アスパラチンとは
●基本情報
アスパラチンとは、フラボノイドの一種で、ルイボスに含まれる特有の成分です。
フラボノイドとは、植物に含まれている色素や苦味、辛味成分のことで、強い抗酸化力を持つことが特徴です。
また、ルイボスとは、南アフリカのセダルバーグ山脈一帯を原産とするマメ科アスパラトゥス属の針葉樹で、主にルイボスティーとして使用されているハーブの一種です。ルイボスティーはルイボスの葉を発酵・乾燥させたもので、煮出すと鮮やかな赤色をしており、渋みが少なくカフェインが含まれていないことから健康飲料として世界各地で親しまれています。ルイボスの葉は少しのキズから自然に発酵し、赤色になることから、現地語で「赤い(ROY)灌木(BOSS)[※1]」という意味を持つこの名前が付けられました。
アスパラチンはルイボスの中でも、発酵や乾燥をさせる前の緑色をした「グリーンルイボス」に特に多く含まれており、高血糖を予防する効果やメタボリックシンドロームを予防する効果があるとして近年注目が集まっています。
●アスパラチンの歴史
古くから健康飲料として親しまれてきたルイボスは、先住民が不老長寿や万病平癒のために葉を煎じて飲んでいたといわれており、現地では「魅惑の健康茶」、「不老長寿のお茶」と呼ばれています。
近年の研究により、ルイボスにのみ含まれる成分としてアスパラチンが発見されてからは、現在医療分野において様々な研究が行われる注目の成分となっています。
●アスパラチンの働き
アスパラチンは強力な抗酸化力を持っているため、老化の原因とされる活性酸素[※2]を除去する能力に優れています。
また、糖尿病の原因となる高血糖の予防効果に優れており、血糖値の上昇を抑制し糖尿病を予防する効果があるといわれています。
[※1:灌木(かんぼく)とは、植物学の用語で、成長しても樹高が約3mまでの木のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
アスパラチンの効果
●糖尿病を予防する効果
アスパラチンには、血糖値の上昇を抑制し糖尿病を抑制する効果があります。
糖尿病とは、血糖値が病的に高い状態を指し、この病名は血中の糖濃度が高すぎる場合、尿とともに糖質が排泄される現象に由来しています。
糖尿病は症状にも個人差があり、一般的には激しい喉の渇き、大量の尿を排泄する状態などの症状が現れます。
糖尿病の進行によっては昏睡状態に陥ったり死に至ることもあるため「死の四重奏[※3]」のひとつとしても知られている病気です。
糖尿病の発症には、加齢や遺伝など様々な要因が存在しますが、体内で発生する活性酸素によっても、糖尿病が発症するリスクは高まるといわれています。
ルイボス特有のアスパラチンは、糖尿病の原因となる高血糖の予防効果があるという研究報告がなされており、糖尿病予防に効果的だと知られています。【1】【2】【4】
●メタボリックシンドロームを予防する効果
メタボリックシンドロームとは、内臓に脂肪が蓄積される内臓脂肪型肥満に高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。
近年、日本人は民族的特徴に加え、脂質の多い食の欧米化によってメタボリックシンドロームが危険視されています。
アスパラチンはこのメタボリックシンドロームにも代表される高血糖を予防する効果があるため、メタボリックシンドロームを予防する効果があるといえます。【1】【2】【4】
●酸化ストレスを抑制する効果
アスパラチンは強い抗酸化力を持つ成分のため、酸化ストレスを抑制する効果があります。
酸化ストレスとは、紫外線や普段の生活の中で受けるストレスなどによって、体内で活性酸素が発生し、体に負荷をかけることをいいます。
活性酸素が体内で増加すると老化や疾病の原因になってしまいます。
アスパラチンはフラボノイドの一種で、強い抗酸化力を持つため、酸化ストレスを抑制する効果があるといえます。【3】
[※3:死の四重奏とは、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症の4つの病気を表す言葉です。これらの生活習慣病は動脈硬化や心筋梗塞などの病気の進行を、著しく高めるものであるという意味を持ちます。]
アスパラチンは食事やサプリメントで摂取できます
アスパラチンを含む食品
○グリーンルイボス(発酵前のルイボス)
こんな方におすすめ
○糖尿病を予防したい方
○高血糖を予防したい方
○メタボリックシンドロームを予防したい方
○動脈硬化を予防したい方
○生活習慣病を予防・改善したい方
○ストレスを感じている方
アスパラチンの研究情報
【1】Ⅱ型糖尿病マウスにおいて、ルイボスの有効成分であるアスパラチン0.1-0.2% を含む餌を5週間摂取させたところ、空腹時血糖値の増加が抑制され、糖耐性が改善されました。アスパラチンは膵臓β細胞によるインスリン分泌を促進し、筋肉へのグルコース取り込みを促進させるはたらきをもつことから、ルイボスは糖尿病予防効果をもつことが示唆されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19188054
【2】薬物糖尿病ラットを対象に、ルイボスの機能性成分アスパラチンを25mg/kg の量で投与したところ、血糖値低下効果が見られました。アスパラチンはα-グルコシダーゼ活性抑制作用を持っており、そのはたらきはルチンよりも高いことから、アスパラチンに糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23083813
【3】ルイボスには抗酸化力の強いポリフェノール成分フラボノイドが含まれています。アスパラチンやケルセチンなどが含まれており、特にアスパラチンはラジカル捕捉作用が強く、抗酸化作用と機能性が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19722573
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23238530
参考文献
・Kawano A, Nakamura H, Hata S, Minakawa M, Miura Y, Yagasaki K. 2009 “Hypoglycemic effect of aspalathin, a rooibos tea component from Aspalathus linearis, in type 2 diabetic model db/db mice.” Phytomedicine. 2009 May;16(5):437-43.
・Muller CJ, Joubert E, de Beer D, Sanderson M, Malherbe CJ, Fey SJ, Louw J. 2012 “Acute assessment of an aspalathin-enriched green rooibos (Aspalathus linearis) extract with hypoglycemic potential.” Phytomedicine. 2012 Dec 15;20(1):32-9
・Snijman PW, Joubert E, Ferreira D, Li XC, Ding Y, Green IR, Gelderblom WC. 2009 “Antioxidant activity of the dihydrochalcones Aspalathin and Nothofagin and their corresponding flavones in relation to other Rooibos ( Aspalathus linearis ) Flavonoids, Epigallocatechin Gallate, and Trolox.” J Agric Food Chem. 2009 Aug 12;57(15):6678-84.