シャンピニオンとは
●シャンピニオンとは
シャンピニオンとはフランス語でキノコ全般を意味しますが、日本ではマッシュルームとして親しまれています。ハラタケ科ハラタケ属のキノコで、最も注目の働きは整腸作用であり、腸環境の悪化による口臭や体臭を和らげます。またカリウムを多く含むため、高血圧の予防やコレステロール値の抑制効果もあります。
エキスを利用した高齢者用食品やそしゃく・嚥下困難者用の特別用途食品が知られています。腎臓の機能を強化し、腎不全の進行を抑える働きもあります。
●シャンピニオンの生産
世界で生産量が最も多いキノコであり、日本では約80年前から栽培がはじまりました。主な生産国はアメリカ、中国、オランダ、フランスです。
●シャンピニオンの料理方法
シチュー、パスタ、スープ、ポタージュ、サラダ、バターソテー、ピザ、肉・魚料理の添え物として料理されます。うまみ成分のグアニル酸とグルタミン酸を含み、豊かな味をもたらします。加えてグアニル酸はシイタケの約3倍含まれ、加熱することでさらに増加します。
生のものはレモン汁をかけると変色を防げます。
●シャンピニオンの選び方
かさが開かず、丸くすべすべしているもの、軸が太くてしまり、弾力のあるものを選びましょう。ホワイト種・ホワイトマッシュルームで白すぎるものは漂白している可能性があるので注意が必要です。
●シャンピニオンを摂取する際の注意点
シャンピニオンは食品のため、1日摂取量は特に決まっていません。ただし過剰な摂取は控え、毎日少しずつ継続的に摂ることが大切です。
また腸内環境の悪化原因となる偏食はやめ、普段からバランスの良い食事を心がけることが大切です。腸内環境を整えるため、乳酸菌やオリゴ糖、食物繊維を含んだ食品と一緒に摂ることもよいでしょう。またストレスも腸にとって大敵です。心身ともにリラックスできるような工夫を心がけましょう。
シャンピニオンの効果
●腸内環境を整える効果
腸内環境は偏食やストレスによってバランスが崩れてしまいます。そのとき腸内では悪玉菌が増殖・発酵し悪臭のガスを発生させます。このガスを腸の壁が吸収して不快な口臭や体臭を引き起こすのです。さらにバランスが崩れると便秘になりがちです。
シャンピニオンは善玉菌と悪玉菌のバランスをはじめ腸内環境を整えてに老いのもととなる有害腐敗産物の生成を抑えます。このため口臭や便臭を消す効果が期待され、介護食などにも利用されています。また腎臓の機能を強化して、腎不全の進行を抑える働きも期待されています。悪玉菌を減らし善玉菌を増やすことで、腸内環境のバランスを整え、不快な臭いや便秘など腸内環境の悪化が原因のお悩みに役立つ効果があります。
●高血圧を予防する効果
シャンピニオンに多く含まれる成分はカリウムです。カリウムとナトリウムは互いに拮抗して働いています。ナトリウムは体に必要なミネラルですが、摂りすぎにより高血圧を引き起こす原因となります。体内のカリウムは腎臓の働きで汗や尿として排出されます。カリウムが排出される際にと同じ量のナトリウムも排出されるため、バランスの良い食事をしていれば多少ナトリウムの摂取量が増えても摂りすぎにはなりません。
しかし、偏った食事をすることによりナトリウムの摂取量のみが過剰になってしまったり、アルコールの飲みすぎなどによりカリウムが不足してしまったりすると、高血圧を引き起こす危険性が高まります。
血中のナトリウムが増加することにより細胞から水分が出て血液が薄まります。それが原因となり血液量が増え、血液を送り出す強い力が必要となります。すなわち血圧が上がり、高血圧となってしまいます。
カリウムを必要量摂ることによりナトリウムの排出を促し、高血圧になるリスクを軽減する効果があります。【1】
●むくみを解消する効果
人間の体内でカリウムは、カルシウムとリンに続いて多く存在し、細胞内液に多く存在しています。
ナトリウムは、細胞の外側に大部分が存在し、ナトリウムとカリウムの濃度は一定のバランスで保たれています。この一定のバランスを保つための「ナトリウムカリウムポンプ」といわれるものが、細胞膜に存在します。
ナトリウムの過剰な摂取、またはカリウムの不足などで、カリウムとナトリウムのバランスが調整できなくなると、細胞内のナトリウムの濃度を下げるために水分を取り入れます。血管の細胞でこのようなことが起こると、血管壁が水分で膨れるため血圧が高くなり、顔では組織液やリンパ液が薄められむくみとなって現れます。
このため、カリウムを摂取することによりむくみの解消につながるといえます。
●コレステロール値を下げる効果
シャンピニオンは食物繊維を多く含み、コレステロール値の改善に役立ちます。悪玉コレステロールは多すぎると動脈硬化をもたらします。シャンピニオンはコレステロール値を整え、数値を下げる効果があります。【1】
シャンピニオンはこんな方におすすめ
○腸内環境を整えたい方
○血圧が高い方
○コレステロール値が気になる方
シャンピニオンの研究情報
【1】糖尿病ラットを対象に、シャンピニオン粉末を1日あたり200mg/kg の量で3週間摂取させたところ、血糖値、総コレステロールおよびLDLコレステロールの緩和が見られ、HDLコレステロールが改善したことから、シャンピニオンは糖尿病予防ならびに高脂血症予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20116660
【2】マウスに、シャンピニオン抽出物を30日間摂取させたところ、血液、肝臓、心臓にある抗酸化酵素の活性を上昇させたことから、シャンピニオンは抗酸化作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23099505
【3】健常人24名を対象に、シャンピニオンを1日あたり100g の量で3週間摂取させたところ、分泌型IgAの分泌が促進され、粘膜免疫が高まったことから、シャンピニオンは免疫力向上作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22113068
【4】卵巣摘出マウスを対象に、シャンピニオンを摂取させたところ、脂肪肝および肝疾患が緩和されたことから、シャンピニオンは更年期障害に伴う、肝臓保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22046322
参考文献
・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社
・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・食材図典 小学館
・野菜まるごと大図鑑 主婦の友社
・佐藤秀美 イキイキ食材図鑑 日本文芸社
・中嶋洋子 食べ物栄養事典 主婦の友社
・Jeong SC, Jeong YT, Yang BK, Islam R, Koyyalamudi SR, Pang G, Cho KY, Song CH. 2010 “White button mushroom (Agaricus bisporus) lowers blood glucose and cholesterol levels in diabetic and hypercholesterolemic rats.” Nutr Res. 2010 Jan;30(1):49-56.
・Liu J, Jia L, Kan J, Jin CH. 2013 “In vitro and in vivo antioxidant activity of ethanolic extract of white button mushroom (Agaricus bisporus).” Food Chem Toxicol. 2013 Jan;51:310-6.
・Jeong SC, Koyyalamudi SR, Pang G. 2012 “Dietary intake of Agaricus bisporus white button mushroom accelerates salivary immunoglobulin A secretion in healthy volunteers.” Nutrition. 2012 May;28(5):527-31.
・Kanaya N, Kubo M, Liu Z, Chu P, Wang C, Yuan YC, Chen S. 2011 “Protective effects of white button mushroom (Agaricus bisporus) against hepatic steatosis in ovariectomized mice as a model of postmenopausal women.” PLoS One. 2011;6(10):e26654.