アシュワガンダとは
●基本情報
アシュワガンダとは、インドやネパール、中東などに自生する常緑低木で、ナス科に属するハーブの一種です。高さは1~2mほどになり、緑や黄色の花を咲かせ、5cm~10cmほどの葉を一年中つけています。
学名をWithania somnifera Dunalといいます。学名の一部であるsomniferaは「睡眠性」という意味を持ち、睡眠薬としても利用されてきました。また、アシュワガンダはサンスクリット(インドの古典語)で馬という意味を持ち、アシュワガンダを摂取すると馬のような力を得ることができるということからこの名前がつきました。また、高麗人参と同じような滋養強壮効果を持つことから、インドの薬用人参とも呼ばれています。
アシュワガンダはインドの伝統医学アーユルヴェーダ[※1]の世界で女王と称され、古くから強壮・強精薬として用いられてきました。アーユルヴェーダには「強壮薬」「強力な若返り薬」という意味を持つ「rasayana(ラサーヤナ)」という言葉がありますが、アシュワガンダはrasayanaの役目を果たす特殊なハーブとして古くから知られています。
アシュワガンダは、最近日本でも栽培されるようになり、ハーブやお茶として販売されるようになっています。
●アシュワガンダの歴史
アシュワガンダは古代からアーユルヴェーダに利用されており、インドやパキスタンなどでは長く使用され、スーパーハーブともいわれています。
アシュワガンダはアーユルヴェーダや中国医学において、ハーブや薬草を使用する自然療法で、様々なストレスに対する適応能力や抵抗力を高める効果があるアダプトゲンの代表的なハーブです。
アダプトゲンとは、体の適応能力を高める働きの総称で、アーユルヴェーダや中国医学では、4000年以上も昔から病気の治療に用いられてきました。
近代医学で、アシュワガンダはストレスに対する適応能力や抵抗力を高めるという概念が認識されるようになったのは、1940年代になってからです。その後、様々な研究により、ロシアのブレクマン博士がアダプトゲンが満たす条件を、生体にとって無害であること、物理的・化学的・生物学的な要因による生体ストレスに対する適応能力や抵抗力を高めること、異常を起こした体を正常化させることの3点を定義づけました。
アダプトゲン作用のある生薬やハーブとして、高麗人参、霊芝、五味子、冬虫夏草、マカなどがあげられますが、アシュワガンダはその中でもアーユルヴェーダ医学において代表的な存在であるといわれています。
●アシュワガンダに含まれる成分と性質
アシュワガンダはその根や葉が疲労回復や体力増強に良いとされています。
アシュワガンダに含まれる成分として、アルカロイド類やステロイダルラクタン類、サポニン類、その他にも鉄などのミネラルも豊富に含まれています。
様々な栄養素を含むアシュワガンダは、ストレスに対する抵抗力の増強、体力増強、疲労回復、免疫力の向上、抗炎症など様々な効果を持ちます。
[※1:アーユルヴェーダとは、インドで古くから語り継がれている東洋医学のひとつです。「予防医学」の考え方を重視し、世界保健機構(WHO)が正式に奨励している医学です。]
アシュワガンダの効果
●ストレスをやわらげる効果
アシュワガンダには、ストレスに対する抵抗力を高める効果があるといわれています。
体に強いストレスを受けると、不眠や過呼吸、さらにうつ病などを引き起こします。
アシュワガンダにはサポニンの一種であるジンセノサイドという成分が含まれ、自律神経を整えることで、心身症や全身の倦怠感、イライラといった症状の不定愁訴(ふていしゅうそ)[※2]症候群などに働きかけます。鎮静とリラックス効果に優れ、穏やかな気分をもたらします。【1】【5】
●体力を増強する効果
アシュワガンダは、体の適応能力を高めるアダプトゲンとしての働きがあるため、体力を増進する効果があると考えられています。
アシュワガンダは古くから若返りや寿命を延ばす効果が経験的に知られていましたが、近年、動物や人間でもそのような効果が認められるようになりました。スタミナをつける効果もあるといわれています。
●免疫力を高める効果
アシュワガンダには、高麗人参に含まれるサポニンが含まれており、インドの薬用人参と呼ばれることからもわかるとおり高麗人参と同じような効果を持ちます。
また、アルカロイドも含まれており、特に関節炎やリウマチなどに効果的だといわれています。【3】
●ガンを予防および抑制する効果
アシュワガンダには、ガンを抑制する効果があるといわれています。
動物実験によると、抗ガン剤や放射線治療の効果を高め副作用を軽減することや、ガン細胞を死滅させる直接的な抗ガン作用も報告されています。
この研究では、アシュワガンダの葉をアルコール抽出した成分が、正常細胞とガン細胞に与える影響を動物実験などで調査したところ、ガン細胞を死滅させ、正常細胞の老化を防ぐ効果があったという結果が出ています。
アシュワガンダはガンを抑制する効果があると考えられ、さらに若返りにも効果的だといわれています。【2】【6】
その他にも、アシュワガンダは男女問わず生殖器系との相性が良いといわれています。妊娠中の女性に有効で、胎児を安定させるとされています。【1】【7】
<豆知識>アシュワガンダの活用
アシュワガンダはあまり味の良いハーブではありません。しかし、ショウガやシナモンなど香りのよいハーブと混ぜるとおいしく飲むことができます。複数のハーブと組み合わせてハーブティーとして飲用する以外にも牛乳で煮出したり、ハチミツを加えて飲むと健康増進や老化防止効果が上がるとされています。
[※2:不定愁訴とは、体調が優れないにも関わらず、主な原因となる病気が見つからない状態のことです。]
アシュワガンダは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○ストレスをやわらげたい方
○体力を増強したい方
