チャーガとは?
●基本情報
チャーガは正式にはカバノアナタケと呼ばれるきのこで、サルノコシカケ科に属します。ロシアや北欧など寒い地域の白樺の木に寄生します。黒っぽい岩のようなユニークな外見です。ミネラルが豊富な白樺の樹液を栄養源として十数年かけて生育します。成長が遅いために大変希少とされており、メシマコブと同様に「幻のきのこ」または、「森のダイヤモンド」とも呼ばれています。
●チャーガの歴史
チャーガは、日本では北海道の先住民族であるアイヌの人々が古来よりお茶として煎じて飲んでいたと伝えられています。
また、ロシアや東欧では、16世紀から民間療法で利用されてきました。モノマフ皇帝という人物が口唇ガンになった際の治療薬として使われていたという伝説も残されています。
ガン治療用のチャーガは、1956年に「ガンの毒性低下剤」としてソビエト保健省から承認されることになりました。また、それと同時期に、レニングラード第一医科大学でのチャーガ研究で基礎医学的に有効性が発表されました。
そして、近年の研究では、抗腫瘍や抗ウイルス、抗寄生虫効果が証明されています。
●チャーガの生態と生産地
チャーガはカバノアナタケといわれるきのこ類です。ロシアのシベリアを中心に 、北アメリカ、ヨーロッパのタイガ気候帯の主に白樺の幹に寄生します。
チャーガは、中央アジアや中国北部でも発見されています。日本では主に北海道で採取することができましたが、近年乱獲が進み、今では見つけることが困難になっています。山岳地帯で2万本に1本の白樺の木から、みつけられるかもしれないといわれるほど貴重になったため、チャーガは「森のダイヤモンド」とも呼ばれるようになりました。
チャーガは主に白樺や黄樺、ダケカンバなどのカバノキ類に寄生しますが、稀にブナの木やナナカマド、ハンノキ、ニレ等にも寄生するといわれています。
カバノキ類の立ち木の幹に塊状で大形の菌核[※1]を形成します。菌核は直径10〜20㎝で、表面は黒く、縦横に亀裂が走っており、石のように硬く、内部は黄褐色をしています。子実体[※2]は、茶褐色で春に着生し、樹皮下に平たく広がります。厚さは2〜8㎜程です。着生した白樺の樹液を栄養分にしながら、長年かけて塊状に形成されます。最後には巨木でさえも枯らせてしまうほどで、そのパワフルな効力は、別名「白樺のガン」ともいわれています。最初は、森にとって悪いものと思われてきましたが、その効力をプラスに転じて考えられ、有益な薬事利用として人間の病気治療のために研究開発されるようになりました。
●チャーガに含まれる成分と性質
チャーガは体にとって有効な成分を多く含んでいます。たんぱく質、脂質、灰分[※3]、食物繊維、糖質、ビタミン類、ミネラル、フラボノイド、イノシトール、リグニン[※4]などですが、特に注目されている成分は、β-グルカンとSOD酵素です。β-グルカンは、他のきのこ類に比べて高い含有率を誇ります。チャーガのβ-グルカンは、良質のたんぱく質を30%以上含むことから吸収が良いと着目されており、優れた免疫増強作用が期待されています。免疫システムに関わる細胞には、T細胞[※5]とB細胞[※6]があります。チャーガに含まれているβ-グルカンは、T細胞などの細胞性免疫の働きを活発化して、免疫機能を高めるといわれています。
また、SOD酵素は、活性酸素除去酵素のことです。活性酸素は、体に必須で強い酸化力と殺菌力を持ち、細菌やガン細胞と戦います。しかし、バランスを崩すと正常な細胞も傷つけてしまい、逆に健康に害を与えてしまいます。活性酸素が過剰になると、病気や老化を引き起こすと最近の研究でも発表されています。20歳を過ぎると、SOD酵素の生成能力が下がり、免疫バランスは少しずつ崩れていきます。活性酸素は、紫外線、ストレス、喫煙などとも関連しており、老化、生活習慣病などの要因にもなることが明らかになっています。
チャーガには、酸化を食い止めるSOD酵素が豊富に含まれており、免疫バランスを上手に保ち、健康を維持します。
<豆知識>ロシアのチャーガティーの飲み方
チャーガティーは、ロシアでは、ハーブティーと同じ感覚で飲まれています。チャーガティーをつくる際は、まず、チャーガを小さく砕きます。チャーガはとても硬いので包丁を使う際は、十分に注意が必要です。次に、細かく砕いたチャーガ約5gを市販のティーバッグに入れます。お鍋に2ℓの水を用意し、チャーガが入っているティーバッグを入れ、煮出します。強火で一度沸騰させ、その後はトロ火で10~15分程度煎じます。温かくしても冷やしても飲めますので、冷めたら冷蔵庫で保存します。1日に何回かに分けて飲むようにします。クセがなく飲みやすいので料理にも使えます。また、煎じた後のティーバッグは捨てないで、お風呂に入れるのもおすすめです。
[※1:菌核とは、菌類の栄養体が形成する硬い塊状のことです。]
[※2:子実体とは、きのこの上の部分、つまり傘と太い柄のような部分のことです。]
[※3:灰分とは、栄養学で、食物中に含まれる無機物、すなわち鉱物質やミネラルのことです。]
