チャイブ

Allium schoenoprasum L.
シブレット エゾネギ セイヨウアサツキ

チャイブの原産地は北半球の温帯から寒帯で、現在はその栽培のしやすさから家庭菜園として楽しまれています。ネギの仲間でもあり、やさしい香りと味がするのが特徴で、料理に多く利用されています。またその香り成分には、食欲増進効果があり、鉄、ビタミンCを豊富に含むことから貧血を予防する効果も期待できます。

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チャイブとは?

●基本情報
ユリ科ネギ属の多年草[※1]で、たくさんの株が群がる姿で紹介されていることから複数形のチャイブスといわれます。日本ではエゾネギやセイヨウアサツキとも言われています。フランス語ではシブレットと呼ばれ、料理の仕上げに風味づけなどに利用されています。小さな鱗茎(りんけい) [※2]をもつ球根植物で、鱗茎が分球[※3]し、群をなして生育します。葉っぱは円筒形をしていて細長く、その長さは20 cm~30 cmにもなります。また6月~7月ごろには、ピンク色の花を咲かせます。日本が原産のアサツキはチャイブの変種で、ネギのように薬味として利用されるほか、北陸の一部では球根を食用とする地域もあります。チャイブは冬に葉が枯れても休眠しませんが、アサツキは球根ができ、夏に休眠するのが特徴です。
またチャイブの利用は食用だけでなく、コンパニオンプランツ[※4]として他の植物と一緒に植えられることもあります。たとえばチャイブをバラの間に植えるとバラに発生する黒星病[※5]の被害を軽減させる効果があるといわれています。

●チャイブの歴史
食用としては5000年前に中国で利用されたのが初めてで、紀元前1000年以上前のレシピにはチャイブの効果と風味を活かした魚料理が記されています。チャイブを13世紀にヨーロッパに持ち帰ったのがマルコ・ポーロといわれており、16世紀にはヨーロッパで一般的に栽培されるハーブとなりました。
チャイブの学名であるAlliumはラテン語で「匂い」を意味するalereに由来します。種小名のスコエノプラムス(schenoprasum)はギリシャ語で「イグサ」を意味するschoinosと「ニラネギ」を意味するprasonを合わせた言葉で、葉がイグサに似ていることから名づけられました。

●チャイブの生産地
原産地はヨーロッパの寒冷地で、現在ではカナダ、アメリカの北部、日本でも本州北部や北海道に自生しています。岩場から川岸、草地や森にいたるまで、広範囲でみられ、その栽培のしやすさから家庭菜園としても楽しまれています。商業用として出回るものの多くはドイツ、デンマーク、イギリスといった北ヨーロッパやアメリカで生産されています。
チャイブの旬は夏で、大きく育った葉は根本を5cm程度残るように収穫すると、新しい芽がまた伸びてきます。

●チャイブの利用
チャイブは、球根から葉まですべて食用として広く利用されています。ネギの仲間では一番小さく、やさしい香りと味がするのが特徴です。そのためヨーロッパやアメリカでは、刻んでスープやオムレツ、ドレッシング、マリネ液などに混ぜて、彩りや味のアクセントとして利用されています。また風味が増すともいわれ、バターやチーズに混ぜることもあります。和食には、青ネギのように薬味として利用できます。
花はばらしてサラダなどに用いられますが、特にフランス料理では花が多く利用されます。
チャイブを食用として利用するときには、根元から葉先までピンと張りがあるものを選ぶのがポイントです。

●チャイブに含まれる成分と性質
チャイブの栄養成分は青ネギに似ており、β-カロテンカルシウムが豊富に含まれています。またチャイブの香気成分にはジプロピルジスルフィド、メチルペンシルジスルフィドなどといったイオウ化合物[※6]が多く含まれているのが特徴です。このようなチャイブの香りの成分には、食欲増進や血行促進などさまざまな効果があるといわれています。民間療法としては、中国では止血剤に、ヨーロッパでは貧血症の改善に使われていました。さらにインフルエンザや風邪に対しても効果があり、O157の増殖抑制の効果もあります。また頭痛や発熱時にチャイブをハーブティーとして飲用されることもあります。【3】【4】

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:鱗茎とは、短い茎の周囲に生じた多数の葉が養分を貯えて成長とともに厚みを増し、重なり合って球形になったもののことです。]
[※3:分球とは、球根が子孫である子球をつくり、それが分かれて、ひとつの新しい個体になることで、球根の一般的なふえ方です。]
[※4:コンパニオンプランツとは、一緒に植えておくと病害虫が少なくなったり、生育がよくなる互いに相性のよい植物のことで、共栄植物ともいわれます。]
[※5:黒星病とは、葉に淡褐色または黒色のしみのような斑点ができる植物の病気です。斑点が大きく広がると斑点の周りから黄色く変色してやがて落葉してしまいます。]
[※6:イオウ化合物とは、長ねぎ・玉ねぎ・にんにく・にらなどのユリ科の野菜や、キャベツ・大根・わさびなどのアブラナ科の野菜に含まれている、強い香りを持つ成分です。アリシンのほかに、抗ガン作用を持つアホエンなどがあります。]

