板藍根(ばんらんこん)

タイセイ  ホソバタイセイ  菘藍(うすらん)

板藍根とは、生薬の一種であり、抗ウイルス作用があることから、主に中国で風邪やインフルエンザをはじめとする感染症の予防のために用いられています。
そのほか、解毒作用や抗炎症作用があることで知られています。

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板藍根(ばんらんこん)とは?

●基本情報
板藍根(ばんらんこん)は、アブラナ科タイセイ属の植物の一種であるホソバタイセイの根の部分を指します。
板藍根の草の丈は約70cmであり、4月に黄色の花が咲きます。
板藍根はヨーロッパ原産の植物であり、14~15世紀にドイツなどで栽培されていました。板藍根は寒さに強いという性質があり、寒冷地での栽培が多かったといわれています。
現在、板藍根の主な産地は、中国の河北(かほく)省や江蘇(こうそ)省などであり、日常的に用いられている生薬[※1]のひとつです。
中国では、ホソバタイセイ以外にも、キツネノマゴ科の植物であるリュウキュウアイの根が板藍根として用いられています。
主に板藍根から抽出されたエキスを顆粒状にしたものがお茶として飲まれているほか、サプリメントの原料にもなっています。
板藍根のお茶には香ばしい風味があり、のどの痛みを感じる際にうがいをするように飲むと良いといわれています。

●板藍根の歴史
中国では、古くから板藍根が風邪やインフルエンザの常備薬として利用されていました。
日本では、板藍根と近い種類の植物である蝦夷大青(えぞたいせい)がアイヌ民族[※2]に用いられており、主に藍染めの染料として使用されていたといわれています。
2003年には、アジアを中心に流行したSARS[※3]の対策に板藍根が有効であるとして、その名が広く知られるようになりました。

●板藍根の働き
板藍根は、解熱作用や抗ウイルス作用があることで知られています。
この働きを利用して、中国では冬場などに風邪やインフルエンザの予防として、うがいをする時に板藍根を使うという習慣があります。
そのほかにも板藍根には解毒・解熱作用、抗炎症作用などの働きがあります。板藍根の有効成分については現在明らかにされていないため、今後の研究に期待が集まっています。

<豆知識>板藍根と大青葉(だいせいよう)
板藍根は、根の部分だけではなく、葉も生薬として利用されています。
葉の部分は大青葉(だいせいよう)と呼ばれ、古くから藍染めの色素として利用されていました。
大青葉には根と同じ抗ウイルス作用があるといわれており、板藍根は根と葉の部分を合わせて用いられることがあります。
大青葉を水に浸して、石灰などで処理すると青い粉末状の色素ができます。これは、青黛(せいたい)と呼ばれており、根の部分である板藍根と同様、殺菌作用や抗ウイルス作用があるといわれています。

[※1:生薬とは、動物や植物などから、有効成分を精製することなく用いる薬のことであり、「きぐすり」とも呼ばれています。漢方薬のほか、医薬品の原料などにも用いられています。]
[※2:アイヌ民族とは、北海道を中心に、日本列島の北部や樺太(からふと)・千島列島などに居住する先住民族のことです。]
[※3:SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome 重症急性呼吸器症候群)とは、SARSウイルスによる感染症のことです。症状は高熱で始まり、悪感・頭痛・全身倦怠などを伴い、発病後約2~7日で肺炎に似た症状が現れます。2002年11月に中国で発生し、2003年7月にWHO(世界保健機関)によって終息宣言が出されるまでの間に8098名が感染し、774名が死亡する事態に発展しました。]

板藍根(ばんらんこん)の効果

●感染症を予防する効果​
板藍根は、菌やウイルスによる感染症を予防する効果があることで知られています。
菌の侵入を最初に防ぐのは、のどや鼻の粘膜と皮膚です。ここで防げなかった菌は、血液中の食細胞[※4]によって取り込まれます。食細胞でも菌を防ぎきれなかった場合には、白血球[※5]によって攻撃されます。
しかし、疲れが溜まる・不規則な生活習慣が続くことによって免疫機能が正常に働かなくなり、病原菌やウイルスに抵抗する力が低下し、病気にかかりやすくなってしまいます。
板藍根には抗ウイルス作用があり、病原菌やウイルスから体を守ることによって、風邪やインフルエンザをはじめとする感染症を予防する効果があります。【1】【2】【3】【4】【5】

