ブロッコリー

broccoli
brassica oleracea var.   italica

「緑の抗ガン野菜」と呼ばれるブロッコリーは、ビタミンCやβ-カロテン、カルシウムなどを豊富に含んでいる緑黄色野菜です。様々な病気の予防や健康維持に働くファイトケミカルであるスルフォラファンが含まれていることで近年注目を浴びています。

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ブロッコリーとは

●基本情報
ブロッコリーはイタリアを中心とした地中海沿岸地域を原産地とするアブラナ科の野菜です。
キャベツの変種であるカリフラワーを品種改良してつくられた野菜であるといわれています。
大きなつぼみのかたまりと茎が食用とされます。
キャベツやカリフラワーは淡色野菜ですが、ブロッコリーは緑黄色野菜です。

●ブロッコリーの歴史
イタリア地中海沿岸地域を原産地とするブロッコリーは茎がアスパラガスのように柔らかいことから、イギリスでは「イタリアン・アスパラガス」、フランスでは「アスパラガス・キャベツ」などと呼ばれ、肉料理に欠かせない野菜として古くから愛されてきました。ブロッコリーという名前は、イタリア語で「芽」を表す「ブロッコロ」の複数形が語源です。
日本には明治時代に伝えられ、当時は観賞用とされていました。第二次世界大戦後に「緑ハナヤサイ」と呼ばれ本格的に栽培が始まりました。一般に広く出回るようになったのは1980年代に入ってからです。
昭和50年代ごろに健康的な食生活への関心が高まり、緑黄色野菜の価値が認識され始めてきた際に、栄養価が高いブロッコリーへも注目が集まりました。
最近では、抗ガン作用が期待されるファイトケミカルの一種であるスルフォラファンが含まれているとして、再び注目を浴びています。

●ブロッコリーの生産地
ブロッコリーの生産量が最も多い国は中国です。次いでインド、スペインと続きます。
日本では埼玉県がブロッコリー出荷数第1位を誇り、次いで愛知、北海道、群馬と並びます。近年、ブロッコリーが注目されていることから国内のブロッコリーの作付面積と出荷量、消費量は年々増加しています。

●ブロッコリーの選び方
ブロッコリーの旬は冬~春先です。
中央がこんもりした形をしており、つぼみが小さく縮まっているブロッコリーを選ぶようにします。
緑が濃いものは柔らかく、甘みがあります。黄色い花が咲いてしまっているものは筋っぽく硬いものが多いので避けましょう。
また、茎にス[※1]が入っているものは味も栄養価も落ちます。
ブロッコリーはあまり日持ちが良くないため、早めに使い切るようにします。保存する場合はポリ袋などに入れて冷蔵庫で保管します。
長期間保存する場合は、一度茹でたものを冷凍保存します。

●ブロッコリーの品種
ブロッコリーは大きく芽の付き方により2品種と、新芽であるブロッコリースプラウトの計3品種に分けられます。

・ブロッコリー
太い茎の先端の中心につぼみをつける「頂花蕾型」です。つぼみが紫がかっているものは傷みではなく、霜をうけてアントシアニンが生成されているためです。茹でると緑色に戻ります。

・茎ブロッコリー
細長い茎に小さな花房がついている、スティックセニョールとも呼ばれる品種です。
ブロッコリーと中国のカイランと呼ばれる植物をかけあわせて日本で開発されました。茎ブロッコリーは、茎から伸びたわき芽の先に小ぶりのつぼみがつく「わき芽型」と呼ばれる種類です。茎ブロッコリーは、日本ではあまり人気が出ませんでしたが、輸出先のアメリカでは爆発的な人気を得ました。
その後、茎ブロッコリーは逆輸入され、日本でも再び販売されるようになりました。

・ブロッコリースプラウト
スプラウトとは「新芽」という意味です。
ブロッコリーにはファイトケミカルの一種であるスルフォラファンが含まれていますが、発芽3日目のものであるブロッコリースプラウトにはブロッコリーの20~50倍のスルフォラファンが含まれており、少量食べるだけでも多量のスルフォラファンが摂取できると近年注目を集めています。

●ブロッコリーに含まれる栄養素
ブロッコリーは、ビタミンやミネラルに富んだ緑黄色野菜で、特にビタミンCはブロッコリー100g中に160mgと豊富に含まれています。
これはいちごの2倍、レモンの2.5倍に相当し、ブロッコリー4分の1株(約50g)で成人が1日に必要なビタミンCの摂取量を補うことができます。
さらに、ビタミンB群やβ-カロテン、カルシウム、カリウム、食物繊維なども豊富に含まれています。
それぞれの栄養成分の含有量が多いだけでなく、吸収を助けあう栄養素がバランスよく含まれているため、効率よく栄養を摂取することができます。
β-カロテンは体内でビタミンAに変換されます。必要な量のみ変換されるので、過剰摂取の心配はいりません。

