セラミド

Ceramide

セラミドとは人間の肌の角質層に存在し、紫外線や細菌、アレルギー源などの刺激から肌を守るバリア機能を持つ成分です。さらに、肌の潤いを保つ保湿効果がある成分として化粧品などに配合されています。最近では、アトピー性皮膚炎などの症状に対しても高い効果が期待され、研究が行われています。

セラミドとは

●基本情報
セラミドとは、皮膚の角質層に存在し、紫外線や細菌などの刺激から肌を守りながら肌の潤いを保つ働きをしている成分のことです。
人間の皮膚は、厚さが約2㎜で表面から表皮層、真皮層、皮下組織の3層に分かれています。表皮層は、さらに表面から角質層、顆粒層、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層と呼ばれる4つの層で構成されています。
角質層はわずか0.02㎜しかありませんが、皮膚の潤いを逃さず、外部刺激から肌を守るとても大切な役割を果たしています。この角質層にある細胞は、ケラチンというたんぱく質でできていて、ブロックのように並んでいます。ブロックをより強固にするために、ブロック同士を固める役割を果たしているのが細胞間脂質です。セラミドは細胞間脂質の50%を占める主成分であり、このセラミドの量が外部刺激から肌を守るバリア機能や水分保持の働きに大きく作用し、肌に潤いやハリ、弾力などをもたらすといわれています。

セラミドは、肌のターンオーバーと呼ばれる細胞の生まれ変わりに伴って生み出されます。ターンオーバーとは、表皮の一番奥にある基底層から表皮細胞が生み出され、分裂を繰り返しながら角質層まで上がっていき、最終的には垢となって剥がれ落ちるという一連の流れのことです。
基底層から生まれてすぐの細胞には核[※1]があり、セラミドが細胞の中に含有されています。ターンオーバーで細胞が押し上げられて肌の最も表面にある角質層に到達した時に、細胞は核がなくなり死んでしまいます。その時に細胞内のセラミドが角質層内の細胞間脂質に放出されることで、角質層にセラミドが存在するようになるのです。

●セラミドの歴史
セラミドは1950年代に発見され、研究によって効果が明らかになってきたのは1980年代という比較的新しい成分です。こんにゃくやトウモロコシなどの植物を由来とする原料が主流となっています。セラミドの原料は高価であるため、より効果的で安定的に製造できる原料の研究が今なお続けられています。

●セラミドの種類
現在、人間の皮膚の角質層には6種類のセラミドが存在していることが明らかにされています。
以下は各セラミドの主な機能です。

・セラミド1:外部刺激に対する優れたバリア機能、水分保持機能
・セラミド2:高い水分保持機能
・セラミド3:水分保持機能、シワの深さを軽減する機能
・セラミド4:角質の脂質バリア層の構築と維持をする機能
・セラミド5:角質の脂質バリア層の構築と維持をする機能
・セラミド6:水分保持機能、角質層の自然な剥離を促し、シワの深さを軽減する機能

人間の肌に最も多く含まれているのはセラミド2です。全体のセラミドの約21%といわれ、肌に及ぼす影響力が非常に高いと考えられています。
一方、セラミドが不足すると肌のバリア機能は効力を失い、肌の水分が逃げるだけでなく、外からの刺激を受けやすくなります。特にセラミド1、3、6の減少は皮膚を過敏にし、ドライスキン、角化症(かくかしょう)[※2]、魚鱗癬(ぎょりんせん)[※3]、アトピー性皮膚炎などの原因になるといわれています。また、セラミド3と6は加齢とともに減少することが確認されています。

<豆知識>セラミドの摂取
セラミドは食品からも摂取することができ、1日当たり0.6~1.2mgの摂取が必要だといわれています。
セラミドは、こんにゃく芋、米、小麦、乳製品、大豆、ホウレンソウなどに含まれています。特に生芋こんにゃくに豊富に含まれており、生芋こんにゃく100gで1日の必要量が摂れるといわれています。また、最近ではセラミドが含まれたサプリメントも人気を集めています。体内に入ってきたセラミドは一度分解され別の成分となりますが、その成分が表皮に到達するとセラミドの産生が促されるため、皮膚のセラミドの量が増えるといわれています。
セラミドを食事や健康食品などの内側からと、化粧品などの外側から摂取することによって、効率的に健康的な肌へ導くことができると考えられています。

