クローブ

clove
チョウジ(丁字・丁子) チョウコウ(丁香) ヒャクリコウ(百里香) ケイゼッコウ(鶏舌香)

クローブはハーブの一種で、防腐作用を持つことから肉料理の香辛料などに利用されています。また、生薬として胃の健康を保つ効果や、口臭の予防、痛みを軽減する効果などが期待されています。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

クローブとは

●基本情報
クローブはフトモモ科の植物の一種であり、主につぼみを乾燥させたものが香辛料や香水などの原料として利用されています。
クローブのつぼみは大きさが約1.5cmで濃い褐色をしており、釘のような形状であることから、フランスでは「釘」を意味するClouと呼ばれ、中国でも釘と同じ意味を持つ「丁」という字を用いて「チョウジ(丁字・丁子)」や「チョウコウ(丁香)」と呼ばれています。
クローブの特徴は、強く甘い香りと、舌がしびれるような刺激的な味です。その強い香りから、クローブの木が育っている島が目に入る前に、船乗りたちがクローブの香りを嗅ぎつけることができたため、「百里香(ヒャクリコウ)」という呼び名もあります。
クローブは主に熱帯地域で栽培されており、熱帯でも特に暑いといわれる春・秋に、クローブの木の枝の先につくつぼみが赤く色づき始める頃に収穫が始まります。
収穫されたつぼみを乾燥したものが香辛料となるほか、独特の香りを活かして匂い袋にしたり、胃腸薬などの医薬品としても利用されます。
また、クローブのつぼみを支える柄や葉から抽出されたオイルが、化粧品の原料やタバコの香り成分として利用されています。

●クローブの歴史
クローブについての最も古い記録として、ヒンドゥー教の医学において内科・外科の処方に使われていたことや、中国の書物である「三省故事」には、漢(紀元前202年~西暦8年)時代、宮廷に仕える人々は口の中をクローブで清めてから皇帝の前に出ることが義務づけられていたという記述があります。
また、ペルシャではクローブが気分のふさぎを治す・食欲を増進する、船酔いや痛風にも効果があるといわれていたほか、ギリシャではクローブが香辛料や薬として極めて有用であるといわれていました。
そしてヨーロッパでは激しいスパイス争奪戦が繰り広げられていた1514年に、ポルトガル人のダブリューとセラーノによって、クローブの産地のひとつであるテルテナ島が発見されました。
1519年、ポルトガル人の航海者であるマゼランはスペインの国王に命じられ、スパイスの産地までの航路探索を開始しました。そして、彼の後を継いだ船員たちがクローブの実をスペインに持ち帰ったことにより、莫大な利益がもたらされたといわれています。

●クローブの生産地
現在のクローブの主な生産地は、マダガスカル、タンザニア、ブラジル、インドネシアです。最も生産量が多いのはインドネシアであり、年間約7万t~8万tのクローブが生産されている一方で、世界最大の消費国でもあります。

●クローブの働き
クローブが独特の香ばしい香りと防腐作用を持つことを活かして、古くからクローブは香辛料として利用されています。
さらに、殺菌・消毒作用や消化を促進する作用のほか、クローブに含まれる香気成分であるオイゲノールは虫が嫌う香りであるため、虫よけとして用いられることがあります。

<豆知識①>ペスト予防策に利用されていたクローブ
17世紀のヨーロッパではペスト[※1]が大流行し、全人口の3分の1が死亡するという事態にまで発展しました。さらに、ペストと併発してコレラ[※2]も流行していたため、伝染病による被害は深刻なものとなっていました。
当時、伝染病は細菌の繁殖によって感染することが知られておらず、このような伝染病の原因は悪臭にあると考えられていたことから、女性はスカートの裾にクローブを入れるポケットをつけたり、医者はマスクにクローブを詰めて治療にあたるなどの予防策が取られていました。
このようなクローブを利用した予防策が広まったことにより、伝染病の流行とともにクローブの価値が上がったといわれています。

<豆知識②>ヨーロッパの台所のお守り・ポマンダー
ポマンダーとは、クローブをレモンなどの柑橘類に刺してつくる芳香玉のことです。
ヨーロッパでは、ポマンダーを風通しの良い所に干しておくことにより、クローブに含まれる成分が細菌や虫を寄せつけず、防腐作用によって中の柑橘類が腐らずに良い香りを放つため、「台所のお守り」として生活に取り入れられています。

[※1:ペストとは、ペスト菌の感染によって発症する急性感染症のことです。皮膚の変色から黒死病ともいわれます。]
[※2:コレラとは、コレラ菌を病原体とする感染症の一種です。下痢や嘔吐などの症状が現れます。]

クローブの効果


●胃の健康を保つ効果
クローブには消化を促進する作用があるとして、クローブの生産地であるタンザニアでは、胃の健康を保つためにクローブのつぼみが食されています。
また、胃腸薬などの医薬品の原料としてクローブが利用されています。【1】

●口臭を予防する効果
クローブには口臭を予防する効果が期待されており、口腔清涼剤などにも利用されています。【1】【2】

●痛みを軽減する効果
クローブから抽出したオイルを皮膚に塗ることによって、筋肉痛などの痛みを和らげる効果や、歯が痛い時に患部にクローブオイルを塗ると痛みを和らげるといった効果が期待できます。【3】

クローブはこんな方におすすめ

○胃の健康を保ちたい方
○口臭が気になる方
○炎症や痛みを抑えたい方

クローブの研究情報

【1】クローブ精油を経口投与したところ、口腔内のカンジダ菌が減少し、クローブ精油を胃内投与したところ、胃内と糞便中のカンジダ菌が減少しました。この結果より、クローブは抗菌作用を持ち、口腔ケアや胃腸のケアに役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15711533

【2】口腔細菌に対するクローブ精油の抗菌作用を検討したところ、虫歯の原因となる齲蝕原因菌に対する抗菌作用を示したことから、クローブはオーラルケアやデンタルケアとして有望視されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21397894

【3】マウスを用いて、クローブを0.1ml/kg の量で腹腔内投与したところ、ホルマリン誘発疼痛反応が軽減したことから、クローブが鎮痛作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22453493

参考文献

・クローブについて/エスビー食品株式会社
http://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/detail.php?SPCCODE=00013

・歴史の中のスパイス(その2) | スパイスから世界が見える | ハウスの出張授業 | ハウス食品
http://housefoods.jp/activity/shokuiku/taiken/spice-world/history2.html

・サンジバルのクローブ生産/在タンザニア大使館

・薬草に親しむ-防虫や抗菌作用のある植物/エーザイ株式会社
http://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/insecticide.html

・Taguchi Y, Ishibashi H, Takizawa T, Inoue S, Yamaguchi H, Abe S. 2005 ” Protection of oral or intestinal candidiasis in mice by oral or intragastric administration of herbal food, clove (Syzygium aromaticum). ” Nihon Ishinkin Gakkai Zasshi. 2005;46(1):27-33.

・Moon SE, Kim HY, Cha JD. 2011 “Synergistic effect between clove oil and its major compounds and antibiotics against oral bacteria.” Arch Oral Biol. 2011 Sep;56(9):907-16.

・Halder S, Mehta AK, Mediratta PK, Sharma KK. 2012 “Acute effect of essential oil of Eugenia caryophyllata on cognition and pain in mice.” Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2012 Jun;385(6):587-93.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