β-カロテン

β-Carotene

β-カロテンは、色鮮やかな緑黄色野菜などに多く含まれるカロテノイドの一種で、強力な抗酸化力を持つ栄養素です。体内では必要量に応じてビタミンAに変換され、ビタミンAとしても効果を発揮します。
人体の粘膜や皮膚、免疫機能を正常に保ったり、視力を維持するために必要不可欠な成分です。

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β(ベータ)カロテンとは?

●基本情報
β-カロテンとは、1930年に発見された健康成分で、にんじん(carrot)の橙色のもとになっている栄養素であることからこう名付けられました。
カロテノイドの一種であるカロテンは、主にα-カロテンとβ-カロテンの2種類に分けられます。
β-カロテンはカロテンの中で最も多く自然界に存在しており、にんじんやかぼちゃブロッコリートマトなどの緑黄色野菜や、みかんなどの柑橘類、すいかなどに多く含まれている成分です。
色の鮮やかな野菜や果物ほど、より多くのβ-カロテンが含まれているといわれています。

●β-カロテンの体内での動き
β-カロテンは、体内で必要量に応じてビタミンAとなり、働きます。
体内に入ったβ-カロテンは、約3分の1が小腸で吸収され、体内で必要な量のみがビタミンAへと変換されます。
ビタミンAは脂溶性[※1]のビタミンであるため、その性質上、過剰摂取に対する注意が求められる成分ですが、β-カロテンの摂取では必要な量しかつくられないため、その心配がなくなるといえます。
カロテノイドの中でもβ-カロテンのように、体内においてビタミンAとして働く健康成分はプロビタミンA(ビタミンA前駆物質)と呼ばれています。
プロビタミンAは約50種類存在しますが、β-カロテンはプロビタミンAの中でもビタミンAとして作用する割合が高い栄養素です。
ビタミンAへと変化したβ-カロテンは体内で他の栄養素の働きを促進するということが知られています。
ビタミンB群[※2]、ビタミンDビタミンEなどの成分は、ビタミンAが十分に存在しないとその働きや効果が発揮されないといわれています。
ビタミンAは、ほかの健康成分や栄養素の働きを促進する役割も担っているため、その他のビタミンや栄養素とともに、バランス良く摂取することが大切です。

●β-カロテンの働き
β-カロテンは全てが体内でビタミンAに変換されるわけではなく、一部は脂肪組織に蓄えられ、β-カロテンとしての効果や効能を示します。
β-カロテンはカロテノイドの一種であるため、強力な抗酸化作用を持っています。
抗酸化作用は、カロテノイドに分類される健康成分全てに共通する働きで、β-カロテン以外にもルテインアスタキサンチンリコピンなどが強力な抗酸化作用を持つといわれています。
抗酸化作用とは、体内に発生した活性酸素を除去する働きのことです。
活性酸素は、本来人間の体内に存在しており、体内に侵入したウイルスと闘うなどの働きを持つため健康維持には不可欠な物質ですが、体内で増加しすぎると、人間の体に害を及ぼしてしまいます。
活性酸素が増加しすぎる主な原因としては、ストレス、紫外線、喫煙、不規則な生活習慣や加工食品の食品添加物などが挙げられます。
増加を続けた活性酸素は、老化の促進や、動脈硬化やガンなどの進行によっては命に関わる病気にもつながってしまうため、活性酸素による健康への悪影響は軽視できないものとなっています。
β-カロテンは、強力な抗酸化作用を持っているため、活性酸素を原因とするあらゆる病気の予防などにも効果が期待されています。

●β-カロテンの効率的な摂取方法
β-カロテンは、脂質とともに摂取することで吸収率が高まります。熱にも強い成分であるため、にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜を調理する際は、油で調理するとβ-カロテンを効率良く吸収できるといわれています。

●β-カロテンの摂取上の注意
β-カロテンは、摂りすぎると手のひらなどの皮膚が黄色くなる症状が見受けられることがあります。
これは「柑皮症(かんぴしょう)」といわれる症状で、カロテノイド(主にβ-カロテンやβ-クリプトキサンチン)を含む食材などが多量に摂取されたことにより、血中のカロテノイド濃度が上昇することで起こります。
しかし、摂取を止めるとすぐに治まる症状であるため、長期間に渡って多量の摂取を行わなければ、症状自体に大きな問題はないといわれています。

[※1:脂溶性とは、油に溶けやすい性質のことです。ビタミン類ではビタミンAの他に、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが脂溶性ビタミンに分類されます。]
[※2:ビタミンB群とは、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸の総称です。]

