セロリとは
●基本情報
セロリとは、セリ科オランダミツバ属に属している淡色野菜です。別名セルリー、オランダ三つ葉と呼ばれています。セロリの原産地はヨーロッパ、西南アジア、インドです。
セロリは独特の強い香りとパリッとした歯ごたえを持っている野菜です。加熱してもその香りは薄れません。
●セロリの品種
セロリには大きく分けて、中間種、緑色種、黄色種、東洋在来種の4つの品種があります。
一般的にセロリとして出回っているものは中間種のコーネル619と呼ばれている品種です。
コーネル619は昭和30年代頃から普及し始めました。長さは約40cm程度で厚みのある薄緑色の茎が特徴です。主産地の長野県ではコーネル619を選抜・改良した「幸みどり」と呼ばれる品種もつくられています。
一般的にグリーンセロリと呼ばれる緑色種は茎の部分が緑色のセロリです。セロリ消費量の多いアメリカでは、この緑色種が好まれています。肉厚でスジが少なく、強い香りが特徴です。緑色種には、日本で改良された一般的なセロリより小さいミニセロリがあります。最近では、アメリカで主流のユタやソートレークなどの品種が日本でも出回るようになりました。
一般的にホワイトセロリと呼ばれている白色種は三つ葉のように茎が白く細いことが特徴です。ミニホワイトと呼ばれる品種を水耕栽培したものが多く出回っています。スジが少ないため柔らかく、セロリ特有の香りが比較的弱いため食べやすい品種です。
東洋在来種にはキンサイ(芹菜)があり、中国野菜としても扱われています。野生種に近く、スープセロリとも呼ばれています。薄緑色の細くて柔らかい茎が特徴です。
●セロリの歴史
セロリは古代ギリシャ・ローマ時代から薬用効果のある野菜と考えられ、薬や香料として使用されていました。古代エジプトでは葬礼に用いられていたといわれています。
16世紀頃からイタリアなどで薬用植物としての栽培が始まり、17世紀にはフランスで食用とされるようになりました。その後19世紀頃までにヨーロッパ全域やアメリカに伝わっていきました。
セロリが日本に渡来したのは16世紀末頃であるといわれています。文禄・慶長の役(1592~1598年)で出兵の際に加藤清正が朝鮮半島から東洋種のセロリを持ち帰ったため、清正人参という異名で呼ばれていました。
江戸時代になるとオランダ船によって西洋種が長崎へ入ってきました。当時はオランダ三つ葉と呼ばれていましたが定着はしませんでした。さらに幕末や明治時代にも栽培に挑戦しましたが、香りが強すぎて受け入れられず、一般に普及したのは第二次世界大戦後だといわれています。
現在出回っているセロリは香りが比較的弱いアメリカの品種で、昭和50年頃から一般的になりました。
●セロリの生産地
セロリは涼しい気候を好みます。夏から秋にかけては高冷地の長野県などで、冬から春にかけては静岡県などでハウス栽培されています。この2県で全国のセロリ出荷量の約7割を占めています。
セロリは初夏から秋にかけての時期に旬を迎えます。
●セロリの選び方
セロリは葉と茎に着目して選びます。
葉は黄色く変色した部分がなく、鮮やかな緑色でつやとハリがあるものが新鮮なセロリです。
茎は厚みがあり内側に丸くなっており、肉厚なものが美味しいといわれています。根からの節が太くて長いものが良く、白い部分が緑がかっているものは鮮度が落ちてきている証です。色が白いほど甘みがあって柔らかいといわれています。
また、セロリの切り口に空洞ができているものは食感が悪く好まれません。
●セロリの保存方法
セロリは葉がついていると、茎が栄養分を吸い上げてしまうため、保存する際は葉と茎を切り離します。切り離したものはポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。また、切り口や葉を乾燥させないために容器の大きさに合わせて切ったセロリの下に湿らせたペーパータオルを敷き、冷蔵保存するとより長く新鮮に保存できます。
しなびたセロリをよみがえらせるには、水をふりかけて数時間冷蔵庫に入れておくと良いといわれています。
●セロリの調理方法
セロリはスープ、煮込み料理、サラダなどに幅広く利用されています。
セロリをサラダで利用する場合は、しばらく冷水につけておくとパリっとしたセロリの歯ごたえと香りがより一層楽しめます。さらに食感を良くするためには、茎のスジをピーラーか包丁でそぎ取ると良いといわれています。
セロリは「ブーケガルニ[※1]」のひとつとして、スープやシチューなどの煮込み料理で肉や魚の臭いをやわらげたり、風味づけとして活躍しています。煮込み料理には香りが強い葉に近い部分が適しています。