●セラミドの性質と特徴
セラミドは油の一種です。セラミドは、その化学構造より油と馴染みやすい部分(疎水基)と水と馴染みやすい部分(親水基)があるため、水分を抱え込むことができるという特徴があります。
セラミドの分子が細胞間で一定の方向に隙間なく並び、積み重なった層状構造を形成し、水分は層の間に保持されています。これをラメラ構造といいます。
セラミドがこのラメラ構造を形成することで、角質層は保湿効果とバリア機能を発揮しています。
セラミドの減少によってラメラ構造が崩れると、細胞間脂質が角質細胞を支えられなくなり、角質層に隙間ができてしまいます。そのため、バリア機能が弱まり、汚れや細菌などが侵入しやすい状態になります。すると、かゆみや炎症などの症状が発生するため、角質層がさらに傷付き、皮膚の水分の蒸発が進み、乾燥してしまうという悪循環が起こり、乾燥肌や敏感肌、肌荒れなどを引き起こします。

[※1:核とは、生物の細胞内にあって、核膜に包まれ、遺伝物質を内蔵する球状構造のものです。主に DNA とたんぱく質との複合体から成ります。1~数個の核小体をもち、細胞の再生と生存に不可欠とされています。]
[※2:角化症(かくかしょう)とは、皮膚の角質層が異常に厚くなる症状のことです。]
[※3:魚鱗癬(ぎょりんせん)とは、肌に魚のうろこのようなカサカサ(鱗屑(りんせつ))が現れる症状のことです。皮膚にはターンオーバーの機能が備わっていますが、魚鱗癬においてはその機能が正常に働かず、角質がうまく落ちてくれないために異常な角質層、すなわち鱗屑がみられるようになります。]

セラミドの効果

●バリア機能によって肌を守る効果
健康的な角質層では、セラミドなどの細胞間脂質が角質細胞をしっかりとつなぎ止めています、細胞が隙間なく積み重なることで、水や異物が肌に入り込むことを防ぎます。他にもセラミドには、皮膚の水分の蒸発を防いだり、紫外線や細菌、アレルギーを引き起こす原因にもなるダニやホコリ、チリなどの外部からの刺激から肌を守る効果があります。【3】

●保湿効果
優れた保湿力を持つセラミドには、乾燥や肌荒れの予防・改善に効果があるといわれています。通常、角質層に含まれる水分は10~30%とされていますが、この値以下になると肌が乾燥している状態であるといいます。空気が乾き、湿度が30%以下になると、角質層から水分が蒸発しやすくなります。
角質層の水分の内、80%以上はセラミドなどの細胞間脂質に、16~17%は天然保湿因子に、2~3%が皮脂によって保たれているといわれています。大部分を占めるセラミドは、肌の水分を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。
セラミドは、湿度が0%になっても蒸発せず、気温が下がっても凍らない性質を持っています。セラミドはあらゆる環境でも対応できる、非常に高い保湿力を持っている成分です。

●アトピー性皮膚炎に対する効果
アトピー性皮膚炎とは、アレルギー体質にさまざまな刺激が加わって生じる、かゆみを伴う慢性的な皮膚疾患のことです。食生活や生活環境、遺伝や人間関係、精神的なストレスなど、様々な要因が重なり合って発症するといわれています。症状としては、湿疹と強いかゆみが特徴で、患部から組織液が浸出したり、慢性化すると鳥肌だったようにザラザラとした皮膚が次第に厚くなったりします。
近年の研究で、アトピー性皮膚炎の患者にはセラミドが不足していることわかってきました。アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚の細胞間脂質に多く存在するセラミドの量が健康な肌の人と比べて異常に少ないことが分かっています。そのため、保湿機能が弱く、すぐに乾燥してしまいます。それにより皮膚のバリア機能が低下し、外部から刺激物が侵入しやすく、皮膚炎を発症します。
そのため、皮膚からセラミドを補給したり、セラミドを多く含む食品を摂取することが必要であるといわれています。アトピー性皮膚炎の治療には、スキンケアや規則正しい生活、ストレスの解消、食事療法などがありますが、セラミド不足が背景にあるアトピー性皮膚炎においては、セラミド配合のクリームなどを使用することが良いといわれています。【1】【2】【3】【4】【5】