β(ベータ)カロテンの効果

β-カロテンは体内でビタミンAに変換されるため、ビタミンAとしての働きと、β-カロテンとしての働きの両方を兼ね備えています。

●夜盲症の予防・改善効果
β-カロテンからつくられるビタミンAは、視力を正常に保つ役目も担っており、特に夜盲症の予防や視力低下の抑制などが知られています。
夜盲症とは、夜間などの薄暗い場所や暗所において極端に視力が低下し、ものが見えづらくなる病気のことです。
人間は、明るさや暗さを目の奥に存在する網膜という場所で認識します。
網膜にある光を受け止める受容体[※3]には、色彩を捉えるものと、光を捉えるものの2種類があります。このうち光を捉える視物質の働きにビタミンAが関与しています。
しかし、ビタミンAが不足することで、網膜の光に対する反応が鈍くなり、薄暗い場所や夜間では、視力の低下を引き起こしてしまうのです。
β-カロテンを摂取することで、必要量のビタミンAを補うことができるため、ビタミンA不足による夜盲症や視力低下を予防することができます。

●黄斑変性症を予防する効果
β-カロテンの持つ抗酸化作用は、黄斑変性症を予防する効果につながっています。
β-カロテンは、抗酸化作用を持つほかのビタミン(ビタミンC、ビタミンEなど)や亜鉛などと一緒に経口摂取[※4]を行うことで、黄斑変性症[※5]の進行を遅らせる効果があると示唆されています。【9】

●粘膜を健康に保つ効果
β-カロテンから変換されるビタミンAには、人間の粘膜[※6]を丈夫にする働きがあるため、口、鼻、のど、肺、胃や腸の健康維持に効果的です。
粘膜が弱まると、体内に病原体やウイルスが侵入しやすくなるため、風邪をひきやすい、口内炎が出来やすい、歯茎が腫れているなどの症状はビタミンAの不足が考えられます。

●美肌効果
ビタミンAは皮膚の健康維持にも関与しています。皮膚の新陳代謝を高める作用も行っているため、ビタミンAの不足は肌のカサつき(乾燥肌)やニキビ肌などにもつながります。
美肌を保つためには日頃のスキンケアだけではなく、β-カロテンの適度な摂取も大切な条件なのです。

●体の成長を促進させる効果
ビタミンAには強い骨づくりのサポート、成長の促進などの効果があり、子どもの発育期におけるビタミンAの摂取不足は、成長の停止や知能障害などが欠乏症として現れる場合もあります。
成長期の子どもにとって、ビタミンAとして働くβ-カロテンは特に欠かすことのできない栄養素であると考えられています。

●ガンを予防および抑制する効果
年々、患者数が増加しているガンは、多くの細胞の遺伝子が活性酸素によって傷つけられることがきっかけとなり発生します。
β-カロテンの持つ抗酸化作用は、ガンのきっかけとなる遺伝子の損傷を防止する効果があり、ガンの予防や抑制の効果が期待できます。【3】

[※3:受容体とは、細胞表面や内部に存在している物質です。ホルモン・神経伝達物質・ウイルスなどと結合することにより、細胞の機能に影響を与えます。]
[※4:経口摂取とは、口を通して体内に取り入れることを指します。]
[※5:黄斑変性症とは、目の黄斑部が加齢などによって変性し、ゆがみや視野狭窄が起こり、放置しておくと最悪失明につながる病気のことです。アメリカでの失明率第1位の病気です。]
[※6:粘膜とは、消化管・呼吸器・排出器・生殖器などの内壁で、常に粘液で湿っている部分のことを指します。]

食事やサプリメントで摂取できます

β-カロテンを多く含む食材

○にんじん、かぼちゃ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜
○みかんなどの柑橘類
○すいか

こんな方におすすめ

○夜盲症を予防・改善したい方
○黄斑変性症を予防したい方
○目の健康を維持したい方
○風邪をひきやすい方
○美肌を目指したい方
○成長期のお子様
○ガンを予防したい方

β(ベータ)カロテンの研究情報

【1】妊娠期の野性ラットに対してβ-カロテンを投与すると、胎盤中のLDL受容体関連たんぱく質の転写の低下が認められました。このことから、β-カロテンの摂取はLDLコレステロールの低下を促進することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22739378

【2】酸化ストレスは、神経疾患であるアルツハイマー発病の中心的役割を果たすと考えられています。男女158名に対して、血中の抗酸化物質(ビタミンC,ビタミンE、β-カロテン、リコピン、コエンザイムQ10)の濃度を調べました。その結果、ビタミンC、β-カロテン濃度が認知症患者で低いことがわかりました。このことから、β-カロテン、ビタミンCの摂取がアルツハイマー予防に重要だということがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22710913

