チェリーとは
●基本情報
チェリーとは、バラ科サクラ属に属する果実です。多くの果実は赤い色をしていますが、品種によっては黄白色、赤黒や紫色がかったものもあります。
日本ではさくらんぼと呼ばれています。もともと桜の実を指す「桜ん坊」がなまってさくらんぼと呼ばれるようになったといわれています。
●チェリーの歴史
チェリーはヨーロッパで紀元前から栽培されていた、古い歴史を持つ果実で、中国でも、3000年前にはすでに栽培されていたという記録が残っています。
日本のチェリーの歴史は江戸時代ごろから始まります。チェリーは、日本に江戸時代の初期に中国から伝えられ、日本の気候がチェリーの栽培に適さず、普及しませんでした。
明治時代初期にドイツ人により、現在日本で食べられているさくらんぼのもととなる品種である甘果桜桃の苗木が持ち込まれ、北海道や東北に植えられ、徐々に日本でも普及しはじめました。
当時のさくらんぼは酸味が強く、日持ちが悪かったため、日本各地で独自の品種改良が進められ、甘く日持ちの良いさくらんぼが栽培されるようになりました。様々な品種改良の結果、現在日本全国で販売されているさくらんぼが誕生したのです。
アメリカのチェリーの歴史は、16~17世紀頃から始まります。移住者によってアメリカ大陸へ持ち込まれたことをきっかけに、18世紀以降にアメリカ北西部のワシントン州を中心に栽培されるようになりました。1987年以降に国産のさくらんぼより旬の時期が早く安価であるため、日本への輸入が盛んになりました。さらに、1992年にチェリーの輸入が自由化されたことで大幅に輸入量が増加しました。
●チェリーの品種
現在、チェリーには非常に多くの品類がありますが、本来は原産地の異なる3品種のみでした。
・甘果桜桃(セイヨウミザクラ)…ヨーロッパ・西アジアが原産のチェリー
・酸果桜桃(セイヨウスミノミサクラ)…米国が原産のチェリー
・中国桜桃(シナノミサクラ)…アジアが原産のチェリー
この3品種をかけ合わせて何度も品種改良を行い、数多くの品種のチェリーが生み出されました。
現在では、約1500以上の品種があるといわれています。
有名なチェリーの品種は以下の通りです。
・ジャボレー
フランスが原産の品種です。収穫時期は6月上旬で、果肉は柔らかく赤色をしています。酸味が強く糖度が低いことから、多くはジャムや果実酒などに加工されます。
・ナポレオン
ヨーロッパ各国で栽培されている品種です。収穫時期は6月下旬とやや遅めです。果実は酸味が強いため、生果実としてではなく缶詰や洋菓子に加工して食べられることが多い品種です。
・黄玉(きだま)
果肉が柔らかく、甘みが強いことが特徴です。収穫時期が6月下旬で梅雨の時期と重なるため、実のひび割れが多いことが欠点です。
・佐藤錦(さとうにしき)
ナポレオンと黄玉を交配してできた日本を代表する品種です。山形県の佐藤栄助氏によって育成されたため、佐藤錦という名がつきました。収穫時期は6月上旬~下旬で、乳白色の果実は甘味と酸味のバランスが良いため、生で食べられることが多いです。
「赤いルビー」と呼ばれ、日本で最も多く生産されています。
・高砂(たかさご)
アメリカ原産の品種です。収穫時期は6月中旬で、果実は乳白色で果汁が多く適度な酸味とほどよい甘さが人気です。ロークポート・ビガロや伊達錦とも呼ばれます。
・香夏錦(こうかにしき)
佐藤錦と高砂を交配してできた品種です。収穫時期は6月上旬で、果肉は柔らかく乳白色です。甘みが強く、酸味は少なめです。
・月山錦(がっさんにしき)
中国が原産の品種で、黄色い果皮を持ちます。収穫時期は6月下旬~7月中旬で、甘みが強く、日本国内ではあまり生産されていない貴重な品種です。
以下はアメリカンチェリーと呼ばれ、アメリカが原産で現在でもアメリカ西海岸で栽培されている品種です。
・ビング種
収穫量が最も多く、日本に輸入されているアメリカンチェリーの約9割がビング種です。
果皮が濃い赤~紫色であることから「ダークチェリー」とも呼ばれます。大粒の果実は甘みが非常に強く、生で食べる他に洋菓子などに加工されています。
果肉がしっかりしており、長距離の輸送に適しています。
5月上旬~6月中旬にはカリフォルニア州、6月中旬~7月下旬にはワシントン州で収穫されます。
・モンモランシー種
モンモラシー種の70%がミシガン州で栽培されています。
