デビルズクローとは
●基本情報
デビルズクローはゴマ科の多年草[※1]ハーブで実の部分が木化し、爪状のトゲがあるため、”悪魔の爪”という名前がつけられました。
学名のハルバゴフィツム(Harpagophytum)は、ギリシャ語で鉤状の植物(hookplant)を意味します。
動物に種子を付着させて種子を広めるため、果実の形が鉤状になっています。実際にデビルズクローが育つ地域では、この突起に引っかかり怪我をする動物もいるとのことです。
原産地はアフリカ南西部で、現在はカラハリ砂漠やナミビアのサバンナで栽培されています。果実の形が特徴的ですが、ハーブとして利用されるのは塊茎の部分です。
●デビルズクローの歴史
デビルズクローがヨーロッパの植物療法に紹介されたのは1950年代の始めで、そのころからリウマチや関節炎に対して炎症を抑える薬として利用されていました。
デビルズクローが有名になったきっかけは、抗炎症作用や鎮痛作用のある医薬品との比較研究で有効性が示されたことによります。
●デビルズクローの有効成分と効果
デビルズクローに含まれているイリドイド配糖体[※2]のハルパゴシドという成分に、消炎鎮痛作用を持つことが知られています。他にもフラボノイドや桂皮酸、多糖類などの成分も含まれています。
また、苦味成分により消化が促進されるため、昔から知られている消炎鎮痛作用以外にも、
消化不良や食欲不振にも使われ続けています。
●デビルズクローの利用方法
デビルズクローはチンキ剤[※3]やカプセル剤として飲むか、ハーブティーとして飲むのが一般的です。
胃酸によって働きが抑えられるとの報告もあるため、胃酸の分泌が少ない食間に飲むのが良いとされています。
また関節炎に対するハーブティーでは、メディスイートやセロリシードとのブレンドが多いです。
しかし、日本の家庭ではデビルズクローの栽培は難しいといわれています。
●デビルズクローを摂取する際の注意点
デビルズクローは適切な量で摂取すれば、ほぼ安全とされています。
しかしデビルズクローは子宮を収縮させる働きを持つことから、妊娠中や授乳中の摂取は控える必要があります。
また胃潰瘍や十二指腸潰瘍の方も摂取は控える必要があります。
[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
[※3:チンキ剤とは、ハーブや生薬をエタノールに浸してつくられる液状の製剤です。]
デビルズクローの効果
●炎症を抑える効果
デビルズクローは、リウマチや関節炎の痛みや炎症を軽減する民間薬として使われてきました。
リウマチや関節炎の痛みは、体内のその部分で炎症が生じることで発生します。
デビルズクローのイリドイド配糖体の効果によって炎症が抑えられ、痛みを軽減するといわれています。
デビルズクローの抽出物で、有効成分のハルパゴシドを1日に50-100mg 摂取させると、背中の痛みを軽減するという研究成果があります。
変形性関節症には、1日60mg 程度のハルパゴシドを含むデビルズクローの摂取が目安とされています。【1】【2】【3】
デビルズクローはこんな方におすすめ
○関節痛を緩和したい方
デビルズクローの研究情報
【1】ヒト単球細胞を対象に、デビルズクロー抽出物を投与したところ、AP-1経路を抑制することにより、炎症関連遺伝子が抑制されたことから、デビルズクローは抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22072539
【2】変形性膝関節症患者122名を対象に、デビルズクロー抽出物を1日あたり2610mg の量で4か月間摂取させたところ、疼痛および膝機能障害に改善が見られたことから、デビルズクローは鎮痛作用ならびに変形性膝関節症に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11143915
【3】デビルズクローは伝統的に、解熱鎮痛および消化不良の治療に使われてきました。近年は、変形性関節症に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17627199
参考文献
・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・林真一郎 メディカルハーブの事典 東京堂出版
・アースプランツリサーチオーガニゼーション監修 HERB BIBLE 双葉社
・クリス・D・メレティス ハーブの安全性ガイド フレグランスジャーナル社
・Fiebich BL, Munoz E, Rose T, Weiss G, McGregor GP. 2012 “Molecular targets of the antiinflammatory Harpagophytum procumbens (devil’s claw): inhibition of TNFα and COX-2 gene expression by preventing activation of AP-1.” Phytother Res. 2012 Jun;26(6):806-11.
・Leblan D, Chantre P, Fournie B. 2000 “Harpagophytum procumbens in the treatment of knee and hip osteoarthritis. Four-month results of a prospective, multicenter, double-blind trial versus diacerhein.” Joint Bone Spine. 2000;67(5):462-7.
・Denner SS. 2011 “A review of the efficacy and safety of devil’s claw for pain associated with degenerative musculoskeletal diseases, rheumatoid, and osteoarthritis.” Holist Nurs Pract. 2007 Jul-Aug;21(4):203-7.