○免疫力を高めたい方
○若々しい体を保ちたい方
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アシュワガンダの研究情報
【1】不定愁訴を訴える患者81名を対象に、アシュワガンダ抽出物を1日あたり300mg の量で8週間摂取させたところ、不定愁訴の改善が見られたことから、アシュワガンダは抗不安作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19718255
【2】ヒト乳癌細胞にアシュワガンダの有効成分であるwithaferin A を添加すると、アポトーシス関連物質を増加させる働きがあることから、アシュワガンダには抗がん作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22935676
【3】マウスにアシュワガンダ抽出物を投与したところ、免疫抑制剤由来骨髄抑制による白血球数と血小板数の減少が抑制されたことから、アシュワガンダには免疫力向上作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10616957
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12508132
【5】ストレスにさらされた動物(マウスおよびうさぎ)を対象に、アシュワガンダ抽出物を1日当たり100mg/kg の量で摂取させたところ、ストレスによる過酸化脂質の増加が抑制されたことから、アシュワガンダは抗酸化作用と抗ストレス効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9582008
【6】アシュワガンダの主要成分であるWithaferin A には、がん細胞増殖を抑制する因子を活性させることで、腫瘍細胞(がん細胞)の増殖を阻害するはたらきを持つことから、アシュワガンダは抗腫瘍作用ならびに抗癌作用をもつと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21266191
【7】不妊症患者75名を対象に、アシュワガンダを摂取させたところ、抗酸化酵素の低下やビタミンA, C, E の低下を抑制するほか、血中T細胞やLH(黄体ホルモン)を増加させ、FSH(卵胞刺激ホルモン)ならびにPRL(プロラクチン)を改善したことにより、精子運動能が増加しました。このことからアシュワガンダには男性不妊治療に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19501822
参考文献
・ローズマリー グラッドスター著 ストレスに効くハーブガイド [単行本] フレグランスジャーナル社
・アン マッキンタイア著 女性のためのハーブ自然療法 産調出版
・佐々木 薫 ハーブティー事典 池田書店
・Cooley K, Szczurko O, Perri D, Mills EJ, Bernhardt B, Zhou Q, Seely D. 2009 “Naturopathic care for anxiety: a randomized controlled trial ISRCTN78958974.” PLoS One. 2009 Aug 31;4(8):e6628. doi: 10.1371/journal.pone.0006628.
・Hahm ER, Singh SV. 2012 “Withaferin A-induced apoptosis in human breast cancer cells is associated with suppression of inhibitor of apoptosis family protein expression.” Cancer Lett. 2012 Aug 27. pii: S0304-3835(12)00514-9.
・Agarwal R, Diwanay S, Patki P, Patwardhan B. 1999 “Studies on immunomodulatory activity of Withania somnifera (Ashwagandha) extracts in experimental immune inflammation.” J Ethnopharmacol. 1999 Oct;67(1):27-35.
・Dhuley JN. 1998 “Effect of ashwagandha on lipid peroxidation in stress-induced animals.” J Ethnopharmacol. 1998 Mar;60(2):173-8.
・Choi MJ, Park EJ, Min KJ, Park JW, Kwon TK.2011 “Endoplasmic reticulum stress mediates withaferin A-induced apoptosis in human renal carcinoma cells.” Toxicol In Vitro. 2011 Apr;25(3):692-8.
・Ahmad MK, Mahdi AA, Shukla KK, Islam N, Rajender S, Madhukar D, Shankhwar SN, Ahmad S. 2010 “Withania somnifera improves semen quality by regulating reproductive hormone levels and oxidative stress in seminal plasma of infertile males.” Fertil Steril. 2010 Aug;94(3):989-96.