サボテン

cactus
シャボテン 仙人掌 覇王樹

過酷な環境でも生育できるという強い生命力を持ったサボテンは、古くから食用としても親しまれてきました。
近年では、サボテンの葉だけではなく、サボテンの果実にも栄養素が豊富に含まれていることがわかり、その働きに期待が寄せられています。

サボテンとは?

●基本情報
サボテンは、メキシコを中心にアメリカ大陸で生まれた植物です。砂漠などの過酷な状況でも生育できる強い生命力を持つため、メキシコ北部の砂漠地帯には今でも世界で最も多くのサボテンが自生しています。
サボテンは効率的に水分を蓄えることができる植物であるため、乾燥地帯では非常に重宝されてきました。
中でも、ウチワサボテンと呼ばれる品種は重要な農作物として栽培されています。
主に果実を収穫するために栽培されていますが、葉の部分も食用とされています。
ウチワサボテンは非常に簡単に交配させることができるため、原種を特定することは困難とされていますが、紀元前9000年頃から食用とされてきたといわれています。
そして、コロンブスが新大陸に到着する時には南米ではすでに広く栽培されており、航海中の船乗りたちの壊血病[※1]予防のためにコロンブスがヨーロッパに持ち帰り、地中海沿岸地帯に広がりました。
16世紀初頭にはメキシコから地中海沿岸に渡り、現在ではメキシコやシシリア、アルジェリア、ブラジル、南アメリカ、アフリカ北部などで栽培されています。

●食用としてのサボテン
メキシコなどの南米では、ウチワサボテンは野菜の一種として食卓には欠かせないものです。ウチワサボテンの若葉をトゲが生えてくる前に収穫し、食用としています。
さやえんどうによく似た味であるといわれており、フライパンで焼いて塩こしょうで味付けしたサボテンステーキや茹でてから細かく刻み、豆腐やチーズなどと一緒にサラダにしても美味しく食べられます。またスープに入れて煮込んだり皮をむいて卵とハラペーニョ[※2]と一緒に炒めるなど、様々な料理に活用できます。
サボテンを酢漬けにしたピクルスの缶詰も人気があります。
また、カクタスフルーツと呼ばれるサボテンの果実も食用とされます。

●サボテンの果実
カクタスフルーツは、5月の初旬から初夏にかけて実ります。未熟な時期には白色をしており、徐々に黄色から赤色に変わり、8月頃に収穫されます。
カクタスフルーツは全長5~8cm程度の小さい卵型の果実で、皮には非常に細かいトゲがあります。皮をむくと、赤い色をした繊維質の果肉と、小さな黒い種子が現れます。
果肉は冷やして食べられることが多く、ほのかな甘みと繊細な香味を持ちスイカに似た味が人気です。
また、サンカクサボテンの果実は日本ではドラゴンフルーツという名で販売されています。

●サボテンの種類
サボテンには、約8000~10000もの多くの種類があり、関係する原種・品種は数千種にも及びます。そのため、草姿や性質は極めて変化に富んでいます。
サボテンの特徴は、トゲの生えるフワフワした「刺座」と呼ばれる部分を持つことです。
サボテン以外の多肉植物の中にも球状の姿を持つものがありますが、「刺座」を持たないためサボテンとは区別できるといわれています。

●サボテンに含まれる成分
サボテンの果実であるカクタスフルーツには、ベタレイン色素と呼ばれるクロロフィリカスやカロテノイド、フラボノイドなどと同じ植物由来の色素成分が含まれています。
ベタレイン色素は、黄色から濃い紫色を呈する水溶性の色素で、赤色系のベタシアニンと黄色系のベタキサンチンの2種類に分けられます。
このベタレイン色素には、活性酸素[※3]を除去する力があるといわれており、それは臨床実験でも証明されています。
また、サボテンの種類によって栄養素の含有量に差はありますが、全体的に食物繊維が豊富で、そのほとんどはセルロースやヘミセルロース、リグニンなどの不溶性食物繊維です。さらにサボテンにはビタミンCやポリフェノールも豊富に含まれているといわれています。

