鶏肉とは?
●基本情報
鶏肉(とりにく・ケイニク)とは一般的にキジ科のニワトリの食肉のことを指し、牛肉、豚肉と並んで世界的に食べられている肉の一種です。ニワトリは飛ばないため、ほかの鳥に比べると家畜にしやすく、尚かつ卵も産むので重宝されている鳥といえます。
関西地方や九州地方では「かしわ(黄鶏)」とも呼ばれますが。それ由来は褐色の羽色の日本在来種ニワトリの「かしわ」というニワトリの名称が、鶏肉の一般の名称に用いられるようになったからのようです。
宗教上の理由や文化背景のため、牛肉や豚肉は食べられない国もありますが、鶏肉は「食のタブー」に触れることが少ないということも世界中で食されている理由の一つといえます。
●ニワトリの種類
世界には50種類の元となる本種があり、掛け合わされて改良されて誕生した250もの品種があります。日本は世界一ニワトリの品種が多いともいわれており、各種類によって特徴は異なります。ここでは日本で飼育されているいくつかの種類を取り上げます。
①白色レグホン
採卵鶏として一般的で「ホワイト レグホン」とも呼ばれています。イタリアが原産地ですが、その後アメリカで改良され、白い殻のたまごを産むニワトリとして有名です。
②軍鶏(しゃも)
気性が荒く、闘鶏用として有名です。食肉としても美味しいのですが、その気性から大規模飼育が難しく、食肉用には気性の穏やかな品種との交配種、金八鶏が定着しています。
③ブロイラー
食肉用の若鳥で、大量飼育されています。短期間で急速に成長させられ、生後数週間で出荷され市場にあがります。「若どり」という名称でも知られています。
④地鶏
日本農林規格(JAS)で決められた以下の定義全てをクリアしたものだけが「地鶏」といえます。
1、日本在来種由来血液百分率(※)が50%以上のものであって、出生の証明ができるものを「素びな」とする。
※在来種由来血液百分率とは
在来種(コーチン、比内鶏、烏骨鶏など)は100%、在来種以外の品種は0%となり、この二つを交配させた場合は両親鳥の血液百分率を合計し、2で割った割合の事。
2、卵がかえって75日間以上飼育されている。
3、生まれてから28日齢以降は、鶏が鶏舎や屋外を自由に運動できる「平飼い」の環境で飼育されている。
4、1㎡あたり10羽以下で飼育されている。
⑤銘柄鶏
地鶏のような規定はありませんが、ブロイラーとは異なる方法で飼育されたニワトリを指します。
●鶏肉の歴史
日本では弥生時代に稲作農耕が開始されると、同時期に家畜が導入され、ニワトリも大陸から伝来しました。飛鳥時代には天武天皇の肉食禁止令より、食べられなかった時期もありましたが、江戸時代後期にはニワトリを食べていた記録があります。第二次世界大戦後は、牛肉、豚肉が不足したこともあり、鶏肉の消費量がアメリカで増えました。アメリカ駐留軍の影響もあり、日本での鶏肉の需要も増えていきました。2017年には日本における鶏肉消費量が豚肉を超え、消費量1位になりました。
●鶏肉の部位
①ムネ肉
胸の部分の肉。脂身が少なく高タンパク質、低カロリー。含まれている栄養素にはナイアシン、ビタミンK、イミダゾールペプチドが挙げられます。
②モモ肉
足の付け根の部分で、脂肪が多くコクのある部位。ビタミンA、B₂、ナイアシンや鉄が含まれています。
③ササミ
胸肉の奥の竜骨に張り付いている部分で、鶏肉の中で最も脂肪が最も少ない部位です。高たんぱく、低カロリーなのが特徴で、トリプトファンやセレン、ナイアシンなど栄養豊かな部位でもあります。
④手羽先
翼の先の部分。関節狩り、くの字のような形をしていて、ゼラチン質と脂肪が多く含まれています。
⑤手羽中
手羽先の関節から、とがった先端部分を除いた部分。
タンパク質、コラーゲン、脂質が含まれています。
⑥手羽元
翼の根元部分で脂身が少ない部位。
コラーゲン、ナイアシン、ビタミンKなどの栄養素が含まれています。
⑦せせり
首の肉。よく動かす場所なので実が引き締まっており、歯ごたえのあり旨味のある部位。
ナイアシン、ビタミンB₂などが含まれています。
⑧皮
鶏の皮膚。コラーゲン豊富で脂肪分多い場所。ナイアシン、不飽和脂肪酸が含まれています。
上記以外にもぼんじり、砂肝、レバーなどニワトリのほとんどの部分は食用に利用されています。ただし、鶏の腸は雑菌が付きやすく腐りやすいため、ほとんど食べられることはありません。
新鮮なものを正しく処理すれば食べられないことはないようですが、衛生面、安全面からすすめられていません。
●鶏肉の選び方
鶏も産地や銘柄など選ぶ際のポイントはたくさんありますが、共通していえることは、「肉のみずみずしさ」です。鶏肉は他の肉よりも傷みやすいです。その理由として、水分を多く含んでいるということが挙げられます。時間が経つほど水分が肉の外に出てきてしまうことが挙げられます。
購入時のパックの中に赤く水っぽい液体が出ていたら鮮度が落ちているということです。このような肉を調理する際にはキッチンペーパーなどで水分をふき取りましょう。
また肉がキレイなピンク色をしている、ハリがある、皮の毛穴が盛り上がっている、なども鮮度の良さを表しています。
●鶏肉に含まれる栄養成分
〇たんぱく質
