チーズ

cheese

乳製品の一種で、牛、ヤギ、ヒツジ、ヤクなどの生乳にたんぱく質を固める凝乳酵素を混ぜ、固形もしくは半固形の製品になったものを表します。
ビタミン類、カルシウム、たんぱく質などの栄養素がたくさん含まれており、国や地域、原料となるミルクや製法によってバリエーションが豊かになるため、世界中で愛されている食品の一つです。

チーズとは

●基本情報
生乳と生乳のたんぱく質を固める凝乳酵素により凝固させ、乳性を取り除いたものの事です。
チーズとして販売されているものの定義は、日本では食品衛生法に基づいて定められた「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」によって規定されています。この規定によって日本で生産されているチーズは「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」に分けて定義されています。

一方世界では世界機関である「FAO(食糧農業機関)」「WHO(世界保健機関)」によって、日本の規格よりも厳しく定義付けられています。ヨーロッパは非常に厳しく、生産地や製法、使用するカビ、使用する生乳の産地まで規定されています。それぞれのチーズの種類の規格に従っているもののみ「カマンベール」や「ロックフォール」などといったチーズ名を名乗ることが認められます。
このように、細かく厳しく規格を定めることでヨーロッパの伝統的なチーズを守ることができているのです【1】。

チーズは高カロリー高脂肪な食材として、古くから重要な栄養源として世界中で食べられてきています。2018年度の世界各国の1人当たりのチーズの年間消費量1位はデンマークで、1人あたり26.4kg消費されています【2】。日本は1人当たり2.84㎏と、デンマークの消費量の10分の1程度ということからも、やはり海外のほうがチーズを食べる習慣が定着しているということがわかります【3】。しかし、最近では日本のチーズの消費も増加傾向にあり、農林水産省によると、日本国内のチーズ工房は、2018年時点で319か所となっています。2006年には106か所だったので、11年間で3倍近くにまで増えています【4】。

●チーズの歴史
チーズの歴史は大変古く、発祥地や起源は定かではありませんが、アラビアの民話の中にチーズの誕生について書かれています。紀元前2000年ごろ「砂漠を行く隊商が、羊の胃袋でつくった水筒に乳を入れ、ラクダの背中にくくりつけて旅に出ました。1日の旅を終えて乳を飲もうとすると、出てくるのは水っぽい液体と白い固まりだけ。その白い固まりを食べてみると、それはおいしくて何ともいえない味でした」というものがあり、この偶然のできごとからチーズが誕生したと考えられています。水筒として使われた羊の胃袋の中にある「レンニン」という酵素で、歩いている間に乳が固められチーズになるというこの原理は、現在もチーズの製造に採用されている方法の一つです。
ローマ時代にはすでにチーズ作りは重要な産業となっており、チーズの製造方法は秘伝のような形で伝えられていました。長い歴史の間に各地方で様々な種類のチーズが生まれ、それが今日まで受け継がれています。

日本においては7世紀ごろ孝明天皇の時代に仏教と共に伝来し、「醍醐(だいご)」という最高の美味しさを表す言葉は、チーズ、またはバターオイルのようなものだったのではないかと考えられています。
江戸時代には8代将軍吉宗が白牛を輸入し、「白牛酪」といった牛乳を煮詰めて乾燥させたチーズに近いものを製造するようになりました。その後様々な挑戦と努力により1932年に日本においても本格的なチーズの工業生産が可能になりました。【5】

●チーズの種類
〇プロセスチーズ
ゴーダやチェダーなどの1種類、もしくは数種類のナチュラルチーズを加熱融解し、再度冷やして固めたものです。衛生的かつ保存性も高く、形状や大きさも様々で気軽に食べられています。

〇ナチュラルチーズ
殺菌した乳に乳酸菌を作用させ、凝乳酵素を加えてできた固まりから、水分を除いたものです。ナチュラルチーズは世界中に1,000種類以上あるといわれていますが、大きく7つに分けられます。

①フレッシュタイプ
熟成させずに作られる、水分が多いチーズです。水分を多く含み柔らかく、さわやかな酸味を感じさせます。「モッツァレラ」、「カッテージ」、「リコッタ」、「クリームチーズ」等が挙げられます。

②白カビタイプ
表面に白カビを植え付けて乳酸菌と共に熟成させます。
「カマンベール」や「バラカ」、「ブリー」などがあり、クリーミーなチーズです。

③青カビタイプ
「ブルーチーズ」という名称で知られていて、内部に青カビを植え付けて乳酸菌と共に熟成させます。イタリアの「ゴルゴンゾーラ」、フランスの「ロックフォール」、イギリスの「スティルトン」は世界3大ブルーチーズと呼ばれ、青カビのピリっとした刺激があるチーズです。

