カルダモン

cardamon
小豆蒄(しょうずく)
Elettaria cardamomum

歓待のシンボルとされているカルダモンの種は、紀元前1000年以上前から生薬やスパイスとして利用されてきました。カルダモンには胃もたれを軽減する効果や口臭を予防する効果などがあり、現在でも食後にカルダモンの種を噛む習慣が残っている地域があります。

カルダモンとは

●基本情報
カルダモンはしょうが科の植物で、緑白色で中央が紫色の花が咲きます。果実は長さ1~3㎝くらいの長楕円形で緑色をしていますが熟すと単黄色になります。
実の内部は3室に分かれて黒褐色の芳香性の種子が10数個入っています。
果皮には香りも味もあまりありませんが、角ばった約2mmの小さな種子は、強い独特の芳香と苦みがあります。
カルダモンは、最も古い時期から使われてきたサフランやバニラなどと並ぶ高価なスパイスのひとつです。
カルダモンの原産地であるインドでは、コショウを「スパイスの王様」、カルダモンを「スパイスの女王」と呼び、カレー料理に欠かせない重要なスパイスです。
北インドでは、料理のベースになるガラムマサラ[※1]に必ずといって良いほどカルダモンが入っているといわれています。
また、肉料理の臭み消しやケーキの風味づけなどにも利用されており、中近東ではコーヒーにカルダモンの精油[※2]や種子の粉末を加えた「カルダモンコーヒー」が好まれています。

●カルダモンの歴史
カルダモンの名はヒンドゥー語でカルディア(心臓)の形をしたアモーマム(生薬)というところからきているといわれています。
カルダモンは紀元前1000年以上前から生薬やスパイスとして利用されています。
紀元前4、5世紀頃には泌尿器系の病気を治し脂肪をとる生薬として、また上流階級の人々はビンロウ[※3]の葉に包んで食後に噛むと、だ液の分泌が良くなることから、消化吸収の助けになるといわれてきました。
古代エジプトでは「聖なる香煙」とされ、神殿での祈祷の際にたかれるお香の中に使用されてきました。チグリス河やユーフラテス河地域にあったバビロニア王国の紀元前8世紀末の庭園でも、カルダモンが栽培されていたそうです。
また、古代の権力者たちは常に毒殺の危機にさらされていたため、王室付きの医者たちはスパイスの防腐性・殺菌力に注目し、カルダモンをはじめとするスパイスを練り固めた解毒剤を調合し、王はこれを常用していました。
しかし、ローマ軍との戦いに敗れた王ミトラダデスは追手から逃れるために自ら死を選ぼうと毒を飲みましたが、解毒剤を常用していたためにすぐ死ぬことができなかったという逸話があります。
特に、スウェーデンではカルダモンの消費量が非常に多く、1人当たりの消費量はアメリカのなんと50倍といわれています。
このように愛され続けているカルダモンは、8~10世紀にスカンディナヴィア半島に伝わりました。
スカンディナヴィアの武装船団(海賊)であるバイキングが、コンスタンティノープルを襲撃、この地で手に入れたカルダモンを母国に持ち帰りスパイスとしての調理法を伝えたことがきっかけといわれています。
カルダモンの原産地はインド・スリランカ・マレー半島といわれています。

●カルダモンの利用方法
クセが強いお茶なので、ブレンドティーにして飲むことがおすすめです。インドでは、紅茶にカルダモンなどのハーブとミルクを加えてマサラティーにするのが一般的な飲み方です。
カルダモンの種は、歓待のシンボルといわれています。
インドではカレーはもちろんデザートに使ったり、またカルダモンを潰さず丸ごと加えたピラフやカレーなどの料理はお客様をおもてなす料理とされています。
サウジアラビアでは「ガーワ」と呼ばれる真鍮製のコーヒーポットの口に、割ったカルダモンを数粒詰めてコーヒーを注いで作ったカルダモンコーヒーがよく飲まれ、お客様をもてなす歓迎の飲み物とされています。

