小豆

azuki beans
あずき ショウズ

小豆とは、マメ科ササゲ属の植物で日本では古くから親しまれています。栄養が豊富で、特にビタミンB1やカリウム、食物繊維が多く含まれており、疲労回復効果や脚気予防効果、生活習慣病予防、むくみの予防・改善効果、便秘を改善する効果など様々な効果を持ちます。

小豆とは

●基本情報
小豆とは、マメ科ササゲ属に属する一年草で、日本では古くから和菓子などに用いられ親しまれています。
原産国は東アジアと考えられています。日本における小豆生産の約80%は北海道が占めており、その他東北や京都でも栽培されています。
小豆の表記は漢語で、和名はあずき、あづきです。平安時代の「本草和名(ほんぞうわみょう)」では漢字の「赤小豆」を「阿加阿都岐(あかあづき)」と表記しています。
小豆の名の由来は諸説ありますが、江戸時代の学者・貝原益軒の「大和本草(やまとほんぞう)」によると、「あ」は「赤色」、「つき」及び「ずき」は「溶ける」の意味があり、赤くて早く柔らかくなるということから、小豆になったとされています。他にも、「崖崩れ」「崩れやすい所」の意味の「あず」「あづ」から、煮崩れし易い豆の意味で付けられたとする説や「赤粒木(あかつぶき)」が転じて小豆となったとする説もあります。

●小豆の歴史
小豆は古くから日本でも親しまれている食材ですが、その歴史は非常に古く、中国の薬学書には当時、小豆の煮汁が解毒剤として用いられたという記述が残っています。
やがて世界に広まった小豆は薬効のある食材として王侯貴族に珍重され、日本には3世紀頃伝来したと考えられています。日本での小豆の記録は古事記や日本書紀の文献に名前が記載されているのが最初といわれ、8世紀頃にはすでに栽培が始まっていたといわれています。
古来、中国や朝鮮、日本では、赤は太陽や火、血を象徴する生命の色で、魔よけの力があると信じられていました。小豆は赤に近い色をしているため、食べることによって邪気を払い、身を守る効力があると考えられていました。そのため宮廷行事や儀式に使われたのをはじめ、さまざまな形で人々の暮らしに浸透していったのです。
小正月(1月15日)に小豆を入れた豆粥を食べるのは平安時代に中国から伝わった習慣で、同じく米と小豆を炊き込んだ赤飯をハレの日[※1]に用意することは江戸時代になって広まり、現在でもその風習は残っています。

●小豆の種類と特徴
小豆には様々な種類があり、日本で栽培されているだけでも数十種類にのぼります。その代表的なものが「大納言小豆」です。粒が大きく色が濃く、小豆の中でも皮が丈夫で割れにくいのが特徴です。粒あんなど粒を活かした用途に利用されます。また、こしあんに利用されるのが「普通小豆」です。またそれ以外にも金時や早生大粒、白小豆など様々な種類があり、それぞれに合った用途で調理・加工されています。

●小豆調理のポイント
小豆は他の豆類と違い、水につけて戻す必要がありません。事前に吸水させると皮が割れやすくなるためです。調理の際は、4~5倍容量の水を加え、沸騰したら一旦ゆでこぼし、新しい水を入れて再び煮るのが一般的です。
しかし、薬効を期待するのであればゆでこぼさずにアクをすくう程度にする方が、小豆に含まれるビタミンB1などを効率良く摂取することができます。
また、小豆は赤飯や甘みを抑えた煮物にして食べることで、より効率良く栄養が摂取できます。特に米と一緒に摂ることでアミノ酸バランスが良くなります。
また、小豆にはアントシアニンというポリフェノールの一種が含まれており、鉄と結びつくことで黒ずんでしまうため、鉄鍋で小豆を煮ると色が悪くなってしまいます。

●小豆に含まれる成分と性質
小豆の主成分は糖質とたんぱく質ですが、それ以外にもビタミンB1や食物繊維、カリウム、カルシウムなど様々な成分を含みます。そのため小豆の働きは疲労回復や脚気予防、生活習慣病予防、むくみの改善、便秘の改善など多岐に渡ります。特に脚気に対して小豆は、古くから妙薬として利用されています。

[※1:ハレの日とは、儀礼や祭、年中行事などの非日常の催事のことです。]

小豆の効果

●疲労回復効果
小豆に含まれるビタミンB1は、炭水化物の代謝[※2]過程で必要な酵素の働きを助ける補酵素[※3]の役割を担っています。体内で合成することができず、不足すると炭水化物の代謝がスムーズにいかず、疲れの原因である糖質の副産物ピルビン酸や乳酸が蓄積されやすくなってしまいます。
小豆を摂取することでビタミンB1が摂れるため、糖質の代謝が促進されるので疲労を回復する効果があるといえます。同様の作用により夏場に摂取することで夏バテにも効果的です。
また、ビタミンB1は肝臓に負担をかける有害物質を解毒させる働きを持つため、二日酔いの解消にも役立ちます。【6】

●脚気を予防する効果
脚気とは、ビタミンB1の欠乏により心不全と末梢神経障害をきたす病気のことをいいます。下肢にむくみやしびれなどの症状を生じることからこの名称がつけられました。
小豆はビタミンB1を豊富に含むため脚気を予防する効果があるといえます。【6】

●生活習慣病の予防・改善効果
小豆にはカリウムやサポニンが含まれています。これらの成分は利尿作用を促し、高血圧の予防に効果的です。また、小豆に含まれる食物繊維やサポニンは腸を刺激し便通を良くする働きがあるため、コレステロールや中性脂肪を低下させる働きを持っています。
これらのことから、小豆は生活習慣病予防に効果的だと考えられます。【1】【2】【3】【5】