[※1:壊血病とは、ビタミンCの不足によって体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患のことです。]
[※2:ハラペーニョとは、メキシコを代表するとうがらしの一種です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

サボテンの効果

サボテンには、セルロースやヘミセルロース、リグニンなどの食物繊維や特有の成分であるベタレイン色素、ビタミンCなどの有効成分が豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●動脈硬化を予防する効果
日常生活で体内に発生する活性酸素は、体にとって必要な物質ですが、過剰に発生すると血中の脂質を酸化させるため、動脈硬化の原因のひとつとなります。
カクタスフルーツに含まれるベタレイン色素には体内の活性酸素を除去する働きがあり、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保ってくれるため、動脈硬化の改善や予防に効果があるといわれています。【1】

●むくみを改善する効果
カクタスフルーツには利尿作用があることが古くから知られており、むくみの原因となる余分な水分を排泄することが実験により証明されています。
このメカニズムは科学的には証明されていませんが、現在研究が進められています。

●美肌効果
カクタスフルーツ特有のベタレイン色素には紫外線によって発生した活性酸素を抑制する働きがあり、ビタミンCの効果と合わせてメラニン色素[※4]の発生を抑える効果があります。【3】
さらに、豊富に含まれるビタミンCがコラーゲンの生成を促進し肌のハリが保たれることにより、しわの予防や改善にも役立ちます。
また、豊富な食物繊維により腸内環境を改善する働きがあるため、カクタスフルーツを摂取することは美しい肌へと導く働きがあるといわれています。

●便秘を解消する効果
カクタスフルーツに豊富に含まれる不溶性食物繊維は、水に溶けない食物繊維です。水分を吸収して数十倍に膨らみ、体内を刺激して余分なものを押し出す腸のぜん動運動を活発にします。ぜん動運動が活発になると、不要なものが排出されやすくなり、便通を促すといわれています。【2】

[※4:メラニン色素とは、肌のシミやくすみを引き起こす原因物質のことです。]

サボテンはこんな方におすすめ

○動脈硬化を予防したい方
○むくみが気になる方
○肌を美しく保ちたい方
○便秘がちの方

サボテンの研究情報

【1】サボテンには色素成分ベタレインが含まれています。ベタレインは抗酸化力が強く、カテキンの約2倍、ルチンの約1.5倍、アスコルビン酸3倍の抗酸化力を持つことから、サボテンが高い機能性を持つと期待されています。
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902269002878241

【2】サボテンには色素成分ベタレインが含まれています。ベタレインはメラニン産生抑制作用を持つことから、サボテンに美白作用が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004697583

【3】サボテン食品には、セルロースやヘミセルロース、水溶性の食物繊維が多く含まれています。これら食物繊維には、胃腸の働きを整える作用や、乳酸菌を増やし、腸を整える作用、血糖値上昇抑制作用、コレステロール吸収阻害作用が知られていることから、サボテンに糖尿病予防効果や高脂血症ならびに整腸作用が期待されています
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001022690

【4】II型糖尿病患者36名を対象に、メキシコサボテンを含む食事を摂取させたところ、血糖値曲線化面積の減少が見られたことから、サボテンは糖尿病予防効果を持つと考えられています。
http://care.diabetesjournals.org/content/30/5/1264.long

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参考文献

・有賀豊彦 、渡邉慶一 、井上弘明、関泰一郎 (2008) “天然色素ベタレインの抗酸化活性を中心にした食品機能性” Food Style 21 巻12 号3頁84-91

・IWASHINA Tsukasa “Flavonoids and Their Distribution in Plant Families Containing the Betalain Pigments (Review)” 筑波実験植物園研究報告 20, 11-74, 2001-12

・土橋 昇、渡辺 智子、高居 百合 (1985) “成熟ラットに対するサボテン食品の長期投与の影響” 千葉県立衛生短期大学紀要 4(1), 3-7, 1985

・Bacardi-Gascon M, Dueñas-Mena D, Jimenez-Cruz A. (2007) “Lowering Effect on Postprandial Glycemic Response of Nopales Added to Mexican Breakfasts” Diabetes Care. 2007 May;30(5):1264-5.

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