チャイブの効果

●食欲増進効果
チャイブの香気成分のイオウ化合物には、消化液の分泌を促す働きがあります。そのため消化促進効果が期待できます。加えて食欲増進が期待できるため、食事の際にお茶として利用されることがあります。

●血栓症を予防する効果
チャイブには血栓症を予防する効果があります。脳や心臓で血管壁が傷ついたりすると、その部分を修復するために血液が固まりかさぶたができたような状態になります。これが血栓です。通常であれば傷が修復されると血栓自然になくなりますが、それがうまく機能しないと血栓が血液の流れ妨げてしまい血栓症となります。血栓症は動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす原因となりますが、チャイブの香気成分には、血液を浄化して血行を促進し、血栓[※7]をできにくくする働きがあることから、これらの生活習慣病の予防にもつながります。

●貧血を予防する効果
貧血は血液に含まれるヘモグロビン[※8]量が減少している状態を指し、それにより酸素不足状態になると、疲れや頭痛、めまい、肩こりなどの症状が現れます。貧血は、女性だけでなく、スポーツを行った際に酸素がたくさん消費されると体内の鉄分も消費されるため、男性も対策が必要です。もっとも多い貧血の原因は不足です。チャイブには鉄分が豊富に含まれているのに加え、一緒にとると吸収率が高まるといわれているビタミンCも豊富に含まれているため、貧血の予防として効果があります。

●疲労回復効果
チャイブには疲労回復効果があるといわれています。体内で糖質がエネルギーに変わる際に、補酵素として働くのがビタミンB1です。そのためビタミンB1が不足すると糖質の代謝がスムーズに行われなくなるため、ピルビン酸や乳酸といった疲労物質が体内に蓄積され、その結果疲労感が生じます。チャイブの香り成分には、ビタミンB1の吸収をよくする働きがあることから、疲労回復効果が期待できます。

[※7:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。】
[※8:ヘモグロビンとは、脊椎動物の赤血球に含まれる物質で、酸素を運搬する働きを持っています。】

こんな方におすすめ

○食欲を増進させたい方
○生活習慣病を予防したい方
○貧血でお悩みの方
○疲労を回復したい方

チャイブの研究情報

【1】チャイブは抗菌効果があるとされ、日焼けやのどの痛みなどに使われている。チャイブの葉の抽出物を使い抗炎症化効果について調査した結果、抗炎症効果を発揮することがマウスを使った実験において示されました。また、100%抽出物においては食作用と酸化ストレスの阻害効果も示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24781739

【2】チャイブの花の抽出物(ポリフェノール)を使い、その腫瘍の細胞増殖抑制能を確認するためにHaCaT細胞株を用いて調査をしてみたところ、最も低い濃度(25μg/mL)の時でもその効果を発揮し腫瘍の細胞増殖抑制能があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22051932

【3】一般に料理に用いられるハーブ(コリアンダー・オレガノ・バジル・チャイブ・パセリ・ローズマリー)を使い、冷蔵庫の環境でO157とサルモレラ菌の増殖確認をした結果、5日後の状態ではすべてのハーブにおいて抗菌効果を発揮し、その後、効果が弱まっていくことがわかりました。この結果からハーブは新鮮なものほど強い抗菌効果が発揮されることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16924931

【4】チャイブにはジアリルジスルフィドが多く含まれていることが知られており、それにより抗菌効果を発揮します。チャイブオイルで、O157に対する抗菌効果を試験したところ、O157の増殖の抑制を確認し、抗菌効果があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23848105

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参考文献

・日本香料協会 香り百科事典 朝倉書店

・成瀬宇平  食材図鑑 小学館

・主婦の友社 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・工藤一彦 からだによく効く栄養の本 実務教育出版

・Parvu AE, Parvu M, Vlase L, Miclea P, Mot AC, Silaghi-Dumitrescu R. (2014) “Anti-inflammatory effects of Allium schoenoprasum L. leaves.” J Physiol Pharmacol. 2014 Apr;65(2):309-15.

・Kucekova Z, Mlcek J, Humpolicek P, Rop O, Valasek P, Saha P. (2011) “Phenolic compounds from Allium schoenoprasum, Tragopogon pratensis and Rumex acetosa and their antiproliferative effects.” Molecules. 2011 Nov 3;16(11):9207-17.

・Hsu WY, Simonne A, Jitareerat P. (2006) “Fates of seeded Escherichia coli O157:H7 and Salmonella on selected fresh culinary herbs during refrigerated storage.” J Food Prot. 2006 Aug;69(8):1997-2001.

・Rattanachaikunsopon P, Phumkhachorn P. (2008) “Diallyl sulfide content and antimicrobial activity against food-borne pathogenic bacteria of chives (Allium schoenoprasum).” Biosci Biotechnol   

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