【3】前骨髄球性白血病細胞へ酸化ストレスを誘発させ、DNAを損傷させました。そこへ各種類のビタミンを添加し、DNA損傷について検証しました。その結果、ビタミンB群およびβ-カロテン、トコフェロールを与えた場合、酸化によるデオキシグアノシン化が起こらないことがわかりました。今回の研究により、各種ビタミンB群およびβ-カロテン、トコフェロールは、酸化ストレスを抑制し、DNA損傷を防ぐ働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22466670

【4】活性酸素種によって発生する酸化ストレスは多くの病気の原因となります。抗酸化特性のあるカロテノイドの食事について疫学調査を行った結果、高い抗酸化作用を有するカロテノイドの補充は、あらゆる疾患を抑制することがわかりました。このことから、カロテノイドの摂取は疾患の予防に非常に重要であることがわかりました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1479806/

【5】果物や野菜の消費は、多くの疾患に対して保護作用を有しています。ニンジンは、β-カロテンを豊富に含みます。48名の喫煙者に対し、ニンジンジュース(18例:300ml)、β-カロテン(16例:20.49㎎)、プラセボ(14例)を与え、リンパ球のDNA損傷を防ぐかどうか調べました。結果は、プラセボに対し、ニンジンジュースとβ-カロテンの摂取はリンパ球のDNAの損傷を防ぐことがわかりました。このことから、β-カロテンが喫煙者に対して抗酸化能力が発揮できることが分かりました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3259297/

【6】合成ビタミンAおよびβ-カロテンの飲用が高尿酸血症、痛風に対してどのような作用を有するかについて調べました。20歳以上の14349名のβ-カロテンの摂取量と尿酸の血清中の量を調べた結果、有意な相関関係がありました。このことから、β-カロテンの摂取が高尿酸血症および痛風に対して有効な可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22076806

【7】妊娠期での細菌性膣炎に対するビタミンAおよびβ-カロテン摂取の作用について調べました。バングラデシュ北東部に住む妊娠期の女性99名(33名×3群)を対象に試験を行った結果、プラセボ群に対し、ビタミンAおよびβ-カロテン摂取群は妊娠後期または分娩後における細菌性膣炎を抑制しました。このことから、β-カロテンの摂取は、細菌性膣炎を抑えると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22071710

【8】90名の青少年および91名の高齢者を対象に投与群(レチノール900μg/日、β-カロテン1-5mg/日、トコフェロール200 mg /日、アスコルビン酸500 mg /日、セレン400μg/日)およびプラセボ群にわけ試験した結果、投与群は、酸化度合いを示すマロンジアルデヒド濃度が有意に減少し、赤血球膜流動性を高めました。このことから、β-カロテンを含む微量元素の摂取は、抗酸化機能により赤血球膜流動性を高めることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21736780

【9】近年の研究により、食物性抗酸化成分の亜鉛、β-カロテン、ビタミンCのサプリメントの組み合わせおよびビタミンEが加齢黄斑変性症の進行を遅らせたことがAREDSの試験によってわかりました。また、ルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンBおよびオメガ-3 脂肪酸は遅発性加齢黄斑変性症リスクが低下することが分かっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21609225

【10】抗酸化物質であるα-トコフェロール、γ-トコフェロール、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、リコピン、α-カロテン、β-カロテンの血中濃度を非アルコール性肝炎(57例)および健常人(40例)で比較しました。その結果、ルテイン、ゼアキサンチン、リコピン、α-カロテン、β-カロテンの血中濃度は、非アルコール性患者において健常人より有意に低下していました。このことから、非アルコール性肝炎の治療として脂溶性抗酸化物質の投与の効果が期待できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21463986

【11】最近の研究では、各種ビタミン(ビタミンC、D、E、A、β-カロテン、α-カロテン)の摂取が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行および誘発される炎症を抑制し、肺機能を改善することがわかっています。高ビタミンの摂取は強制呼気量の低下を抑制することがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21134250

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参考文献

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・Riccioni G. 2006 “Oxidative stress induced by reactive oxygen species plays an important role in the etiology of many diseases.” J Carcinog. 2006; 5: 14. Published online 2006 May 11.

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・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦 (2006) “健康食品のすべて―ナチュラルメディシン・データベース” 株式会社同文書院

・志村二三夫 著 機能性食品素材便覧 薬事日報社

・久郷晴彦 監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭交社

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