●むくみを予防・改善する効果
小豆にはカリウムやサポニンといった利尿作用を促進させる成分が含まれているため、むくみを予防・改善する効果があります。
むくみは、体内の水分をうまくコントロールできていない状態によって、不要な水分が体内にたまってしまうことをいいます。
カリウムやサポニンによる利尿作用を促進する働きにより、不要な水分を外に排出することができるため、小豆にはむくみを予防・改善する効果があるといえます。【1】【4】

●便秘を解消する効果
小豆には食物繊維が多く含まれています。食物繊維は腸の掃除役ともいわれ、腸内にたまった老廃物を吸着し体外に排出する働きがあります。
また、食物繊維が水分を抱え込んで便の量を増やすため、腸のぜん動運動[※4]を促進する働きがあります。そのため、小豆は便秘の改善に効果的な食材です。【7】

[※2:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※3:補酵素とは、消化や代謝で働く酵素を助ける役割をするものです。]
[※4:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]

小豆は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○疲れを回復したい方
○生活習慣病を予防したい方
○むくみを予防・改善したい方
○便秘を改善したい方
○二日酔いを解消したい方
○夏バテを予防したい方

小豆の研究情報

【1】高血圧自然発症ラットを対象に、0.8% 小豆含有エキスを摂取させたところ、収縮期血圧ならびに心臓へのマクロファージ浸潤が緩和されたほか、腎臓機能保護作用がみられたことから、小豆は抗酸化作用、高血圧予防効果ならびに腎臓保護作用を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18047626

【2】高血圧自然発症ラットを対象に、1.0% 小豆種皮エキスを摂取させたところ、収縮期血圧ならびに大動脈中の炎症関連物質iNOSならびにCOX-2 の増加が緩和されたことから、小豆は高血圧予防効果、抗炎症作用を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20185287

【3】中国産小豆のポリフェノール成分を調査した結果、8種類のポリフェノール成分が検出されました。ポリフェノール成分は抗酸化作用など多くの機能性を有することから、小豆は抗酸化作用ならびに糖尿病予防効果を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21809904

【4】薬物誘発糖尿病ラットを対象に、小豆種皮エキスを0.1, 1.0% 含有食餌を摂取させたところ、糸球体異常の緩和が見られたことから、小豆は腎臓保護作用を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16115543

【5】健常日本人女性23名を対象に、小豆または濃縮小豆ジュースを150g を摂取したところ、血中トリグリセリド濃度が減少したことから、小豆は高トリグリセリド血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18648655

【6】脚気患者特に心臓病患者日本人23名(うち17名は10代) では、激しい運動をすると脚気心疾患が生じる可能性があり、末梢浮腫、低末梢の血管抵抗、静脈圧心臓肥大の増加、T波異常、循環動態亢進および循環血液量の増加などの心臓疾患が起きることが知られています。脚気患者にビタミンB1及びバランスの摂れた栄養と休養を摂らせると、脚気症状の改善が認められたことから、ビタミンB1は脚気症状の改善に役立ちます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7416185

【7】英国人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係を調査したところ、食物繊維を1日18g 摂取すると、適度な便通を促すことにより大腸疾患の予防に役立つと示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426

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参考文献

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所

・菅原龍幸・井上四郎 原色食品図鑑 株式会社建帛社

・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・中嶋洋子 食べ物栄養事典 主婦の友社

・Sato S, Mukai Y, Yamate J, Kato J, Kurasaki M, Hatai A, Sagai M. 2008 “Effect of polyphenol-containing azuki bean (Vigna angularis) extract on blood pressure elevation and macrophage infiltration in the heart and kidney of spontaneously hypertensive rats.” Clin Exp Pharmacol Physiol. 2008 Jan;35(1):43-9.

・Mukai Y, Sato S. 2011 “Polyphenol-containing azuki bean (Vigna angularis) seed coats attenuate vascular oxidative stress and inflammation in spontaneously hypertensive rats.” J Nutr Biochem. 2011 Jan;22(1):16-21.

・Yao Y, Cheng X, Wang S, Wang L, Ren G. 2012 “Influence of altitudinal variation on the antioxidant and antidiabetic potential of azuki bean (Vigna angularis).” Int J Food Sci Nutr. 2012 Feb;63(1):117-24.

・Sato S, Yamate J, Hori Y, Hatai A, Nozawa M, Sagai M. 2005 “Protective effect of polyphenol-containing azuki bean (Vigna angularis) seed coats on the renal cortex in streptozotocin-induced diabetic rats.” J Nutr Biochem. 2005 Sep;16(9):547-53.

・Maruyama C, Araki R, Kawamura M, Kondo N, Kigawa M, Kawai Y, Takanami Y, Miyashita K, Shimomitsu T. 2008 “Azuki bean juice lowers serum triglyceride concentrations in healthy young women.” J Clin Biochem Nutr. 2008 Jul;43(1): 19-25.

・Kawai C, Wakabayashi A, Matsumura T, Yui Y. (1980) “Reappearance of beriberi heart disease in Japan. A study of 23 cases.” Am J Med. 1980 Sep;69(3):383-6.

・Cummings JH, Bingham SA, Heaton KW, Eastwood MA. (1992) “Fecal weight, colon cancer risk, and dietary intake of nonstarch polysaccharides (dietary fiber)” Gastroenterology. 1992 Dec;103(6):1783-9.

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