一般に「酸っぱいチェリー」と呼ばれているタルトチェリーが有名です。タルトチェリーは、99%がジュースやチェリーパイなどのケーキ、またはサプリメントなどの加工品として消費されます。
・レイニア種
粒が大きめで果皮は薄い黄赤色をしています。気温、風、雨の影響を受けやすく、熟した実の3分の1が鳥に食べられてしまうため、他のアメリカンチェリーと比べると価格がやや高めです。
柔らかい果肉は甘みが強く、色や形などの外見も日本のさくらんぼと似ているため、日本人にはビング種より好まれています。
5月中旬~6月上旬にはカリフォルニア州、6月中旬~7月中旬にはワシントン州で収穫されます。
・ブルックス種
レイニア種の交配により誕生した品種です。非常に大きな果実が特徴です。果皮は薄いピンクから黄赤色で、果肉も薄いピンクに色づきます。歯ごたえがある果肉は、アメリカンチェリーの中で最も甘みが強いといわれています。
4月下旬~5月中旬にカリフォルニア州で収穫されます。
●チェリーの原産地、生産地
甘果桜桃はイラン北部からヨーロッパ西部にかけて、酸果桜桃はアメリカ、中国桜桃はアジアが原産地とされています。
現在のチェリーは、主にトルコ・アメリカ合衆国・イランで生産されています。
日本では、山形県が国内生産量の約7割を占めており、青森県・山梨県を合わせた上位3県で国内生産量の9割近くを占めています。(2009年、農林水産省)
アメリカンチェリーの生産地は、カリフォルニア州とワシントン州の二大産地に分けられます。カリフォルニア州ではビング種、レイニア種、ブルックス種など様々な品種が生産されています。全米最大の生産地といわれているワシントン州はビング種の栽培が大半を占めています。
●チェリーに含まれる成分と性質
チェリーの小さい果実の中には、数多くの栄養素が含まれています。
その中でも、アントシアニン・カリウム・ビタミンA・葉酸・鉄・食物繊維などが他の果物よりも多く含まれており、様々な効果が期待されています。
近年、大きな社会問題となっている心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病の発病には、活性酸素[※1]が関与していると考えられています。活性酸素は、紫外線や喫煙、ストレスなどが原因で体内に発生し、細胞や血管など体の様々な部分にダメージを与えます。
また、活性酸素は生活習慣病だけではなく、老化やその他の病気を引き起こす原因であるともいわれています。
体内の活性酸素を除去するためには、ポリフェノールなどの抗酸化力を持つ成分を摂取する必要があります。
チェリーにはアントシアニンをはじめとするポリフェノールが豊富に含まれています。特にアメリカンチェリーには、100g当たり160~170mgという非常に優れた働きをもつポリフェノールが豊富に含まれており、強い抗酸化力が期待できます。
抗酸化力を持つ食品を摂ることによって、老化予防やアンチエイジング効果、メタボリックシンドロームの予防が期待できます。
また、チェリーに含まれる有効成分の一種アミグダリンには、抗炎症・殺菌効果があるため、中国では昔からチェリーを咳どめの薬として使用していたといわれています。
これらの優れた栄養素を無駄なく摂るためには、チェリーを低温で保存し、なるべく新鮮なうちに食べることが大切です。
[※1:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
チェリーの効果
チェリーには、ポリフェノールの一種であるアントシアニンやカリウム、鉄などが豊富に含まれており、以下のような効果が期待できます。
●視機能を改善する効果
チェリーには、紫色の色素であるアントシアニンが豊富に含まれています。特に、アメリカンチェリーのビング種やモンモラシー種の一種であるタルトチェリーは、果皮だけでなく果肉まで濃い赤紫色をしており、アントシアニンが豊富に含まれています。
アントシアニンには、視機能を改善する効果があります。
ものを見たときに、目に入ってきた映像を映し出す目の網膜(カメラにおけるフイルムのようなところ)に、ロドプシンという光の情報を受け取るたんぱく質が存在します。
光によってロドプシンが分解されて電気信号が発生し脳に伝わることで、「目が見える」と感じます。
