カルノシン

carnosine

カルノシンはアミノ酸が2つ結合したイミダゾールペプチドの一種で、鶏肉に多く含まれており、筋肉がパワーを発揮する際に必要となる成分です。馬の筋肉に多く存在し、一瞬で駆け出すことができる瞬発力に大きく関わっています。カルノシンは瞬発力が求められるスポーツをされる方の強い味方です。

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カルノシンとは?

●基本情報
カルノシンは2つのアミノ酸、β-アラニン[※1]とL-ヒスチジンが結合したイミダゾールペプチドの一種です。カルノシンとよく似た構造を持つイミダゾールペプチドとしてアンセリンがありますが、どちらも運動能力維持にとても役立つ成分です。乳酸の生成を抑制したり、活性酸素[※2]から細胞を守り元気にしてくれる働きがあるため、若々しい体づくりには必要不可欠な成分です。
カルノシンの成分であるイミダゾールペプチドは、私たちの筋肉の中でつくり出されるアミノ酸の一種で、活性酸素を抑える働きがあります。様々な動物の骨格筋に広く分布し、特に渡り鳥の胸肉・まぐろやかつおなどの肉に多く含まれています。時速100kmで泳ぐまぐろ・かつお、数千kmも不眠不休で飛ぶ渡り鳥が休みなく動き続けることができるのは、カルノシンの働きによるものです。
カルノシンは、その量が多いほど筋肉の出せるパワーも増します。トップスピードを長く持続させることにカルノシンは大きく関係しています。筋肉中にカルノシンが多く存在する馬は走り出すと同時に、ほぼトップスピードを出すことができます。また、カルノシンは、エネルギーをつくり出す時、一緒に生成される乳酸を抑え、疲れを軽減させてくれます。スポーツをする際、エネルギーを必要とする時こそ、乳酸を抑えることができるカルノシンは必須成分といえます。しかし、筋肉中に存在するカルノシン濃度は加齢に伴い減少することがわかっています。カルノシンの摂取により、運動パフォーマンスを向上させることが可能です。
また、カルノシンは、体内に発生する活性酸素から細胞を守ります。活性酸素とは、人間に必要な酸素の一部が紫外線やストレス、激しい運動などによって体内に発生し、体の細胞を傷つけ、サビつかせます。そのため、老化の原因物質のひとつといわれています。カルノシンは、このような活性酸素から細胞を守る「抗酸化作用」があります。体の細胞を守り、若々しさを保つアンチエイジング効果も発揮します。

●カルノシンの歴史
カルノシンは19世紀の末、1900年に肉エキスから発見されました。人間や豚、牛、馬などの哺乳動物のエネルギー消費が活発な組織にカルノシンが多く存在しています。カルノシンは肉類の中でも、特に鶏類に多く含まれています。
中国の食物誌『隋園食単』に、「鶏の功は最も大きい」と鶏の栄養効果が称えられています。古来より鶏肉は中国で単なる食材ではなく、万病に効く伝承薬として取り扱われてきました。最高級のスープ「上湯(シャンタン)」は丸鶏を沸騰させない温度で炊き出す贅沢な方法でつくられます。
欧米でも、風邪をひいたり、体調を崩すと栄養効果のある「チキンスープ」が効くと食され、洋の東西を問わず、鶏肉が体に良いと広く認知されているのがわかります。

● カルノシンの働きと活性酸素
カルノシンには、活性酸素を抑える働きがあります。活性酸素は呼吸をする時に取り込む空気中の酸素ガスからつくられるのです。活性酸素は、体内に侵入してくる細菌を殺傷するといった、人間にとって重要な働きもしますが、過剰に増えすぎると体にダメージを与えます。
活性酸素には主要な4種類が存在します。それらは、水酸化ラジカル[※3]、塩素系ラジカル[※4]、窒素系ラジカル[※5]、過酸化亜硝酸ラジカル[※6]などです。
カルノシンには、水酸化ラジカル、塩素系ラジカル、窒素系ラジカルを除去する抗酸化作用が知られています。特に塩素系ラジカルはフラボノイドビタミンCで除去されにくいため、バランスの良い抗酸化作用が期待され、酸化ストレス低減に役立つ可能性があると期待されています。
食品で活性酸素の有害作用を抑えると期待されているものとしては、野菜、穀物、果物といった植物性食品に含まれるものと、チキンエキス、ポークエキス、マグロエキスといった動物性食品に含まれるものがあります。
また、カルノシンにはAGEs[※7]の生成を妨害して、速やかに分解・排泄される作用があるため、活性酸素を抑える働きがあります。これはカルノシンがたんぱく質に効率良く結合してたんぱく質がAGEs化するのを防ぐという構造から働いています。

