あわ

foxtail millet
粟 bengal grass

あわとは、イネ科の植物で五穀のひとつに含まれます。
あわは精白米と比較すると非常に栄養価が高く、特に食物繊維を豊富に含んでいるため、腸内環境を整える効果があります。また他にも鉄などのミネラル類が含まれており、貧血を予防する効果も持っています。

あわとは

●基本情報
あわとは、イネ科エノコログサ属に属する多年草の一種で、雑穀類[※1]に分類されます。また、五穀[※2]のひとつとしても数えられます。あわは学名をSetaria itallicaといいます。あわという名前は、五穀の中でも味が「淡い」ということからつけられたといわれています。
あわは1~2mの高さにまで成長し、穂は黄色に熟してたれ下がります。温暖で乾燥した風土を好み、生育期間は3~5ヵ月と短いため、高地や高緯度地域でも栽培することができます。
東アジアが原産であわの原型は道端や農地で見かけるエノコログサ(俗名:ネコジャラシ)と推定されています。エノコログサは東部アジアやシベリアやヨーロッパ、アメリカ北部まで広く自生していて、栽培あわとよく交雑します。
あわは、非常に栄養価が高く、精白米と比較すると食物繊維は約7倍、マグネシウムは約5倍、鉄は約6倍、カリウムは約3倍もの量が含まれているため、精白米にひえやきびなどと混ぜて炊くと栄養価が上がるうえ、低カロリーであることからダイエット食品としても親しまれています。

●あわの歴史
あわの歴史は非常に古く、中国では黄河文明以来の主食であったといわれています。また、中国青海省の喇家遺跡から、約4000年前のあわでつくった麺が見つかっており、これは世界最古の麺といわれています。
アメリカでは1849年より栽培が奨励され、20世紀にはアメリカの雑穀の90%を占めたほどです。
日本へは朝鮮を経て渡来し、縄文時代にはすでに栽培されていたといわれています。あわはひえと並んで日本最古の作物といわれており稲作伝来以前の主食であったと考えられています。

●あわの種類と利用
日本では2000以上の品種があったといわれていますが、同名異品種や異名同品種もかなりあり、未整理の状態となっており、その多くが現在では絶滅してしまった状態であるといわれています。
あわの主な品種は岩手県でつくられる大槌10、西根31、虎の尾、支那大粟、あわ信濃1号、あわ信濃2号などがあります。
あわは粒の質からうるちあわともちあわに分類されます。米と混ぜてあわ飯とする場合はうるちあわが適しており、団子や餅、菓子などにする場合はもちあわが適しています。

●あわの炊き方
あわは5~6回ほど研ぎ洗いし、ひと晩浸水してアクをとります。ひと晩浸水したあわに1.6倍量の水と少々の塩を加え炊飯し、炊きあがったら10~20分ほど蒸らして食べます。
また、精白米と混ぜて炊飯する場合は、1~2割のあわを混ぜると雑穀としてのコクが出ておいしく召し上がれます。

●あわに含まれる成分と性質
あわには食物繊維が豊富に含まれています。そのため、便秘を解消し、腸内環境を整える働きがあります。
また、鉄も豊富に含まれ、貧血予防に有効的です。それ以外にもビタミンB1や、カリウムやマグネシウムなどのミネラル類を含んでいるため、通常の精白米よりも栄養価が高く、近年雑穀米の一種として人気を集めています。
あわは漢方にも利用されており、健胃作用があるとして知られています。

[※1:雑穀類とは、小規模に作付けされ、世界中で食糧や飼料として広く栽培されている穀物種の総称です。]
[※2:五穀とは、五種の主要な穀物を指し、米・麦・あわ・豆・きびまたはひえのことです。]

あわの効果

●腸内環境を整える効果
あわには食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は「人間の消化酵素で消化されない食事中の難消化性成分の総体」と定義されており、第6の栄養素としても知られています。
体内に入ると水分を抱え込み膨らんで、体内に溜まった老廃物を体外へ排出する役割を持ちます。また、腸を刺激し、ぜん動運動[※3]を促すため、便秘の解消にも効果的です。
あわは食物繊維を豊富に含んでいるため、便秘を解消し、腸内環境を整える効果があります。【4】

●貧血を予防する効果
あわは鉄を多く含んでいます。
鉄は必須ミネラルの一種で、赤血球のヘモグロビンを構成する成分として、全身に酸素を運ぶという重要な役割を持っています。特に成長期の子供や、妊娠中の女性、閉経前の女性は鉄が多く必要とされます。
鉄が不足するとヘモグロビンがうまくつくられません。それによって体が酸素不足の状態となり、頭痛やめまい、倦怠感といった症状が現れます。あわには鉄が多く含まれるため、貧血を予防する効果があるといえます。【3】

●動脈硬化を予防する効果
動脈硬化とは、動脈内壁にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となるもののことです。善玉(HDL)コレステロールは、血管内壁に付着して動脈硬化を引き起こすコレステロールを肝臓まで運ぶ働きがあります。あわには、善玉(HDL)コレステロールを増やす働きがあるため、動脈硬化を予防する効果があるといえます。【1】

●脂質の代謝[※4]を改善する効果
あわは脂質の代謝を改善する効果を持ちます。
脂質の代謝が悪い状態が続くと、血中に溶けている脂質の量が異常に増える高脂血症になり、高血圧や動脈硬化などの原因となり、ひどい場合には心筋梗塞や脳梗塞といった生命に関わる危険性を伴います。
あわは脂質の代謝を改善する効果があるため、ひいては高血圧や動脈硬化を予防する効果があるといえます。【2】【2】

[※3:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※4:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

あわは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○腸内環境を整えたい方
○便秘気味の方
○ダイエットをしている方
○貧血気味の方
○動脈硬化を予防したい方

あわの研究情報

【1】ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを対象に、アワ抽出物を300mg/kg の量で30日間経口投与した結果、HbA1cの改善がみられ、LDL、VLDLコレステロール値の低下、HDLコレステロール値の上昇等が認められました。これらのことから、アワは糖尿病ならびに高脂血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20869855

【2】炎症誘発高脂質ラットへ、トウモロコシまたはアワ、キビを与えた結果、アワ、キビ摂取群は血中総トリグリセリド値が低下し、さらにアワ摂取群では、C反応性タンパク質(CRP)値が低くなることが分かりました。これらのことから、アワ摂取は、血中のトリグリセリドを抑制し、炎症を抑えることで、動脈硬化等の循環器系疾患を予防できる可能性があることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20534332

【3】鉄の摂取と貧血に関する研究(7件:7000名)において、鉄を1日あたり4.9~20.0mg/kg 、3~24ヶ月間摂取させたところ、ヘモグロビンや血清フェリチンの増加が確認されました。鉄を多く含むアワは、貧血の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18554425

【4】英国人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係を調査したところ、食物繊維を1日18g 摂取すると、適度な便通を促すことにより大腸疾患の予防に役立つと示唆されました。食物繊維を豊富に含むアワは、便秘改善や大腸疾患予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426

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参考文献

・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・Sireesha Y, Kasetti RB, Nabi SA, Swapna S, Apparao C. (2011) “Antihyperglycemic and hypolipidemic activities of Setaria italica seeds in STZ diabetic rats.” Pathophysiology. 2011 Apr;18(2):159-64.

【4】英国人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係を調査したところ、食物繊維を1日18g 摂取すると、適度な便通を促すことにより大腸疾患の予防に役立つと示唆されました。食物繊維を豊富に含むアワは、便秘改善や大腸疾患予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426

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