ロドプシンは再合成と分解を繰り返しますが、疲れや加齢により、ロドプシンの再合成能力は低下していきます。
アントシアニンはロドプシンの再合成を促し、ロドプシンの再合成の遅れが原因で起こる目のショボつきや、かすみ、ぼやけを予防・改善できるといわれています。【3】【4】【5】【6】【8】
●炎症を抑制する効果
アメリカンチェリーのモンモラシー種の一種であるタルトチェリーは、アントシアニンを豊富に含むといわれるブルーベリー(ビルベリー)やカシス、いちごなどには含まれていない種類のアントシアニンを含んでいるとして、アメリカではサプリメントやジュースに利用されています。
タルトチェリーに多く含まれているアントシアニン(シアニジン3-グルコシルルチノシド)は、炎症に関わる酵素をブロックする働きがあります。
タルトチェリーのエキスを摂取することにより、炎症が起こった際に発生する一酸化窒素やC反応性たんぱく質[※2]を表す数値が減少し、運動後の筋肉の疲労や損傷、痛みを軽減するという実験結果が出ています。
また、各種チェリーに含まれるアミグダリンやケルセチンにも炎症を抑える効果があります。
炎症は、体のいたるところで起こります。特に毛細血管で起こりやすく、筋肉や目に症状が出やすいといわれています。近年、コンタクトレンズの普及や紫外線量の増加、携帯電話やテレビの利用時間の増加などで目がダメージを受けやすい環境が多くなってきているため、日常的な目のケアやダメージを受けないための予防策が必要とされています。チェリーを食べることにより、充血や目の病気の予防に効果的だと考えられています。【1】【2】【4】【7】
●高血圧を予防する効果
チェリーには、ナトリウムを排出し交感神経[※3]の活性を低下させる効果をするカリウムが多く含まれているため、高血圧を予防する効果があります。
カリウムには、細胞外液[※4]に存在するナトリウムとバランスをとって、血圧を正常に保つ働きがあります。近年アメリカでは成人の約3分の1が高血圧と言われており、低ナトリウム・高カリウム食が国内で推奨されている程、カリウムは高血圧に効果的であると考えられています。
カリウムが豊富に含まれているチェリーを食べることは、余分なナトリウムを排出するため高血圧の予防、改善に効果的です。
●動脈硬化を予防する効果
チェリーに含まれるケルセチンには、血液をサラサラにして血管を強くする働きがあります。また、アントシアニンとケルセチンには強力な抗酸化作用があり、悪玉コレステロールの酸化を防ぐことによって、動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果があります。
また、タルトチェリーにのみ含まれているアントシアニン(シアニジン3-グルコシルルチノシド)には、脂質の酸化反応を阻害する効果が強いことが発見され、心疾患の予防に効果的であるといわれています。【11】
●貧血を予防する効果
チェリーには、ヘモグロビンをつくる鉄と赤血球をつくる葉酸が他の果物よりも豊富に含まれています。そのため、貧血の予防に効果的です。
●疲労回復効果
チェリーには、柑橘系の果物に多く含まれるクエン酸が含まれています。
クエン酸を摂取することでエネルギーの産生量が増え、疲労物質である乳酸が分解されます。チェリーは疲労感の予防や改善効果を発揮する果実といえます。【12】
●便秘を解消する効果
消化されにくい糖アルコールであるソルビトールが豊富に含まれているチェリーには、便秘を予防・解消する効果があります。
ソルビトールは甘味料としてシュガーレスガムやお菓子などに広く用いられており、口に入れるとひんやりと感じる成分です。体内で消化されず、余分な水分や脂肪、塩分と一緒に体外へ排出されるため、ダイエットにも効果があるとされています。
また、食物繊維はさくらんぼ100g中に1.2g、アメリカンチェリー100g中に1.4gとバナナより豊富に含まれているため、便秘の解消に効果的です。
●アレルギー症状を緩和する効果
ケルセチンにはヒスタミン[※5]を抑制する強力な作用があると考えられています。また、アントシアニンにはアレルギー反応に関する酵素の働きを抑制する効果があるため、ケルセチンとアントシアニンが含まれているチェリーを食べることにより、花粉症やアトピー性皮膚炎などの体質が改善すると期待されています。【1】
