから、ドクダミ抽出物は抗酸化能力により急性肝障害に対して保護作用を有している可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22515645

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参考文献

・原山建朗 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・日経ヘルス 日経ヘルスサプリメント辞典第4版 日経BP社

・村上光太郎 食べる薬草事典-春夏秋冬・身近な草木75種 農山漁村文化協会

・Kim D, Park D, Kyung J, Yang YH, Choi EK, Lee YB, Kim HK, Hwang BY, Kim YB. (2012) “Anti-inflammatory effects of Houttuynia cordata supercritical extract in carrageenan-air pouch inflammation model.” Lab Anim Res. 2012 Jun;28(2):137-40. Epub 2012 Jun 26.

・Wang F, Lu F, Xu L. (2007) “Effects of Houttuynia cordata thumb on expression of BMP-7 and TGF-beta1 in the renal tissues of diabetic rats.” J Tradit Chin Med. 2007 Sep;27(3):220-5.

・Kim GS, Kim DH, Lim JJ, Lee JJ, Han DY, Lee WM, Jung WC, Min WG, Won CG, Rhee MH, Lee HJ, Kim S. (2008) “Biological and antibacterial activities of the natural herb Houttuynia cordata water extract against the intracellular bacterial pathogen salmonella within the RAW 264.7 macrophage.” Biol Pharm Bull. 2008 Nov;31(11):2012-7.

・Ng LT, Yen FL, Liao CW, Lin CC. (2007) “Protective effect of Houttuynia cordata extract on bleomycin-induced pulmonary fibrosis in rats.” Am J Chin Med. 2007;35(3):465-75.

・Li GZ, Chai OH, Lee MS, Han EH, Kim HT, Song CH. (2005) “Inhibitory effects of Houttuynia cordata water extracts on anaphylactic reaction and mast cell activation.” Biol Pharm Bull. 2005 Oct;28(10):1864-8.

・Tian L, Shi X, Yu L, Zhu J, Ma R, Yang X. (2012) “Chemical composition and hepatoprotective effects of polyphenol-rich extract from Houttuynia cordata tea.” J Agric Food Chem. 2012 May 9;60(18):4641-8. Epub 2012 Apr 26.

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