鶏肉の栄養の代表格といえるのがたんぱく質です。私たちの体内では作られない「必須アミノ酸」が含まれており、鶏肉にはこの必須アミノ酸がバランスよく含まれています。
〇コラーゲン
肌に潤いやハリ、弾力を保つことができます。骨粗しょう症の予防、目、髪、血管の老化防止に効果があります。
〇メチオニン
肝臓の毒素を排出し、機能を向上させる働きがあります。肝臓に脂肪が貯蓄するのを防ぐ働きもあります。
〇ナイアシン
ビタミンB群の一つで、シミやそばかすなどの肌の改善効果があります。また脳神経を正常に働かせる効果があるので、うつや統合失調症の予防、改善が期待されています。
〇イミダゾールペプチド
アンセリンやカルノシンの総称で、強い抗酸化作用により疲労を軽減する働きがあります。
〇ビタミンA
皮膚の粘膜を健康に保ったり、抗がん作用があるとされています。また薄暗いところで視力を保つ働きもするとされています。
〇ビタミンB₂
口内炎や皮膚炎の予防、糖尿病予防の働きも期待されます。
〇鉄
血液を作る働きがあります。鶏肉のレバーには体の吸収率が高いヘム鉄が多く含まれています。
〈鶏肉の豆知識〉
日本では風邪をひいたとき、体調がすぐれないときにおかゆを食べる人も多いかと思いますが、ほかの国では鶏のスープを飲むことがあります。
台湾料理の「麻油鶏(マアユーチー)、韓国の「サムゲタン」、ペルーの「Caldo de gallina(カルド・デ・ガジーナ)」、アメリカの「Chicken Soup(チキンスープ)」は体調の悪い時に食べるといいと言われています。鶏肉のスープは滋養にも富み、食べることで栄養と水分を同時に補給することができます。
また、ネブラスカ大学の研究ではチキンスープを食べることで消化器の炎症を減少し、免疫力を高める働きがあることが証明されています【1】
鶏肉の効果
●免疫力アップ
鶏肉に含まれているたんぱく質が免疫細胞や、免疫にかかわる酵素の材料となり免疫力の向上に役立ちます。
●高血圧の予防
鶏もも肉にはカリウムが含まれます。カリウムには高血圧の原因のひとつである、過剰な塩分を排出する働きがあり、体内の水分濃度を調節してくれます。
●疲労回復
イミダゾールペプチドが疲労の原因である酸化ストレスを緩和してくれます。
鶏肉に含まれているイミダゾールペプチドは消化器官で収集され分解されたのち、血液に乗って脳や骨格筋まで運ばれ再びイミダゾールペプチドに戻ります。そのため脳に働きかけ、疲労回復とともに、疲労しにくい体へとサポートします。
●ダイエット効果
鶏むね肉は高たんぱく・低カロリーなので、ビタミンB群が代謝をあげ、消費カロリーをアップする働きが期待できます。皮を取り除けば脂質も減らすこともできるので、ストレスなくダイエットを続けることができます。
●がん予防
レチノールはビタミンAの一種で体への吸収率が70~90%と高い成分です。基本的には視覚や目の健康を守ったり皮膚や粘膜の健康をサポートするのですが、同時に粘膜の乾燥をふさいで細菌の感染から体を守ったり、がんの発生を抑制する働きも確認されています。
こんな方におすすめ
○ダイエット中の方
○美白・アンチエイジングを気にしている方
○胃腸の調子が悪い方
○疲れを感じている方
鶏肉の研究情報
トレーニング後の牛肉、鶏肉、または乳性タンパク質が体組成と筋肉のパフォーマンスに及ぼす影響を調べた結果、鶏肉等の肉やWPC(濃縮ホエイプロテイン)から高品質のタンパク資源を摂取すると体組成に良い効果を与えることが示されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28399016/
Ⅱ型糖尿病KKAyマウスとGKラットにおいて、市販の液体鶏肉抽出物であるBRAND’S Essence of Chicken(BEC)を最大8週間経口投与したところ、血中インスリンレベルに影響を与えなかったものの糖尿病動物の高血糖を大幅に軽減しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19966489/
【1】 Chicken Soup Inhibits Neutrophil Chemotaxis In Vitro. RennardBarbara O.BA
参考文献
Sharp MH, Lowery RP, Shields KA, Lane JR, Gray JL, Partl JM, Hayes DW, Wilson GJ, Hollmer CA, Minivich JR, Wilson JM. The Effects of Beef, Chicken, or Whey Protein After Workout on Body Composition and Muscle Performance. J Strength Cond Res. 2018
Sim MK, Wong YC, Xu XG, Sim SZ, Tsi D. Hypoglycemic action of chicken meat extract in type-2 diabetic KKAy mice and GK rats. Biosci Biotechnol Biochem. 2009