ユズ種子とは
●基本情報
ユズは、ホンユ、イズ、イノス、ユノスとよばれることもあります。ミカン科ミカン属に属し、原産地は中国です。ユズは、カンキツ類の中では病害虫に強く、耐寒性も強いので、比較的生育しやすく、中国の南西域や北方中央域に広く分布しています。原産地では、野生しているといわれていますが、原生林は知られておらず、くるみ、柿、ザクロなどの生育している地域の庭先で栽培されています。
日本には、北京方面から朝鮮半島を経て、少なくとも唐代以前の古くに伝来したといわれています。現在、日本のユズ出荷量の7割強を占めているのは、高知県と徳島県です。これらの地域には、樹齢15~35年生の園地が多くみられます。
収穫は、10月中旬~11月下旬頃に行われます。成熟したユズの果実は鮮やかな黄色です。表面には強いしわがあり、皮は分厚く、内部に大型で白色の種子を7~8個含んでいます。ユズの用途は、生果としてよりも、食酢としてのジュースとしての利用の方が多くなっています。ユズ種子は、化粧品や漢方薬、サプリメントとして利用されています。
●ユズ種子に含まれる成分と性質
ユズ種子の表面のぬめりは、水溶性食物繊維の一種であるペクチンで、血糖値の上昇抑制効果やコレステロール値の上昇を抑える効果があります。また、ゆずの香りのもととなる精油成分は主にリモネンです。リモネンには血行促進作用やリラックスの効果があることが分かっています。
ユズ種子の効果
●美白効果
皮膚は、三つの層によって構成されています。この層の一つに、メラニン色素[※1]という黒い色素を産生するメラノサイト[※2]という細胞があります。このメラノサイトがつくるメラニンが多いと皮膚の色が黒くなります。メラニン量が多い黒人は肌の色が黒く、量が少ない白人は色が白いという違いをもたらしています。人の皮膚に存在するメラニンは、チロシナーゼ[※3]という酵素の働きによって生成されていきます。ユズ種子のエキスを細胞に与える実験では、メラニンの生成が抑制したという報告があります。ユズ種子には、美白効果が期待できます。さらにユズ種子エキスが肌のターンオーバーを高めるという報告もあり、美肌効果も期待できます。
●ストレスをやわらげる効果
ユズ種子のエキスを摂取した人の脳波(α波[※4])を測定すると、顕著なα波の増加が確認されたという報告があります。α波は、リラックスの指標であり、増加するとリラックスした状態を示します。さらに、ストレス負荷になると唾液中のクロモグラニンAという物質の分泌量が増えるのですが、ユズ種子エキスの摂取によりクロモグラニンAの分泌量の増加がみられなくなったという報告があります。以上のことからユズ種子には、ストレスをやわらげる効果が期待できます。●メタボリックシンドロームを予防する効果
動物を使ったある研究では、高脂肪・高コレステロール食を摂取したラット群に比べてユズ種子エキスを与えた群は体重および脂肪重量が減少し、総コレステロール値、中性脂肪値の低下がみられました。また脂肪合成に関わる酵素の活性を抑え、糖・脂肪代謝に関わる酵素の働きを活発にすることから、メタボリックシンドロームのリスクを軽減できると考えられます。【1】
[※1:メラニン色素とは、シミの原因になるものです。メラニン色素の蓄積によってシミは形成されます。]
[※2:メラノサイトとは、皮膚を構成する主要な細胞のひとつです。メラニンを生成する機能を持っています。]
[※3:チロシナーゼとは、アミノ酸であるチロシンを酸化して、メラニンをつくる酵素のことです。この酵素を阻害することにより、メラニンの生成をくいとめ美白効果が働きます。]
[※4:α波とは、リラックス時に多く発生する脳波です。]
ユズ種子は食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○美肌を目指したい方
○ストレスをやわらげたい方
○生活習慣病を予防したい方
ユズ種子の研究情報
【1】ラットにユズ種子エキス5%添加-餌もしくはコントロール餌を4週間摂取させた結果、コントロール群にくらべ、血清トリグリセリドは40%、肝臓トリグリセリドは60%でいずれも有意に減少しました。さらに、脂肪酸合成活性も抑制されていたことから、ユズ種子は生活習慣病予防効果を持つと期待されています。
http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200902218697081183
【2】ユズ種子中のリモノイドを分析した結果、癌予防に有効であるとされるd-リモネン、リモノイド類、ヘスペリジンが含まれており、抗酸化作用を含め、多様な機能性が期待されています。
http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200902070092096505
【3】ユズ種子オイルの効果を,Nc/Ngaマウスを用いたアトピー性皮膚炎モデルで検証しました。その結果、組織化学的解析,耳介の腫脹,血清ヒスタミン量は,租精製,蒸留ともに抑制効果がありました。このことからユズ種子は、アトピー性皮膚炎予防効果や美肌効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009482929
参考文献
・農山漁村文化協会編 地域食材大百科 果物・木の実、ハーブ 農山漁村文化協会
・清水宏 あたらしい皮膚科学 中山書店
・田中一成, 西園祥子, 越前佳恵, 下田博司, 田中潤司 (2006) “ユズ種子エキスがラットの脂質代謝に及ぼす影響” 日本栄養・食糧学会総会講演要旨集 20060401
・橋永文男、長谷川信、HERMAN Z “ユズ種子中のリモノイド” 日本食品工業学会誌 巻:37 号:5 ページ:380-382
・山脇 京子、渡部 嘉哉、浅野 公人、峠 篤志、東谷 望史、溝渕 俊二 (2012) “ユズ種子オイルの抗アトピー性皮膚炎効果に関する研究” アレルギー 61(3・4), 521, 2012-04-10