[※4:リグニンとは、植物の細胞壁を構成する成分のひとつです。]
[※5:T細胞とは、免疫機能に関わる細胞であり、B細胞が抗体をつくる力を促進し、侵入してきた異物を攻撃します。]
[※6:B細胞とは、免疫機能に関わる細胞であり、その異物特有の抗体をつくり、その情報を記憶することで、次に同じ異物が侵入してきた時に速やかに対処することができます。]
チャーガの効果
チャーガには、β-グルカンやSOD酵素が多く含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。
●免疫力を高める効果
β-グルカンには、免疫力を高める効果があります。免疫力とは、病原菌ばかりではなく、自分の体と異なるものが体内で見つかった時に排除しようとする機能です。免疫力が低下すると、異物を体外に出せず、症状として病気を発症してしまうのです。β-グルカンは、体の免疫機能を活性化させ、様々なウイルスから体を守る効果があるといわれています。病気に負けない体づくりに効果的です。また、SOD酵素の作用との相乗効果により、活性酸素を除去することで免疫力を向上させ、ガンの予防にも効果的です。
β-グルカンが免疫力を高めることによって、免疫システムの不具合から起こる様々なアレルギー症状や肝炎、腎炎を予防し改善します。アレルギー反応は司令官であるT細胞が指揮します。チャーガに含まれているβ-グルカンは、T細胞のバランスを整えます。
●老化を防ぐ効果
活性酸素は体をサビつかせ、様々な不調や病気の原因になりうるとされています。チャーガに含まれるSOD酵素が活性酸素を撃退することから、体の不調や病気、老化、や生活習慣病などを予防し、若々しさや肌のハリ、ツヤなどアンチエイジング効果も期待されています。
●糖尿病を予防する効果
チャーガに含まれるSOD酵素の働きにより、血糖値の降下作用も報告されています。したがって、糖尿病を予防する効果があるといえます。【1】
●動脈硬化を予防する効果
チャーガに含まれているイノシトールとリグニンには、コレステロール値を下げる働きがあります。イノシトールは、ビタミンB群の仲間であり、脂肪肝や動脈硬化の予防から神経細胞の働きを助ける作用まで幅広い働きを持つ栄養素です。リグニンは動脈壁や肝臓に脂肪やコレステロールが溜まることを防ぐ働きがあります。そのためチャーガには、脂質の代謝を良くして脂肪肝を防いだり、動脈硬化を予防する効果があると期待されています。
チャーガは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○免疫力を向上させたい方
○生活習慣病を予防したい方
○いつまでも若々しくありたい方
○糖尿病を予防したい方
○アレルギー症状でお悩みの方
○動脈硬化を予防したい方
チャーガの研究情報
【1】 Ⅱ型糖尿病の患者に対してプラセボまたはチャーガを与えました。チャーガ投与群はプラセボよりも血
中グルコース濃度の減少が認められました。このことから、チャーガは、Ⅱ型糖尿病を改善する作用があると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18416085
【2】高血圧自然発症ラットへチャーガ熱水抽出物を60日間飲用させました。血圧を計測した結果、飲用していなかった時よりも有意に血圧が減少しており、またHbA1cも減少していました。このことからチャーガの飲用は、高血圧を予防する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17148848
参考文献
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・Maenaka T, Oshima M, Itokawa Y, Masubuchi T, Takagi Y, Choi JS, Ishida T, Gu Y. (2008) “Effects of Fuscoporia obliqua on postprandial glucose excursion and endothelial dysfunction in type 2 diabetic patients.” J Tradit Chin Med. 2008 Mar;28(1):49-57.
・Koyama T, Taka A, Togashi H. (2006) “Cardiovascular effects produced by a traditional fungal medicine, Fuscoporia obliqua extract, and microvessels in the left ventricular wall of stroke-prone spontaneously hypertensive rat (SHRSP).” Clin Hemorheol Microcirc. 2006;35(4):491-8.