●美肌・美白効果
セラミドは肌を構成する成分で、メラニンの合成を抑え、シミやそばかすを防ぐ美白効果があるといわれています。また、肌を保湿することで乾燥やしわ、肌荒れなどの肌トラブルを予防し、肌の潤いを保つはたらきがあるため、美肌効果が非常に高いといわれています。
他にもセラミドには、細胞が分裂して増えていく働きをコントロールしたり、組織のバランス維持のために、細胞を自滅させるなどの働きがあると期待されています。
さらに、セラミドは肌だけでなく毛髪の潤いを保つ効果もあります。毛髪の水分と油分を両方保ってくれるはたらきがあるため、髪やまつ毛にコシがないという方は、セラミドが配合されたシャンプーやまつ毛ケア用品を使用するのがおすすめです。

セラミドは食事やサプリメントで摂取できます

セラミドを含む食品

○こんにゃく芋
○米
○小麦
○乳製品
○大豆
○ホウレンソウ

こんな方におすすめ

○肌荒れでお悩みの方
○シミやそばかすが気になる方
○美肌を目指したい方
○アトピー性皮膚炎の方

セラミドの研究情報

【1】皮膚を構成するセラミドは年齢とともに減少することが知られています。アトピー性皮膚炎患者ではその減少は顕著であり、健常人と比較して、皮膚セラミドの減少が顕著でした。セラミドは皮膚の角質層の維持に不可欠な成分であることから、年齢肌やアトピー肌にはセラミドの補給は欠かせないものとなります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2007790

【2】アトピー性皮膚炎患者18名、皮脂欠乏性湿疹患者1名を対象に、セラミド配合ローションを塗布したところ、皮膚症状に改善が見られたことから、セラミドが皮膚障害の改善に役立つと考えられています。

【3】小児アトピー性皮膚炎ならびに乾皮症患者を対象に、セラミド配合保湿化粧品を塗布したところ、乾燥症状に改善が見られたことから、セラミドに肌を整える働きが期待されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch/3/3/3_3_306/_article/-char/ja/

【4】アトピー性皮膚炎の特に皮膚乾燥部に対して、グリコセラミド含有外用剤を4週間塗布したところ、乾燥症状に改善が見られたことから、セラミドがアトピー性皮膚炎や乾燥肌に有益であると考えられています。

【5】アトピー性皮膚炎患者に対し、セラミドを1日1.8mg の量で2週間摂取させたところ、IgEが減少し、IL-4、IL-13が減少したことから、セラミドにアトピー性皮膚炎改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16918640

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参考文献

・吉木伸子 素肌美人になるためのスキンケア基本事典 池田書店

・吉木伸子 岡部美代治 小田真規子 素肌美人になれる正しいスキンケア事典 高橋書店

・吉川敏一 炭田康史 最新版 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典 講談社

・安念美雪, 山本一哉 (1998) “ビオセラミドLS含有ローションの使用経験-小児のアトピー性皮膚炎に対する有用性” 日小皮会誌, 17: 45-50, 1998

・高木 肇、  前田 学、  米田 和史、  清島 眞理子、  神谷 秀喜、  山田 孝宏、  松岡 百合子、  加納 宏行、  北島 康雄 (2004) “小児のアトピー性皮膚炎並びに乾皮症等に起因する皮膚乾燥症状に対するLocobase® REPAIRの有用性の検討” 皮膚の科学 Vol. 3 (2004) No. 3 P 306-315

・堀川 達弥、 高島 務、 原田 晋、 千原 俊也、 市橋 正光 (1998) “アトピー性皮膚炎乾燥皮膚に対するグリコセラミド含有外用剤の使用経験” 皮膚, 40:415 – 419, 1998

・西野泰生 漢方スキンケアでかゆみ、カサカサ、ジュクジュクが消えた! 現代書林

・友利新 現役皮膚科医による正しいケア・対策がわかるスキンケア大事典 毎日コミュニケーションズ

・Imokawa G, Abe A, Jin K, Higaki Y, Kawashima M, Hidano A. (1991) “Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?” J Invest Dermatol. 1991 Apr;96(4):523-6.

・Kimata H. (2006) “Improvement of atopic dermatitis and reduction of skin allergic responses by oral intake of konjac ceramide.” Pediatr Dermatol. 2006 Jul-Aug;23(4):386-9.

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