アサリ

イソモ、コガイ

アサリは、日本各地の内湾に分布しており、貝類の中でも最も多く獲られています。酒蒸し、佃煮などのさまざまな料理に利用できます。アサリのうまみ成分であるタウリンやベタインには、コレステロール値を下げたり、肝機能を高める効果があります。

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アサリとは

●基本情報
アサリは、マルスダレガイ科アサリ属の貝です。塩分濃度のやや低い内湾の砂泥底に生息しており、日本各地の内湾にも分布しています。大きさは約3cmにもなります。模様は、縞、かすり、放射、波などさまざまで、色も貝によって違います。アサリは環境によって殻の厚さも変わります。環境が良ければ綺麗な斑紋をしていて、薄い殻となっており、環境が悪ければ、黒ずんだ殻をしていて、分厚くなる傾向があります。また品質面でいえば、綺麗な模様をしていて、殻も大型のものが良質とされています。
貝類の中で最も多く収穫されるアサリですが、日本での漁獲量は約6万tです。需要が多いため、その他にも中国や韓国からも輸入されており、輸入量は約4万tにもなります。ハマグリが埋め立てなどにより減少し、輸入に頼っている現状の中、アサリは人口砂浜でも生きることができます。そのため、近年は養殖のものも主流となっています。種苗生産としてまかれた稚貝は、半年で殻長は約2cmで、1年で約3cmに成長します。

●アサリの歴史
アサリの名前は、「漁る(あさる)」に由来しています。どこの干潟を漁っても、見つかるから名がついたといわれています。その名の通りアサリは日本各地で採ることができます。東京深川では、アサリの炊き込みご飯である深川飯や、アサリの味噌汁や味噌煮をご飯にかけた深川丼が名物となっています。

●アサリの旬
アサリは秋から春にかけてが旬であるといわれており、旬の時期にはアサリの中に含まれるタウリンベタインなどのうまみ成分が豊富になります。
アサリは殻つきで潮汁などの汁の具、酒蒸し、むき身はかき揚げ、佃煮などに利用されます。特に地中海料理には欠かせないものとなっています。さまざまな料理で親しまれるアサリですが、産卵期である6~9月のものは、中毒を起こすこともあるので注意が必要です。
新鮮なアサリを選ぶ際は、吸入管をよく出して勢いよく潮をふくものや臭いがないものを選ぶことがポイントです。
アサリをおいしく食べるには、砂抜きをしっかりする必要があります。砂抜きをしていないアサリは、濃度2.5~3%の塩水を入れたボウルに7~8時間おい て、砂を吐かせてから調理します。このとき、水は常温で、暗いところに置くと砂がよく抜けて、おいしく食べることができます。またアサリは、生きているも のは海水または濃度3%程度の食塩水に入れて冷蔵庫で保存すると鮮度が保たれます。

●アサリに含まれる成分と性質
アサリは、コハク酸【※1】が豊富に含まれており、その甘味はグリシンからなります。またたんぱく質は少ないですが、ミネラルが豊富に含まれています。含まれるカルシウムは100g中66mg、は3.8mgにもなります。そのほかにもビタミンB2ビタミンB12が多く含まれています。
アサリの佃煮や缶詰には、アサリの栄養成分が凝縮され、100gあたりのカルシウムや鉄の含有量はかなり高くなっています。またアサリは鉄分が豊富であるので、ビタミンCを含む青菜やブロッコリーなどの野菜と一緒に食べると鉄の吸収が高まり効果的です。
またアサリに含まれるタウリンは、魚介類に豊富に含まれるアミノ酸の一種です。タウリンには抗酸化、抗炎症作用などを発揮して、細胞や体の恒常性維持に働きかけ、様々な病気の予防にも効果があることが近年の研究で明らかになってきています。

【※1:コハク酸とは、クエン酸回路を構成する化合物の一種です。】

アサリの効果

●貧血を予防する効果
アサリは、貧血の予防に効果があります。
アサリにはビタミンB12と鉄が多く含まれています。ビタミンB12は、水に溶ける水溶性ビタミンで、貧血に関わっています。ビタミンB12が不足すると赤血球【※2】が減ったり、異常に巨大な赤血球ができてしまったりする巨赤芽球性貧血という悪性の貧血となってしまいます。
また、鉄も貧血の予防に欠かせない栄養素です。体内の鉄の約3分の2が血液中で赤血球のヘモグロビンの構成成分となり、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞や組織に運ぶという重要な役割をしています。
そのためビタミンB12・鉄がたっぷり含まれているアサリを食べることは貧血を予防するのに効果的です。

●コレステロール値を下げる効果
アサリには血中コレステロール値を下げる効果があります。
アサリにはアミノ酸の一種であるタウリンが含まれています。タウリンは、肝臓で胆汁【※3】の生成を促進する働きがあります。胆汁を生成するときには、体内のコレステロールを多く消費することがわかっています。そのためタウリンは血中のコレステロール値を正常にする働きがあるため、動脈硬化【※4】など生活習慣病【※5】を予防する効果が期待できます。

●肝機能を高める効果
アサリには、肝機能を高める効果があります。
アサリにはベタインというアミノ酸が含まれています。ベタインには、胆汁の産生を促進して、コレステロール値を下げる効果があります。さらにアサリに含まれるタウリンにも肝臓の解毒作用【※6】を強化する効果があるため、肝機能の強化とともに二日酔いの改善にも効果が期待できます。
このため、二日酔いの時にはアサリのエキスがしっかり摂れるアサリの汁物が昔から食べられています。

【※2:赤血球とは、動物の血液を構成する血球で、形は両面中央がややへこんだ円盤の形状をしています。赤い色はヘモグロビンによるもので、主に酸素を運搬する働きがあります。】
【※3:胆汁とは、肝臓でつくられるアルカリ性の液体です。胆汁酸などを含み、脂肪酸の吸収を助ける作用があります。】
【※4:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。】
【※5:生活習慣病とは、病気の発症に、日頃の生活習慣が深く関わっているとされる病気の総称です。糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、肥満などが挙げられます。】
【※6:解毒作用とは、人間の体にとって有害なものを無毒化する作用のことです。】

こんな方におすすめ

○貧血でお悩みの方
○コレステロール値が気になる方
○肝臓の健康を保ちたい方
○お酒をよく飲む方

アサリの研究情報

【1】ゼブラフィッシュを使い、アサリのタウリンが含まれる水抽出物の効果について確認を行ったところ、その抗炎症作用が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25833548

参考文献

・成瀬宇平監修 食材図典 小学館

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・646食品成分表編集委員会 編 646食品成分表〈2010〉五訂増補日本食品成分表準拠 東京法令出版

・Cheong SH, Hwang JW, Lee SH, Kim YS, Sim EJ, Kim EK, You BI, Lee SH, Park DJ, Ahn CB, Jeon BT, Moon SH, Park PJ. (2015) “Anti-inflammatory Effect of Short Neck Clam (Tapes philippinarum) Water Extract Containing Taurine in Zebrafish Model.” Adv Exp Med Biol. 2015;803:819-31.

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