●不眠を解消する効果
チェリーに含まれているメラトニンには、体内時計を整え自然な睡眠を導くことをサポートする働きがあります。メラトニンは、脳から分泌されるホルモンの一種で自然な眠りを導きますが、加齢や生活リズムの乱れにより分泌される量が減少されなくなったり、正常に分泌できなくなったりします。
タルトチェリーには特に多くのメラトニンが含まれているため、タルトチェリーを食べることで体内のメラトニン濃度を上げることができ、不眠を解消させる効果があります。【6】
●アルツハイマーを予防する効果
チェリーに含まれるフラボノイドには、アルツハイマーが発症する原因物質であるβ-アミロイドの発生を抑制する効果があることが証明されています。この働きにより、チェリーにはアルツハイマーの発症リスクを軽減させる効果があると考えられています。
[※2:C反応性たんぱくとは、体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるたんぱく質のことです。]
[※3:交感神経とは、生命を維持している自律神経の一種です。不安・恐怖・怒りなどストレスを感じている時に働きます。]
[※4:細胞外液とは、細胞外に存在する体液のことです。細胞外液と細胞内液がカリウムとナトリウムのバランスをとり、生命を維持することができています。]
[※5:ヒスタミンとは、アレルギー反応や炎症の原因となる化合物のことです。体内の細胞で合成され、外部からの刺激により放出されます。これにより、炎症やアレルギーという症状が現れます。]
チェリーは食品やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○目の疲れが気になる方
○炎症を改善したい方
○いつまでも若々しくいたい方
○高血圧を予防・改善したい方
○動脈硬化を予防・改善したい方
○貧血でお悩みの方
○疲労を回復したい方
○便秘でお悩みの方
○アレルギー症状を予防・緩和したい方
○不眠でお悩みの方
○アルツハイマーを予防したい方
チェリーの研究情報
【1】健康な男女18名を対象に、ビングチェリーを1日280g を28日間摂取したところ、炎症関連物質であるC反応性タンパク質(CRP)や一酸化窒素(NO)及び免疫細胞T細胞を活性化するのはたらきが抑制されました。この結果より、ビングチェリーには抗炎症作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16549461
【2】健康な女性10名を対象に、ビングチェリーを1日280g 摂取させたところ、尿酸値が減少し、炎症関連物質であるC反応性タンパク質や一酸化窒素(NO)が減少しました。ビングチェリーには尿酸軽減効果と、それに伴う痛風予防効果、そして抗炎症作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12771324
【3】タルトチェリーはアントシアニンや有機酸、及び高い抗酸化力を持つことが知られており、代表的な品種であるモンモラシーではアントシアニンが78.9μg/g 、有機酸は1.20% 含まれています。またモンモラシーのアントシアニン、有機酸、抗酸化力を上回る品種も開発されており、タルトチェリーの健康機能が注目されています。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10942910903277697
【4】チェリーはアントシアニンを豊富に含むことが知られており、特にレッドチェリーではシアニジン-3-O-ルチノシドが主要なもので、特に「Kordia」という品種が多く、185 mg/100g の量を含み、次いでRegina(159mg)、’Skeena(134mg) に続きますタルトチェリーでは、シアニジン-3-O-グルコルチノシドおよびシアニジン-3-O-ルチノシドのが多く、
「バラトン」では57, 19mg/100g、「モンモラシー」では21, 6.2mg/100g であった。チェリーは動脈硬化の一因である脂質過酸化を抑制するはたらきのほかに、「レイニエ」にはβ-カロテンが含まれ、他に有機酸として、ウルソール酸、 クマル酸、フェルラ酸、カフェ酸が含まれています。「レイニエ」および「ゴールド」には炎症関連酵素COX-1やCOX-2を阻害するはたらきを持ち、抗炎症作用を示しました。