[※1:ガラムマサラとは、主にインド料理で使われているミックススパイスのことです。インドでは、それぞれの家庭で独自の配合でつくられており各家庭の味があるといわれています。]
[※2:精油とは、揮発性の芳香物質を含む有機化合物のことです。100%が天然の物質であり、人工的に合成した物質を一切含まず、アルコール希釈などをしていない完全成分のものだけを指します。]
[※3:ビンロウとは、太平洋・アジアおよび東アフリカの一部で見られるヤシ科の植物のことです。]

カルダモンの効果

●消化を促進する効果
カルダモンは消化を促進する効果があるといわれています。カルダモンはスパイスの一種のため、口の中に入れることによりだ液の分泌を促進します。また、胃を刺激することにより胃液の分泌を促し、消化を促進します。カルダモンのお茶は、しょうがに似た刺激的な風味でほのかな甘みがあります。飲んだ後の清涼感が強く、消化促進の効果があるので、食後のお茶におすすめです。【1】

●口臭を予防する効果
スカンディナヴィア半島の国々では、カルダモンの実を噛みながらお酒を飲む姿がよく見られます。これは、カルダモンに含まれているシネオールがアルコール臭を消す効果があるといわれているためです。口臭が消えて息が甘い香りになります。また、カルダモンに含まれているシネオールは、口臭だけではなく衣類などの消臭スプレーとしても利用されるほど消臭効果が高いとされています。
さらに、食材の臭み消しにもカルダモンは利用されています。肉や魚の臭みを消し、さらに香りをつけてくれるカルダモンは中近東では欠かせない食材です。【2】

●精神を安定させる効果
カルダモンの香りには、α-テルピネオールと1.8-シネオールという香気成分を含んでいます。この成分は、気分を落ち着かせ緊張を解きほぐし、疲れを回復させる働きがあるといわれています。【2】

カルダモンは食品やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○胃もたれでお悩みの方
○口臭を予防したい方
○気分を落ち着けたい方

カルダモンの研究情報

【1】エタノールおよびアスピリン誘発胃潰瘍ラットを対象に、カルダモン抽出物を摂取させたところ、胃潰瘍が緩和されたことから、カルダモンは抗炎症作用、胃潰瘍予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16298093

【2】カルダモン種子の精油成分として、テルピネルアセテートやシネロールを含むことから口臭ケアが期待されています。また精油成分は鎮静効果を持つことからも、カルダモンが鎮静効果を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15453700

【3】高血圧患者20名を対象に、カルダモン粉末を1日あたり3g の量で12週間摂取させたところ、拡張期血圧ならびに線維素溶解活性に改善が見られたことから、カルダモンは高血圧ならびに動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20361714

【4】黒コショウおよびカルダモン抽出物は、免疫細胞T細胞ならびにNK細胞を活性化させることから、カルダモンは免疫向上作用を持つほか、抗炎症作用を持つことが知られています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20210607

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参考文献

・Jamal A, Javed K, Aslam M, Jafri MA. 2006 ” Gastroprotective effect of cardamom, Elettaria cardamomum Maton. fruits in rats.” J Ethnopharmacol. 2006 Jan 16;103(2):149-53.

・Marongiu B, Piras A, Porcedda S. 2004 “Comparative analysis of the oil and supercritical CO2 extract of Elettaria cardamomum (L.) Maton.” J Agric Food Chem. 2004 Oct 6;52(20):6278-82.

・Verma SK, Jain V, Katewa SS. 2009 “Blood pressure lowering, fibrinolysis enhancing and antioxidant activities of cardamom (Elettaria cardamomum).” Indian J Biochem Biophys. 2009 Dec;46(6):503-6.

・Majdalawieh AF, Carr RI. 2010 “In vitro investigation of the potential immunomodulatory and anti-cancer activities of black pepper (Piper nigrum) and cardamom (Elettaria cardamomum).” J Med Food. 2010 Apr;13(2):371-81.

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