アーティチョークとは
●基本情報
アーティチョークとは、キク科チョウセンアザミ属の野菜で、和名を朝鮮薊(ちょうせんあざみ)、仏名をArtichautといいます。また、学名はCynara scolymus L.といいます。
アーティチョークという名前は、アラビア語で巨大なあざみを意味するアル・カルチュがスペイン語のアルカルチョーフに転訛し、さらに各国語に変化したといわれています。和名は朝鮮薊ですが、朝鮮半島とは全く関係がなく、異国風のあざみという程度の意味でつけられたといわれています。
アーティチョークは、がく[※1]の付け根と花しん[※2]が食用として食べられます。日本では古くから野生あざみの茎や根を山菜として食用にしていましたが、アーティチョークはこのあざみよりも大型のものです。ほろ苦さと淡い甘さがまじりあい、豆に似たほくほくとした触感でやや青臭さがあります。
日本での生産地は徳島県、長野県、九州などが主ですが、生産量としては少なく、市場に出回っているアーティチョークは輸入ものが一般的です。世界的な産地としてはアメリカのカリフォルニア州、ヨーロッパ南部、ニュージーランドなどです。
ヨーロッパやアメリカなどでは広く食用とされているほか、インドでも二日酔い防止のために飲酒の後に茶に混ぜて飲まれています。日本ではあまり出回っていないということもあり、レストラン等の飲食店で見かけることが一般的ですが、最近ではアーティチョークの効果が知られてきたことにより少しずつ市場にも出回るようになっています。
●アーティチョークの歴史
アーティチョークは紀元前から高級野菜として珍重され、ギリシャ・ローマ時代から栽培されてきました。15世紀にはイタリアに伝わり、16世紀にはフランスやドイツ、イギリスに広まりました。
日本へは江戸時代にオランダから渡来したといわれています。
●アーティチョークの旬と選び方
アーティチョークは初夏から夏にかけてが旬の野菜です。高さは1.2~2mになり、葉は50~80cmに達します。またつぼみは8~15cmに達します。
アーティチョークはがくの開いていない、肉厚のものが良品とされており、丸々としていて重いものを選びます。また、葉が大きくしまっているものの方が良いとされています。鮮度が落ちるとがくの付け根が紫色に変色するため、緑の濃いものの方が新鮮だといわれています。
●アーティチョークの食べ方
大型のアーティチョークは特にあくが強いため、少量の塩とレモン汁(または酢)を加えた熱湯で下茹でします。アーティチョークの可食部は空気に触れることで酸化[※3]し黒ずんでしまうため、茹でる際は上下を切り落としたあと、スライスしたレモンを切り口に当ててから茹でると変色を防ぐことができます。また、がくがバラバラにならないようにたこ糸などで十文字に縛って茹でます。
茹であがったアーティチョークは、がくを1枚ずつはがして、付け根にソースかバターをつけて歯でしごくようにして食べます。また、花しんの部分はソテーにして肉料理などの付け合わせに利用されます。
●アーティチョークに含まれる成分と性質
アーティチョークは、野菜としては珍しく、炭水化物(糖質)が多く、水分が少ないという特徴があります。炭水化物が多いため、カロリーは100gあたり48キロカロリーと少し多めですが、たくさん食べるものではないため、糖尿病等でカロリー制限をしている人であっても気になる数値ではないといえます。
またその他にもカリウムやビタミンCなどを豊富に含んでいます。
アーティチョークの一番の特徴は食物繊維で、100g中の食物繊維総量が9g近くあります。この数値は切干大根やかんぴょうなどの乾物を除くとトップ3に入るほどで、アーティチョークはファイバーフードとして人気の野菜です。また、多くの野菜は不溶性食物繊維が多いのに対し、アーティチョークは水溶性の食物繊維が約6gも含まれているという特徴を持ちます。水溶性食物繊維の特徴として、排便を促したり、コレステロールや糖質を体外へ排出する働きを持つため、高脂血症や糖尿病の予防に効果的であるといえます。
[※1:がくとは、植物用語のひとつで、花冠(花弁、またはその集まり)の外側の部分をいいます。]
[※2:花しんとは、花の中央のことです。]
[※3:酸化とは、物質が酸素と化合し、電子を失うことをいいます。サビつきともいわれています。]
アーティチョークの効果
●便秘を解消する効果
アーティチョークには水溶性の食物繊維が豊富に含まれているため、便秘の予防・解消に効果的です。
食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」に2つに大別され、それぞれ働きが異なります。
水溶性食物繊維は水分を吸収してゲル化[※4]し、摂取した食品の胃での滞留時間を長くさせる働きがあり、腸の中をゆっくり通過することによって、腸のぜん動運動[※5]を促進することから便秘の解消に効果的です。
アーティチョークは水溶性食物繊維を豊富に含んでいるため、便秘の解消や予防に効果的であるといえます。【1】【5】【6】
●高血圧を予防する効果
アーティチョークにはカリウムが豊富に含まれていることから、高血圧を予防・改善する効果があります。
カリウムはナトリウムとのバランスを体内で保つことで、血圧を正常に保っています。味の濃い食事や加工食品などによって、体内のナトリウム濃度が高まるとことで、高血圧になる人が増えていえます。血圧はカリウムとナトリウムとのバランスを保つことによって正常に保たれているので、カリウムを摂取することで高くなった血圧を下げる働きが期待できます。
よって、カリウムを豊富に含むアーティチョークは高血圧を予防・改善する効果があるといえます。
●コレステロール値を下げる効果
アーティチョークには、胆汁[※6]の分泌を促進し、コレステロール値を下げる効果があります。
胆汁がつくられる際、胆汁の主要な成分である胆汁酸が必要となります。胆汁酸をつくる際は、コレステロールが必要となるため、胆汁の分泌を促進するアーティチョークにはコレステロール値を下げる効果があるといます。【2】【3】【4】
●糖尿病を予防する効果
アーティチョークには糖尿病を予防する効果があります。
糖尿病とは、インスリン[※7]の不足などによって糖代謝がうまくいかなくなり、血中の糖の濃度が異常に上がってしまうことをいいます。
アーティチョークには水溶性食物繊維が豊富に含まれているため、糖の吸収を抑制する働きがあります。このことからもアーティチョークは糖尿病を予防する効果があるといえます。
[※4:ゲル化とは、ヌルヌルとした粘性が凝固したもののことです。]
[※5:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※6:胆汁とは、肝臓でつくられるアルカリ性の液体です。胆汁酸などを含み、脂肪酸の吸収を助ける作用があります。]
[※7:インスリンとは、血糖値をコントロールする作用を持ったホルモンです。]
食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○便秘を予防・解消したい方