<豆知識①>セロリを使った入浴剤
セロリの葉は入浴剤にすることも可能です。セロリを細かく刻んで布袋に入れ湯船に浮かべると、セロリに含まれる精油成分が溶け出すので、湯冷めしにくくなると考えられています。
●セロリに含まれる成分と性質
セロリには約40種類の香り成分が含まれています。これらの香り成分には神経を鎮め、食欲を増進させる効果があるといわれています。
セロリにはβ-カロテンやビタミンB群、カリウムなどが豊富に含まれています。
特にセロリの葉は栄養価が高く、葉に含まれるβ-カロテンは茎の2倍ともいわれています。さらにセロリの葉にはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンE、食物繊維などが茎よりも多く含まれています。
[※1:ブーケガルニとは、パセリやタイム、ローリエ、エストラゴンなどの香草類を数種類束ねたものを指します。煮込み料理などの風味付けに用いられます。]
セロリの効果
セロリには豊富な香り成分をはじめ、β-カロテンやビタミンB群、食物繊維、ビタミンC、ビタミンEなどが含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。
●精神を安定させる効果
セロリの香りの主成分であるアピインやセネリンには、精神を安定させる効果があるといわれています。また、頭痛を緩和したり、イライラやストレスを解消する効果が期待できます。
●食欲増進効果
セロリの香り成分であるアビオイルには食欲を増進し、口の中をさっぱりさせる効果があるといわれています。
●血流を改善する効果
セロリの葉に含まれるピラジンという香り成分には、血流を改善する効果があるといわれています。
血液の汚れは細胞の生まれ変わりである新陳代謝を滞らせるため、体が疲れやすくなり、免疫力が低下するなどの症状につながります。
またコレステロール低下効果も知られており、動脈硬化を予防する働きも期待されています【1】【3】
●視機能を改善する効果
セロリにはβ-カロテンが多く含まれています。β-カロテンは体内でビタミンAとして働きます。
目の網膜にはロドプシンと呼ばれる光を感じるためのたんぱく質があり、人間がものを見ることができるのはロドプシンが光に反応し、その刺激が脳に伝えられるためです。ビタミンAはこのロドプシンを生成するために必要な栄養素です。セロリのβ-カロテンが体内でビタミンAとして働くことでロドプシンの生成が促され、夜盲症[※2]や眼精疲労[※3]が予防されます。
●疲労回復効果
セロリにはビタミンB1が豊富に含まれています。
ビタミンB1は食事から摂った糖質をエネルギーに変えるために必要とされる栄養素です。糖質をエネルギーに変える力が低下してしまうと、疲労物質である乳酸が溜まりやすくなり、疲労を感じるようになります。
このため、セロリには疲労を回復させる効果が期待されています。
●高血圧を予防する効果
高血圧とは血圧が高い状態をいいます。血圧とは血管にかかる圧力のことをいい、高血圧の状態が続き悪化すると脳出血や脳梗塞などの病気が発症しやすくなります。
血圧にはナトリウムとカリウムが大きく関係しています。ナトリウムを過剰に摂取すると、血液中のナトリウム濃度を下げるため血液の量が多くなり高血圧になります。
セロリに含まれているカリウムは、一度血液中に吸収されたナトリウムが腎臓で吸収されることを防ぎ、尿中への排出を促すことで血圧を下げる作用があるため、高血圧の予防に効果的です。
●腸内環境を整える効果
セロリに含まれている食物繊維には腸内環境を整える働きがあります。
腸内には悪玉菌、善玉菌と呼ばれる細菌が存在しており、これらの細菌が腸内環境を左右しています。
腸内に悪玉菌が増殖すると、消化されていない物の腐敗が進んだり免疫力が低下します。一方、善玉菌が増殖すると、腸内環境が整えられ免疫力の向上や便通の予防・改善、美肌効果など全身の健康維持に役立ちます。
さらに、コレステロールを体外に排出したり、血糖値の上昇を抑える働きも期待できます。
●美肌効果
セロリには抗酸化力[※4]の強いビタミンC、ビタミンEが含まれています。
ビタミンCはコラーゲンの生成に不可欠な栄養素です。コラーゲンは皮膚組織の約70%を占めており、肌のハリや潤いを保つ大切な役割を果たしています。さらにシミのもとであるメラニン色素の生成を防ぐ働きがあるため、美肌効果が期待できます。