④ウォッシュタイプ
チーズ表面を塩水やビール、ワインやブランデーなどで何回も洗いながら熟成を重ねます。
表面はオレンジ色で強い匂いがします。
「マロワル」、「エポワス」、「ポン・レヴェック」などが有名です。

⑤セミハードタイプ
殺菌した乳を凝乳酵素で固めたのち、プレスして水分を抜きゆっくりと熟成させていくチーズです。「ゴーダ」や「マリボー」、「サムソー」などがあり長期保存が可能です。

⑥ハードタイプ
1年から3年と長期熟成させて作る硬いタイプのチーズです。ちなみにチーズと言えば穴があいているイラストを想像する人が多いと思いますが、穴が開いているチーズはハードタイプのものになります。代表的なものに「チェダー」、「エメンタール」、「エダム」、「パルミジャーノ・レッジャーノ」などがあります。

⑦シェーブルタイプ
シェーブルはフランス語で「ヤギ」を表します。ヤギの乳で作られたチーズで、特有の味がします。
基本的に小さめのサイズで乾燥熟成したものが多いです。

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●チーズに含まれる栄養成分
たんぱく質
筋肉や血液など、体を作るもとになる栄養素です。
チーズのたんぱく質は、熟成や発酵によってアミノ酸にまで分解されるので、消化効率が高くなっています。牛乳を飲むとお腹が痛くなってしまう人でも、チーズなら製造過程で「乳糖」が大幅に減るため問題なく食べられることが多く、効率的にたんぱく質を摂ることができます。

カルシウム
骨や歯のもととなり、丈夫な体づくりには欠かせない成分です。
骨粗しょう症の予防や、ストレス・イライラを抑える効果もあります

ビタミンA
目の健康維持や皮膚・粘膜を守り、免疫力の向上・抗酸化作用などが期待できます。

ビタミンB₂
健康な皮膚や髪を作る成分です。

<チーズの豆知識>
チーズの種類がたくさんあるように、名前もたくさんあります。産地や地方の名前が付けられているものもあり、例えば「ゴーダ」はオランダ、「カマンベール」はフランスの村の名前が由来となっています。
また、「フロマージュ・ブラン」や「ババリアブルー」は色が由来、「マスカルポーネ」は「絶品」という意味から取られています。チーズを食べるときに名前の由来を調べてみると、面白い発見があるかもしれません。
ちなみに「パルミジャーノ・レッジャーノ」と「パルメザンチーズ」は、同じようで全く違う種類のチーズです。パルミジャーノ・レッジャーノはイタリアの代表的なチーズですが、私たちがよく目にするパルメザンチーズはアメリカや日本がそれをまねて作ったもので、原料、作り方は全く異なっています。

チーズの効果

◎高血圧予防
チーズには活性酸素を抑え(抗酸化作用)、血液中のHDL-コレステロールをゆるやかに増やす働きがあります【6】。

◎疲労回復
ビタミンA、ビタミンB₂には免疫力を高める働きがあります。また免疫力を高めるためにはたんぱく質が必要ですが、チーズにはたんぱく質も豊富です。
免疫が上がると疲れからの回復も早くなり、風邪もひきにくくなります。

◎認知症予防
最近の研究で、乳製品の摂取が認知症のリスク低下に有益である可能性が示されています【7】。

チーズはこんな方におすすめ

○血圧が気になる方
○疲れやすい方
○風邪をひきやすい方

チーズの研究情報

アルツハイマー病モデルマウスにおいて、カマンベール(白カビ発酵チーズ)が脳のアミロイドβを減少させること、さらに海馬の脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させ、認知症予防の効果を示す可能性が示唆されました。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0118512

【1】https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78333000&dataType=0&pageNo=1

http://extwprlegs1.fao.org/docs/pdf/tha160581.pdf

【2】JIDF世界酪農情況2019より

【3】日本の消費量は、農林水産省「チーズ需給表」2019年チーズ消費量÷総務省 統計局2019年10/1現在人口

【4】https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/tikusan/koremade/attach/pdf/200130-3.pdf

【5】https://core.ac.uk/download/pdf/148775574.pdf

【6】抗酸化活性が高いチーズ 井越敬司 J-Milk H20 学術連合委託研究報告書 153-169, 2009  http://m-alliance.j-milk.jp/ronbun/kenkokagaku/studyreports2008-11.html

【7】Ozawa M, et al.: J Am Geriatr Soc. 62: 1224-30(2014)
Ano Y, et al., PLoS One Mar 11;10(2015)

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