これらのことより、チェリーの健康機能が高く評価されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19199585
【5】ビングチェリーを含むチェリー10品種とタルトチェリーのポリフェノールを調査したところ、チェリーでは、ネオクロロゲン酸およびシアニジン-3-ルチノシドが多く、64.6および44.50 mg/100g で含まれていました。特にポリフェノールの含有量が多いほど、抗酸化力が高いことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22417346
【6】タルトチェリーはアントシアニンが豊富で、特にシアニジン系アントシアニン(シアニジン3-グルコルチノシド、ルチノシド、ソホロシド)が主で、他にペオニジン3-グルコシド、ポリフェノール成分としてケンペロール、ケルセチン、イソラムネチンの他、メラトニンが含まれています。これら、ポリフェノール成分の持つ抗酸化力の相乗効果により、タルトチェリーは高い抗酸化力を示します。
【7】血液の細胞に、タルトチェリーのエキスを添加すると、免疫担当物質であるIgM、IgGの産生を促進されました。またマウスにおいて、タルトチェリーのエキスを摂取させると、免疫細胞であるT細胞が増殖し、炎症関連物質であるIFN-γ、IL-4、TNF-αが増加することがわかり、タルトチェリーには免疫細胞を刺激するはたらきを持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22366406
【8】スロベニア産チェリーの機能性成分を調査したところ、アントシアニンとしてペラルゴニジン-3-ルチノシドが主要成分で、29~62mg/100g となり、また有機酸として、ネオクロロゲン酸とクマロイルキナ酸が確認されました。チェリーにはアントシアニンを含む、ポリフェノール成分が豊富に含まれることが確認されました。
【9】チェリーには、チェリーとタルトチェリーがあり、チェリーにはヒドロキシ桂皮酸が主要成分として含まれており、他方タルトチェリーにはフラボノイドが豊富に含まれていることに違いがあります。また缶詰などの加工食品にした場合、フラボノイドは安定な特徴があるため、タルトチェリーが加工食品に向くのが特徴です。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1365-2621.2004.tb17859.x
【10】ラットに、タルトチェリー種子エキス10, 30mg/kg を14日間摂取させたところ、心不全に分類される心室細動と頻拍の発生率が抑制されました。また心臓の機能や虚血後の回復が改善されました。このはたらきには、タルトチェリーが細胞の生存に関わりの深い、カスパース3やアポトーシスを調節することにより、心臓や心臓の筋肉を保護するはたらきによるものと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16617126
【11】高脂肪食摂取マウスに、アントシアニン(餌中0.1%)及びウルソール酸(0.05%)を含んだ餌を8週間摂取させたところ、高脂肪食による糖不耐性が抑制され、体重増加を約24% 抑制されました。他方、肝臓のトリアシルグリセロールも減少が見られ、脂肪肝の抑制につながりました。またインスリン感受性も高まることが確認されました。これらの結果より、チェリーには糖尿病予防効果とともに生活習慣病予防のはたらきが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16390206
【12】大学生14名を対象に、タルトチェリージュースを1日340g を8日間摂取させたところ、激しい運動による、筋肉疲労や筋肉痛を緩和されました。タルトチェリーが運動疲労改善効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16790484
参考文献
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