ビタミンEは老化の原因である過酸化脂質[※5]が生成されないように活性酸素[※6]から細胞を守ります。また、末梢血管[※7]を広げて血行を促進し、全身の血行を良くすることで細胞の生まれ変わりである新陳代謝を活発にします。
新陳代謝が活発になると、肌にハリが出てきます。さらに、紫外線に対する抵抗力も高まり、シミやそばかすの予防にも効果的であると考えられています。
セロリに含まれるビタミンCとビタミンEの相乗効果によって抗酸化力が強まり、美肌効果が期待できます。
[※2:夜盲症とは、光に対して目の反応が衰え暗い所で物が見えにくくなる症状のことです。鳥目とも呼ばれます。ビタミンAの欠乏症としても知られています。]
[※3:眼精疲労とは、ものを見ているだけで目の疲れや痛みを感じ、視界がかすむ、頭痛や肩こり、イライラを併発する状態のことです。]
[※4:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※5:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※6:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※7:末梢血管とは、手先や足先に向かって枝分かれしている血管のことです。]
セロリはこんな方におすすめ
○イライラしやすい方
○血流を改善したい方
○目の健康を維持したい方
○疲れやすい方
○高血圧を予防したい方
○腸内環境を整えたい方
○美肌を目指したい方
セロリの研究情報
【1】高脂血症ラットに、セロリ抽出物を8週間摂取させたところ、血中コレステロール、LDLコレステロールおよびトリグリセリド濃度が低下したことから、セロリがコレステロール低下効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7700983
【2】免疫力が低下したラットに、セロリ抽出物を5% 含む餌を4週間摂取させたところ、抗酸化酵素SOD、カタラーゼおよびグルタチオンの活性が維持されたことから、セロリが抗酸化力向上効果や免疫向上効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22045891
【3】高脂肪食摂取ラットにおいて、セロリ抽出物を400mg/kg を摂取させたところ、血中総コレステロール、トリグリセリド、LDLコレステロールの増加が抑制され、HDLコレステロールでは改善が見られたことから、セロリが高脂血症予防効果を持つことが示唆されました。。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22718672
参考文献
・吉田企世子 安全においしく食べるための新しい栄養学 高橋書店
・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社
・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所
・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社
・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社
・Tsi D, Das NP, Tan BK..1995 “Effects of aqueous celery (Apium graveolens) extract on lipid parameters of rats fed a high fat diet.” Planta Med. 1995 Feb;61(1): 18-21.
・Cao J, Zhang X, Wang Q, Jia L, Zhang Y, Zhao X. 2012 “Influence of flavonoid extracts from celery on oxidative stress induced by dichlorvos in rats.” Hum Exp Toxicol. 2012 Jun;31(6): 617-25.
・Iyer D, Patil UK. 2011 “Effect of chloroform and aqueous basic fraction of ethanolic extract from Apium graveolens L. in experimentally-induced hyperlipidemia in rats.” J Complement Integr Med. 2011 Sep 27;8(1).