○高血圧を予防・改善したい方
○コレステロール値が気になる方
○糖尿病を予防したい方
アーティチョークの研究情報
【1】便秘症状を訴える男女20名を対象に、乳酸菌を大量に含んだアーティチョークを1日あたり180g の量で15日間飲用させたところ、アーティチョークを飲用したグループは、有意に症状の緩和が認められました。アーティチョークは、便秘の患者にとって有用であると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22225544
【2】消化不良を伴う患者(薬理学的療法をしていない)を対象に、乾燥アーティチョーク葉、15%のクロロゲン酸、2%のイヌリンを含んだタンポポ、95%のクルクミンを含んだウコンおよびローズマリーオイルを含んだカプセル飲用させたところ、LDL、総コレステロールは、ベースラインよりも6-8%減少し、AST、ALT、γ‐GTもベースラインよりも減少したことから、アーティチョークは生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20485248
【3】75名の健常人を対象に、アーティチョーク抽出物を1日あたり1280mg の量で12週間飲用したところ、総コレステロールに改善がみられたことから、アーティチョークは高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18424099
【4】高脂血症患者28名を対象にアーティチョーク抽出物を飲用させた結果、総コレステロールおよびLDLコレステロールの減少が認められました。また、アーティチョーク飲用後は、可溶性VCAM-1やICAM-1が減少し、FMV %が増加しました。このことから、アーティチョークは、コレステロール値を下げ、FMV %を改善させることで、VCAM-1、ICAM-1を改善させることがわかりました。アーティチョークは、血管内皮機能の改善につながり、血流改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15581909
【5】英国人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係を調査したところ、食物繊維を1日18g 摂取すると、適度な便通を促すことにより大腸疾患の予防に役立つと考えられていることから、食物繊維を豊富に含むアーティチョークは腸の健康維持に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426
【6】成人男女20,630名において、性別や摂取栄養素、ライフスタイルと排便回数との関係を調査した結果、食物繊維が多い人ほど、排便回数が多いことが確認され、食物繊維を豊富に含むアーティチョークは腸環境を整えるはたらきを持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14972075
参考文献
・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社
・芹澤正和 花図鑑野菜 草土出版
・CMPジャパン「ハーブ」プロジェクトチーム 編 薬用ハーブの機能性研究 健康産業新聞社
・佐々木 薫 ハーブティー事典 池田書店
・林真一郎 編 メディカルハーブの事典 東京堂出版
・Riezzo G, Orlando A, D’Attoma B, Guerra V, Valerio F, Lavermicocca P, De Candia S, Russo F. (2012) “Randomised clinical trial: efficacy of Lactobacillus paracasei-enriched artichokes in the treatment of patients with functional constipation–a double-blind, controlled, crossover study.” Aliment Pharmacol Ther. 2012 Feb;35(4):441-50. doi: 10.1111/j.1365-2036.2011.04970.x. Epub 2012 Jan 8.
・Sannia A. (2010) “[Phytotherapy with a mixture of dry extracts with hepato-protective effects containing artichoke leaves in the management of functional dyspepsia symptoms].” Minerva Gastroenterol Dietol. 2010 Jun;56(2):93-9.
・Bundy R, Walker AF, Middleton RW, Wallis C, Simpson HC. (2008) “Artichoke leaf extract (Cynara scolymus) reduces plasma cholesterol in otherwise healthy hypercholesterolemic adults: a randomized, double blind placebo controlled trial.” Phytomedicine. 2008 Sep;15(9):668-75. doi: 10.1016/j.phymed.2008.03.001.
・Lupattelli G, Marchesi S, Lombardini R, Roscini AR, Trinca F, Gemelli F, Vaudo G, Mannarino E. (2004) “Artichoke juice improves endothelial function in hyperlipemia.” Life Sci. 2004 Dec 31;76(7):775-82.
・Cummings JH, Bingham SA, Heaton KW, Eastwood MA. (1992) “Fecal weight, colon cancer risk, and dietary intake of nonstarch polysaccharides (dietary fiber)” Gastroenterology. 1992 Dec;103(6):1783-9.
・Sanjoaquin MA, Appleby PN, Spencer EA, Key TJ. (2004) “Nutrition and lifestyle in relation to bowel movement frequency: a cross-sectional study of 20630 men and women in EPIC-Oxford.” Public Health Nutr. 2004 Feb;7(1):77-83.