茎にはつぼみの部分と同様の栄養成分と食物繊維が豊富に含まれています。
茎の表面の硬い皮を少し厚めに切り落とすと、中心は柔らかく味が良いためボイルや炒め物などで美味しく食べることができます。

ブロッコリーには機能性成分のファイトケミカルの一種であるスルフォラファンが他のアブラナ科の植物に比べ特に多く含まれています。スルフォラファンは蒸発しやすい物質のため、切った後はすぐ食べるようにしましょう。

<豆知識>ブロッコリーの効率の良い食べ方
ブロッコリーはボイルして食べられることが多い野菜です。
ブロッコリーを茹でる際は、ビタミンCの損失を抑えるためになるべく短時間で済ませることがポイントです。
茹であがりは水に浸けず、ざるにあげて冷ますようにしましょう。水に浸けるとつぼみの部分が水を含みやすいため、食べた時に水っぽく感じてしまい、ブロッコリーの香りも失われてしまいます。鮮やかな緑色を保つためにはうちわであおぐなどしてすぐに冷ますことが必要です。また、電子レンジで短時間加熱するのも栄養素を失わない方法のひとつです。
ブロッコリーに含まれるβ-カロテンは油との相性が抜群です。また、スルフォラファンは酢や油、動物性のたんぱく質と一緒に摂ることで効果が増します。そのため、ブロッコリーはオイル系のドレッシングをかけたり、肉料理の付け合せにすると効果的に栄養成分が摂取できます。

[※1:スとは、植物組織内にみられる空洞のことです。]

ブロッコリーの働き

ブロッコリーには、ビタミンCやビタミンB群、ビタミンE、β-カロテン、カルシウム、カリウム、食物繊維、スルフォラファンを豊富に、かつバランス良く含んでいるため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●生活習慣病の予防・改善効果
ブロッコリーは体内の活性酸素[※2]を除去する働きを持つβ-カロテンを豊富に含むため、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保つ働きがあります。
さらに、ブロッコリーに含まれるビタミンEには活性酸素により酸化した脂質を分解することで、血中に粘度のある物質が流れ出ることを防ぎ血行を良くすることにより血圧を下げる働きや、血管を丈夫にする働きがあります。これらの働きにより、ブロッコリーは動脈硬化や高血圧の予防・改善に効果的だといわれています。

また、発ガン物質が発生した際に体内でつくられる活性酸素は、正常な細胞を異常な状態にします。異常な状態になった細胞の核は本来の状態から変化してしまい、細胞分裂や再生がうまくできなくなります。
ブロッコリーに豊富に含まれているβ-カロテンとビタミンE、ビタミンC、スルフォラファンは、強力な抗酸化作用[※3]を持っており、活性酸素を無効化し細胞を正常な状態に戻すことにより、ガンの予防に効果的であるといわれています。
スルフォラファンの抗酸化作用はスルフォラファンが体内に入ってから3日間と長期間に渡って持続するという特徴があります。【1】【3】【4】

●肝機能を高める効果
近年、ブロッコリーに含まれるファイトケミカルの一種であるスルフォラファンが、体内の解毒酵素の働きを高めてくれることがわかりました。
肝臓で働くグルタチオン・S・トランスフェラーゼという解毒酵素により、日常的に体に入ってくる鉛や水銀、カドミウムなどの有害重金属が無毒化され、体外へ排出されます。
スルフォラファンはグルタチオン・S・トランスフェラーゼの生成を促進する働きがあり、肝臓の解毒作用を促進させるといわれています。
この働きによりスルフォラファンは、体内に取り込まれた発ガン性物質の排出を促すと注目を集めています。この働きはブロッコリーよりブロッコリースプラウトの方が強いといわれています。
また、ラットを使用した実験で、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンが、様々なタイプの肝炎・肝障害の発症を抑えることが明らかになっています。

●胃の健康を保つ効果
ブロッコリーに豊富に含まれているスルフォラファンには、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃ガンの原因であるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に対する殺菌効果があると報告されています。
また、ブロッコリーには胃潰瘍を予防する働きを持つビタミンU[※4]が豊富に含まれています。
ブロッコリーを食べることにより、ピロリ菌の感染や胃潰瘍が予防でき、胃ガンの予防にもつながる可能性があるとして注目されています。【5】

●便秘を解消する効果
食物繊維は腸内の不要なものを吸着し、腸の動きを促進する働きがあるため、便秘の解消に効果的です。
ブロッコリーには茎の部分までしっかりと食物繊維が含まれています。

