カフェイン

caffeine

コーヒー類に多く含まれることからその名がついたといわれるカフェインは、昔はぜん息の治療に使用されていました。
眠気覚ましとして使用されることが多いカフェインですが、その他にもむくみの抑制や冷え症の改善などの女性に嬉しい働きを持っています。

カフェインとは

●基本情報
カフェインとはコーヒー豆、茶葉、カカオ豆などの植物に含まれる苦みを持った天然成分のことです。
昔は薬としても使われており、現在ではその味や効能が高く評価され、数多くの食品や飲料に添加されています。
コーヒー類に多く含まれることからその名前がついたといわれています。
カフェインはコーヒーに最も多く含まれるアルカロイド[※1]です。

●カフェインの歴史
カフェインはかつて、抗炎症薬としてぜん息発作の予防に使われていました。
ところが、カフェインより強いテオフィリンが発売されてからは使用されなくなりました。
それから半世紀が過ぎ、効果の強いテオフィリンが主にぜん息の治療に使用され、カフェインはやがて忘れられていきました。
ところが20世紀の終わり頃、カフェインは優れた抗炎症薬で、体の中でじわじわ進む炎症反応を抑制し、病気の予防に役立つことがわかりました。様々な病気は炎症が原因で細胞障害等の重篤な症状が現れてしまうといわれています。カフェインの摂取は病気の予防や進行の抑制に役立つことが明らかになりました。

●カフェインの含有量
カフェインが最も多く含まれるコーヒー豆は、低地でも栽培可能で病害虫に強い品種「ロブスタ種」です。
「ロブスタ種」は日本ではインスタントコーヒーや缶コーヒー、リキッドタイプのアイスコーヒーなどにもよく使用されています。
また、世界で栽培されているコーヒー豆の約7割を占める「アラビカ種」のカフェイン含有量は「ロブスタ種」の約半分です。

<豆知識>カフェインの妊婦への影響
カフェインを代謝する際に重要な役割を担っている酵素の活性は、妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期と徐々に低下し、分娩後1ヵ月で回復することが知られています。
妊娠により、カフェインの代謝は遅延するため、妊娠中の方はカフェインを控えた方が良いといわれています。
また、カフェインは胎盤通過性があり、胎児へ移行します。胎児の薬物代謝酵素は未熟であり、カフェインの代謝機能が低いため蓄積されやすいといわれています。そのため、胎児の方がカフェインの影響が大きくなる可能性が指摘されています。
近年はデカフェといわれるカフェインの含有量を少なくしたコーヒーも販売されています。妊娠がわかったら、デカフェの商品を利用することをおすすめします。

●カフェインの働き
カフェインは、脳を目覚めさせ疲労を回復させる働きがあります。このため作業効率がアップしたり、気分転換や頭痛にも効果を発揮します。また利尿作用もあり、体の中の不要なものを外へ出すことで、体全体のむくみなども取る働きがあります。
さらに近年、カフェインには体脂肪の燃焼を促進させる効果があることがわかり、ダイエットにも注目されている成分です。

[※1:アルカロイドとは、窒素原子を含む天然由来の有機化合物のことです。]

カフェインの効果

●むくみを予防・改善する効果
腎血管が拡張することにより、糸球体濾過量[※2]が増大します。さらに尿細管で水分の再吸収を抑制することにより尿量が増え、排尿が促されます。
この働きにより、体内の余分な水分が排出され、むくみなどの予防につながります。【1】

●脂肪の燃焼を促す効果
カフェインは体内の熱産生を促すことが19世紀末に発見されており、マウスの実験によって褐色細胞からの熱の放出が増加することが報告されています。
カフェインはエネルギーを熱として放出するため、体内への脂肪の蓄積を減少させる可能性があります。【2】

●冷え症を改善する効果
カフェインは末梢の血管を拡張して体を温める働きがあります。特にカフェインを豊富に含むコーヒーを飲むことにより、カフェインの摂取以外にも香気成分等の様々な成分と相乗効果を発揮して、冷えの解消に役立ちます。
【3】

●アルツハイマー病を予防する効果
物忘れがひどくなるアルツハイマー病は、脳にアミロイドベータというたんぱく質が異常に蓄積して、神経細胞が死んでしまうことが原因といわれています。
その効果を実証するために、ある実験が行われました。生まれつきアミロイドベータが蓄積しやすいマウスに、1日あたり約1.5mgのカフェインを水に溶かして4~5週間与えました。これは人間がコーヒーを毎日5杯ずつ飲むことに相当します。
その結果、カフェインを与えないマウスに比べ、カフェインを与えたマウスでは記憶力の低下が改善しました。記憶にかかわる脳の海馬や大脳皮質では、アミロイドベータが4~5割減少しました。また、この実験によりカフェインがアミロイドベータをつくる酵素の働きを抑えることが証明されました。
この働きにより、カフェインにはアルツハイマー病を予防する効果があるといわれています。【4】【5】