[※1:β-アラニンとは、天然に存在するアミノ酸の一種です。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:水酸化ラジカルとは、DNAやたんぱく質など有機物に対して非常に反応性が高く、細胞損傷の主な原因物質と考えられている活性酸素です。]
[※4:塩素系ラジカルとは、細菌を殺菌するために白血球が酵素を用いてつくられる活性酸素です。体にとってはプラスの働きもします。]
[※5:窒素系ラジカルとは、白血球や血管内皮細胞が侵入異物を分解するためにつくられる活性酸素です。体にとってはプラスの働きもします。]
[※6:過酸化亜硝酸ラジカルとは、侵入してきた細菌や異常な細胞を殺菌、殺傷する活性酸素です。体にとってはプラスの働きもします。]
[※7:AGEsとは、糖がたんぱく質と反応して変異し生成された物質のことです。また、最終糖化産物ともいわれます。]

カルノシンの効果

●疲労回復効果
カルノシンは2つのアミノ酸が結合したイミダゾールペプチドの一種です。イミダゾールペプチドは、筋肉の中でつくり出される物質で、活性酸素を抑える働きがあります。最近の研究で、体内の活性酸素の発生を抑えることで疲労感を改善するという報告がありました。カルノシンは疲労回復に優れた効果を持ちます。【2】【8】【9】

●運動能力を向上させる効果
カルノシンは不眠不休で数千kmも飛び続ける渡り鳥の翼の付け根にも含まれています。長時間運動する際には欠かせない成分で、持久力や運動能力の向上効果があります。日頃から摂取しておくことが大切です。また、カルノシンは瞬発力を養う効果もあるといわれています。【2】【8】

●アンチエイジング効果
カルノシンは、活性酸素を抑える働きがあるため、疲れにくくするとともに、体や肌を若々しく保つアンチエイジング効果もあります。
過剰に発生した活性酸素は、細胞の中の遺伝子DNAを傷つけ、細胞の異常や細胞死を起こして老化を促進します。カルノシンはそこにブレーキをかけ、活性酸素を抑えてくれます。【1】【3】【4】

●生活習慣病を予防効果
カルノシンは、活性酸素を抑える働きがあるため、老化の原因となる体のサビから守ってくれる働きを持ちます。細胞を正常に再生させ、肝機能をはじめ、体の機能を高める作用があるため、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果があります。
また、カルノシンは、体内の余計な糖分と結びついて、体外に排出することにより糖尿病を予防する効果があります。【5】【6】

●糖化を防ぐ効果
カルノシンには、たんぱく質の糖化を防ぐ効果が研究されています。体内でAGEsと呼ばれる糖化したたんぱく質が増えて蓄積すると、たんぱくの構造が壊されて働きを失い、その結果、シミやしわ、たるみなどを引き起こしてしまいます。カルノシンは、糖化を起こしたたんぱく質が蓄積する前に分解・排泄されやすいように働きかけることで、アンチエイジングの効果が期待できます。【9】

カルノシンは食事やサプリメントで摂取できます

カルノシンを含む食品

鶏肉
牛肉
豚肉

こんな方におすすめ

○疲れやすい方
○スポーツをする方
○運動能力を向上したい方
○いつまでも若々しくいたい方
○生活習慣病を予防したい方
○糖化を予防したい方

カルノシンの研究情報

【1】カルノシンは筋肉や脳に多く存在しています。高い抗酸化力を持ち、筋肉や脳で活性酸素を除去するはたらきや、核酸やDNAに対する障害を抑制するはたらきを持つことから、イミダゾールペプチドは抗酸化作用と老化防止効果の役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3362866

