長命草

peucedanum japonicum
牡丹防風(ボタンボウフウ) サクナ

長命草は沖縄県などの温暖な地域で、海岸沿いに自生する多年草の一種です。ビタミンやミネラルを豊富に含み、古くから料理や民間薬として、健康に役立てられてきた食材です。高い抗酸化作用があり、排尿促進や血流改善などにも有効であることが近年の研究で明らかになっています。長命草は、長寿で知られる沖縄県の健康の秘訣です。

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長命草とは

●基本情報
長命草(ちょうめいそう)とは、セリ科カワラボウフウ属の常緑多年草です。草丈は100㎝程度で、牡丹のような形をした肉厚の葉をしており、7月~9月には白い集合花を咲かせます。海岸の断崖や沖縄県特有の珊瑚石灰岩できた岩場などに自生します。長命草の主な成分として、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンE、カロテン、カルシウム、ポリフェノールを豊富に含んでいるため、民間療法では風邪やぜんそく、腎臓病、神経痛の治療にも用いられてきました。沖縄県では「1株食べると1日長生きする」植物として、長命草と呼ばれたことが名前の由来ともいわれています。ほかにもサクナ、ボタンボウフウ(牡丹防風)とも呼ばれ、広く親しまれてきました。葉や茎は野菜としても利用され、沖縄では天ぷらやおひたし、青汁、茶などにして食べられます。また、独特の苦みと香りが魚や肉の臭み消しや毒消しにも有効であるため、古くから健康食材として重宝されてきました。長命草の豊富な栄養素の働きで、高血圧や動脈硬化、抗酸化作用、整腸作用、疲労回復効果があるといわれています。また、近年の研究から、長命草由来のイソサミジンの利尿作用が注目されています。加齢に伴う過活動膀胱や前立腺肥大の症状をやわらげる効果が期待されており、排尿でお困りの方にもおすすめの食材といえます。

●長命草の歴史
原産地の沖縄では、昔から長命草を刺身のツマや和え物にして食べられ、沖縄の伝統的な食文化で長寿の秘訣として代々受け継がれてきました。これは、沖縄で昔から食べ物を「ぬちぐすい」といい、医食同源[※1]の考え方が大切にされてきたことも大きく関係しています。また、八重山諸島では、神様への捧げ物にも用いられ、神聖な植物として大切にされてきました。そして近年、研究などで長命草の栄養成分が明らかになり、栄養科学的にも高く評価されるようになりました。

●長命草の生産地
日本では関東地方より西のエリアや九州沖縄諸島、与那国島などに分布しており、波風が打ちつける海岸沿いに自生します。温暖な気候で、強い太陽の日差しを浴びて育つ長命草は、強い生命力を持ち、栄養も豊富であるといわれています。

●長命草の働き
長命草はビタミン類を始め、ポリフェノールやカロテン、ミネラル類を豊富に含みます。ポリフェノールは、そばなどに含まれるルチンとコーヒーなどに含まれるクロロゲン酸を含み、高い抗酸化作用を発揮します。また、カロテンやビタミンEにも抗酸化作用があるため、強力に活性酸素を除去する効果が期待できます。抗酸化作用により、血流改善や動脈硬化の予防に効果的であるだけでなく、発がん性物質の抑制にも有効であるといわれています。また、ビタミンCのメラニン生成を抑制する働きや潤いを保つ働きは、長命草の抗酸化作用との相乗効果によって、美肌効果やアンチエイジングにも有効であるといわれています。長命草には、貧血予防や骨粗しょう症予防に有効な鉄分やカルシウムなどのミネラル類も含まれているため、女性に積極的にとってもらいたい食材です。長命草の特殊成分イソサミジンには、排尿機能の改善に効果を発揮します。また、高い血管拡張作用があるため、血流の改善、冷え性やむくみの改善、動脈硬化や高血圧の予防に有効であるといえます。

[※1:医食同源とは、薬も食事も根源は同じで、日ごろからバランスの取れた食事をすることで病気を予防することが最善の方法であるという考え方のことです。]

長命草の効果

●活性酸素を除去する効果
長命草にはルチンやクロロゲン酸などのポリフェノールが含まれています。これらのポリフェノールは日常生活で発生した活性酸素を除去する働きがあります。ストレスや紫外線で増えた活性酸素は、細胞を傷つけ、様々な病気の原因になります。ルチンを含む代表的な食材であるそばや、クロロゲン酸を含む食材のコーヒーに比べ、長命草のこれらの含有量は2倍以上です。そのため、強力な抗酸化作用が期待できます。【2】

●美肌効果
長命草にはポリフェノールのほかにもビタミンEやビタミンCが含まれています。ポリフェノールとビタミンEの抗酸化作用により、紫外線などによる活性酸素から肌細胞を守ってくれます。また、ビタミンCの美白効果や潤いを保つ働きにより、美しい肌へと導きます。

●排尿を促す効果
長命草の特殊成分イソサミジンには、過剰に収縮した膀胱や前立腺の筋肉を緩める働きがあります。そのため、残尿感や夜間頻尿の症状をやわらげる効果が期待できます。ラットによる実験では、長命草のエキスを経口投与し、その1時間後に30ml/kgの水を飲ませ、その後水を飲ませて2時間後の排尿回数及び、排尿量を測定したところ、排尿回数の抑制と1回あたりの排尿量の増加が見られました。

●血流を改善する効果
イソサミジンには、高い血管拡張作用があります。実験の結果、内皮細胞から放出される一酸化窒素を介して血管を拡張していることがわかりました。血管拡張作用により、血流が改善されるため、冷え性やむくみの改善が期待できるだけでなく、動脈硬化などの血管に関係する疾患の予防にも効果的です。【1】【3】【4】

長命草は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○いつまでも若々しくいたい方
○美肌を目指したい方
○排尿でお悩みの方
○血流を改善したい方

長命草の研究情報

【1】長命草の機能性成分として血流改善効果をもつクマリン類が知られています。長命草に血流改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1934161

【2】屋久島ボタンボウフウの動脈硬化抑制作用および血管拡張作用があることがわかりました。また、ボタンボウフウにはイソサミジンの他に、クロロゲン酸やルチンといったポリフェノールが豊富に含まれていることから抗酸化作用も期待できることが分かりました。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902295824495930

【3】長命草の機能性成分として血小板凝集抑制作用を持つクマリン類が知られています。長命草に血小板凝集抑制作用ならびに血流改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1453177

【4】長命草の根にはクマリン類の機能性成分サミジンが含有されており、長命草に血流改善効果が期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110003650326

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参考文献

・成瀬宇平 監修 食材図典 小学館

・Takeuchi N, Kasama T, Aida Y, Oki J, Maruyama I, Watanabe K, Tobinaga S. (1991) “Pharmacological activities of the prenylcoumarins, developed from folk usage as a medicine of Peucedanum japonicum THUNB.” Chem Pharm Bull (Tokyo). 1991 Jun;39(6):1415-21.

・大野木宏 (2009) “屋久島ボタンボウフウの血管機能改善作用” 食品と開発 年:2009巻:44 号:12 ページ:38-40

・Jong TT, Hwang HC, Jean MY, Wu TS, Teng CM. (1992) “An antiplatelet aggregation principle and X-ray structural analysis of cis-khellactone diester from Peucedanum japonicum.” J Nat Prod. 1992 Oct;55(10):1396-401.

・重松 伸治、河野 功、河野 信助 “ボタンボウフウ根から(+)-サミジンの単離について” 藥學雜誌 102(4), 392-394, 1982-04-25   

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