バコパモニエリとは
●基本情報
バコパ・モンニエリはヨーロッパや北アフリカ、アジア、南北アメリカに分布するゴマノハグサ科の多年草です。インドの伝統医学である「アーユルヴェーダ」[※1]でも記憶力や学習能力を向上させる効果・効能のあるハーブとして利用されてきました。海外では水田や水路の雑草となっており、日本では丈夫で育成が容易というメリットから観賞用の水草として販売されています。
日本で自生はしていませんが、在来種との競合の恐れがあるため要注意外来生物に指定されています。
●バコパ・モンニエリに含まれる成分と性質
バコパ・モンニエリにはアルカロド系成分とフラボノイド系成分が含まれています。その中でもバコパ・モンニエリにはバコパサイトという特有の成分が含まれています。バコパサイトは脳に届くための関所となる血液脳関門[※2]を通り抜けることができ、脳の酸化[※3]を防ぐ働きがあります。
●バコパ・モンニエリを摂取する際の注意点
医薬品と併用される場合は、医師に相談されることをおすすめします。特にバコパ・モンニエリ摂取により血中の甲状腺ホルモン[※4]値が増加する可能性があるため、甲状腺疾患の患者は使用を控える必要があります。
[※1:アーユルヴェーダとは、インドで古くから語り継がれている東洋医学の1つです。「予防医学」の考え方を重視し、世界保健機構(WHO)が正式に奨励している医学です。]
[※2:血液脳関門とは、血液中の有害な物質が自由に脳まで到達しないように働いている機構のことです。]
[※3:酸化とは、物質が酸素と化合し、電子を失うことをいいます。サビつきともいわれています。]
[※4:甲状腺ホルモンとは、全身の細胞に作用して、代謝を上昇させるホルモンです。]
バコパモニエリの効果
バコパ・モンニエリに含まれる有効成分のバコパサイトは、脳に入るための血液脳関門という関所を通り抜け、脳の酸化を予防します。そのため以下のような効果が期待できます。
●記憶力や集中力を高める効果
バコパ・モンニエリは記憶力や学習能力を高める効果があります。
健康な成人76名を対象にバコパモニエリ抽出物を300~450mg/日を3ヵ月間摂取させたところ新しい情報を記憶しておく能力が向上したという結果が出ています。また、健康な高齢者54名を対象にバコパ・モンニエリ抽出物を300mg/日を12週間摂取させたところ言葉に関する記憶能力の向上が見られました。【1】【2】
●精神を安定させる効果
バコパ・モンニエリは、うつ病の症状を抑え、精神を安定させる効果があります。これは、バコパ・モンニエリに含まれる成分がセロトニン受容体[※5]である5HT1a受容体を活性化させるためです。5HT1a受容体は中枢神経に分布しており、不安やうつに関わります。抗うつ薬や抗精神病薬にも使用されることがあり、5HT1a受容体の活性により、心を落ち着かせる働きが期待できます。さらに、不眠症や不安症、落ち着きがなくなり注意力がなくなるといった精神的不調にも効果あるといわれています。
また、同じセロトニン受容体である5HT2aの働きを抑制し、片頭痛を抑えるといった働きも知られています。
●ストレスをやわらげる効果
バコパ・モンニエリにはストレスをやわらげる効果があります。研究によると、ストレスを与えたラットにバコパ・モンニエリ40mg/kgを投与したグループと投与しないグループに分け比較したところ、 ストレスを与えたラットでは胃潰瘍数、副腎[※6]重量、血糖値[※7]、アミノ酸の代謝[※8]に関わる酵素の値などに増加が見られました。しかし、バコパ・モンニエリを与えたラットそれら値の増加が抑えられたという結果が出ています。
また、バコパ・モンニエリを80mg/kg投与したラットでは副腎重量、血糖値、アミノ酸の代謝に関わる酵素の値の上昇が見られませんでした。このことから、バコパ・モンニエリにはストレスをやわらげる効果があると考えられます。【3】
●疲労回復効果
バコパ・モンニエリには疲労を回復する効果があります。研究によるとラットに3週間試験を行い、その間バコパ・モンニエリを10mg/kgを投与した群としなかった群との比較を行ったところ、開始から13日目にはバコパを投与した群では投与されていない群に比べて水泳時間が約3倍延びるという結果が出ています。このことからバコパモニエリには疲労回復効果があると考えられます。【4】
[※5:セロトニン受容体とは、中枢神経系にある受容体のことです。中枢神経系の伝達物質であるセロトニンは脳機能の調節において重要な役割を果たしており、生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などを調節しています。]
[※6:副腎とは、腎臓の上にあり様々なホルモンを合成している器官です。]
[※7:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
[※8:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○物忘れが多い方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○心を落ち着かせたい方
○ストレスをやわらげたい方
○疲れやすい方
バコパモニエリの研究情報
【1】健常成人76名 (平均49歳、試験群37名) を対象として、バコパモニエラ抽出物を300 mg/日 (体重90kg未満の人) もしくは450 mg/日 (体重90kg以上の人) 、3ヶ月間摂取させたところ、記憶力改善が見られたことから、バコパモニエラは記憶力や集中力維持に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12093601
【2】健康な高齢者54名 (平均73.5歳、試験群24名、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、バコパモニエラ抽出物300mg/日を12週間摂取させたところ、言語に関する記憶能力の評価 (AVLT) が向上したことから、バコパモニエラは記憶力維持に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18611150
【3】バコパを投与したラットにストレスを与え、バコパを投与せずストレスのみを与えたラットとの比較 (血液検査、副腎重量、脾臓重量、胸腺重量、胃潰瘍数)を行ってところ、急性ストレスによる胃潰瘍数、副腎重量、血糖値、AST、ALT、CK値の増加が緩和されました。同様に慢性的ストレスにおいても同様のストレス障害に加え、トリグリセリドとコレステロール増加の緩和が見られました。バコパは抗ストレス作用を有することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12957224
【4】ラットに強制的水泳試験を3週間行い、その間、バコパ10mg/kgを投与した群としなかった群との比較を行いました。開始から13日目にはバコパを投与した群では投与されていない群に比べて水泳時間が約3倍延びるという結果が得られ、さらにバコパを投与した群では、血清中のBUN、CK値が有意に減少し、脳、肝、筋におけるマロンジアルデヒド濃度の減少が認められました。またバコパ投与群では、HSP-70の発現が有意に増加していました。これらの結果から、バコパの抗疲労効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21959990
参考文献
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・環境省 自然環境局 外来生物法内要注意外来生物リスト
・Roodenrys S, Booth D, Bulzomi S, Phipps A, Micallef C, Smoker J. (2002) “Chronic effects of Brahmi (Bacopa monnieri) on human memory.” Neuropsychopharmacology. 2002 Aug;27(2):279-81.
・Rai D, Bhatia G, Palit G, Pal R, Singh S, Singh HK. (2003) “Adaptogenic effect of Bacopa monniera (Brahmi).” Pharmacol Biochem Behav. 2003 Jul;75(4):823-30.
・Anand T, Phani Kumar G, Pandareesh MD, Swamy MS, Khanum F, Bawa AS. (2012) “Effect of bacoside extract from Bacopa monniera on physical fatigue induced by forced swimming.” Phytother Res. 2012 Apr;26(4):587-93. doi: 10.1002/ptr.3611. Epub 2011 Sep 30.