●ウイルス性の肝炎を予防する効果
肝炎とは、肝臓の病気のひとつです。
肝臓は、栄養素の代謝[※4]や有害物質の解毒、胆汁[※7]の分泌などを行う重要な臓器です。しかし、肝臓の機能が低下してしまうと、毒素や老廃物が体内に溜まりやすくなり、疲労や病気の原因にもなります。
ウイルス性肝炎のひとつである急性肝炎では、発熱・倦怠感など風邪に似た症状が現れます。
また、肝炎が慢性化して肝臓の組織が硬くなり、肝機能が低下することによって肝硬変が引き起こされてしまいます。
肝硬変が進行すると、手の平の周辺・指先・胸の上部から首筋・型・腕の付け根のあたりに赤い斑点が現れ、黄疸や腹に水が溜まるなどの症状が見られます。
しかし、肝臓はこれらの病気の自覚症状が現れにくい臓器であり、症状が出た時には、すでに病気が進行しているケースが多いため、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。
板藍根が持つ抗ウイルス作用や解毒作用は、ウイルス性肝炎の予防にも役立てることができます。

[※4:食細胞とは、細菌やウイルスなどを捕らえて消化・分解する細胞のことです。]
[※5:白血球とは、血液中に含まれる成分のひとつです。体に入ってきたウイルスや細菌から体を守る働きを持ち、その数は血液1mm³あたり約6000~8000個といわれています。]
[※6:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることです。]
[※7:胆汁とは、肝臓で分泌される液体で、消化酵素を活性化させ、脂肪を水に溶けやすくすることで、脂質の消化吸収を助ける作用があります。]

こんな方におすすめ

○風邪やインフルエンザにかかりやすい方
○肝臓の機能を高めたい方

板藍根(ばんらんこん)の研究情報

【1】急性細菌性結膜炎について板藍根の点眼薬の効果を評価しました。板藍根点眼剤またはレボフロキサシン点眼剤を1日6回点眼し、7日間でそれぞれ被験群と対照群とで比較しました。2つの薬剤の有効率はそれぞれ90%および93%であり、有意差はありませんでした。このことから、板藍根点眼剤は、既存の薬剤とほぼ同等の作用を示すことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17539316

【2】仮性狂犬病ウイルス(PrV)に感染したヒト白血病細胞株(HL-60)および抗ウイルス活性をもつ板藍根抽出物の細胞毒性を検討しました。その結果、PrVに感染した白血病細胞およびウイルスに対して板藍根抽出物は毒性を有していることがわかりました。このことから、板藍根抽出物は、仮性狂犬病ウイルスに対して有効である可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19429341

【3】インフルエンザウイルスA(およびB)に対する板藍根熱水抽出物の作用について調べました。その結果、板藍根はインフルエンザ抑制に役立つことが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21774246

【4】板藍根の粗抽出物(G2)の抗インフルエンザ活性に対する化学的性質、作用機序について調べました。G2添加により、インフルエンザウイルス力価が有意に低下し、血球凝集抑制も認められました。さらにG2は、初期感染時の薬剤耐性ウイルスの出現を抑制しました。G2はウイルス粒子を妨げることによりインフルエンザウイルス付着に影響を与え、宿主細胞表面へのインフルエンザウイルスの結合を阻害することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22179315

【5】板藍根のフェノール抽出物がSARSを抑制する働きについて調べました。その結果、板藍根フェノール抽出物は、SARSの増殖・生育に重要なC3様プロテアーゼの働きを抑制することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16115693

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参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・日経ヘルス サプリメント大事典 日経BP社

・Qi CX, Wu XM, Wang XL. (2007) “[Clinical research of isatis root eyedrops on the acute bacterial conjunctivitis].” Zhong Yao Cai. 2007 Jan;30(1):120-2.

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