●パーキンソン病を予防する効果
1日活動した脳の中に疲労物質アデノシンが蓄積すると、人間は眠くなります。寝ている間にアデノシンをリサイクルして、新しいエネルギーを補充するためです。
アデノシンが溜まったままになると、脳の神経が破壊され、パーキンソン病を発症するリスクが高まります。
カフェインにはアデノシンの毒性を弱め、脳の神経を守ってくれる働きがあります。
このため、カフェインにはパーキンソン病を予防する効果があると期待されています。【6】

●覚醒効果
脳には睡眠を促進する神経伝達物質を受け取る受容体が大量に存在しています。カフェインを摂取すると、この受容体はカフェインと最大50%も結びつき、その結果睡眠が抑制され、脳が活性化することで覚醒するといわれています。

[※2:糸球体濾過量とは、単位時間当たりに腎臓のすべての糸球体によりろ過される血漿量のことです。]

カフェインは食事やサプリメントで摂取できます

カフェインを含む食品

○コーヒー
○紅茶
○玉露
○チョコレート
○ココア

こんな方におすすめ

○手足のむくみでお悩みの方
○肥満を防ぎたい方
○眠気を覚ましたい方

カフェインの研究情報

【1】カフェインはアンギオテンシンⅡに作用し、腎臓の糸球体濾過量を増加させることから、カフェインは利尿作用を持ち、余分な水分を体外に出すと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1425965

【2】肥満ラットを対象に、カフェインを21日間飲用させたところ、BMIの数値が改善し、血中のカテコラミン量および遊離脂肪酸が増加していたことから、カフェインは、抗肥満作用があることと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16306706

【3】カフェインは、カリウムチャネルを介さずに、内皮機能依存により血管を拡張させるはたらきを持つことから、血管拡張作用および血流改善効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19061970

【4】アルツハイマー病(AD)モデルマウスを対象に、長期間カフェインを摂取させたところ、海馬および大脳皮質内のアミロイドβの蓄積が抑制されたことから、カフェインはアルツハイマー病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19581723

【5】アルツハイマー(AD)病モデルマウスを対象に、カフェイン(ヒト換算:カップ5杯/日)を摂取させたところ、βーセクレターゼおよびプレセニリン1が活性化され、海馬および皮質でのアミロイドβの蓄積が抑制されたことから、カフェインはアルツハイマー病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19581722

【6】日中の眠気の症状を伴うパーキンソン病(PD)患者(Epworth)を対象に、カフェインを1日あたり200, 400mg の量で3週間摂取させたところ、CGI-C、Epworth睡眠スケールスコア、PDスケールスコアに改善が見られたことから、カフェインにパーキンソン病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22855866

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参考文献

・中嶋洋子 著、阿部芳子、蒲原聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・岡希太郎 コーヒーの処方箋 医薬経済社

・野田光彦 編 コーヒーの医学 日本評論社

・Holycross BJ, Jackson EK. (1992) “Effects of chronic treatment with caffeine on kidney responses to angiotensin II.” Eur J Pharmacol. 1992 Sep 4;219(3):361-7.

・Kobayashi-Hattori K, Mogi A, Matsumoto Y, Takita T. (2005) “Effect of caffeine on the body fat and lipid metabolism of rats fed on a high-fat diet.” Biosci Biotechnol Biochem. 2005 Nov;69(11):2219-23.

・Montes FR, Cabrera M, Delgadillo A, Salgar C, Echeverri D. (2009) “The role of potassium channels in the vasodilatory effect of caffeine in human internal mammary arteries.” Vascul Pharmacol. 2009 Mar-Apr;50(3-4):132-6.

・Cao C, Cirrito JR, Lin X, Wang L, Verges DK, Dickson A, Mamcarz M, Zhang C, Mori T, Arendash GW, Holtzman DM, Potter H. (2009) “Caffeine suppresses amyloid-beta levels in plasma and brain of Alzheimer’s disease transgenic mice.” J Alzheimers Dis. 2009;17(3):681-97.

・Arendash GW, Mori T, Cao C, Mamcarz M, Runfeldt M, Dickson A, Rezai-Zadeh K, Tane J, Citron BA, Lin X, Echeverria V, Potter H. (2009) “Caffeine reverses cognitive impairment and decreases brain amyloid-beta levels in aged Alzheimer’s disease mice.” J Alzheimers Dis. 2009;17(3):661-80.

・Postuma RB, Lang AE, Munhoz RP, Charland K, Pelletier A, Moscovich M, Filla L, Zanatta D, Rios Romenets S, Altman R, Chuang R, Shah B. (2012) “Caffeine for treatment of Parkinson disease: a randomized controlled trial.” Neurology. 2012 Aug 14;79(7):651-8.

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