カカオとは
●基本情報
カカオは中央アメリカから南アメリカの熱帯地帯を原産とするアオイ科の常緑樹で、年間を通じて気温が高く、雨の多い地域で育ちます。学名はTheobroma cacao(テオブロマカカオ)です。テオブロマという名前は、メキシコ・アステカ族の神話に由来し、「神様の食べ物」という意味を持ちます。
カカオの樹は高さ4.5~10mで、幹の太さは30~40cmにも成長するといわれており、卵型の葉っぱは幅10m、長さ30mの大きさになります。カカオは無数の白い花を一年中開花させており、1本の樹で年間5000~1万5000個ともいわれていますが、花のうち実をつけるのは70~300個程度だといわれています。
ラグビーボールのような形状の果実1つの中には、一般的にカカオ豆と称されているカカオの種子が20~40粒ほど入っており、発酵を行うことでチョコレートやココアの原料となります。
カカオには食物繊維やカルシウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれています。さらに、カカオに含まれるポリフェノールには、抗酸化作用のほか、ストレスをやわらげる効果などが知られています。
●カカオの歴史
カカオは約4000年前から中央アメリカに自生しており、カカオという名前はメキシコ語のカカウァトル(cacahuatle)に由来します。カカオはマヤ文明やアステカ遺跡の壁画などにも描かれており、古くから人々の生活に根付いていたことがうかがえます。
日本では1617年に伊達正宗の家臣が通商条約締結のためにメキシコを訪れた際に、薬用としてチョコレートを食したことが始まりだといわれています。
その後、江戸時代にはチョコレートは現在のようにお菓子としてではなく、薬用飲料として活用されていたといわれています。
チョコレートを日本人で最初に食べた者として、正式な文献として残されているのは1873年の岩倉具視をはじめとする欧米視察団です。当時の見学記には「銀紙に包み、表に石板の彩画などを張りて其(それ)美を為す。極上品の菓子なり。此の菓子は人の血液に滋養を与え、精神を補う効あり」と記されています。
<豆知識>貨幣にもなったカカオ
カカオの豆について最古の記述は、中南米に伝来する神話の中にあります。カカオ豆は、かつて神への供物として、また王族貴族だけが摂取できる食べ物でした。
さらにカカオ豆は、貨幣として利用されるほど貴重なものでした。かつてウサギや魚はカカオ豆10粒、カボチャは4粒で交換されていたといわれています。
貨幣としての価値を併せ持つカカオ豆は、貢物として金や琥珀などにならぶ価値を有していたといわれています。
カカオの効果
●体調を整える効果
カカオはカルシウムや鉄、亜鉛といったミネラルが豊富に含まれており、体の調子を整える効果があります。
ミネラル類とは、人間にとって必要不可欠な五大栄養素のひとつで、体の組織をつくる原料となり、体の働きを維持・調節する働きを持つ微量栄養素です。
人間の体の約96%は、炭素、水素、酸素、窒素で構成される炭水化物 (糖質)やたんぱく質、脂質、ビタミン類などの有機物と水分からできています。残りの約4%を構成しているのがミネラル類 (無機質)です。
しかし、体内でミネラル類をつくることはできないため、食品やサプリメントから摂取する必要があります。
カカオはミネラルを豊富に含むため、体の調子を整える効果があります。
●リラックス効果
カカオに含まれるカカオポリフェノールにはストレスをやわらげるリラックス効果があります。さらに、カカオ豆にはテオブロミンという成分があり、血行を良くして緊張をやわらげる効果があるといわれています。【1】
●便秘を解消する効果
カカオには、食物繊維が多く含まれるため、便秘を解消する効果があります。
食物繊維は、腸内の環境を整える効果があり、腸内に溜まった不要な老廃物を体外へ排出する働きを持つ上、善玉菌を増やす作用もあるため、腸内の環境を整える効果があり、特に便秘症には効果的な成分です。【3】
●動脈硬化を予防する効果
動脈硬化とは、活性酸素[※1]により酸化した悪玉(LDL)コレステロールが血液中に流れ、血管壁に沈着し血管が硬くなってしまうことをいいます。カカオに含まれるカカオポリフェノールは抗酸化力を持ち、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防いで、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果を発揮します。
[※1:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
カカオは食事やサプリメントで摂取できます
カカオを含む食品
○チョコレート
○ココア
○カカオバター
こんな方におすすめ
○リラックスしたい方
○ストレスの多い方
○便秘がちな方
○生活習慣病を予防したい方
カカオの研究情報
【1】カカオには、精神安定化作用を有する機能性成分テオブロミンが含まれていることから、カカオはリラックス効果を持つと考えらています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15549276
【2】カカオの主成分であるテオブロミンは、脂肪分解作用を有することから、カカオは高脂血症予防ならびに生活習慣病予防効果を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6322517
参考文献
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店
・則岡孝子 著 ひと目でわかる あなたに必要な栄養成分と食べ物 河出書房新社
・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社
・Smit HJ, Gaffan EA, Rogers PJ. (2004) “Methylxanthines are the psycho-pharmacologically active constituents of chocolate.” Psychopharmacology (Berl). 2004 Nov;176(3-4):412-9. Epub 2004 May 5.
・Fredholm BB, Lindgren E. (1984) “The effect of alkylxanthines and other phosphodiesterase inhibitors on adenosine-receptor mediated decrease in lipolysis and cyclic AMP accumulation in rat fat cells.” Acta Pharmacol Toxicol (Copenh). 1984 Jan;54(1):64-71.