●美肌・美白効果
ブロッコリーにはβ-カロテン、スルフォラファンが豊富に含まれています。
β-カロテンから変換されたビタミンAには皮膚や粘膜を丈夫に保ってくれる働きがあるため肌のカサつきや肌荒れを改善する効果があると期待されています。
肌のくすみやシミの原因となるメラニンは、体内でチロシナーゼという酵素の働きによって生成されます。スルフォラファンは、チロシナーゼの活性を抑制することによりメラニンの生成を防ぎます。
また、β-カロテンには紫外線によって発生した活性酸素を無効化する働きがあり、メラニン色素の発生を抑制する効果があります。
他にも、ブロッコリーには若返りのビタミンといわれているビタミンEが含まれています。さらに豊富に含まれるビタミンCがコラーゲンの生成を促進し肌のハリが保たれることにより、シワの予防や改善にも役立ちます。
様々な栄養素の相乗効果により、ブロッコリーには美肌に導く効果があるとされています。

●免疫力を高める効果
ブロッコリーに含まれるβ-カロテンから変換されたビタミンAには皮膚やのどなどの粘膜を正常に保つ働きがあり免疫力を高めてくれるため、口内炎や風邪の予防にも効果的です。

●眼病を予防する効果
β-カロテンから変換されたビタミンAは、目が網膜で光を感じる時に必要なロドプシンと呼ばれるたんぱく質の生成に必要な成分で、夜盲症や眼精疲労の予防に効果があります。また、ブロッコリーにはルテインが含まれています。ルテインは目の水晶体や黄斑部に多く存在し、強い抗酸化作用を持つカロテノイド色素で、紫外線などのダメ-ジから目を守ります。

●貧血を予防する効果
ブロッコリーには、他の食材に比べ非常に多くの葉酸が含まれています。また、ビタミンB12や鉄も含まれるため、葉酸との相乗効果により赤血球の生成をサポートするとして貧血の予防に効果的です。

[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※4:ビタミンUとは、ビタミン様物質と呼ばれる、ビタミンと似た働きを行う物質)の一種で、「U」は、ulcus(潰瘍)の言葉の頭文字を取ったもので、潰瘍を防ぐビタミンという意味があります。]

ブロッコリーはこんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○胃の健康を保ちたい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○便秘でお悩みの方
○美肌を目指したい方
○免疫力を向上させたい方
○目の健康を維持したい方
○貧血でお悩みの方

ブロッコリーの研究情報

【1】ブロッコリーには抗酸化作用を持つ成分や抗腫瘍作用を示す成分が含まれています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22235886

【2】ブロッコリーの葉には、5-フェニルウンデカン(11%)、n-ヘキサデカノイック酸(9.34%)、オクタデカン酸(6.39%)、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン(4.0%)、3-(2-フェニルエチル)ベンゾニトリル(3.48%)およびフィトール(3.37%) が含まれており、高い機能性を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21859369

【3】ハムスターに、ブロッコリーの有効成分スルフォラファンを8週間摂取させたところ、肝臓中のコレステロールが減少しました。スルフォラファンは脂肪合成酵素に作用することが知られており、ブロッコリーが高脂血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21254774

【4】ブロッコリーの水抽出物は抗変異原性作用を有することから、ブロッコリーは抗腫瘍作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20864623

【5】ブロッコリーの有効成分スルフォラファンはピロリ菌の発育を阻害するはたらきが報告されており、ブロッコリーが胃腸保護作用と胃がん、胃炎予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12032331

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参考文献

・井上正子 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社

・山崎征治 病気を防ぐ野菜健康法 東京新聞出版局

・Cakar J, Parić A, Maksimović M, Bajrović K. (2012) “Antioxidative and antitumor properties of in vitro-cultivated broccoli (Brassica oleracea var. italica).” Pharm Biol. 2012 Feb;50(2):175-81.

・Wang X, Zhang B, Wang B, Zhang X. (2012) “Volatile components of ethanolic extract from broccolini leaves.” Nat Prod Res. 2012;26(7):680-3. Epub 2011 Aug 23.

・Rodriguez-Cantu LN, Gutierrez-Uribe JA, Arriola-Vucovich J, Diaz-De La Garza RI, Fahey JW, Serna-Saldivar SO. (2011) “Broccoli ( Brassica oleracea var. italica) sprouts and extracts rich in glucosinolates and isothiocyanates affect cholesterol metabolism and genes involved in lipid homeostasis in hamsters.” J Agric Food Chem. 2011 Feb 23;59(4):1095-103. Epub 2011 Jan 21.

・Rampal G, Thind TS, Vig AP, Arora S. (‘2010) “Antimutagenic potential of glucosinolate-rich seed extracts of broccoli (Brassica oleracea L var italica Plenck).” Int J Toxicol. 2010 Dec;29(6):616-24. Epub 2010 Sep 23.

・Fahey JW, Haristoy X, Dolan PM, Kensler TW, Scholtus I, Stephenson KK, Talalay P, Lozniewski A. (2002) “Sulforaphane inhibits extracellular, intracellular, and antibiotic-resistant strains of Helicobacter pylori and prevents benzo[a]pyrene-induced stomach tumors.” Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 May 28;99(11):7610-5.

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

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