【2】老化促進マウスにおいて、クレアチンを摂取させ、10, 25, 60週齢の骨格筋中のカルノシンとアンセリンの量を比較したところ、25週齢において、筋肉中のカルノシンとアンセリンの濃度が増加しました。また筋肉疲労や筋肉回復力においても改善が見られました。しかし60週齢においては認められませんでした。運動機能に対するクレアチニン補給は有益であり、カルノシンとアンセリンの増加とそれに伴う筋肉疲労の軽減と回復力の向上が関連していると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18593282

【3】カルノシンは、長寿細胞に多く見られ、特にヒト繊維芽細胞において老化を防止するはたらきが確認されています。カルノシンは生体内で老化の原因となるタンパク質と結合することで、老化タンパク質の活性化を抑制するはたらきをもち、細胞やタンパク質の老化を防ぐことから、カルノシンの抗老化効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10892341

【4】ラットに、カルノシンを1日あたり250mg/kg を1ヶ月間摂取させたところ、老化による酸化物質MDAの増加が抑制され、赤血球中の抗酸化酵素GSHの低下が抑制されたことから、カルノシンには老化予防と抗酸化力維持効果が確認できました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20885014

【5】Ⅱ型糖尿病マウスにおいて、カルノシンを1日あたり100mg/kg を投与すると、創傷の回復が促進されました。またヒトの皮膚細胞(ヒト真皮繊維芽細胞)にカルノシンを投与すると、高血糖状態での細胞の生存率が向上したことから、カルノシンには抗糖尿病効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22451275

【6】糖尿病ラットに、カルノシンを1日あたり1g/kg を6ヶ月間摂取させたところ、網膜における血管障害が抑制されました。網膜における管障害因子Ang-2の正常化とグリア細胞における熱反応タンパク質Hsp27にはたらきかけることにより、視細胞の障害が抑制されたことから、カルノシンに糖尿病網膜症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21865855

【7】β-アラニンを摂取すると、筋肉中のカルノシンが増加することが確認されており、その抗酸化力によって持久力増加や疲労軽減に役立つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20479615

【8】カルノシンの原料であるβ-アラニンを摂取すると、筋肉中の乳酸を分解する酵素LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の活性が維持されたことから、β-アラニンを摂取することで、筋肉中のカルノシンが増加し、疲労物質乳酸が分解されることで、疲労感軽減に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15968825

【9】カルノシンは抗酸化作用を持ち、活性酸素から体を守るはたらきを持つが、近年の研究により、糖化を防ぐ作用が確認されました。糖化は酸化とともに老化を促進させる一因であることから、カルノシンには抗酸化作用、抗糖化作用による老化防止効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12002523

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参考文献

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・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

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・Hipkiss AR, Brownson C. 2000 “A possible new role for the anti-ageing peptide carnosine.” Cell Mol Life Sci. 2000 May;57(5):747-53.

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・Ansurudeen I, Sunkari VG, Grünler J, Peters V, Schmitt CP, Catrina SB, Brismar K, Forsberg EA. 2012 “Carnosine enhances diabetic wound healing in the db/db mouse model of type 2 diabetes.” Amino Acids. 2012 Jul;43(1):127-34.

・Pfister F, Riedl E, Wang Q, vom Hagen F, Deinzer M, Harmsen MC, Molema G, Yard B, Feng Y, Hammes HP. 2011 “Oral carnosine supplementation prevents vascular damage in experimental diabetic retinopathy.” Cell Physiol Biochem. 2011;28(1):125-36.

・Artioli GG, Gualano B, Smith A, Stout J, Lancha AH Jr. 2010 “Role of beta-alanine supplementation on muscle carnosine and exercise performance.” Med Sci Sports Exerc. 2010 Jun;42(6):1162-73.

・Mehta AD, Seidler NW. 2005 “β-alanine suppresses heat inactivation of lactate dehydrogenase” J Enzyme Inhib Med Chem. 2005 Apr;20(2):199-203.

・Seidler NW, Yeargans GS. 2002 “Effects of thermal denaturation on protein glycation.” Life Sci. 2002 Mar 1;70(15):1789-99.

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